山田祥平のRe:config.sys

すごいぞWiMAX、その世界標準を体感

 




 WiMAXの強みは、なんといっても、そのハードウェアが世界標準である点だ。モジュール内蔵PCも、どんどん増えている。そうはいっても、実際に試してみなければ絵に描いた餅だ。そこで今回は、CES 2010で渡米中のラスベガスで使ってみたWiMAX体験をレポートしたい。

●ラスベガスで念願のWiMAX接続成功

 「100人を超えるお客様が同じ便に乗り継ぐことになっていますから、おそらく出発を遅らせて待ってくれるとは思うのですが、詳しくは搭乗後にアナウンスされると思いますので……」

 成田空港のチェックインカウンターで係員の女性がこういった。チェックインの時点で、搭乗予定の便が1時間30分遅れとなっている。本来ならば朝の8時頃にロスアンゼルスに到着し、10時30分のラスベガス行きに乗り継いで、うまくいけば午前中にはラスベガスに到着するはずの旅程だった。

 結局、その便は2時間遅れで成田を飛び立ち、ロスアンゼルスに到着する前に乗り継ぎは不可能というアナウンスがあり、なんと、バスをチャーターしたので、それに乗ってラスベガスに向かえという。つまり、ぼくらが乗るはずだった便は、100席以上の空席で飛んだのか、それとも、これこそグッドタイミングと、高い料金で乗ってくれる新規客を乗せて飛び立ったのか……。

 ロスアンゼルスでの入国審査を終え、荷物を受け取って税関をくぐり、到着ロビーの外に出てみる。米国滞在中は、いつも、AT&Tのプリペイド携帯電話を使っている。「Go phone」と呼ばれるサービスで、100ドルをチャージしておけば、1年間は電話番号が有効で、米国内での通話は1分間25セントと、ローミングで日本の携帯を使うよりもリーズナブルだ。データ通信もできるが1KBあたり1セント、すなわち1MBで10ドルと、かなり高額なので、100MBのデータパッケージを購入して、それを使っている。こちらは、「Media Net Package」と呼ばれ、100MBあたり19.99ドルで、まあ、4〜5日の出張中に、メールやWebを移動中にチェックするくらいならこれでコトが足りる。

 手持ちの携帯端末は、Bluetooth対応なので、PCを開いて接続すれば、それでインターネットにつながる。使い心地は決してよいとはいえない。やはり遅くてイライラすることが多い。一説には、iPhoneのトラフィックでAT&Tのデータ通信網はパンク寸前という話もあるのだが、本当かどうか。でも、流れるときはけっこう快適だ。何よりも、ほとんどいつでもどこでもつながるという安心感がある。

 メールをチェックしながら小一時間ボンヤリしているとバスが到着したようで、さっそく乗り込む。ロスアンゼルスからラスベガスまでは300マイル弱。東京から大阪よりはちょっと短い程度の距離だ。バスの中でもたまにPCを開きAT&Tの電話を使ってインターネットを使おうとするのだが郊外エリアでは3G通信がうまくいかないところも少なくなかった。

 途中、一度の休憩をはさみ、約5時間を過ぎたところで、ラスベガスまであと数マイルというところまできた。遠くに奇抜な様相のホテル群が見える。PCを開いて、試しにWiMAX事業者を検索してみると、「Clear」が見えた。Clearは米国各地でWiMAXをサポートする通信事業者で、ラスベガスもサービスエリアのひとつとしている。

 接続して、ブラウザを開くと、同社のポータル(http://www.clear.com/)にリダイレクトされる。そこで見つけたのが30日間無料トライアルの文字だった。どうやら現在は、キャンペーン期間中らしい。リンクをクリックすると、別のページに遷移し、名前や電話番号、メールアドレスを入れるだけでサービスが使えるようだ。その場で申し込んだのはいうまでもない。今回は5泊7日の出張なので、出張中は無料でインターネットが使えるということだ。しかも、戻りの便はシアトル経由で、シアトルもまた同社のサービスエリアに入っている。

 申し込みを完了するといったん接続が強制的に切断された。これは日本のUQでの申込時と同じだ。しばらくするとMACアドレスが同社のデータベースに登録され、インターネットにつながるようになるはずだ。

 そんなことをしているうちにバスはラスベガスの空港に到着、PCを閉じてバスを降りる。空港から宿泊予定のホテルまではタクシーでチップを入れても20ドル程度の距離だ。

●WiMAX機をルータにして複数台接続

 チェックインして部屋に入る。その時点ですでに18時をまわっていたため、本当は見たかったスティーブ・バルマーの基調講演には間に合いそうもない。そこで、別の展示会にでかけることにして、いつものように、部屋のネットワーク整備に取りかかった。

 通常、海外出張には複数台のPCを持参する。それらのPCを無線や有線のLANで接続、これまた持参したルータでホテルのインターネット接続サービスなどに接続する。

 今回宿泊しているホテルも、部屋には有線のEthernetが引き込まれ、PCのLAN端子に接続し、ブラウザを開いて手続きをすればインターネットが使えるようになる。ただ、今回は、WiMAXが使えるかもしれないという期待があったので、まず、PCを開いて電波状況を確認してみることにした。

 部屋は9Fだ。PCを開くと自動的に、さっき接続したClearに再接続、何事もなかったかのようにインターネットが使えるようになった。しかも速い。確認したところ、自宅へのVPNを介しても1Mbps程度は出ているようだ。これならコンベンション期間中のラスベガスのホテルの有線LANよりは、経験的にずっと高速だ。

 持参したPCは2台。そのうち1台がWiMAX内蔵機だ。1台をホテルの部屋に置きっぱなしにし、内蔵機の方を日中の取材に持ち出すつもりだった。そこで、WiMAXにつながるPCをルータ代わりにして、もう片方のPCからは、その接続を使うことにした。本当なら、前回紹介したConnectifyなどを使い、WiMAX内蔵PCで仮想アクセスポイントを稼働させたいところだが、残念ながら、仕様上、WiFiとWiMAXを同時に使うことができない。こんなことなら、年末に購入したウルトラミニの無線LANアダプタを持ってくればよかったと思いながら、スーツケースからEthernetケーブルを取り出し、2台のPCのLAN端子を相互接続する。

 Windowsは、Ethernetに接続したあと、IPアドレスをDHCPサーバーなどから取得できない場合、適当なプライベートアドレスを自分自身に割り当てるようになっている。また、片方に別のインターネット接続があれば、それを共有するように設定しておくことで、mshome.netのサフィックスで競合しないようなIPアドレスが割り当てられる。

 今回は、WiMAX接続したPCで、その接続を共有し、Ethernetケーブルで接続したもう片方のPCでブラウザを開くと、特に問題なくインターネットが使えるようになった。これで昼間はWiMAX内蔵PCを持ち出し、部屋に戻ったところで持ち出していたPCにACアダプタとEthernetケーブルを接続すれば、両方のPCでWiMAX経由のインターネットが使える。

●新規サービスより安くなければローミングの意味がない

 いったんメイン会場で登録の手続きをすることにして、ホテルの外に出た。ラスベガスにモノレールが整備されてからのここ数年は、ホテル選びの条件としてモノレールの駅が至近であることとしている。今回もそんなホテルを選んだ。

 モノレールに乗って会場のある駅に向かう。モノレールの料金は一回5ドルと、けっこう高額だが、72時間乗り放題の3dayチケットを購入する。これなら1日1往復以上すれば元がとれるし、何よりも、チケット購入の長い行列に並ばなくてもすむ。

 モノレールの駅でも、また、移動中の車内でもWiMAXは良好に使えた。また、ラスベガスコンベンションセンターの中でもそれなりに使えるようだ。驚いたのは、そのあとにのぞいた展示会の会場で使えたことだ。ベンダーが屋台のような小さなブースを出展するDigital Experienceという毎年恒例のイベントだが、キャリアのClearが出展しているということもあって、かなり奥まったホールなのに、良好にWiMAXが利用できた。説明員に話をきいたところ、ラスベガス全域をカバーしているのはもちろん、ホテル内のような屋内も、個別に対応してカバーするようにしているのだという。

 接続には、日本でUQのWiMAXに接続するときよりも、多少時間がかかるようだ。特にIPアドレスの取得に待たされる感じがある。日本では、PCを開いてパスワードを入れ、デスクトップが表示されるころには、もうつながっているという印象なのだが、ここでは、それほどのインスタント感はない。きっと、時間帯などにも影響されるのかもしれない。

 そんなわけで、今回の出張は、WiMAXのグローバルスタンダードを実体験でき、しかも無料という恩恵まで得られてすませることができそうだ。飛行機の遅れで幸先が悪いなと思っていたが、いいこともあるようだ。

 ちなみに、もし正規の料金を支払うとしたらどうなるかというと、「Day Pass - 10ドル/日」、または「Unlimited Mobile - 40ドル/月(キャンペーン価格。通常は45ドル)」のどちらかを選ぶことになるだろう。多くの出張は5泊程度なので、すべての期間をカバーするには月契約を選ぶのがよさそうだ。UQコミュニケーションズの関係者に確認したところ、日本のクレジットカードもきちんと使えるそうだ。

 ハードウェアとしての技適に関しては、FCCの取得をIntelで行なっているため、Intel製のモジュールを使用しているWiMAX内蔵PCならOKだそうだ。人体に電波が与える影響を示すSAR値についても、現時点では問題ないという。

 プランとしては、「2GB Mobile - 35ドル/月」といったものや、月額でも2端末が使える55ドルプラン、3端末が使える75ドルプランが用意されている。いずれにしても、ホテルの部屋のインターネット接続サービスを使うよりはずっと安い。

 これらのプランがあるとはいえ、やはり理想はUQコミュニケーションのような日本の事業者を通じてローミング接続できることだ。たとえばUQ Flatのユーザーが24時間数百円程度で海外での利用ができるようになればきわめて魅力的だ。つまり、現地でサービスに加入するよりも安くなければローミングの意味がないのだ。

 確かに3G携帯は、どこでも確実につながるという安心感はある。それに、ある種のグローバルスタンダードでもある。ただ、日本国内で発売されている3G WAN対応PCは、そのほとんどがドコモのSIMロックがかかっていて、海外事業者のSIMは使えないし、ローミングは常識をはずれた価格が設定されている。ハードウェアのスタンダードに、サービスというソフトウェアで足かせをかませた最悪のパターンだ。こういうビジネスがいつまでも続いてほしくはない。だからこそ、WiMAXにはがんばってほしいと思う。

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