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事故で分かった10型タブレットのオールマイティ

 「iPhone 6」が4.7型液晶に大型化し、さらに5.5型のPlusも加わった。Androidスマートフォンでは、KDDIから2014秋冬モデルとしていちはやく発表された「Xperia Z3」も、従来通りの5.2型液晶を持つなど、スマートフォンの大型化が既定路線になりつつある。その一方で、タブレットは8型がトレンドということになっているが、そのサイズは本当にスマートフォンユーザーが求めているサイズなのだろうか。

大型化するスマートフォンと、中途半端感の強い8型タブレット

 常用しているスマートフォンが5.7型液晶の「Galaxy Note 3」なので、iPhone 6 Plusには特に「でっかい」という印象は持たなかった。実際の寸法や重量も、Galaxy Note 3の約79×151×8.3mm(幅×奥行き×高さ)に対して、iPhone 6 Plusは約77.8×158×7.1mm(同)だ。重量は172gで同じだから、ちょっとだけ薄くて小さいと思ったくらいだ。

 日常的にこのサイズのスマートフォンを使っていると、苦労なく読める文字サイズに調整した状態での情報量は、これ以下の画面サイズだと物足りなく感じる。画面が小さいと、同じ文字サイズにしたときの情報量が少なくなるからだ。

 結局、実機に触ってみて、これなら使えると思って、AppleのオンラインストアでiPhone 6 Plus 128GB版のSIMロックフリー機を予約した。今回は、日本で発売されるモデル「A1524」の周波数対応が米国版よりも充実しているので、特に外国で入手する必要性を感じなかった。ただ、とにかく実機を触ってからでないと判断できない、と思ったため初動が遅れ、とりあえずほぼ1カ月待ちの状況だ。おサイフケータイを期待できないので、おそらくは音楽プレーヤーとしての利用と、海外での使用がメインになると思う。

 5.5型の画面は万能に近いと自分では思っている。少なくとも日常的に活動するエリアにいる限りはそうだ。ほとんど全ての外出において、ノートPCを携行しているが、それを使わない場合だってあるくらいだ。そして、難なくパンツのポケットに入る。これは重要だ。

 でも、出張や旅行となると話が違う。日常と異なる場所にいることから、頻繁に調べ物をしたくなる。地図を見たり、施設や飲食店を調べたり、物見遊山の対象を物色したりする回数が普段よりも著しく多くなる。そうなると、やはりもっと大きな画面が欲しくなるのだ。逆に、TwitterやFacebookの利用、メールのチェック程度ならなんだっていいとも言える。ならば、8型液晶はどうかというと、そのサイズでは、5.5型超の画面に対する優位性がちょっと不足しているようにも感じる。

 それなら10型はどうだろう。そう思って実際の出張で試してみることにした。

 とにかく全てを1台で済ませるために、通話もサポートしている10型タブレットを物色した。使ってみたのは10.1型液晶搭載のソニー「Xperia Z2 Tablet」だ。それなりの期間、通話とデータ通信の全てをこれ1台でまかなってみることにした。しかも、PCを携行している場合はルーターとしても機能させる。まさにオールマイティだ。

 海外出張や旅行のシチュエーションを考えるとどうしてもWAN対応、それもSIMロックフリー機が欲しい。そこで、今回は、Expansysにお願いし、ご厚意で、グローバル版の「SGP521n」(SIMロックフリーLTE、16GB、黒)の実機をお借りした。

 Expansysは、日本に居ながらにして、各スマートフォンやタブレット製品のグローバル版を入手できる便利な通販サイトだ。技適の関係で入手したデバイスを日本で使うのは難しいが、海外で使うためのデバイスを入手するには重宝する。今回お借りしたXperiaは、いわゆる香港仕様のようで、初期設定時に地域として日本を選択できなかったが、一通り初期設定を終えたあとは、問題なく日本語/日本を設定することができるようになった。

長期出張を10型タブレットのみでこなすチャレンジ

 この9月は長期間の海外出張があった。8月31日にドイツに向かってIFA取材のために約1週間ベルリンに滞在。9月7日の午前中にいったん日本に戻り、成田空港で7時間を過ごして夕方には米サンフランシスコにIDF取材のために移動。そこで1週間過ごして、自宅に戻るのは9月14日の夜という15日間のスケジュールだ。昨年(2013年)も同様のスケジュールで動いたので、大変と言えば大変だが、なんとかなると判断した。この約2週間の旅程の通信を約439gの10.1型タブレットのみでこなしてみようというわけだ。

 まず、成田空港を出発する直前に、普段使っているGalaxy Note 3に着信する電話を、加入済みの「050 Plus」に転送するように設定しておいた。いわゆるIP電話サービスで、アプリを起動しておけば世界中どこにいても着信することができる。転送は無料だが、転送先に着信した場合には通話料が必要だ。ただし、国内にかけているのと同じだし、しかもドコモの新プランで、いわゆるカケホーダイだからコスト負担は基本的にゼロだ。

 ドイツ・ベルリンには、スカンジナビア航空利用でコペンハーゲンを経由して入った。あらかじめXperiaには、昨年(2013年)入手したドイツテレコム(T-Mobile)のSIMカードを装着しておいた。このキャリアは日本からもクレジットカードでチャージできるのがいい。契約は「Xtra Triple」というプランで、9.95ユーロ/月で、250MBのデータ通信、無制限のSMS、9セント/分の通話料という仕様だ。データ通信容量が心許ないが、まあ、ホテルの部屋などほとんどの場所はWi-Fiが使える。何よりも、年に1度の訪独でも心配なく維持できるところがポイントで使っている。残高不足にしておけば、使わない月のチャージはない。

 また、このキャリアは「Xtra DayPass M」というサービスを提供しているのもうれしい。これは、本国ドイツ以外のEU諸国において、2.95ユーロで50MBまたは24時間のローミングデータ通信ができるというものだ。どちらかに達した場合も、もう一度申し込めばいい。ドコモのローミングサービス「海外1dayパケ」と比べても格安だ。乗り換えで別の国の空港に短時間いる場合にも重宝するし、数日の滞在なら、これだけでもそれなりに使えるかもしれない。

 実際、コペンハーゲンで電源を入れてWebブラウザを起動すると、リダイレクトされて申し込み画面が表示された。ただし、航空会社のラウンジにすぐ入ることができ、そこでは提供されている無料Wi-Fiを使うことができるので、今回はローミングサービスは利用しなかった。

 ベルリンに到着し、機内モードを解除したXperiaは飛行中に届いたメールを順次受け取る。飛行機が目的地の空港に着陸した途端に使えるというのはやっぱり気分がいい。荷物が出てくるのを待ちながらメールを確認し、タクシーに乗って、ホテルの名前と住所をドライバーに見せる。こういうときにも大きな画面は便利だ。

 ベルリンではレストランを予約するような時間的余裕はなかったが、途中、何度か、日本からの電話を050 Plusで着信して応答した。カバンの中でバイブして震えるタブレットは気がつきにくいが、今回は、腕時計型のAndroid Wearとして「LG G Watch」とペアリングしておいた。だから、着信があれば腕で時計が震える。Android Wearは、腕時計越しの通話をサポートしていなので、カバンからタブレットを取り出す必要はあるが、さほど回数が多いわけではないので、特に問題を感じることはなかった。

 こうしてベルリンでの1週間を過ごして日本に向かい、成田空港での7時間を過ごしながら、日本のモバイルインターネットの高速さ、快適さを再確認しつつ、今度はサンフランシスコに向かう。

 この時点で、タブレットのSIMカードは米T-Mobileのものに差し替えてある。

 こちらもプリペイドのSIMカードで、プランは「Pay by The Day Plans」というものだ。3ドル/日で、通話、SMSし放題、200MB/日のLTEデータ通信ができる。使わない日の課金はゼロだ。こちらもWebでのチャージが可能で、100ドルをチャージすれば、その日から1年間、電話番号が有効となる。米国出張は年に数度あり、飛行機が着陸したらすぐに使えるということを重視し、年に1度、100ドルをチャージして維持してきたが、1年で100ドルを使い切るには、ほぼ1カ月の滞在が必要だ。さすがにそれほどの滞在はないので、次の渡米は年初のCESまでないというのに、現時点でまだ46ドルも余っている。

通話もできる大画面はオールマイティ

 サンフランシスコでも特に問題を感じることはなかった。出張や旅行での外出では、ほとんどの場合、カバンを携行するので、そのカバンの中にXperia Z2 Tabletを入れておけばいい。カバンの中の439gというのは負担ゼロに限りなく近く感じる。40g重いiPad Airと比べても実感として軽い。

 そして、トラブルが起こった。

 実は、帰国前夜、交通事故に遭遇してしまったのだ。現地時間22時頃、1人での行動だったが、食事を終えてホテルに戻ってくる途中、すぐそこがホテルというところで車と接触した。日本で言う青信号で横断歩道を渡っているときに、左折してきた車にはねられたのだ。その時にも、もちろん、Xperiaを持っていた。ショルダーバッグに入れて、肌身離さず持ち歩いていた。

 相手のクルマは停まり、ドライバーが降りてきた。別のホテルの前だったこともあり、ドアマンなども、しきりと心配し、救急車を呼ぶかどうかを尋ねてくる。このケースでは車側が100%悪い。当たったとき、ドスンと鈍い音がしたのでまずいと思ったのだが、しばらくはきちんと歩けなかった。事故後10日ほどが経過した現時点で、平坦な道や上りの階段はなんとか普通にこなせるようになったが、下りの階段はまだつらい状態だ。

 周りの人たちも、ドライバー本人も、救急車を呼ぼうかとは言ってくれるのだが、警察を呼ぼうかとは言ってくれない。警察を呼んでほしいといっても、とりあってくれない。骨折している様子もなさそうなので、救急車よりも警察が先だと思い、自分で呼ぶことにした。その前に、接触した車のナンバーを撮影。免許証を提示させて、それも撮影した。

 そして、“911”に電話をした。もちろんXperiaを使ってだ。ただ、まわりが騒がしかったことや、英語のつたなさからか、状況を説明するのに手間取り、「次からはイヤフォンを携行しよう」、「100均のマイク付きイヤフォンで十分だな」などと、変なことを思いながら通話しているうちに、ホテルのドアマンがクルマを別の位置に移動するようにドライバーに伝える声が聞こえた。「まずい」と思ったその瞬間、あろうことか、クルマはそのまま走り去ってしまった。ドアマンに詰め寄っても、「俺はクルマを移動しろと言っただけだ」との一点張り。まさに、泣きっ面に蜂だ。

 そのあと、通りかかったパトカーを停め、事情を説明し、撮影したクルマのナンバーと、ドライバーの免許証の写真を見せて照合させた。データベースでクルマの持ち主と免許証本人が、パトカー内の端末で確認できたようだ。間違いないと言って、本人を見つけたら連絡するということで、名前とホテルの部屋番号を聞かれ、「Reportee Follow-Up」というドキュメントでCase Numberが発行された。だが、その日の夜はとうとう連絡がなかった。翌朝には、空港に向かうしかなかった次第だ。

 事故後、ホテルに戻って、改めて、クレジットカード付帯保険の緊急アシスタンス事務局に電話し、どうすればよいかを尋ねた。もちろんXperiaを使ってのスピーカー通話だ。

 身体の状況を聞かれ、必要なら病院を紹介すると言われた。基本的にかかった治療費、交通費などを支払うということで、日本に戻って受診する場合も、その際の費用や交通費は支払われる。ただし、治療などで帰国できない場合にも、入院の事実がなければ帰国費用などは適用外と言われた。通院ではダメなのだ。とりあえず、帰国には支障もなさそうなので、そのまま帰国するつもりを伝えた。

 ちなみに、もし、相手の補償がある場合は、保険が適用されないということなので、相手が逃げてしまったことが、この程度のケガの場合はよかったのか、悪かったのか……。相手の補償がある場合、慣れない国の慣れない言語で、さまざまな交渉をする必要があるからだ。

 なお、日本に戻って、念のために受診し、レントゲンを撮ってもらったが、骨には異常は認められず、左半身打撲で2週間程度で治るということで、ちょっと安心した。

 普段なら、現地でこんなに通話をすることはないのだが、思わぬアクシデントで、長時間の通話をすることになってしまった。もし最悪のケースで、そのまま入院ということになってしまったとしても、Xperia Z2 Tabletが手許にあれば、大きな画面でいろいろなことで重宝したに違いない。心強いパートナーであることを実感した次第だ。まさに戦友だ。

 再び成田空港に戻ってきて、出てきたスーツケースを確認したら亀裂が入っているなど、ちょっと疫病神にまとわりつかれたような出張ではあったが、なんとか日常生活に復帰している。

 そして、もちろん、Xperia Z2 Tabletは無傷だった。

(山田 祥平)