山田祥平のRe:config.sys

マイクロソフトとロジクールから放たれた2匹のマウス




 マイクロソフトとロジクール。マウスに関してそれぞれがユニークな提案をし続けているベンダーだ。今回は、期せずしてほぼ時を同じくして発表された両者の製品について見ていくことにしよう。

●スルスルとクリクリ、そしてチリチリ

 4月22日に日本マイクロソフトから発売されるのはBlueTrack Technology搭載マウス「Express mouse」で価格は1,785円、4月28日にロジクールから発売されるのは「ワイヤレスマウスM325」でこちらはオープン価格だが直販で2,980円の製品だ。

 Express mouseはワイヤード、M325がワイヤレスマウスで、Unifying技術対応の超小型レシーバ同梱だが、決してハイエンドの製品ではない。

 マウスについては、今ではホイールを持たないものを探す方が難しいくらいで、相当のローエンド製品でも搭載している。もちろん、今回の両製品ともにホイールを装備している。

 マイクロソフトのマウスはホイールがクリック感のないスルスルホイール、ロジクールの製品はクリック感のあるクリクリホイールというイメージがあるが、今回の両製品はその逆だ。このクリック感は、好みもあるし、カタログやパッケージを見ただけではわからないので製品選びを難しくしている。できるだけ製品サンプルを手にとってさわって試せるショップで購入するのが望ましい。

 Express mouseがやわらかなクリック感を備えたクリクリホイールであるのに対して、M325のホイールはちょっと特殊だ。同社では、ホイールを回転させたときのクリック感を出す機構をラチェットと呼んでいるが、この製品では一般的なマウスの3〜4倍にあたる72個のラチェットを内蔵している。このことによって、クリクリでありながらスルスルという、どちらともつかない操作感が実現されている。言葉で表現するのは難しいが、クリクリがチリチリになったというのがわかりやすいだろうか。この感触は、スルスルが好きだった人にも、クリクリが好きだった人にも違和感なく受け入れられそうだ。

 Express mouseは、ローエンドに近い製品ながら、かなりおしゃれなイメージで好感が持てる。ワイヤーが中央よりもちょっと左側から出ていること、また、そのワイヤーが、かなり華奢で細いことでデリケートな印象だ。本体色には2色あるが、ハイビスカスレッドの方は、ケーブルも同色で、これもポップな感じで好印象だ。なお、センサーは定評のあるBlueTrackで、さまざまな素材の上で安定した操作性が得られる。

 ただし、両製品とも、畳の上が苦手というのは持病のようなもので、日本の住宅事情が考慮されていない。こればかりは、なんとかしてほしいと思う。

●ホイールチルトは戻る進むとしても違和感がない

 今回の両製品ともに、ミドルクラス以上のマウスに装備されている戻るボタンや進むボタンが装備されていない。個人的には戻るボタンがないマウスは、作業効率がガタ落ちになるので避けてきた。でも、M325は、デフォルトでホイールの左右チルトに戻る、進むが割り当てられているため、ホイールを倒すだけで操作することができる。また、ホイールそのものを押し下げる操作も可能だ。ユーティリティのSetPointをダウンロードしてインストールすれば、操作に割り当てる機能を変更することもできる。

 一方、Express mouseは、USB端子に装着すると、インターネット経由でドライバをダウンロードし、それをインストールした後に、続いて、同社のマウスユーティリティであるIntelliPointがダウンロードされてインストールされる。無条件にユーティリティがインストールされることについては賛否両論あるが、わざわざサイトを探しにいかなくても、自動的にダウンロードされるユーティリティでボタン操作の際の機能を割り当てができるのは便利だ。

 ただ、Express mouseのホイールはボタンとして機能するだけで、左右にチルトするわけではない。ただ、押す意識ではなく、右にチルトする意識でもボタンが機能するので、そこに戻るを割り当ててみると、それなりに便利に使える。これならもしかしたら慣れることができるかもしれない。戻るは左に傾けるイメージが強く、右チルトでは方向が逆なので、ここは、左にチルトする意識で操作できるようになっていたら、もっとよかったと思う。

 ちなみにExpress mouseは、左右ボタンが独立しているわけではなく全体をカバーが覆うようなスタイルだ。デザイン的には悪くはないが、その実装の遊びがガタツキのように感じられれて気になるユーザーもいるかもしれない。ずっと手のひらの下にあるものなので、気になる方は気になるだろう。こんなことがあるから、マウスは実際にさわってみないと購入できない。

●ワイヤードマウスを見直す

 出掛けるときに持ち出すカバンにはマウスを忍び込ませてある。ちょっとややこしい作業をするときには、ノートPCのタッチパッドよりも、マウスを使った方が効率的であることが多いからだ。常用しているのはBluetoothマウスなのだが、これがちょっとやっかいだ。というのも、持ち出すPCが普段とは異なる場合、マウスを使おうとするとペアリングをやり直さなければならない。多くのマウスは、マルチペアリングの機能を持たず、特定のPCとペアリングしたマウスを、別のPCとペアリングすると、前のPCの存在を忘れてしまうため、PCが変わるたびにペアリングをやり直さなければならない。

 そんな面倒なことをするなら、マウスとレシーバがセットになったワイヤレスマウスを使う方が手っ取り早い。今回のM325は、ホイールの操作感も悪くなく、常用してもよさそうだと感じもした。ただ、この製品、個体差かもしれないが、マウス底面に貼り付けられた滑りをよくするためのソール樹脂の摩擦係数が多少高いようで、いつも使っているマウスパッドの上でさえ、シャラシャラと音をたてる。これは、使っているうちになめらかになって解消されていくのかもしれないが、ちょっと気になった。

 M325は、昨今のワイヤレスマウスと同様に、底面のバッテリハウスに超ミニレシーバを収納するスペースがある。レシーバは小さいので、PCにつけっぱなしにしてもOKだと同社ではアピールしているが、PCにつけっぱなしだと、別のPCを持ち出すときに不便だ。もし、でかけるときにレシーバを付け替えるのを忘れたら、マウスはただの置物と化してしまう。ただ、ロジクールのUnifying技術は、レシーバとマウスやキーボードをペアリングすることができるので、持ち出す可能性のある手持ちのPC全部にこのレシーバをつけておき、マウスを使うたびにペアリングすればいいのだが、それではBluetoothと同じで面倒だ。かといって、バッテリハウスにレシーバを入れておくと、これまた蓋をあけてレシーバを出してPCに装着という手間が必要になる。

 こういうことを考えると、出先でわずかな時間使うくらいなら、確かにケーブルは煩わしいかもしれないが、ワイヤードマウスも悪くないなと思った。ワイヤードならバスパワーで使えるので、バッテリ切れの心配もない。USB端子にプラグを差すという点では手間は変わらないし、何よりもケーブルでペアリングされていて不可分なので間違いようがない。

●そろそろ次のイノベーション、次に起こるのは何か

 世はマルチタッチの時代だ。マウスは古いデバイスかもしれない。その発明者であるダグラス・エンゲルバート博士をして「自然なものなど存在しない、ただ慣れ親しんでいるだけ」と言わせたマウスだが、もう、慣れ親しみきっている身としては、PC操作の上で欠かせないデバイスになっていて手放すことができない。ちなみにエンゲルバート博士がマウスを思いついたのは1961年だから、ちょうど2011年で半世紀になる。ロジクールのDarkfieldテクノロジも、マイクロソフトのBlueTrackテクノロジも、世に出てきてから結構な時間が経っている。そろそろ、さらなるイノベーションが起こってもよさそうな予感がする。ぜひ、期待に応えてほしいものだ。