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【詳報】グーグル、Chromebookを企業/文教向けに国内展開
~デバイスの一元管理サービスも提供
(2014/7/14 15:14)
グーグル株式会社は14日、Chrome OS搭載ノートPC「Chromebook」と、Chromebookの管理ソリューション「Chrome管理コンソール」を、国内の法人や教育機関向けに提供を開始することを発表した。
Chromebookを国内で提供するのは、日本エイサー、ASUS、デル、日本HP、東芝の5メーカー。日本エイサーが7月から、ASUSが8月、日本HPが9月からの投入を予定している。デルと東芝の提供開始時期は現時点で不明。各社の製品の具体的な仕様は発表を待つ必要があるが、今回はWi-Fi(無線LAN)搭載モデルのみで、WWAN搭載モデルの提供は予定されていない。
販路はソフトバンクテレコム株式会社とミカサ商事株式会社で、ミカサ商事は教育機関向けのみに提供。企業向けは「Chromebook for Work」、教育機関向けは「Chromebook for Education」というソリューション名となる。
企業、教育機関向けソリューションとして提供すべく、端末(Chromebook)の一元管理サービスの「Chrome管理コンソール」も提供。個々のChromebookにインストールするアプリケーションやポリシー管理をインターネット経由で行なえるサービスで、企業における管理コストや工数を大幅に削減するとしている。
なお、個人向け販売については「販売するかどうかも含めて検討中」としており、まずはパートナーを通じた販売モデルや、企業などの導入事例を生むことで、Chromebookの裾野を広げたい考えだ。
「3つのS」をコアに持つChromebook
発表会でChromebookについて解説した同社Chromeチーム シニアエンジニアリングマネージャーの及川卓也氏は、「Webアプリの利用が普及する中、ブラウザだけでなく、OS、デバイスから、Webアプリの利用に最適化したもの」とChromebookを紹介。
Chromebookで動作するWebブラウザは同社が2008年から提供を開始したChromeブラウザで、開発コンセプトとして「シンプル」、「スピード」、「セキュリティ」という「3つのS」をコアに持っている。
「シンプル」はURLと検索バーを統合した点、「スピード」はJavascriptエンジンやレンダリングの高速化や、ユーザーの体感速度向上への工夫。「セキュリティ」は自動アップデートや、悪意あるWebサイトを訪問してしまってもほかのタブやOSへ波及しないような仕組みを例に挙げている。
しかし、それを使うデバイスやOSが汎用的なもので、Web利用に最適化されたものではなかったことから、ブラウザだけでは実現できないこともあったという。そのために開発されたものがChromebookで、「汎用OSや汎用デバイスでは実現できないことを、Chrome OS、Chromebookの組み合わせで実現する」とした。
そのコンセプトはChromeブラウザと同様、「スピード」、「シンプル」、「セキュリティ」の3つ。及川氏は「あたかも文房具のように使ってもらいたい」とChromebookを表現する。
「スピード」は、電源を入れてからGmailを利用できるようになるまで10秒以内で済む点。「シンプル」はWebアプリ以外、ほかに手を入れることなく利用できる点を例に挙げた。
「セキュリティ」は、ファームウェアやOS、その上で動作するアプリが認証されたものであるかを確認して起動するベリファイドブートの機能や、データの暗号化機能を紹介。加えて、インストールしたアプリなどはアカウントと紐付けられて記録されており、すぐにリカバリできる点もメリットとして挙げている。
米国では「ビジネスノートの5分の1がChromebook」
企業/教育機関向け展開については、グーグル エンタープライズ部門マネージングディレクターの阿部伸一氏が説明を担当した。
阿部氏はまず、企業で1人当たりに利用するWebアプリケーションが平均で10アプリを超えたことや、Google Appsの導入企業数がワールドワイドで500万社を超えたといったデータを紹介。さらに、先行してChromebookが投入されている米国では、ビジネスノートPC販売数シェアの2013年の調査で、Chromebookが21%を占めたと言う。
企業/教育機関がChromebookを導入するポイントとして訴求するのは「セキュリティ」、「管理性」、「継続性」の3点。
企業には複数のユーザーがおり、1人が複数のデバイスを持つことも多い中で、集中管理をしたいというニーズや、データが個々のデバイスに散在することへのセキュリティリスクという課題を解決するために、「Chrome管理コンソール」(Chrome Management Console)を提供する。これが先のポイントの「セキュリティ」と「管理性」に相当する。
Chrome管理コンソールは、インターネット経由で全ての端末を管理するサービスで、120以上の管理ポリシーを集中管理し、個々のChromebookに適用できる。グーグルでは24時間365日のサポート体制も敷く。
個々のデバイスにできるだけデータやソフトを置かないというコンセプトもあり、米国の事例では導入から運用にかかった3年間のトータルコスト(TCO)が、従来のPCでは6,213ドル(約63万円)だったものが、Chromebookを導入したことで1,072ドル(約10万円)へ、約6分の1まで低減させられたと言う。
「継続性」については、Office文書などはChromebook上でそのまま利用できるほか、リモートアクセスや仮想化技術を利用することで、これまでのシステムを変わりなく使うことができるとした。
ChromebookとChrome管理コンソールについて、パイロットケースとして広尾高等学校の教職員と生徒数十名に事前に利用してもらった事例も紹介。個人がセットアップする手間が省け、問題発生時の復旧が簡便になったという管理性の面や、クラウドにあるデータを複数人でリアルタイムに共有して作業できるようになるといった面でメリットがあったと言う。
グーグルでは、7月30日~31日にザ・プリンス パークタワー東京で行なう「Google Atmosphere Tokyo 2014」において、ChromebookやChrome管理コンソールの展示を行なう予定となっており、ユーザーが体験することもできる。