トピック

面倒な作業こそAIに。残りの仕上げに魂を込めるタマケン流Photoshop活用術

フリーランスデザイナーのタマケン氏

 生成AIで画像を作ること自体は、もはや珍しくない。しかし、それを最終成果物として使うとなれば話は別だ。生成した画像をそのまま使うのではなく、全体を自然になじませる「後工程」にこそ、アマチュアとプロの差が表れる。

 そこで今回は、Adobe Fireflyを啓蒙しているクリエイターグループ「Adobe Firefly Rangers」のメンバーであり、10月23日には「Photoshop & Illustrator & Firefly 生成AIデザイン制作入門ガイド」の改訂版の刊行を控えているフリーランスデザイナーのタマケン氏に、生成AIをプロの仕事の成果物に活用するための実践的なワークフローについて聞いてみた。

合成画像はなぜ「浮く」のか?数時間の作業を短縮するAdobe Photoshop「調和」の実力

――ある素材を別の背景へ置いたときに、「浮いている」と感じる原因はどこにあるのでしょうか?

タマケン:たとえば、室内で明るく撮った人物写真を切り抜いて、暗めの背景にそのまま合成したら浮いてしまいます。ライティングもロケーションもまったく違うので、浮くのは当たり前なんです。

明るい室内で撮影した人物を、光の条件が異なる暗い背景へ配置した状態。被写体と背景でライティングや色味が一致していないため、人物が浮いて見える

 これまでは、色調を補正したり、ブラシで影を作ったり、ハイライトに背景の光を反映させたりしていました。この作例であれば、夕日の光が顔や髪に反映された色味でなければ、やはり浮いてしまいますね。

 合成を見ると、デザイナーの腕がよく表れます。プロがやるときれいですが、駆け出しの方がやると失敗しやすい。そうした差が出やすい部分を、Adobe Photoshopの「調和」という生成AI機能を使うことで、かなり簡単になじませられるようになりました。

――「調和」を使わない場合、従来はどんな作業を積み重ねていたのでしょうか?

タマケン:色味やコントラストを調整して、上にレイヤーを作り、背景の色をブラシで取って髪の毛の上などに重ねます。必要な部分だけに反映させ、レイヤーの描画モードや不透明度を調整して、自然になじんでいる雰囲気を手作業で作ってきました。

従来の合成では、色やコントラストを調整した上で、背景の色をブラシで人物へ重ねるなど、複数の手作業を積み重ねてなじませていた

――1枚をなじませるのに、どのくらい時間がかかっていましたか?

タマケン:サイズや内容によるので、本当にまちまちです。すごく大きなサイズで使う広告なら何時間もかけることがありますし、大きなビジュアルの中の1要素なら数分で終わることもあります。

――色以外にも、なじませるための処理はありますよね?

タマケン:素材を切り抜いて配置し、色味を補正します。この例では草むらの上に人物が座っているので、手前の草は人物より前に来ていないとおかしいですよね。配置しただけでは前後関係がおかしくなるため、手前に草を描き込んだり、草を切り抜いて合成したりします。色味以外にも、そういった加工をしてなじませるんです。

色だけでなく、前後の位置関係も合成の違和感を左右する。この例では人物の手前に草を描き足すことで、自然な奥行きを再現している

――では、今回の作例にPhotoshopの「調和」を使うとどう変わりますか?

タマケン:では、ここで「調和」を実行してみましょう。今回はわざと、コントラストや明度がまったく違う画像を用意しています。これだけ光が異なる人物と背景を合成しているのに、かなりきれいになじみます。ただ、人物が背景に溶け込みすぎて、主役として見えてこないことがあります。

これは同じ素材に「調和」を適用した結果だ。背景に合わせて人物の明るさや色味が調整されており、実行前より大幅になじんでいる

――「調和」は複数の結果を出しますが、そこからどのように選んでいますか?

タマケン:「調和」は3つのバリエーションを出してくれます。今回は黄色っぽい光と赤っぽい光があり、顔などにも反映されていますね。何回か生成して、イメージに近いものを選びます。

「調和」は3つのバリエーションを生成する。背景の光を受けた色味などがそれぞれ微妙に異なるため、制作意図に最も近いものを制作者が選ぶ

 たとえば3枚目は色もよく、背景になじんでいます。ただ、カタログで女性を目立たせたいなら、なじみすぎていますね。このような場合、人物を選択範囲で選び、レイヤーを複製して、描画モードを「スクリーン」などにします。手作業で少し明るくすると、女性を目立たせられます。

AIの結果をそのまま完成品にはしない。ここでは人物のレイヤーを複製し、描画モードなどを利用して主役だけを少し明るくしている

 人物全体ではなく顔だけを明るくしたい場合は、マスクを作ってブラシで不要な部分を消します。生成したものを自分の目で見ながら手作業で修正することで、より自然に仕上げられます。AIまかせにせず、自分の手作業を加えることで、品質の高い合成を短時間で作れるようになったと感じています。

人物全体ではなく、顔などを目立たせたい場合は、マスクを作ってブラシで顔以外の不要な部分を消して調整する

――「生成して終わり」ではなく、理想に近いバリエーションを選んでから、そこに手作業を加えて作品として成立させるわけですね。感覚的には、「調和」機能で完成度の何割くらいまで持っていけますか?

タマケン:自分の中に理想があるので、そこへ最短で近づくために最初に「調和」機能を使っています。ここで7~8割くらいまで一気に近づけてもらい、残りを手作業で10割に持っていきます。

 ものすごく大きな看板に使うようなクリエイティブだと話は変わりますが、カタログやデジタル画像なら、作業の7~8割は楽になっていると思っています。納期の短い仕事でも、節約できたぶんの時間を手作業に回せます。その時間を、さらにクオリティを上げるために使えるわけです。

――「調和」は最初から完成度が高かった機能なのでしょうか?

タマケン:「調和」は、たぶん最初に出てきたときから大きくバージョンアップしていません。最初からクオリティが高かったですね。別の機能はだんだんよくなってきたものがたくさんありますが、「調和」は最初から優れていた印象です。

――「調和」が変えるのは、主に被写体の色味ですか?

タマケン:色味だけではありません。この切り抜き画像を上に置いた状態で「調和」すると、影や地面も生成してくれます。被写体の下だけではなく、色、影、反射など、周囲に影響する部分まで一緒に生成してくれます。

 切り抜いたものだけを変えているのではなく、影や水面への反射も含めて生成してくれます。ガラスがあれば、ガラスへの反射まで作ってくれるわけです。

「調和」が調整するのは被写体の色だけではない。接地する影や周囲への反射など、背景と被写体の関係まで含めて新たに生成する

――「調和」でなじませたあと、最終成果物としては、さらにどんな調整を加えますか?

タマケン:生成したものをそのまま使わないという点では、メインビジュアルを加工したあとに、自分でタイトルや文字をレイアウトします。上にタイトルを乗せるだけでは読みにくいので、生成画像の上に薄く暗い背景を敷き、文字を見やすくします。さらに、メインの人物へ目が行くようにコントラストも調整します。

「調和」後に文字や暗い背景を加え、メインの人物からタイトル、情報へ視線が流れるように仕上げた状態。こうした細かな調整は、手作業のほうが意図通りに行ないやすい

生成して終わりではない AIと手作業を「往復」して仕上げる

――生成AIでなじませてから手作業で直すだけでなく、「AI→手作業→AI→手作業」と往復することもありますか?

タマケン:あります。たとえば、デザイン自体は自分で作り、それをもとにバリエーションを生成AIで作ります。

まずデザインや構成そのものは自分で制作。このベースを生成AIへ渡し、手作業では難しい質感表現などを追加していく

 デザインや構成は変えずに、手作業では方法が分からない、あるいは非常に時間がかかる加工に生成AIを使います。ベースのデザインは自分で作っているので、生成AIに対して懸念される「著作権を侵害しているのではないか」という使い方からは離れていると思っています。

元の構成を変えず、素材感だけをニット風へ変換した例。生成AIをデザイナーの代わりではなく、新しい表現手段として利用できる

――筆記用具を変えるように、表現方法だけをAIに変えてもらうイメージですね。

タマケン:そうです。粘土っぽくしたり、水彩風にしたり、クレヨンで描いた感じやビーズアート風にしたり、キラキラしたホログラムにしたりできます。ベースのデザインを自分で作っているので、いかにもAIらしいデザインにはなりにくいですね。

同じベースから、粘土、水彩、クレヨン、ビーズアート、ホログラムなどへ展開可能。構図を自分で作っているため、デザインの意図を残したまま表現だけを変えられる

 生成AIで表現スタイルを変えたあと、また手作業に戻ります。さらに色味を調整したい、文字を変えたいとなったら、元のデータに戻って書き換えて、もう一度生成するわけです。ただし、毎回同じ結果にはなりません。

 最初の結果が気に入っていて、その状態を保ったまま修正したいなら、画像の上からプロンプトで「冬を秋の文字に変えて」などと指示します。

気に入った生成結果を残したまま一部分だけ変更したい場合は、元データから作り直すのではなく、生成済み画像へ追加の指示を与える

 一方、これは架空の香水瓶のビジュアルです。テキスト以外は生成機能を使い、テキストだけをレイヤーで用意しています。これなら生成AIを積極的に利用しつつ、文字はあとから編集できます。

架空の香水を題材にした作例。ビジュアル部分には生成機能を使いつつ、文字は独立したレイヤーとして保持しているため、生成後も文言やレイアウトを柔軟に調整できる

――「調和」で3案が出たとき、主役と装飾では選び方も変わりますか?

タマケン:作るものによります。この例では女性を主役として使いたいので、なじませすぎず、沈みすぎていないものを選びました。

 一方、ちょっとしたモチーフを装飾として追加する場合、それが目立つと、メインの女性やタイトルに目が行かなくなります。そのようなケースでは、色味がなじんでいて、コントラストが強くなく、背景に溶け込むものを選びます。主役なら溶け込みすぎないもの、装飾ならより溶け込むものを選ぶ、という考え方です。

 今度は先ほどの画像にリスを装飾として加えてみましょう。今回はAdobe Stockから入手したリスの画像を人物の手前に配置し、「調和」を適用します。

Adobe Stockから入手したリスの画像を、そのまま背景へ配置した状態。色やコントラストが背景と合っておらず、小さな素材でも存在感が強すぎる

 このように、ただ配置しただけでは浮いている状態です。「調和」を適用すると、色味は合っていても、バリエーションによってはまだ浮いていて、主役の邪魔になります。そのため、候補の中からできるだけ溶け込むものを選びます。

 どのくらい目立たせたいかも重要です。1つのデザインの中で、不要な要素にコントラストが付くと悪目立ちして、文字が読みにくくなることもあります。目的に合わせて、自分の目でバリエーションを選び、主役やタイトルを邪魔しないように背景へなじませるわけです。

手前に配置したリスへ「調和」を適用。装飾物の場合は目立たせるのではなく、主役やタイトルを邪魔しない程度まで背景へ溶け込ませる

簡単な作業こそAIにまかせない プロが生成AIを使う「難所」とは?

――逆光、水中、上下で明るさが違う背景など、難しい条件でも「調和」は使えますか? また、どんな場面で生成AIを使うべきでしょうか?

タマケン:「調和」だけでなく、生成AI機能全般にいえることですが、難しい作業ほど使ってほしいと思います。簡単なところに生成AIを使う意味はあまりありません。自分でできる作業なら、その方が速いですし、仕上がりもコントロールしやすい。「難しい」、「時間がかかりそう」、「そもそも方法が分からない」というときに使うのが一番いいです。

 注意点は、不要な部分が目立ったり、目立たせたいものがなじみすぎたりすることです。何回も「調和」を繰り返してバリエーションを見るだけではなく、手作業で理想に近づける力も必要です。

――新しい生成AI機能が追加されたら、どのくらい試しますか?

タマケン:機能によります。SNSで使い方を発信したいので、単に操作方法を紹介するだけでなく、「こういうケースで使えるよね」というところまで伝えたいです。理想は丸1日試すことですが、予定によって少ししか試せないこともありますね。

――最近、仕事で特によく使っている生成AI関連の機能は?

タマケン:「生成塗りつぶし」です。一番最初に出た機能ですが、ずっと進化していて、デザイン制作では一番使える機能です。できることが多いんですよ。

 作ったデザインのスタイルを変えたり、選択範囲を全面に作って「夏の花と色味に変更」とプロンプトで指示したりできます。文字などを保ったまま、色味のバリエーションを良い感じに出してくれるので、最近はバリエーション出しにもかなり使っています。

 パートナーモデルも使いますし、「Adobe Firefly Image 5」という新しいモデルも、この使い方に向いている印象です。花の感じなどがかわいいと思ったら、そこからさらに自分で作り込んでいきます。

画像全体を選択し、「夏の花と色味に変更」といった指示でデザインのバリエーションを生成。文字など必要な要素を残しながら、全体の雰囲気を大きく変えられる

 たとえば、下記の作例のように、女性の画像にガラス玉のようなものを生成する場合にも、生成塗りつぶしが使えます。

既存の人物写真へガラス玉のようなオブジェクトを追加した例。素材を別途撮影・切り抜きしなくても、必要な要素をその場で生成できる

 1枚の画像をもとにスタイルを変えたり、画像全体に選択範囲を作って効果を加えたりすることもできます。これまで手作業で行なっていたような、光を反射させる難しい表現にも使えます。

光の反射や水中表現など、従来なら手作業に時間がかかる加工にも生成塗りつぶしを活用できる。タマケン氏によれば、こうした「難所」ほど生成AIを使う価値が高いという

架空の人物を「仕事」で使う AI生成素材を「成果物」として使う条件

――メインビジュアルとなる人物そのものを、生成AIでゼロから作る仕事はありますか?

タマケン:あります。クライアントワークでも「架空のモデルを作ってほしい」という依頼は多いです。FireflyやChatGPT、Nano Bananaなどを使い、条件に合う人物を生成し、三面図を作ったうえで、実際のビジュアルへ展開していきます。

――仕事で使う場合、どのような点を確認しますか?

タマケン:実写風の人物なら、既存の人物に似ていないかを確認します。キャラクターなら、似たキャラクターがいないかを自分でも確認し、クライアントにも確認してもらいます。生成後は自分でレタッチしたり、専門のレタッチャーに仕上げてもらうこともあります。

――生成AIを使えば、誰でもプロらしい成果物を作れるのでしょうか?

タマケン:そこは違うと思います。何が良くて何が悪いのか、目的を果たすデザインになっているのかを理解していないといけません。すでにできている人が、生成AIを使うことで、さらにできるようになる、という印象が強いです。「それっぽい」から一歩抜け出すには、経験や目が必要です。

Firefly、Nano Banana 2/Nano Banana Proはどう使い分ける?「新しい=最適」ではない

――PhotoshopではFireflyだけでなくパートナーモデルも利用できます。まず、Fireflyをどのように位置付けていますか?

タマケン:いろいろな生成AIサービスの中で、Fireflyは安全性を重視して設計されているので、Fireflyで完結できるのが一番いいと思っています。新しいFirefly Image 5モデルは、ほかのモデルと比べても遜色ないくらいレベルが上がり、使いやすくなっています。

――既存画像を部分的に編集するときは、モデルごとに違いがありますか?

タマケン:この人物画像をベースに変更した作例は、Nano Banana 2で生成したものです。Nano Banana 2もNano Banana Proも、生成を繰り返すと画質が劣化していきます。一方、Fireflyは画質を保ったまま加工してくれます。そこが大きな違いの一つです。

生成と編集を繰り返した際の違いを比較。タマケン氏によれば、Nano Banana 2やProは加工を重ねると画質が落ちやすい一方、Fireflyは元画像の品質を維持しやすいという

 画像全体を選択して1枚のレイヤーとして生成するだけでなく、半分だけ選択して夜にすることもできます。ただ、パートナーモデルでは位置のずれが起きやすいです。

 この位置ずれは、Photoshop上でAPI経由で使うことで起きているバグのようなもので、そのサービス自体が悪いという話ではありません。一方、Firefly Image 5モデルではずれがかなり起きにくく、部分的な選択範囲を使い、ディテールを保ったまま生成することを得意としています。

画像の一部分だけを夜へ変更した例。パートナーモデルでは元画像の位置関係がずれる場合があるのに対し、Firefly Image 5はディテールや位置関係を保った部分編集を得意とする

――Nano Banana 2とProはどう使い分けていますか?

タマケン:ゼロから何かを生成するときはNano Banana Proの方が得意だと思います。朝の光や上品なハイライトなど、細かく長いプロンプトの意図を一番よく汲んだ画像にしてくれます。Nano Banana 2では、コントラストが強めの、よくある印象の画像になりやすいですね。

ゼロからビジュアルを作る用途では、長く細かなプロンプトの意図をNano Banana Proのほうが反映しやすいという。モデルは新旧だけでなく、用途によって結果が変わる

 一方、もともとあるデザインを加工したり、文字の形を保ちながら編集したり、元画像を編集したりする場合は、Nano Banana 2の方がきれいに生成してくれる印象です。Nano Banana ProとNano Banana 2は、このように使い分けています。

――まだモデルの特性を把握していない人は、どのように比較すればよいでしょうか?

タマケン:自分なら、1回生成して終わりにはしません。同じモデルでも3回くらい生成して一番良いものを選び、プロンプトも変えます。さらに別のモデルも試して、その中から良いものを選びます。クレジットは消費しますが、1つのモデルだけで終わらせず、複数パターンを比較するのが良いと思います。そうしていると、自分に合うモデル、やりたいことに合うモデルの傾向が分かってきます。

 Photoshop内で使う画像生成は、消費するクレジットが比較的少ないです。Firefly Web版で高画質生成をすると高くなることがありますが、Photoshop内なら消費量はたかが知れています。Creative Cloud Proプランの個人ユーザーなら毎月4,000クレジット付与されるので、仕事で使っても足りることが多いです。

 モデルはどんどん新しくなり、自分がキャッチアップした情報も古くなります。複数モデルを試す癖を付けておくと、最前線についていけます。

――ここまではクオリティ、テクニック、時短の話でした。プロが使う道具として、Fireflyモデルとパートナーモデルを仕事の中で選択する線引きがあれば教えてください。

タマケン:まずクライアントに確認します。最近は「どのモデルを使ってよい案件ですか」と確認します。企業がいて、代理店がいて、自分がデザイナーとして入る場合、作りたい表現に対して「今回はMidjourneyを使いたい」などと要望を出します。それがクライアントまで伝わり、このプロジェクトでは使ってよいという承認を得てから使います。

――素朴な疑問ですが、クライアントはパートナーモデルの法的リスクまで把握しているのでしょうか?

タマケン:そこを直接、深く話すことはありません。でも、出来上がったものが危ないものではないかは、かなりチェックしています。

 ちなみに、生成AI以前から、海外キャラクターとほとんど同じものが出回ることはありました。生成AIの有無にかかわらず、作った人が何を考え、何を分析して作ったかを隅々まで確認するケースは少ないと思います。成果物を見て、何か権利を侵害していないかをチェックするという形は、かなり行なわれている印象です。炎上への懸念もあると思います。

――クリエイター自身も、学習データなどのグレーな部分を含むモデルのリスクや、案件データを読み込ませていいかなど、生成AIならではの知識を常に更新する必要がありますね。

タマケン:サービスの特性も、使うなら知っておく必要があります。「怖いからだめ」、「参照画像に設定しないで」と言われたときでも、「このサービスは、規約でアップロード画像を学習に使わないと明言しています」と説明できます。知識があることは大事です。

――タマケンさんにとって生成AIは、もう「ないと仕事ができない」ほど必須のツールですか?

タマケン:そこまでではないと思います。生成AIだけでデザインを作る方には必須かもしれませんが、自分はポイントごとに使い、そういう使い方を発信しています。「なかったら何もできない」というレベルではありません。あくまで効率を上げるためのツールで、時短に一番つながっていると思います。

「それっぽい」で終わらせない 生成AI時代の最終チェックと最初の一歩

――初心者が「それっぽいところ」で終わらせず、生成AIをコントロールするには何が必要なのでしょうか?

タマケン:なじませすぎたり、逆に目立ちすぎたりしても、それに違和感を持たずに使っていると、出てきた結果を信じてそのまま使うしかありません。基本操作や、「こう見せると見やすくなる」というデザインの基本理念が頭にないと、生成AIをうまくコントロールできません。そこを継続的に勉強すれば、いいデザインを作れるようになっていくと思います。

――これから生成AIを取り入れる人が、最初の一歩として試すなら何がおすすめですか?

タマケン:デザインをしている方なら、画像の領域が足りないために、手作業でコピーしながらうまく延ばした経験があると思います。まずは、「生成拡張」でそこを試してほしいです。そこが一番需要があり、精度も高いです。「もっと生成AIを使ってみよう」と思う入り口として一番良いと思います。

生成AIで効率化しても、最終的なクオリティを決めるのは人の判断と手作業

 生成AIの進化によって、これまで手間のかかっていた合成や加工は大きく効率化されつつある。しかし、最終的なクオリティを決めるのは、人の判断と手作業だ。生成AIをどこで使い、どこから自分の手で仕上げるのか。その見極めが、これからのクリエイターにとって重要になっていくわけだ。