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透明だけじゃない。「ROG XBOX Ally X20」の7つの進化点をチェックした

 ASUSの新型ポータブルゲーミングPC「ROG XBOX Ally X20」が10月16日に発売される。名前から分かる通り、昨年発売された「ROG XBOX Ally X」の後継機で、同社のゲーミングブランド「ROG(Republic of Gamers)」の20周年記念モデルの1つでもある。

 「ROG XBOX Ally X」との違いは、ゴールドが配色されて見た目がゴージャスになっただけではない。ただ、ぱっと見ただけでは分かりにくい違いもある。筆者が目を付けた7つのポイントとともに、どんな製品になったのかを実機を見ながらお伝えしていく。

処理能力は据え置き。では何が変わった?

 まずは「ROG XBOX Ally X20」のスペックを確認する。比較として「ROG XBOX Ally X」のスペックも見ておこう。

【表1】スペック
\ROG XBOX Ally X20ROG XBOX Ally X
CPURyzen AI Z2 Extreme(8コア16スレッド/最大5GHz)←
GPURadeonグラフィックス(内蔵)←
NPURyzen AI(50TOPS)←
メモリ24GB LPDDR5X-8000←
SSD1TB(M.2 NVMe/PCIe Gen4x4)←
ディスプレイ7.4型光沢有機EL(1,920×1,080ドット/120Hz/Corning Gorilla Glass Victus/10点マルチタッチ対応)7型光沢液晶(1,920×1,080ドット/120Hz/Corning Gorilla Glass Victus/10点マルチタッチ対応)
OSWindows 11 Home←
汎用ポートUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C←
無線機能Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.4←
有線LANなし←
電源68W USB Type-C接続ACアダプタ/80Whリチウムポリマーバッテリ65W USB Type-C接続ACアダプタ/80Whリチウムポリマーバッテリ
その他1.5W×2スピーカー、ヘッドセット端子、アレイマイク、microSD Expressカードスロットなど1.5W×2スピーカー、ヘッドセット端子、アレイマイク、microSDXCカードスロットなど
本体サイズ300×121×27.5~51.3mm290×121×27.5~50.9mm
重量約756g約715g
価格25万8,800円16万9,800円

 性能に最も大きな影響を与えるCPUは、Ryzen AI Z2 Extreme。「ROG XBOX Ally X」から据え置きである。24GBのメモリや1TBのSSDも同じだ。本機を選ぶにあたっては、処理性能の向上を期待するものではない。

 スペック上で違いが出ているのは、ディスプレイとmicroSDカードスロットの仕様あたり。違いはこれ以外にもいくつかあるので、後で詳しく説明する。

 価格は25万8,800円。「ROG XBOX Ally X」の価格は、発売当初は13万9,800円だったが、その後のメモリ高騰のあおりを受けて、現在は16万9,800円となっている。メモリの高騰が止まらない現状では仕方ないが、原因は何であれ、ユーザー目線では8万9,000円の差額に見合う価値があるかどうかが問われる。なお、その価値の1つはROGの20周年記念モデルであることだ。

ROG 20周年にちなんだブラック&ゴールドのデザイン

 では、「ROG XBOX Ally X20」が変わったところ、進化したところはどこか。

 本機をぱっと見たときの印象はずいぶん変わった。「ROG XBOX Ally X」は全面ブラックで、家庭用ゲーム機の「Xbox Series X」と揃えたようなイメージだった。「ROG XBOX Ally X20」もベースはブラックだが、半透明の素材を採用しており、内部が透けて見える。

本体前面は一部のボタンがゴールドで、ボディは半透明のブラック

 正直にいうと、筆者は今こういうシースルーの筐体は好みではない。中の部品が見えて格好いいと思う感性は、ファミコンの時代に十分堪能してしまい、今は隠すべき基板が見えてしまっていると、デザインを放棄した投げやりな姿勢だと感じてしまう。

 それでも本機のデザインは良いと思う。内部が見えるといっても、ICチップや基板はほとんど見えない。筐体の強度を出すための設計部分が、うまくデザインの一部として取り込まれており、未来感がある。そして一部のボタンに配色されたゴールドが、内部のネジやファンなどにも使われていて、それ以外はブラックに統一されている。透けさせるだけでなく、中身のカラーリングまでこだわっているのが素晴らしい。

背面は冷却ファンなどが透けて見えるが、中身もゴールドとブラックの2色に統一されている

 いきなり見た目の話を熱く語ると、中身がないのではないかと思われそうだが、やはり見た目は大切だ。高い買い物に対して見た目がチープでは所有欲が満たされない。25万円以上するゲーム機にどんなデザインをしたら納得できるかと考えたときに、本機はうまい答えにたどり着いていると思う。ここはしっかり評価したい。

有機ELで大型化・高輝度・高速化したディスプレイ

 次はスペックでも違いが明確にあったディスプレイについて。パネルが有機ELに変更され、サイズは0.4型大きくなった。サイズの違いは見比べないと分かりにくいが、いわゆる額縁部分が狭くなったぶん、見栄えも使用感も良くなっている。

 応答速度は0.2msとしている。実際に3Dゲームの画面をぐるぐると動かしてみても、残像感はほとんどない。リフレッシュレートは最大120Hzで、VRRにも対応している。またDisplayHDR True Black 1400認証を受けており、画面はかなり明るい。映像の美しさにおいて不満が出ることはないだろう。

少し大きくなったディスプレイ。上部の額縁が以前より狭くなって、見た目も良くなった

サブストレージに使えるmicroSD Express

 スペック上で違いが見えるところでもう1つ、microSD Expressに対応している。microSD Expressは、Nintendo Switch 2の追加ストレージに採用されたことで世に知れ渡った、高速アクセス対応のmicroSDカードだ。

 内蔵のM.2 NVMe SSDほど高速ではないものの、従来のmicroSDよりはるかに高速なので、ゲームのインストール先としても使える。将来的に追加ストレージとしての活用が期待できる。ただしこちらも現在は高価で、1TBだと安くても4万円前後からになる。

microSD Express対応のカードスロット。特別高速なアクセスを必要としないゲームのインストールに使えそうだ

ドリフト現象が起きにくく低消費電力のTMRセンサー

 先述のスペックに出ていない部分では、アナログスティックにTMRセンサーを採用している。流行りの磁気センサーの1つで、アナログスティックに触れていないのに入力状態になってしまう、ドリフト現象と呼ばれる問題が起こりづらい。

 アナログスティック向けの磁気センサーは、ほかにホールエフェクトセンサーがある。どちらもドリフト現象には有効なのだが、TMRセンサーは消費電力が少ないのが特徴。本機のようなポータブル機では、バッテリ持続時間で有利に働く。

 操作性に関しては、従来型のアナログスティックも含めて、センサーの違いによる操作感の違いはほぼない。本機もXBOXの純正コントローラのものと、サイズや形状、触り心地はほぼ変わらない。TMRセンサーによる高い耐久性があっても、操作性は損なわれないと思っていただければいい。

 特に本機のようなポータブルゲーミングPCでは、コントローラ部分の故障はかなり困る。コントローラだけ買い替えるわけにはいかず、本体ごと修理になってしまう。自力で修理するのも素人にはハードルが高い。そもそも壊れにくくなったという点には、長い目で見れば大きな価値がある。

TMRセンサー搭載のアナログスティック。見た目や触り心地に違いは感じられないが、耐久性は高い仕様

4方向と8方向に感触をカスタムできる十字ボタン

 操作周りでもう1つ進化したのが、十字ボタンだ。見た目は普通なのだが、本機の十字ボタンは上に引っ張り上げて、90度回転させることができる。

 筆者は最初、これで何が変わるのか分からなかったのだが、よく見ると斜め方向にある部分が変化している。元は十字ボタンと同じ高さにあったのだが、90度回転させた後は斜め方向がくぼんでいた。つまり指に当たるのが上下左右だけになり、4方向の入力が明確になる。

 逆に元の形状だと、斜め方向の入力がしやすい。斜め入力を多用する場合はこちらを使用し、RPGのコマンド入力など斜めが不要な場合は90度回転させて4方向に特化させる。スイッチ自体が変化するわけではなく、手の感触を変えて操作しやすくする仕組みだ。

 XBOX純正コントローラと比べると、本機は元々、斜め方向がカチッと入りやすい印象がある。特に同じ高さの8方向モードでは、上下左右より斜め入力の方が安定して入る。格闘ゲームで試してみたところ、斜めが入り過ぎて逆にコマンドミスが増えるように感じた。筆者は4方向モードの方が具合がよかったが、人によって好みや慣れもあるだろう。2つのタッチを簡単に切り替えられることに価値はある。

斜め部分の高さが一定の8方向モード。斜め入力が入りやすく、なめらかに回す操作ができる
斜め部分が十字ボタンより低くなっている4方向モード。斜め入力ができないわけではない

騒音を改善した冷却機構

 もう1つ、スペックで見えなかった違いとして、冷却機構がある。地味ながら、「ROG XBOX Ally X」から1年経って最も進化したのはこの冷却機構だと思う。

 本機を電源に接続した状態で、フルパワーで3Dゲームを走らせても、冷却ファンの騒音はかなり抑えられている。騒音の音量が小さめなのもあるが、高い風切り音がかなり抑えられていて、耳障りに感じにくい。

 ゲームの音を出してしまえば、ファンの騒音はまぎれてほぼ気にならない。ポータブルゲーミングPCでここまで静かなものは筆者の記憶にない。本当にちゃんとファンが排気しているのか心配になり、上部に手をかざしてみると、それなりに風量は出ている。

 背面や上部の開口部を増やすなどして、冷却能力がかなり高くなっているようだ。背面もシースルーで内部がよく見えるのだが、開口部がかなり多く、上部には広い空洞部分もある。吸気にかなり余裕があるのが、うまく働いているようだ。

背面上部にある冷却機構の部分。中央内部に空洞があり、これも放熱に役立っているらしい

持ちやすくなったグリップ

 本体形状は変わっていないように見えて、幅が10mm長くなっている。ディスプレイが大型化した分であろう。重量は約756gで、約715gだった「ROG XBOX Ally X」より41g重くなっている。画面が大きくなったり、冷却系を改良したりした影響と思われる。

 その割に、持ちやすさは改善している。グリップ部分にラバー加工が施されてフィット感が良くなったのは確実な進化だが、全体の重量バランスが良くなったように感じる。グリップ部分により重さが集まったような手ごたえで、ホールド感は間違いなく良くなった。

 初めて持ったときは「ROG XBOX Ally X」より軽くなったのかと思ったが、実際はむしろ重くなっていて驚いた。

左右のグリップ部分はラバー加工されている。よく見るとROGの文字がびっしり書かれている

XBOXモードを標準搭載したポータブルゲーミングPC

 本機について筆者が注目した点は以上だ。ここからは基本的な情報や使用感を改めてお伝えしていく。

 OSはWindows 11 Homeとなっているが、起動時にはフルスクリーンのゲームUIであるXBOXモードが開く。コントローラでゲームを選んで起動できるので、キーボードとマウスを必要としない。またデスクトップを開かない分、メモリ使用量も削減される。

本機起動後の画面。XBOXモードで起動している

 ゲームの配信ストアはMicrosoft Storeが基本になるが、Steamもプリインストールされている。Steamを起動すると、こちらもコントローラ操作を前提にしたBig Pictureモードで起動し、ゲームの選択や購入が可能だ。ストアアプリはEpic GamesやGOG GALAXYなど複数が登録されており、XBOXモードのままでインストールできるようになっている。

各社のストアアプリもXBOXモードからアクセス可能
SteamはBig Pictureモードで起動する

 デスクトップを表示するには、XBOXボタンを長押しして、画面下部にある「Windowsデスクトップ」を選ぶ。タッチ操作で使用できるほか、マウスやキーボードを接続すれば普通のPCとして使える。ただしUSB端子は電源用を含めて2つなので、無線接続機器を使ったり、USBハブを用いるなどの対応は必要だ。

デスクトップも表示できる

 参考としてベンチマークテストの結果も載せておこう。使用したのは、「PCMark 10 v2.3.2912」、「3DMark v2.32.8897」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「Cinebench 2026」。

 いずれも電源を接続した状態で、動作モードは初期設定かつ最高性能の「Turbo」を使用している。「ROG XBOX Ally X」と同じRyzen AI Z2 Extremeを搭載していることもあり、性能差はほとんどないようだ。

【表2】ベンチマークテスト結果
「PCMark 10 v2.3.2912」
PCMark 108,127
Essentials10,092
Productivity13,743
Digital Content Creation10,504
Gaming Battery Life2時間46分
「3DMark v2.32.8897 - Speed Way」
Score606
「3DMark v2.32.8897 - Steel Nomad」
Score600
「3DMark v2.32.8897 - Port Royal」
Score2,009
「3DMark v2.32.8897 - Solar Bay」
Score18,370
「3DMark v2.32.8897 - Time Spy」
Score4,108
Graphics score3,752
CPU score8,907
「3DMark v2.32.8897 - Fire Strike」
Score9,239
Graphics score10,153
Physics score24,399
Combined score3,544
「3DMark v2.32.8897 - Wild Life」
Score23,887
「3DMark v2.32.8897 - Night Raid」
Score32,686
Graphics score43,433
CPU score13,608
「3DMark v2.32.8897 - CPU Profile」
Max threads6,718
16-threads6,763
8-threads5,323
4-threads3,626
2-threads2,220
1-thread1,154
「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」
HIGH 1,920×1,08060
NORMAL 1,920×1,08080
LOW 1,920×1,080100
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
1,920×1,080ドット3,498
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット4,814
「Cinebench 2026」(10 minutes)
CPU(Multiple Threads)3,321pts
CPU(Single Core)636pts
CPU(Single Thread)459pts
MP Ratio7.23

 実際にいくつかのゲームもプレイしてみた。格闘ゲームは「ストリートファイター6」を試した。十字ボタンの入力に関しては先述の通りだが、ゲームそのものの動作はとても快適で、ボタンに対する反応の遅れや残像感も全くない。シビアな操作や長時間プレイでは、独立したコントローラの方が無理がないとは思うが、カジュアルに遊ぶ分には本機で事足りる。

 先日発売されたばかりのアクションRPG「マインクラフト ダンジョンズ 2」は、画質「高」の設定で滑らかに動いた。ただ電源ケーブルを抜いてプレイするなら、バッテリ駆動時間のために画質を落として処理負荷を下げてもいいかもしれない。

 電源接続時は35Wの「Turbo」モード、非接続時は17Wの「パフォーマンス」モードが標準設定となっていた。なお非接続時にも「Turbo」モードは選択できるが、消費電力は最大25Wに減らされている。

管理ソフト「Armoury Crate」でパフォーマンス調整が可能
電源はUSB Type-Cから取る。どちらの端子でも使用可能

使用感を追求したプレミアムハイエンド機

 XBOX純正ポータブルゲーミングPCとなった「ROG XBOX Ally X」は、最先端のCPUを採用しつつ、独特なグリップ形状など、使用感にもこだわった製品だった。「ROG XBOX Ally X20」は、数少ない不満点を徹底的につぶしてきたという印象だ。ROGの20周年記念モデルは、本機以外の製品でもコスト度外視のものが多く、本機もコスト面は目をつぶって究極の製品を目指したように感じられる。

 「ROG XBOX Ally X」は立派なハイエンドモデルだったが、「ROG XBOX Ally X20」は極上の使用感を求めたプレミアムハイエンドモデル、と見ると分かりやすい。ROG 20周年というタイミングがぴったり合った、今だからこそ出せる製品だ。決して万人向けではない、性能だけでなく使用感も最高のものが欲しいという方に向けた、尖った製品である。

極上の使用感を求める人へのプレミアムモデルになっている