Hothotレビュー

128GBの統合メモリで大型ローカルAIを動かす。RTX Spark搭載「ProArt P14」

 2026年6月のCOMPUTEX 2026に合わせて発表され、話題を呼んだNVIDIAの新プラットフォーム「RTX Spark」。それを採用した14型ノートPC「ASUS ProArt P14」が、いよいよ10月23日から順次販売を開始する。

 上位モデルはメモリ128GBという大容量で、価格も119万8,000円という超ハイエンドクラスの1台。クリエイター向けである「ProArt」シリーズとしてどんなノートPCになっているのか、チェックしてみよう。

 なお、予約受付は10月14日より開始済み。128GBモデルは23日、48GBモデル(94万9,800円)は11月中旬以降に発売する。

14型ビジネスノート風のAIワークステーション

 RTX Sparkは、AI処理を主眼に置いた、主にモバイルやポータブルなWindows PC向けに規定されたNVIDIAの新しいコンピューティングプラットフォーム。ArmベースのCPUであるNVIDIA RTX Spark N1Xに、内蔵GPUとしてNVIDIA Blackwell RTXが組み合わされている。

 Snapdragonに続くWindows on Armの新しいファミリーとして追加されたことになり、RTX Spark採用PCがメーカー各社から今後続々登場予定だ。

RTX Spark採用モデル
NVIDIA RTX Sparkを採用

 その1つである14型ノートのASUS ProArt P14は、ボディカラーとメモリ容量の違いで3モデルをラインナップする。下位はメモリ48GB、上位はメモリ128GBを搭載し、OSはWindows 11 Proとなる。

 チップは上位グレードのCPU 20コア、GPU 6144コア版で、さらに今回試用したのはメモリ128GBモデルのため、まさにハイエンドの中のハイエンド。AIノートPCとして最大級の体験が得られる1台のはずだ。

14型ノート「ASUS ProArt P14」
ASUS ProArt P14(H7407BA-SUNX1281BLP)

 ほかの装備を見ていくと、ストレージは1TB(PCIe 4.0 x4接続)、ディスプレイは2,880×1,800ドット、120HzのOLED(有機EL)でタッチ対応となっている。

 インターフェイスはType-Cポート3基がすべてUSB4(40Gbps)で、USB 3.2 Gen 2 Type-A(10Gbps)も1基用意する。HDMI出力とヘッドセット端子はノートPCとしてはオーソドックスな装備だが、2TBを超える容量にも対応するSDカードスロット(SDUC対応)を搭載しているのはクリエイター向けノートPCらしい部分だろう。

左右側面のインターフェイス配置
左側面にUSB4ポート2基にHDMI出力、ヘッドセット端子
右側面にUSB4ポート1基、Type-Aポート1基、SDUC対応カードスロット

 内蔵WebカメラはWindows Hello顔認証が利用可能。ネットワークはWi-Fi 7で有線LANは非搭載となっている。LANポートがない分USB4ポートが多いので、高速・安定通信を重視するなら10GbEのThunderbolt LANアダプタやドッキングステーションでカバーすると良さそうだ。

207万画素カメラはキー操作でオフにできる
Webカメラは207万画素
物理シャッターはないがメディアキーで電気的にオフにすることはできる

 ナノブラックのボディカラーを持つ筐体は、キーボード面も含めてしっとりとしたマット塗装で、重厚感を醸し出している。タイプ音は抑えられており、ストロークの深さもしっかり確保していて、心地よい打鍵感だ。

大型タッチパッドと静音キーボード
ギリギリまで最大化したタッチパッドと、静音設計のキーボード

 重さは約1.48kgなので軽量モデルとはいえないが、 厚み13.9~15.9mmの薄型で、「AIワークステーション」として考えれば驚異的なコンパクトさ。 専用スリーブケースも付属しており、安心して持ち運べる。

厚み13.9~15.9mmの薄型ボディ
厚みは13.9~15.9mm
ACアダプタと専用スリーブケースが付属
最大140W出力ACアダプタが付属
専用スリーブケースで持ち運び時も安心
【表】ProArt P14のスペック
ProArt P14 (H7407BA-SUNX1281BLP)
OSWindows 11 Pro 64ビット
CPUNVIDIA RTX Spark N1X (20コア)
GPUNVIDIA Blackwell RTX 6144-core GPU (CPU内蔵、6144コア)
メモリ128GB (LPDDR5X-9400)
ストレージ1TB (PCIe 4.0 x4、NVMe M.2 SSD)
ディスプレイ14型 OLED 2,880×1,800ドット (120Hz、タッチ対応)
インターフェイスUSB4 (40Gbps) 3基
USB 3.2 Gen 2 Type-A (10Gbps) 1基
SDUC/SDXC対応カードスロット
HDMI出力、ヘッドセット端子
ネットワークWi-Fi 7、Bluetooth 5.4
カメラ207万画素
セキュリティWindows Hello顔認証
スピーカー6スピーカー
バッテリ容量90Wh
バッテリ動作約9.5時間 (動画再生時) / 約16.0時間 (アイドル時)
同梱品専用スリーブケース、ACアダプタ (最大140W)
サイズ約310.7×218.9×13.9~15.9mm
重量約1.48kg
価格119万8,000円

巨大AIモデルが手元で高速動作、それが意味することとは……

  ProArt P14の一番の強みは、現時点で上位クラスのローカルAI環境を「外に持ち出せる」ことだろう。 同じくNVIDIAが提供している小型PCのDGX Spark(に似た性能)を、電源とディスプレイ付きのノートブックにしたイメージで、しかもWindowsというとっつきやすいUI上で活用できる。

WindowsのUIでローカルAIを活用
一般ユーザーにとって使いやすいUIでローカルAIを本格活用できる

 DGX SparkのようなLinux系OSのマシンでは、ターミナル(コマンドライン)操作が頻繁になるうえ、使いたいアプリを自分でソースからいちいちコンパイルしなければならない、といったパターンが珍しくない。

 しかしWindowsなら、基本的にはGUI操作。アプリはバイナリをダウンロードできてすぐに使い始められ、ビジネスからエンタメまで膨大なWindows資産をそのまま活用できる。

 では、そうしたWindowsの利点とローカルAIに適したマシンスペックが組み合わされたProArt P14はどんな使い方ができるのか。

 分かりやすい例としては、LM Studio Bionicのようなツールで簡単に、いつでもどこでもエージェンティックAIが使える、ということが挙げられるだろう。

 たとえばオープンウェイトモデルとして最近人気のQwen3.8-Flash-Nextが、ProArt P14なら(小細工なしに)すんなり導入でき、難度の高いコーディングをこなすことができる。

VRAMは約110GB
VRAM容量は約110GBとして認識
90GB超のQwen3.8-Flash-Nextを導入
サイズ90GB以上のAIモデル、Qwen3.8-Flash-Nextがすんなり使える

 3ビット量子化がなされたUnsloth版でもAIモデルのサイズは90GB以上と巨大だが、ProArt P14なら丸ごと読み込める。メモリの実使用量は60GB余りとなったものの、全体の使用率でいえばまだ半分でしかない。

メモリ使用量は60GB余りで使用率は半分
Qwen3.8-Flash-Nextを試してみると、メモリ使用量は60GB余りに

 ここで試しにたった1行「Three.jsを使って空中庭園の3D CGを作って」と指示してみると、20トークン/秒以上の速度でコーディングし、15分ほどで想像していたものに限りなく近い3Dグラフィックスを出力した。

  分厚い従来型のハイエンドゲーミングノートでも不可能な本格的かつ実用的なローカルAIによるコーディングが、ビジネスノートのサイズ感で実現できるわけだ。

1行の指示で空中庭園の3D CGを生成
プロンプト一発で空中庭園の3D空間が完成した

 これが何を意味するのか。ビジネスシーンを想定してみると、たとえば客先で商談やプレゼンをするとき、その場で即座に具体的なモックアップを作成して提案することが考えられる。

 クラウドAIでももちろん可能だが、秘密にすべきビジネス上のワードを一言もネットに流すことなく、手元のProArt P14の中で完結できてしまう、というのがポイントだ。

 もちろんコーディングに限らず、ComfyUIなどを使った画像生成も、音声認識による議事録の作成や要約も、クラウドに頼ることなく処理できる。128GBのメモリ容量があれば、それらを複数同時に並行動作させることも不可能ではない。

 また、デスクトップ操作をAIに任せるComputer Useのような機能も、ローカルに閉じた状態での実現が視野に入る。社内システムの自動操作にも制約がなくなり、部署を問わず業務効率向上につなげられるはずだ。

ゲームは動く?AIベンチマークのスコアは?

 もう1つ、Windowsノートとして気になるのは「ゲーミングPC」としてどれくらいの実力を秘めているのか、だろう。AI処理向けとはいえGPUとしては強力なことから、3Dゲームのパフォーマンスにも期待したいところ。

 なのだが、この原稿の執筆時点では、プリインストールされている標準ドライバしか利用できない状態だった(NVIDIA Appなどのインストールは失敗した)ため、本来の性能はまだ発揮できない可能性がある。

 それを踏まえたうえで、参考までにSteam版の「プラグマタ」(x64エミュレーション)を起動してみたところ、まったく問題なく動作した。DLSS 4のフレーム生成がオンの場合、レイトレーシングを含めほぼ最大限に画質を高めた状態でも描画に破綻は見られず、概ね120fps前後で描画できており、ゲーミングPCのような快適さだ。

x64エミュレーションでも120fps前後
Steam版「プラグマタ」が問題なく動作
フレームレートは120fps前後

 せっかくなのでAI性能も計測してみよう。「Procyon」のテキスト・画像生成、画像認識の各種ベンチマークを実行することができたので、筆者のデスクトップPC(NVIDIA GeForce RTX 4070)と比較するかたちにしてみた。こちらもあくまで参考値として捉えていただきたい。

テキスト生成はRTX 4070にスコアで及ばず
Procyon「AI Text Generation Benchmark」
画像生成もエミュレーション実行で低スコア
Procyon「AI Image Generation Benchmark」
画像認識もRTX 4070を下回る結果
Procyon「AI Computer Vision 2.0 Benchmark」

 ProArt P14の方が軒並みスコアが低くなっているが、これは先ほどのプラグマタ同様、Procyon自体がx64のエミュレーションで実行していることを考慮に入れる必要がある。

 また、ベンチマーク自体がGeForce RTX 4070の12GB VRAMに余裕で収まる「軽い」テストであること、同ビデオカードのメモリ帯域が500GB/s前後と高速なこと(RTX Sparkは273GB/s)も影響しているだろう。

  RTX Spark機のArm CPUでネイティブ動作可能なベンチマークが提供され、NVIDIA公式の最新ドライバも使えるようになれば、結果は大きく変わる可能性が高い。

 なお、高負荷時にはキーボード奥側がかなり熱を持つ。冷却ファンのノイズはやや低周波なので不快さは少ないが、ゲームなどのサウンドが楽しめないレベルの騒がしさにはなるので注意したい。

底面スリットから排熱、キーボード奥が熱くなる
本体底面。写真上部に見えるスリットから排熱され、高負荷時はキーボード奥側が熱くなりやすい

ノートPCの新時代が始まるようなワクワク感

 半導体不足の折、大容量メモリのハイエンドノートPCを導入するハードルはますます高くなっている。現に今回のメモリ128GB版のProArt P14も119万8,000円と、大台をやすやすと突破してしまった。

 しかし本体だけのDGX Sparkが今や同価格帯になっていることを考えると、OSがWindowsかつノートPCとして使える、という要素も加味すれば、決して高くない値段ともいえる。

 それに、真に実用的なローカルAIをいつでもどこでも使い放題になる価値は、これからのビジネスやクリエイティブの現場において無視できないものとなる、というのはProArt P14に触れると身に染みて実感することだ。

 Windowsという親しみやすいUIのおかげもあって、セールスやマーケティングの人間でも、最低限の扱い方さえ学べばローカルAIを仕事の道具にできる。

 つまりProArt P14は「クリエイター向けPC」という位置付けであるのと同時に、 RTX Sparkによって誰もが「クリエイターになれるPC」に変貌した 、といえるのではないか。ノートPCの新時代がここから始まりそうな、そんなワクワク感に身震いする。