鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第166回:5月14日~5月18日


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●キーワード


5月16日

■■ ダイジェストニュース
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digest/

JPEG2000(J2K, JP2)
 ジェイペグにせん

 JPEG委員会によって標準化された、画像の圧縮符号化技術。基本仕様を規定した「Part 1 JPEG 2000 Image Coding System」は、2000年にISOの国際規格として正式に承認され、現在は関連規格の標準化が進められている。

 JPEG(Joint Photographic Experts Group)は、ISO(International Organization for Standardization~国際標準化機構)とITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector~国際電気通信連合電気通信標準化部門)の共同プロジェクトとして発足した委員会で、インターネットやデジタルカメラの標準画像フォーマット(※1)として広く使われている。

 従来のJPEGには、可逆圧縮と非可逆圧縮とがあり、いくつかのアルゴリズムが規定されているが、一般にはDCT(Discrete Cosine Transform~離散コサイン変換)を使い、視覚的に影響の少ないデータを積極的に切り捨てることにより圧縮率を高める非可逆圧縮が用いられている。JPEG2000の最も大きな違いは、この圧縮プロセスの要であるDCTに代わり、DWT(Discrete Wavelet Transform~離散ウェーブレット変換)と呼ばれる手法を用いる点だろう。

 自然画では、隣接するピクセルの相関性が強く、この強い相関性が画像を特徴づける重要な構成要素となっている。したがって、画像の中の重要な要素とそうでない要素を識別し、不要な成分を切り捨てていけば、画質への影響を最小限に押さえながら、高い圧縮率が得られる。これがJPEG圧縮の原理であり、必要/不要をふるいにかけて圧縮しやすいデータを生成するのが、DCTやDWTである。

 DCTでは、二次元のレベル分布であるピクセル値を、周波数の分布に変換する。これ自体は可逆的な変換であり、データが圧縮されるわけではないが、画像の基本的な要素が多くの低い周波数帯で構成されているという現実から、得られた集合の低域を高い精度で、高域を低い精度で量子化。不要な高域成分を切り捨てながらデータを圧縮していく。DCTの対象が広い範囲になると、画像の相関性が低下する一方、計算量や必要なメモリは増大して行く。そこで、JPEGでは画像を8×8のブロックに分け、このブロック単位で解析処理を行なう(このためブロックの境界に歪み[ブロック歪み]が生じやすい)。

 DWTは、DCTとは違ったやり方で、二次元のレベル分布を重み付けが可能な圧縮しやすいデータに変換して行く。具体的には、ピクセルデータを高域成分と低域成分に二分して行く作業を繰り返す。例えば最初に水平方向に二分、続いてそれを垂直方向に二分すると、縦横が1/2に縮小された、4組の集合に変換される。「水平|垂直」の要素は、「低域|低域」、「低域|高域」、「高域|低域」、「高域|高域」というように、重要な成分とそうでない成分とがクラス分けされる。重要な要素である低域成分に対し、繰り返し処理を実行して行くことにより、きれいに階層化されたクラスが生成される。全ての要素をそのまま使って逆の手順をたどれば、元のデータが完全に復元されるし、DTC同様、不要な高域成分を積極的に切り捨てて行けばデータは圧縮される。データそのものが階層化されているので、必要に応じて解像度や鮮明度を変えたりすることもできるし、規格では、画像全体をブロックに分けて個別に処理する方法も規定されている。すなわち、画像の一部だけクオリティを上げるといった事も可能である。

【JPEG2000規格】
Part 1 JPEG 2000 Image Coding System (基本仕様)
Part 2 Extensions (拡張仕様)
Part 3 Motion JPEG 2000 (動画用の規格)
Part 4 Conformance (適合試験の規格)
Part 5 Reference software (参照ソフトウェア)
Part 6 Compound Image file format (複合ドキュメント用ファイルフォーマット)

ウェーブレット変換のサンプル画像
ウェーブレット変換1回ウェーブレット変換3回

※1 一般に使われているJPEGファイルは、JPEG規格で規定されていない仕様や各種情報の格納方法などを追加して、画像ファイル用にアレンジしたものである。インターネット上で使われているタイプは、C-Cube、Xing、Radiusが規定したJFIF(JPEG File Interchange Format)。デジタルカメラでは、JEIDAが規定したExif(Exchangeable Image File Format)が一般的で、ともにJPEGのデータストリーム仕様にしたがった拡張が行なわれている。一方、TIFFやFlashPixのように、独自のファイルフォーマットにJPEG圧縮されたデータを格納するタイプもある。

□JPEG/JBIGコミッティー
http://www.jpeg.org/
【参考】
□JPEG
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980715/key38.htm#JPEG
□プログレッシブJPEG
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990826/key89.htm#p_JPEG
□Motion JPEG
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971125/key8.htm#mjpeg


5月18日

■■ 東芝、211万画素単焦点の低価格デジタルカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010518/toshiba.htm

D-TFD(Digital Thin Film Diode)液晶
 ディーティーエフディーえきしょう

エプソンが'99年にリリースした、アクティブマトリックス方式の液晶パネル。

 縦横の格子状に張りめぐらした導線にタイミングに合せて信号を送り、交点の画素を点灯させて表示する液晶の表示方式をマトリックス方式という。このマトリックス方式には、導線の電位差だけで駆動する単純マトリックス方式と、個々の画素にアクティブ素子を取り付けてスイッチングするアクティブマトリックス方式という2つのタイプがある。目的の画素を確実に駆動できるアクティブマトリックス方式は、応答性に優れ、大型化に伴なう表示むらもできないため、ノートPCや液晶ディスプレイではもっぱら、このアクティブマトリックス方式の液晶パネルが使われている。

 アクティブ素子には、3端子型のトランジスタタイプと、2端子型のダイオードタイプがあり、前者を代表するのがお馴染みのTFT(Thin Film Transistor~薄膜トランジスタ)液晶である。後者を代表するのは、「金属-絶縁体-金属」という素子の構造から、MIM(Metal Insulator Metal)と呼ばれていたタイプである。MIMは、TFTよりも安価で消費電力も少ないのだが、性能面で劣るというのが一般的な評価で、ちょうど単純マトリックス方式とTFTの中庸を行く存在だった。過去の悪いイメージを払拭したいのか、最近は、単純マトリックス方式の代表であるDSTN(Dual-scan SuperTwisted Nematic)の改良型はHPA(High Performance Addressing)と呼ばれ、このMIMの改良型はTFDと呼ばれている。基本的にはMIMそのものなのだが、エプソンのD-TFDやMD-TFD(Mobile Digital-Thin Film Diode)は、基本性能の向上と持ち前の低消費電力が注目され、携帯電話をはじめとする小型携帯機器への採用が進んでいる。

【参考】
□TFT(Thin Film Transistor)液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#TFT
□DSTN(Dual-scan SuperTwisted Nematic)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981126/key56.htm#DSTN


■■ アダプテック、IDE RAIDカード2種
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010518/adaptec.htm

ライトバック(キャッシュ)(write back [cache])

 キャッシュの動作方式の1つ。または、キャッシュ上のデータをメインメモリやディスクなどに書き戻すこと。遅延書き込み。

 低速なデバイスへのアクセスを高速化するために、データをより高速なメモリに一時的に格納する手段が採られる。この様な手法をキャッシングといい、そのためのメモリをキャッシュメモリという。

 代表的なキャッシングには、メモリアクセスを高速化するメモリキャッシュ、ディスクアクセスを高速化するディスクキャッシュがある。構造的には異なる両者ではあるが、基本的なコンセプトは共通しており、

(1)デバイスからまとめてデータを読み出す
(2)デバイスにまとめてデータを書き込む
(3)使用頻度の高いデータを率先してキャッシュメモリに置く

といったやり方で遅いデバイスへのアクセス回数を減らし、パフォーマンスの向上を計っている。(1)は読み出し処理の高速化、(2)は書き込み処理の高速化、(3)はアクセスそのものの発生を押さえる働きがあるわけだ。この中の(2)に関しては、実装が複雑になるためサポートされないことがあったり、デバイス上のデータとの整合性が一時的に失われる状態が生ずるために(※1)、機能を停止できるようになっていることも多い。キャッシュに書き込むと同時にデバイス側にも反映する方式をライトスルー(write through)といい、キャッシュに書き込んだデータをまとめて転送する方式はライトバックと呼ばれている。

※1 特にディスクキャッシュの場合、書き戻す前に電源が落ちたり、メディアが取り出されてしまったりという、致命的な事態が生ずる可能性がある。キャッシングは、マシン側とドライブ側の双方で行なっていることが多いので、ライトバック仕様の場合には注意が必要だ。

【参考】
□2次キャッシュ(L2 Cache)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971209/key10.htm#L2cache
□バックサイドキャッシュ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990114/key60.htm#backside_cache
□ディスプレイキャッシュ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991202/key100.htm#display_cache

[Text by 鈴木直美]


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