昨年6月に発表されたIntel 925/915チップセットでPCI Expressが初めて導入されてから、1年強が経過した。この間にAMD/Intelの各プラットフォームともにPCI Express対応が一気に進み、チップセットが一新された。すでにチップセット単体ではいくつかレポートをお届けしているが、ここでは、これらのチップセットを一同に集め、各製品を比較していきたい。 ●ULi製チップセットの登場も控えるAthlon 64プラットフォーム では、まずはAMDのAthlon 64対応チップセットから見ていきたい。現在入手可能なSocket 939対応マザーボードに搭載されたチップセットは、 ・ATI RADEON XPRESS 200シリーズ となる。
まずは、ATIのRADEON XPRESS 200についてである。詳しくはこちらで紹介しているが、Socket 939プラットフォームにおいて唯一のグラフィック機能内蔵のチップセットである。 また、RADEON XPRESS 200にビデオカードを搭載することで、内蔵グラフィックとビデオカードを使ったマルチディスプレイ環境を作ることもできる。こうしたほかにはない訴求ポイントを持っているのが本チップセットの特徴となる。なお、RADEON XPRESS 200シリーズには、グラフィック機能を内蔵していないRADEON XPRESS 200Pもラインナップされている。 サウスブリッジはIXP400が組み合わせられ、ノースブリッジとの接続にはPCI Expressが利用されているので、例えば内部インターフェイスにPCI Expressを採用するULi製サウスブリッジなども使えるのもユニークな点である。なお、今回はサウスブリッジにはIXP400を搭載する、ATIのリファレンスマザーを利用している(写真1)。 NVIDIAのnForce4シリーズは、Athlon 64ユーザーでは、もっとも利用者が多いチップセットだろう。詳細はこちらにも記しているが、nForce4、nForce4 Ultra、nForce4 SLIに加え、現在はHyperTransport Linkを800MHz×2に制限したnForce4-4X、PCI Express x16接続のSLIに対応したnForce4 SLI X16もラインナップされている。 nForce4 Ultra/SLIに実装されているActiveArmorと呼ばれるセキュリティ機能や、nForce4 SLIにおけるNVIDIA SLIのサポートといった、多機能さが本製品のユニークな点といえる。また、このチップセットを搭載したマザーボードは各社から多数が販売されており、入手性のよさも魅力の1つに挙げられる。今回のテストでは、ASUSTeKの「A8N-SLI Deluxe」を使用している(写真2)。 VIAのK8T890は、シンプルな構成の製品である。ノースブリッジ側に20レーンのPCI Expressを実装しており、x16+x1×4に対応する。VIAからは本ノースブリッジと同時に、HD Audio/シリアルATA×4などを特徴とするVT8251がアナウンスされている。ただし、今回テストに使用したASUSTeKの「A8V-E Deluxe」(写真3)は、旧モデルのサウスブリッジとなるVT8237を搭載している。 さて、現在購入可能な製品となると上記の3つとなるが、CeBIT 2005のレポートでお届けしたとおり、ULiからは「M1695」チップセットのリリースが予定されている。今回、そのリファレンスマザーを入手することができたので、こちらもテストに含めたい。 SiSからはグラフィック非統合のSiS756、グラフィック統合型のSiS761GXなどのPCI Express対応のチップセットが発表されている。 ●各チップセットのパフォーマンス比較 それでは、各チップセットのパフォーマンスを比較していきたい。テスト環境は表1に示したとおり。HDD周りのテストで2台のHDDを接続する条件もあるが、基本的にはマザーボード以外の環境を統一している。
●CPU/アプリケーション性能 では、最初にCPUやアプリケーション実行時の性能をざっくりと見ていこう。まずは、「PCMark05」の「CPU Test」である(グラフ1、2)。このテストは基本的にはCPUの性能を見るためのものであり、当然ながら、ほぼ似たような結果に収まっている。若干ULi M1695のスコアが低いものの、BIOSレベルでチューニング可能と思われる差であり、CPUの性能を引き出すという面では、各チップセットとも大差ないことを確認できる。
次に示す4つのグラフは、いずれも実際のアプリケーションを実行するタイプのベンチマークだ。テストは「SYSMark2004」(グラフ3)、「Winstone 2004」(グラフ4)、「CineBench2003」(グラフ5)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ6)である。 CPU負荷が大きいCineBench 2003やTMPGEnc 3.0 XPressのMPEG-2やWMV9のエンコードでは、CPUが同一であるためにスコア差が小さくなっているが、そのほかのテストで小さくないスコア差を見せている。このあたりは、HDDやメモリの性能差によるものと思われるので、これから順にコンポーネント単位のテストを行なっていきたい。
●メモリ性能 まずは、メモリ性能である。「PCMark05」の「Memory Test」のうち、16MB BlockのRead/Write/Copyの結果をグラフ7に、Sandra 2005 SR2のCache & Memory Benchmarkの256MB Blockの結果をグラフ8に示している。なお、ここでは参考までにRADEON XPRESS 200で内蔵グラフィックを使った環境の結果も追加している。 ここで目立つのが、nForce4 SLIにおけるパフォーマンスの低さだ。PCMark05を見ると、特にメモリへの書き込みが影響しているようで、ほかのチップセットに比べると明らかに遅い。 ただ、こちらの結果では、チップセットはnForce4 Ultraではあるものの、RADEON XPRESS 200との比較でnForce4 Ultraのほうがメモリ性能が勝る結果を見せていた。つまり、nForce4シリーズを搭載したマザーのすべてがメモリ性能が低い傾向にあるとは言い切れない。nForce4 SLI特有の傾向なのか、ASUSTeKのBIOSのチューニングなのかは不明だが、興味深い結果である。 TMPGEnc 3.0 XPressにおけるMPEG-1エンコードの結果ではnForce4 SLIのみが低いスコアになった。動画エンコード場合、メモリ上に動画のフレームが順に展開されCPUで処理していくことになるが、MPEG-1エンコードはCPU負荷が低いため、メモリ上への展開速度が大きく影響したための結果と想像される。 RADEON XPRESS 200の内蔵グラフィック使用時は、外部ビデオカード使用時に比べ、およそ3~5%ほどスコアが低くなっているが、意外に影響は小さいという印象だ。
●HDD性能 続いてはHDDの性能をチェックしてみたい。まずは、HDD 1台で利用した場合の性能だ。テストはPCMark05のHDD Test(グラフ9)、Sandra 2005 SR2のFileSystem Benchmark(グラフ10)、Winbench99のDiskWinmark(グラフ11)、FDBENCH Version1.1(グラフ12、13)である。 全体的にnForce4 SLIの性能の良さが目に留まる。特に顕著なのがSandra 2005 SR2のBuffered Read/Writeの項である。メインメモリ上にHDDアクセスのバッファ領域を設けて転送を行なうテストだが、nForce4のドライバはこの部分の性能を高めるチューニングを行なっていることが分かる。これにより、ほかのテストにおいても好結果を見せているのだろう。
今回のテストでは、シリアルATA IIの3Gbps転送に対応したHDDを使用し、HGSTのサイトで提供されているFeature Toolを使って、3Gbps対応モードで動作させている。今回の環境で唯一3Gbps転送をサポートしているのがnForce4 SLIなので、その影響が出たと当初は考えていたのだが、RAID環境のテスト結果を見ると、そうとも言い切れない雰囲気になっている。 そのRAID環境のテストは、HDD 1台と同じテストを実施。RAID0環境時の結果をグラフ14~18、RAID1環境時の結果をグラフ19~23に示している。なお、ULi M1695のサウスブリッジであるM1567はシリアルATA×2ポートを持ち、RAID0/1もサポートしているのだが、今回のテストにおいて、そのRAID機能が正しく動作しなかった。そのため、このグラフにはULi M1695の結果が含まれていない。 さて、結果を見ると、HDD単体時には全般に渡って高い性能を発揮していたnForce4 SLIの結果が奮わないことが分かる。Buffered Read/Write性能は相変わらず高いのだが、そのほかの結果では、特にWrite性能について、ほかのチップセットに劣る部分が多い。 逆にまずまずの性能を見せているのが、K8T890だ。特にシーケンシャルアクセスにおいて安定したパフォーマンスを見せている。RADEON XPRESS 200はWinbench99のように好結果を見せるテストもあるが、ほかのテストではあまり良い結果を見せていない。特にWrite性能について他のチップセットに劣っており、この点のチューニング具合に課題を感じる結果となっている。 ●グラフィック性能 最後に、グラフィック性能を見ていきたい。ここでは、「3DMark05」(グラフ24)、「DOOM3」(グラフ25)、「AquaMark3」(グラフ26)、「3DMark03」(グラフ27)、「Unreal Tournament 2003」(グラフ28、29)の結果を示している。 結果を見ると、RADEON XPRESS 200、nForce4 SLI、K8T890の3製品は一長一短あるものの、それほど大きな差はなく横一線の傾向にある。残りのULi M1695はというと、明らかにほかのチップセットに比べて一歩劣る性能を見せている。ほかのテストでは目立ったビハインドもなく、メモリ性能では最高の成績も見せているだけに、残念な結果である。
なお、Intel編は24日に掲載予定。 □関連記事 (2005年8月23日) [Text by 多和田新也]
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