前回のAMD編に続き、IntelのLGA775プラットフォームについて検証する。こちらは、CPUベンダーであるIntel自身が数多くのチップセットをリリースしているが、サードベンダー製チップセットも増えている。現時点で入手可能な製品は、 ・ATI RADEON XPRESS 200 for Intel といったところだ。なお、今回は、テスト時点でPT880 Pro搭載マザーを入手できなかったため、ベンチマークには含めていない。 まず、ATIとNVIDIAの2製品については、基本的にAthlon 64向けにリリースされたチップセットをLGA775プラットフォーム向けにアレンジしたのみで、機能面では大きな違いがない。 ATIのRADEON XPRESS 200 for Intelは、LGA775プラットフォームでは希少な存在となりつつある、DDR400をサポートしたチップセットとなる。もちろんグラフィック機能も統合しているが、1,066MHz FSBやデュアルコアCPUをサポートしないなど、スペックではIntel 915Gの対抗となる位置付けの製品といえる。 NVIDIAのnForce4 SLI Intel Editionは、Athlon 64向けのnForce4 SLIが1チップ構成だったのに対し、2チップ構成。これは、現状Intelのアーキテクチャではノースブリッジ内にメモリコントローラを内蔵する必要があるためだ。 そのメモリコントローラがDDR2-667/533をサポートしている点も、Athlon 64向けとの違いとなっている。そのほかの特徴は、1,066MHz FSB、最大メモリ容量8GB、NVIDIA SLIをサポートする、ハイエンド向けチップセットとなる。 Intel製のチップセットについては、発表時にレポートをお届けしているので、仕様についてはIntel 925/915編、Intel 955X編、Intel 945編を、それぞれ参照していただきたい。なお、今回は内蔵グラフィックを除いてIntel 925/915のテストは割愛している。 VIAのPT880 Proは、PCI Express x16とAGPの両インターフェイスを持つのが大きな特徴となる。Athlon 64におけるULi M1695のような存在だが、PT880 Proは両インターフェイスをノースブリッジ内に統合している点で異なる。 また、VIAからはPCI Express x16+x4インターフェイスによるデュアルビデオカード環境をサポートするPT894 Pro、PCI Express x16+x1+x1インターフェイスを持つPT894もアナウンスされているが、搭載製品はまだ登場していない。 さらに、SiSからもSiS656シリーズ、SiS649シリーズといったPCI Express対応チップセットがアナウンスされているが、こちらも搭載製品が発売されていない状況で、登場が待たれる。 今回のテストについては、写真5~10のとおりのマザーボードを用意した。 ●FSB別に各チップセットを比較 それでは各チップセットのパフォーマンスを比較していきたい。環境は表2に示したとおり、800MHz/1,066MHz FSBのPentium 4を使用している以外は、Athlon 64のテスト環境と同等である。 メモリについてはDDR2 SDRAM対応チップセットについてはバッファローの「D2/667-512M」を2枚使用(写真11)。DDR2-667/533のいずれのテスト条件においても、このメモリモジュールを利用している。各動作クロックにおけるメモリパラメータは、DDR2-533時は4-4-4-12、DDR2-667時は5-5-5-15となる(画面1)。
●CPU/アプリケーション性能 では、CPUやアプリケーションの性能から順に結果を見ていきたい。まずは、PCMark05のCPU Testである(グラフ30~33)。ここはCPUに負担が大きいテストのみであり、各環境と大きなスコア差は生じていない。つまり、各環境ともCPUの性能はほぼ同一レベルまで引き出せているということが確認できる。
続いては、実際のアプリケーションを実行するタイプのベンチマークとして、「SYSMark2004」(グラフ34、35)、「Winstone 2004」(グラフ36、37)、「CineBench2003」(グラフ38、39)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ40、41)の結果を見てみたい。 一連のグラフを見て、まず目に留まる点は、RADEON XPRESS 200のスコアだ。Business Winstone 2004のように優れたスコアを出すテストはあるものの、全体に芳しくない。このチップセットは、今回のテスト対象で唯一のDDR400を使った環境ということもあり、このメモリの差が影響した模様だ。 もう1つ、意外にもIntel 945PがIntel 955Xを上回るスコアを出すテストが多い点も興味深い。Intel 955XとIntel 945Pは基本的には同じアーキテクチャとなるが、Intel 955Xにはハイエンド向けのプレミアとして、「Intel MPT(Memory Pipeline Technology)」と呼ばれるメモリ最適化機能が実装されている。この効果があるならば、Intel 955XがIntel 945Pに対して同等以上のスコアを出せるはずなのだが、結果はそうなっていない。こうした傾向が発生した理由を、コンポーネント単位のベンチマークを使って、もう少し追求してみたい。
●メモリ性能 まずはメモリ性能から見ていきたい。「PCMark05」の「Memory Test」から16MB BlockのRead/Write/Copy(グラフ42、43)。Sandra 2005 SR2のCache & Memory Benchmarkの256MB Block(グラフ44、45)を実施している。また、ここでは参考までにRADEON XPRESS 200、Intel 945Gの各内蔵グラフィック使用時のテスト結果も掲載している。 まず、RADEON XPRESS 200の結果だが、メモリへの書き込みではそれほど大きな差は見られないが、トータルで見ると、やはりDDR2-667/533との差が大きい。メモリでこれだけの性能差が発生してしまうと、やはり実際のアプリケーションにおいても影響が大きいはずで、先のベンチマーク結果の一因となったことは間違いなさそうだ。 次にIntel 955XとIntel 945Pの差だが、PCMark05では両者の差はスペックに近い傾向を見せているが、Sandra 2005 SR2の結果はIntel 945Pがかなり優秀なスコアを出している。このことは、Intel MPTが万能のものではない可能性を示唆しているといえる。 Intel MPTは(当時はテクノロジ名が付いていなかったが)Intel 925Xから導入されたもので、メモリストリーム上のデータを判別して最適化を施す技術である。つまり、Intel 875Pで採用されていた周波数の同期回路を簡略化することでメモリのレイテンシを削減するPAT(Performance Acceleration Technology )よりも、システムにおける実効性能を重視したアーキテクチャといえるのだが、反面、実行するアプリケーションによっては効果が全く出ないケースもありえる、ということのようだ。 このほかの点では、nForce4 SLIの、特に800MHz FSB時におけるメモリ性能が低めという結果が出ている。Athlon 64向けのnForce4 SLIほど目立って低い性能というわけでもないが、同一メモリを使ったIntel 955X/945Pに比べ、ややアクセス速度が遅い傾向にはあるようだ。
●HDD性能 次に、HDDの性能をチェックしてみたい。ここでは、Pentium 4 670と、メモリにDDR400またはDDR2-667を使用した環境のみの結果を示している。また、Intel 955XとIntel 945PはシリアルATAコントローラが同じICH7Rであるため、Intel 955Xの結果のみとしている。 まずは、HDD単体で利用した場合の性能として、PCMark05のHDD Test(グラフ46)、Sandra 2005 SR2のFileSystem Benchmark(グラフ47)、Winbench99のDiskWinmark(グラフ48)、FDBENCH Version1.1(グラフ49、50)の結果を示している。Intel 955Xは、AHCIドライバの有無で2パターンのテストを行なっている。 Intel 955XはFileSystem BenchmarkのBuffered Readを除いて、AHCIありの場合がすべてスコアが勝っている。NCQなどの効果が現われていることが分かる。 RADEON XPRESS 200の結果はAthlon 64向けに比べると性能が高い傾向が見られる。これはサウスブリッジに違いがあるために、まったく違う傾向になるのは当然だ。この結果によれば、IXP400を使うよりも、ULi M1573を組み合わせたほうが、より高い性能を期待できると思ってよさそうである。 nForce4 SLIについても、Athlon 64向けとは違った傾向が見て取れる。Athlon 64向けに比べると全体にやや低い傾向になっており、特にSandra 2005 SR2の結果におけるBuffered Writeの性能に伸びがない点が特に目立つのだが、FDBENCH等の結果ではReadについても性能に伸び悩みが見られる。nForce4 Intel Editionにおいては、HDDコントローラがノースブリッジからサウスブリッジに移動している。この影響で、レイテンシが増大している可能性はありそうだ。
ただし、各チップセットのRAID0における結果をグラフ50~55、RAID1における結果をグラフ56~60に示しているが、こちらの結果はnForce4 SLIもかなり高い性能を発揮することを示している。どちらかというと、RAID構築を前提としたチューニングを行なっているのではないかと想像できる。 総じて言うと、1チップセットの独壇場ということはなく、アプリケーションによって得手不得手がある印象だ。 ●グラフィック性能 では、最後にグラフィック性能を見ておきたい。まずは外部ビデオカードを接続した場合のテストとして、「3DMark05」(グラフ61)、「DOOM3」(グラフ62)、「AquaMark3」(グラフ63)、「3DMark03」(グラフ64)、「Unreal Tournament 2003」(グラフ65、66)の結果である。 ここは、ビデオカードが同じであるため大きな差はないが、若干RADEON XPRESS 200のスコアが低い傾向が見て取れる。もっとも、これはメモリアクセス性能の違いに起因するものだろう。ほかのチップセットは、ほぼ横並びである。 続いては内蔵グラフィックの性能だが、同じテストの結果をグラフ67~72に示した。ここでは、Intel 915Gの結果も含めている。なお、Intel 945G/915Gの環境において、AquaMark3のSXGA以上の解像度でエラーが発生してしまった。また、3DMark03やUnrealTournament 2003の一部環境においても同様にエラーが発生してベンチマークが実施できず、スコアを掲示できていない部分がある。両者とも同じ状況でエラーを出すことから、ドライバが原因だと思われ、安定性に欠ける印象である。 そのため、結果を取れた範囲で見ることになるが、RADEON XPRESS 200とIntel 945Gが一長一短の性能を出している点が特徴的だ。3DMark05、DOOM3、AquaMark3はRADEON XPRESS 200、ほかはIntel 945Gがそれぞれ優秀なスコアを出す。このあたりはビデオカードと同様に、どのアプリケーションに特化してドライバをチューンするかが影響していると考えていいだろう。 内蔵グラフィックも3D性能を重視する傾向が出始めており、今後もこうしたアプリケーションへの最適化がなされ、実行するアプリケーションによって性能が大きく左右される状況が進む可能性は高そうだ。 ●総評 以上のように、AMD/Intel両プラットフォーム向け各種チップセットについて、ベンチマークを測定してみた。これから分かるのは、それぞれに得手不得手があり、特にHDD周りではシングルとRAID時で性能が逆転する場合もあり、自分の用途に合わせて選択を行なう必要があるということだ。今後、BIOSやドライバのアップデートにより、上下することもあるかと思われるが、現状の参考として捉えていただければ幸いだ。 今回テストできなかった製品や、今後の新製品についても機会があれば随時検証していきたい。 □関連記事 (2005年8月24日) [Text by 多和田新也]
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