残暑お見舞い申し上げます。 まさに今年は「猛暑」という言葉どおり、殺人的な暑さだ。去年は冷夏だっただけに、なおさら身体にこたえてしまう。とはいうものの、お盆休み前になるとボクは決まって仙台に遠征する。といっても、ボクは伊達政宗の子孫でもないし、出身が仙台というわけでもないので、帰省というわけではない。ボクがこの時期、仙台まで5時間近くクルマを走らせて遠征するのは、宮城県三本木町にひまわりを撮りに行くためだ。 ボクは写真「家」ではないので、特にライフワークとして追い求めているテーマや決まった被写体があるわけではない。ただ、基本的にカラフルなものが好きで、なかでもチューリップやひまわりを撮るのが大好きだ(幼稚園児並みの感性?)。ひまわりと言えば、北海道の北竜町が有名だが、ちょっとクルマで行くには遠過ぎる。東京近郊なら木更津の花ほたるとか立川の昭和記念公園がひまわりの名所だが、確かにひまわりはたくさん咲いていることはいるのだが、背景がいまひとつで、結局、青空バックにひまわりを抜くしかないのがツライところだ。 しかし、宮城県三本木町のひまわりの丘は、その名前のとおり「丘」なので、ひまわりの真っ黄色のじゅうたんが連なり合って、引きで撮影しても実に絵になるのが魅力だ。事実かどうかは不明だが、日本第2位の規模だそうだ。 そんなわけで、ひまわり好きには1日中いても飽きない場所だったりするのだが、写真撮影にはやはり午前の早い時間がベスト。できれば午前10時前までだとひまわりの花に光がしっかりと当たり、青空も青いので、黄色と青の見事なコントラストが期待できる。正午近くになると、太陽の光がかなり真上から降り注ぐので、どうしても青空は白っぽくなるし、ひまわりは少し下を向いているので、中央の丸い部分に光が当たらなくなってしまう。それに、ほとんどのひまわりは東を向いているので、できれば午前8時半から10時くらいまでに撮影できれば理想的だ。 三本木町のひまわりの丘だけでも一見の価値はある場所だが、ちょうどこの時期、仙台では七夕祭りが開かれる。三本木町からクルマで数十分で仙台市内に行けるので、三本木町でひまわりを存分に撮影し、名物の「ひまわり愛すちゃん」を食した後に、仙台の七夕祭りを見に行く、というのが、ボクの年中行事になっている。 今年はひまわりの開花が早めで、しかも、仙台七夕祭りがちょうど土日にかかっていて、しかも早めにお盆休みに突入する人も多いことが予想されたので、仙台七夕祭りが始まる前日からクルマを北に走らせた。ひまわりと仙台七夕祭りを撮るのに、どのデジカメを持って行こうか悩んだが、この夏発売の新製品がいくつか手元にあったので、それらをゴソッとカメラバッグに詰め込んで、取っ替え引っ替え試写してきた。 コンパクトデジカメとはいえ、さすがに10+1機種でまんべんなく撮影するのは予想以上に大変で、とてもじゃないが1台ずつ作例撮りをしているような余裕はない。といって、条件を揃えて比較撮影する状況でもないので、正直な話、あまり魂のこもっていないただシャッターを切っただけのカットではあるが、せっかくなのでそれらをゴソッと一挙公開しよう。 ※編集部より 松下電器産業 LUMIX DMC-FX7(試作機) ■松下電器産業 LUMIX DMC-FX7(試作機)液晶モニターが2.5型と大きく、光学式手ブレ補正が搭載されているのが魅力。光学ファインダーは省かれているが、DISPLAYボタン長押しで液晶モニターの輝度がアップするので、晴天屋外でもしっかり視認性は確保されている。また、かんたん撮影モードでは、背面の十字ボタンを上方向に押すと、露出補正の代わりに逆光補正が一発でかかる。初心者には露出補正よりも逆光補正のほうがシンプルでわかりやすいので、これならちゃんと機能を使ってもらえそうだ(FZ3、FZ20のかんたん撮影モードにも同じく逆光補正が装備されている)。 ただ、お世辞にもバッテリの持ちはいいとはいえず、正直、予備バッテリがないと不安。バッテリーの充電器がコンパクトになったのはイイが、使い勝手を考えれば別売でもいいのでクレードル方式にしてほしかったところだ。また、手ブレ補正の効果を過信すると痛い目に遭うので、暗い場所ではしっかりカメラを構えて、そっとシャッターボタンを押すのが鉄則だ。 □製品情報 ■松下電器産業 LUMIX DMC-FZ3(試作機)高倍率ズームとはいえ、やはり普及型デジカメである以上、画質や機能よりも軽量コンパクトで低価格なのが大前提。とはいえ、従来のFZ1やFZ2の200万画素ではやはり画素数がモノ足りないし、FZ10は大きすぎて値段も高いと悩んでいた人にピッタリの高倍率ズーム機で、光学12倍ズーム全域でF2.8の明るさを維持しているのと、それなりに使いやすいワンプッシュAF(FUCUSボタン)を装備しているのがライバル機種に対するアドバンテージだ。画素数が300万画素にアップしたことで、ノイズの増加を懸念する人も多いが、ヴィーナスエンジンIIの効果か、極小画素なりにISO200にゲインアップしても実用になる画質を維持していると思う。 もちろん、魂を込めた作品作りには、もっと別の選択肢をお薦めするが、普及型デジカメにとって大切なのはとにかく撮りたいときに手元にカメラがあること。つまり、どんなに高画質のカメラでも普段気軽に持って歩けないようなデジカメでは、宝の持ち腐れということだ。 □製品情報 ■松下電器産業 LUMIX DMC-FZ20(試作機)FZ3やFZ20を使ってみて真っ先に感じるのは、従来の機種よりもEVFの表示倍率が高く、像が大きく見やすくなったこと。また、モードダイヤルにPASMの各モードが独立し、これまでのようにメニューで切り替える必要がなくなったのと、測距点が最大9点になったのも便利だ。 ただ、FZ10の400万画素で画質に不満を感じていたわけではないので、あまり500万画素になったありがたみは感じないが、FZ10で気になっていたズームテレ端の色収差が、FZ20ではヴィーナスエンジンIIの画像処理で補正され、またISO200やISO400時のカラーノイズが目立ちにくくなっている。 ライバル機種に比べ、ボディが巨大で、値段も高めだが、ボクがFZ10/FZ20を評価する最大の魅力はなんといっても、レバー押し下げ式のワンプッシュAFと、なめらかなリング操作によるマニュアルフォーカス&MFアシスト表示だ。 □製品情報 ■富士写真フイルム FinePix F810(試作機)FinePix F710の撮像素子をスーパーCCDハニカムIV SRから、HRに載せ替えたモデル。F710もF810も、16:9のワイド液晶モニターとワイドモード、32.5-130mm相当(ワイドモード時は35.5-142mm相当)の画角をカバーする光学4倍ズームを装備しているのが特徴。 ただ、16:9のワイドモードは、通常の4:3モードの上下をトリミングしただけ。画素数が2/3に減ってしまうため、ダブル画素構造のSRを搭載するF710では、最近のデジカメとしては細部描写力が見劣りするのも事実。そういう意味では、画素数の微細化をダイナミックレンジ向上ではなく、解像力向上に振り向けたHRに載せ替えたF810のほうが、ワイドモードで撮影しても解像感が低下しにくい、というメリットがある。 撮像素子としてはF610に搭載されているものと同スペックながら、基本感度をISO200からISO80に落とし、新しいノイズフィルター処理を行っているので、従来のハニカム機よりもずいぶんノイズが減っているし、マニュアルセットのホワイトバランスを搭載している数少ないFinePixだけに、結構個人的に注目していた機種だったりするのだが、レンズの色収差が多く、輝度差の大きなシーンを撮影すると色にじみが目立つのが惜しい。 □製品情報 ■富士写真フイルム FinePix F710この機種だけはこの夏発売の新機種ではないが、同じハニカムでもSRとHRで描写がどのように違うのかを比較するために持って行った。 感度の高いS画素とダイナミックレンジの広いR画素を1対にしたダブル画素構造にすることで、従来の4倍のダイナミックレンジを実現、白飛びや黒ツブレの少ない描写が得られるのがこの機種の特徴だが、残念ながらレンズの色収差が目立つので、SRが本領を発揮する輝度差の大きなシーンでは、ダイナミックレンジの広さよりも輪郭のパープルフリンジのほうが気になって仕方がない。それにダイナミックレンジが4倍といっても、わずかに白飛びが抑えられるだけで、下手をすればハイライトがカブったようなキレの悪い描写になることもある。もっと大きな撮像素子で画素数を多くし、懐の広いレンズと組み合わせれば、もっとSRの本領が発揮されるはずだ(それがFinePix S3Proだ)。 ただ、300万画素クラスのコンパクトデジカメと割り切れば、階調レンジも広く、マニュアル撮影機能も充実しているのが魅力。F810の発売で処分価格で売られていたら狙い目かも。 □製品情報 ■富士写真フイルム FinePix E510フジが作った「ちゃんと持ててちゃんと撮れる」デジカメ。単3型電池2本駆動で、28mm相当をカバーするワイドズームを装備しているのが特徴だ。上位機種のE550と外観デザインはそっくりだが、E510は1/2.5型520万画素CCDなのに対し、E550は1/1.7型有効630万画素のスーパーCCDハニカムIV HRを搭載。だったらE550のほうが魅力的かと思いきや、レンズは32.5-130mm相当(F810と同じレンズ光学系のようだ)で、まあ、従来のFinePixシリーズのなかではワイド寄りではあるが、28-91mm相当の画角をカバーし、レンズ前2.6cmまで寄れるスーパーマクロ搭載のE510と比べると、う~ん、どっちがいいのか迷ってしまう。 個人的には、スーパーCCDハニカムで最高画質を引き出そうとすると、記録画素数が倍になってしまうので、他のメディアと比べても容量あたりの単価がクソ高い大容量のxD-Picture Cardを買わなきゃいけないことを考えると、256MBカードでもそれなりの枚数が撮れるE510のほうが好みだ。 ただ、E510には連写機能がないのでAEB撮影はできないし、AFも中央1点のみと、機能的な差別化があるので、こうした機能を重視する人は要注意だ。それと1/2.5型という小さい撮像素子にシャープな像を結ばせるのは大変なのか、撮像素子の描写能力に対し、ややレンズ性能が負けている感がある。画角が広く、細部描写力が求められる分だけ、なおさらそう感じてしまうのかもしれないが…。 □製品情報 ■富士写真フイルム FinePix E550(試作機)フジが作った「ちゃんと持ててちゃんと撮れる」デジカメの上位機種。キヤノンPowerShot Aシリーズにも似たオーソドックスなスタイリングだが、電源が単3型電池2本なので、見た目よりも軽いのが特徴だ。グリップスタイルのボディにF810のレンズと撮像素子を載せたものと思われ、色収差がやや目立つ点もF810と同じ傾向だ。 E510に比べるとズームワイド端の画角は狭いが、それでも32.5mm相当の画角をカバーし、しかもテレ端は140mm相当なので、一般的な光学3倍ズームの画角を完全にカバーしている。また、撮像素子は1/1.7型有効630万画素のスーパーCCDハニカムIV HRで、基本感度がISO80と低く設定されているので、従来のFinePixシリーズのように光量が十分にある明るい場所でも不必要にISO200で撮影され、ライバル機種に比べてノイズが特別多いということはなくなった。センター固定AF/オートエリアAF/エリア選択AF(49ポイント)と測距点を選べ、コンティニュアスAFも装備、AEBやサイクル連写など連写機能も充実している。 惜しむらくは、F810には搭載されているマニュアルセットのホワイトバランスが省かれていること。この手の機能は搭載したからといってコストアップするわけでもないし、操作性がいきなり冗長でむずかしくなるわけではないので、メーカー側がユーザースキルを勝手に想定して仕様を制限しないでほしいと思う。もし、本当に初心者のことを考えるなら、逆光で自動的に内蔵フラッシュがポップアップして発光するようにしたり、初心者にはわかりづらい露出補正ではなく、ワンタッチで動作する逆光補正ボタンを付けるべきだろう。 □製品情報 ■富士写真フイルム FinePix F450/FinePix F440(試作機)
F401の大ヒットを最後に、スタイリッシュコンパクト市場で苦戦を強いられていたFinePix F400系だが、ようやく長きトンネルを抜け出した。収納時にレンズ光学系を光軸上から移動させることで、ボディのスリム化を図り、液晶モニターも2型と大型化。ピクチャークレードルも標準装備と売れ筋ポイントをしっかり押さえているのが特徴だ。バッテリーのもちもまずまずで、マクロもワイド端だけでなく、ズームも可能。歴代スクエアタイプのFinePixシリーズの中では、もっとも完成度が高いモデルだ。 ただ、惜しむらくは液晶モニター表示が暗く、晴天屋外ではかなり視認性が低下すること。今回の仙台ロケには、用品メーカーから発売されているルーペ付き液晶モニターを携行したが、こうしたアイテムを使うと結構便利だ。 F450が有効520万画素、F440が410万画素で、どちらもスーパーCCDハニカムではなく、一般的な1/2.5型のCCDが採用されていて、描写は比較的素直で好感が持てる。上位機種と下位機種で機能差を付けるメーカーも多いが、F450とF440の違いは画素数のみ。F440には、ワインレッドとホワイトのカラーバリエーションモデルも用意されていて、F450との価格差は約5,000円強。520万画素と410万画素の画質差は微々たるものなので、なにがなんでも500万画素じゃなきゃ嫌、というのでなければF440を買って、差額で少しでも大容量のxD-Picture Cardを購入するのが賢明だろう。 それにしても著作権保護機能などがなく、構造がシンプルなので安く作れるのがxD-Picture Cardの特徴だったのに、CFカードは言うに及ばず、SDメモリーカードよりも高価な現状は論外。ボクが純粋な消費者なら、デジカメ本体の魅力度が同じなら、少しでも大容量メディアが安く、他の機器にも使い回しが効くメディアを採用したデジカメを選ぶ。xD-Picture Cardを採用する富士写真フイルム、オリンパスの両社には、xD-Picture Cardの実売価格をもっと真剣に見直してほしいものだ。
□製品情報 ■ソニー Cyber-shot DSC-P150(試作機)1/1.8型ではもっとも画素数が多い720万画素CCDを搭載したモデルで、基本的なデザインやカメラとしての機能は510万画素のP100とほぼ同じだ。ただ、従来のCyber-shotは、オートレビューをONにした場合、レビューが表示されている間にシャッターボタンを押してもレビューが表示され続ける仕様で、必ず2秒程度のレビューを表示してからでないとライブビューに復帰しなかったが、P150ではレビュー表示中にシャッターボタンに触れると即座にライブビューに復帰するという、ようやく当たり前の仕様に改良された。従来のCyber-shotも、結構AFや記録スピードが速かったにもかかわらず、体感的に遅く感じるのは、このオートレビューの仕様に根本原因があったようで、P150を使ってみると実に軽快に撮影できる。 720万画素化でますます極小画素になったわけだが、やはりダイナミックレンジがかなり狭く、ひまわりの黄色い花びらがすぐに色飽和しやすい。ただ、ハイライトのつながりは悪くなく、確かに輝度差があるシーンでは白飛びするが、プリントするとメリハリが効いていて見栄えは悪くない。また、高感度撮影時のノイズもノイズリダクションの効果か、それほどザラザラにはなっておらず、画素数がアップした分だけノイズリダクションによるディテール喪失も少なくなっている。 極小画素化に歯止めがかからないのなら、いっそのこと1,200万画素まで画素数をアップしてもらって、画素数重視なら1,200万画素出力、画質重視なら水平/垂直画素混合して4画素から1画素を作り出し、色情報の水増しのない極上の300万画素出力ができるコンパクトデジカメを作ってほしいものだ。ただ、そこまで画素ピッチを細かくして、ちゃんと各画素に対し解像できるレンズが作れれば、が大前提だけどね。 □製品情報 ■コダック EasyShare LS743 Zoom デジタルカメラ オリンピック記念限定バージョン8月末日までの期間限定で、コダック直販サイト、専用電話、専用ハガキで販売されるオリンピック記念モデルで、価格は29,900円。1/2.5型400万画素CCD搭載の光学2.8倍ズーム機だ。Cyber-shot Pシリーズのようなの横長ボディで、最近のスリムコンパクトに比べればそれなりの大きさがあるが、決して大きくはない。液晶モニターも1.8型と、一時期の1.5型液晶に比べれば見やすいほうだ。電源ボタンの位置やズームレバー形状などは独特のものがあるが、写りは水準以上で、特に深みのある青空の再現はコダックならではの濃ゆさだ。電灯光照明が混ざったミックス光源下では、オートホワイトバランスが過敏に反応して少し青っぽくなってしまうケースも見られ、必要に応じてホワイトバランスを太陽光固定などに切り替える必要はあるが、コダックの色になぜか惹かれてしまうのはボクだけだろうか? バッテリは専用リチウムイオンバッテリ(実は富士写真フイルムのF401と同じタイプ)で、同梱のチャージャーで充電する仕様だが、同じく期間限定で発売されている熱転写プリンタ付きのドック「EasyShare プリンタードック」に載せれば、自動的に充電され、しかもケーブル接続なしにプリントも可能だ。 □製品情報 「七夕祭り」編はこちら
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(2004年8月11日) [Reported by 伊達淳一 ]
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