レビュー

GPUが武器となるBroadwell-K「Core i7-5775C」の実力

〜128MBのeDRAMが性能に大きく寄与

Intel Core i7-5775C

 今回は、先日ベンチマーク速報をお届けしたBroadwell-Kこと第5世代Intel Coreプロセッサについて、追加のベンチマークレポートをお届けする。なお、今回はIntel Core i7-5775Cを用いて検証を行なっている。

強力なIris Pro Graphics 6200を備えたクアッドコアCPU

 Core i7-5775Cは、14nmプロセスで製造されたBroadwellアーキテクチャ採用の4コア8スレッドCPU。DDR3L-1333/1600のデュアルチャネル対応のメモリコントローラ、統合GPUのIris Pro Graphics 6200を備え、L4キャッシュとして128MBのeDRAMを搭載する。

 CPUの定格クロックは3.3GHzで、Turbo Boostにより最大3.7GHzまで向上する。L3キャッシュは6MB、TDPは65W、対応CPUソケットはLGA1150。また、型番のサフィックスが「K」ではないが、CPU倍率でオーバークロックが可能なアンロックモデルとなっている。

 統合GPUコアであるIris Pro Graphics 6200は、48基の実行ユニット(Execution Units/EU)を備え、300MHz〜1.15GHzで動作する。Core i7-4790Kなど、Haswell世代のデスクトップ向けCPUに統合されていたIntel HD Graphics 4600の実行ユニットが20基なので、Core i7-5775CのGPUコアは従来製品の2倍以上の規模ということになる。

CPU-Z 1.72.1実行画面
【表1】Intel Core i7-5775Cの主なスペック
Core i7-5775C Core i7-4790K
製造プロセス 14nm 22nm
開発コードネーム Broadwell-K Devil's Canyon
コア数 4 4
スレッド数 8 8
CPUクロック(定格時) 3.3GHZ 4.0GHz
CPUクロック(Turbo Boost時・最大) 3.7GHz 4.4GHz
L3キャッシュ 6MB 8MB
L4キャッシュ(eDRAM) 128MB
内蔵GPUコア Iris Pro Graphics 6200 Intel HD Graphics 4600
GPU実行ユニット 48 20
GPUコアクロック(最大) 1,150MHz 1,250MHz
TDP 65W 88W
倍率アンロック
対応ソケット LGA1150 LGA1150

 製品パッケージは、従来のHaswell系Core i7プロセッサから大きな変化は見られない。付属するCPUクーラーも同等のものに見える。

Core i7-5775Cの製品パッケージ
Core i7-5775Cに付属する純正CPUクーラー

ベンチマークテスト結果

 それでは、ベンチマークテスト結果の紹介に移りたい。今回、Core i7-5775Cの比較対象には、Devil's CanyonことCore i7-4790Kを用意した。

 また、Intelの2製品とは大きな価格差があるものの、デスクトップ向け製品として強力なGPUコアを統合しているAMD製APUの最上位モデルA10-7870Kを、Iris Graphics Pro 6200の比較対象として用意した。A10-7870Kについては、3Dベンチマーク系のアプリケーションのみの比較となっている。

【表2】テスト環境
CPU Core i7-5775C
Core i7-4790K
A10-7870K(3Dベンチマークのみ)
マザーボード ASUS H97M-PLUS ASUS A88XM-PLUS
メモリ DDR3-1600 4GB×2
(9-9-9-24、1.50V)
DDR3-2133 4GB×2
(11-11-11-31、1.65V)
ストレージ Transcend TS512GSSD370(512GB/SSD)
ビデオカード 各統合GPU
グラフィックスドライバ 10.18.14.4206 14.502.1028-150420a
電源 Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
OS Windows 8.1 Pro Update(64bit)

 まずはCPU系ベンチマークテストの結果から確認していく。実施したベンチマークテストは、SiSoftware Sandra 2015 21.40(グラフ1〜3、7〜10)、CINEBENCH R15(グラフ4)、x264 FHD Benchmark 1.01(グラフ5)、Super PI(グラフ6)、PCMark 8(グラフ11)、PCMark 7(グラフ12)。

 CPUの演算性能をチェックするSandra 2015の「Processor Arithmetic」において、Core i7-5775CのスコアはCore i7-4790Kの87〜95%を記録。負けていることは確かだが、一部のスコアはクロック差を超えてCore i7-4790Kに迫っている。また、暗号化テストの「Cryptography」では、Encryption/Decryption BandwidthでCore i7-4790Kとほぼ遜色ない結果を記録した。このテストはメモリ帯域が性能に大きく影響するテストであり、おそらくはL4キャッシュとしてCPUも利用できる128MBのeDRAMが効いているものと思われる。

 そのほか、CINEBENCH R15ではCore i7-4790K比で89〜93%、x264 FHD Benchmarkは同89%、円周率の計算時間を測定するSuper PIでは113〜118%のタイムとなった。CPUとしてのCore i7-5775Cは、4.0〜4.4GHzというハイクロックで動作するCore i7-4790Kに及ばないという結果である。

【グラフ1】Sandra 2015 21.40(Processor Arithmetic)
【グラフ2】Sandra 2015 21.40(Processor Multi-Media)
【グラフ3】 Sandra 2015 21.40(Cryptography)
【グラフ4】 CINEBENCH R15
【グラフ5】 x264 FHD Benchmark 1.01
【グラフ6】 Super PI

 メモリ帯域を測定する「Memory Bandwidth」ではCore i7-4790Kと同等の結果となった。注目したいのはキャッシュの帯域を測定する「Cache Bandwidth」の結果だ。動作クロックで劣るCore i7-5775Cは、L1〜L3キャッシュ領域となる2KB〜8MBの範囲ではCore i7-4790Kの後塵を拝しているが、16MB〜64MBでは逆にCore i7-4790Kを大きく上回っている。

 この傾向は、「Cache/Memory Latency」でも確認することが可能で、同テストの16MB〜64MBの範囲ではCore i7-4790Kより低いレイテンシを記録している。この結果は、Core i7-5775CがL4キャッシュとして備える128MBのeDRAMによるものだろう。

【グラフ7】 Sandra 2015 21.40(Memory Bandwidth)
【グラフ8】 Sandra 2015 21.40(Cache Bandwidth)
【グラフ9】 Sandra 2015 21.40(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ10】 Sandra 2015 21.40(Cache/Memory Latency - nsec)

 PCMark 8では、他のテストよりOpenCLテストが少ない「WORK」ではCore i7-4790Kを下回ったものの、「HOME」では16%、「Creative」では14%の差を付けてCore i7-5775Cが優位に立っている。PCMark 7でもテストによって優劣が逆転しているが、これらの結果は統合GPUの実力差によって、Core i7-5775CがCore i7-4790KとのCPU性能差を覆したものであると考えられる。

【グラフ11】 PCMark 8
【グラフ12】 PCMark 7

 続いて、3D系のベンチマークテストの結果を紹介する。実行したベンチマークテストは、3DMark(グラフ13〜16)、3DMark 11(グラフ17)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ18)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ19)、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0(グラフ20)。

 3DMarkでは、Core i7-5775CのIris Pro Graphics 6200が、GodavariことA10-7870Kを押さえ、全ての総合スコアで最高値を記録した。Core i7-4790KのIntel HD Graphics 4600に対しては、1.5〜2倍の差を付けて圧倒しており、Iris Pro Graphics 6200の性能の高さを見せ付けた格好だ。また、3DMark 11でもCore i7-5775CはA10-7870Kを上回っている。

【グラフ13】 3DMark - Fire Strike
【グラフ14】 3DMark - Sky Diver
【グラフ15】 3DMark - Cloud Gate
【グラフ16】 3DMark - Ice Storm Extreme
【グラフ17】 3DMark 11 [Default]

 その他テストを行なった、ファイナルファンタジーXIV、MHFベンチマーク、PSO2ベンチマークのいずれも、Core i7-5775CがA10-7870Kを押さえてトップスコアを記録しており、MHFベンチマークでは1.5倍、PSO2ベンチマークに至っては2倍以上もの差をA10-7870K相手に付けている。

【グラフ18】 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
【グラフ19】 MHFベンチマーク【大討伐】 [フルスクリーン]
【グラフ20】 PSO2ベンチマーク ver 2.0 [1,920×1,080ドット、フルスクリーン]

 Core i7-5775CがA10-7870Kを圧倒したPSO2ベンチマークは、GPUのメモリ帯域がスコアに影響しやすいベンチマークテストであり、Core i7-5775Cが備える128MBのeDRAMの影響が大きいことが伺える。GPUコア自体のスペックで劣るIris Pro Graphics 6200がA10-7870Kに勝利しているのは、eDRAMの有無によるメモリ帯域の差にあると言ってもよさそうだ。

消費電力の比較

 最後は消費電力の比較結果を紹介する。消費電力は、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を使い、ベンチマークテスト実行時にPCが消費した最大電力を測定している。

【グラフ21】 システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力は3製品が26〜29Wという僅差で並んでおり、それほど大きな差はないと言える。一方、CPUベンチマークのCINEBENCH R15を実行した際の消費電力は、Core i7-5775CがCore i7-4790Kを13〜35W下回った。CPUに関してはだいぶ省電力化されていると言えるだろう。

 少々意外な結果となったのが、3D系ベンチマークを実行した際の消費電力だ。比較3製品のうち最もTDPの低いCore i7-5775C(65W)が、88WのCore i7-4790Kや95WのA10-7870Kを上回り、最も高い消費電力を記録している。

 ベンチマークスコアを見れば妥当とも言える結果だが、なぜCore i7-5775Cが最も高い消費電力を記録することになってしまったのか。単にIris Pro Graphics 6200の消費電力が大きいからなのかと言えば、それだけとは言えない。GPUに負荷を掛けるGPU-Z Render Testを実行した際の消費電力は、Core i7-4790Kの63Wに対し、Core i7-5775Cが84W。21Wの差が付いているが、3DMark実行中の最大消費電力の差ほどではない。

 ではなぜCore i7-5775CがCore i7-4790Kより大幅に高い消費電力を記録してしまったのか。それはおそらく、CPU負荷の差にあると考えられる。GPU性能ではるかに劣るCore i7-4790Kの場合、3DMarkのテストはいずれもGPU性能がボトルネックとなり、CPU側は遊んでしまっている。対してCore i7-5775CはIris Pro Graphics 6200のGPU性能によってこのボトルネックが軽減されるため、CPUの仕事が増え、結果消費電力が増加するというわけだ。

強力なGPUが武器の4コア8スレッドCPU

 以上の通り、Core i7-5775Cの性能をチェックした。Core i7-5775Cを純粋にCPUとして見た場合、その性能は最速の4コア8スレッドCPUであるCore i7-4790Kを超えるものではない。ビデオカードなどを追加して運用するのであれば、Core i7-5775CはCore i7-4790Kを置き換える存在にはなり得ない。

 Core i7-5775Cの武器は、やはりIris Pro Graphics 6200だ。128MBのeDRAMによって広いメモリ帯域を得たGPUコアの性能は、AMD最新のAPUすら凌ぐ。Core i7-5775Cの5万円を超える価格を許容できるのであれば、コンパクトさと性能の両立を追求する自作PCユーザーにとって、最上の選択肢となるのかもしれない。

(三門 修太)