レビュー

久々に登場したAMD FX新モデル「FX-8370E」

〜TDP 95Wで8コア搭載

AMD FX-8370E
AMD FX-8370

 AMDは9月中旬より、Socket AM3+向けの新CPU「FX-8370E」、「FX-8370」、「FX-8320E」の販売を開始する。販売開始に先立ち、AMD FX-8370EとAMD FX-8370をを借用する機会を得られた。久々に投入されるSocket AM3+向けAMD FXの実力をベンチマークテストでチェックしてみた。

TDP 125WのFX-8370、TDP 95WのFX-8370E

 新たに発売されるAMD FX-8370E(以下FX-8370E)とAMD FX-8370(以下FX-8370)、AMD FX-8320Eは、いずれも32nmで製造されたPiledriverアーキテクチャ採用CPUコア「Vishera」をベースにした、Socket AM3+対応の8コアCPU。CPUの製造プロセスやアーキテクチャは、既に発売されているAMD FX-8000シリーズ製品から変更は無い。

 各製品の位置付けは、FX-8370はTDP 125Wモデルの最上位製品。型番末尾にEのサフィックスが付与されたFX-8370EとAMD FX-8320EはTDP 95Wモデルで、FX-8370Eがその最上位製品となる。税別価格はFX-8370とFX-8370Eが21,980円、FX-8320Eが16,180円だ。各CPUの主な仕様については、以下の表にまとめた通り。

【表1】CPUの主な仕様
FX-8370 FX-8370E FX-8320E FX-8350
製造プロセス 32nm
開発コードネーム Vishera
コア数 8
CPUクロック(定格時) 4.0GHz 3.3GHz 3.2GHz 4.0GHz
CPUクロック(TurboCORE時/最大) 4.3GHz 4.0GHz 4.2GHz
L3キャッシュ 8MB
メモリコントローラ DDR3-1866
TDP 125W 95W 125W
倍率アンロック
対応ソケット Socket AM3+

【お詫びと訂正】初出時にメモリコントローラをDDR4対応としておりましたが、DDR3対応の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。

テスト機材

 今回のベンチマークテストでは、比較対象として既存のAMD FXシリーズから、TDP 125Wの最上位モデルだったAMD FX-8350(以下FX-8350)を用意した。

 また、機材調達の関係上、Intelの同価格帯モデルでのベンチマークテストを実施できなかったため、参考までにCore i7-4790Kのベンチマークスコアを掲載している。Core i7-4790Kは、Intelのメインストリーム向けCPUの最上位に位置する製品であり、FX-8370/8370Eの想定販売価格より1万円以上の価格差が存在する。結果を比較する場合、この価格差を考慮する必要がある点にご留意いただきたい。

【表2】テスト機材
CPU FX-8370E/FX-8370/FX-8350 Core i7-4790K
マザーボード ASUS CROSHAIR V Formula-Z ASUS MAXIMUS VII GENE
メモリ DDR3-1866 4GB×4 (10-11-10-30、1.50V) DDR3-1600 4GB×4 (9-9-9-24、1.50V)
ストレージ 120GB SSD (Intel 510 シリーズ)
ビデオカード Radeon R9 290X
グラフィックスドライバ Catalyst 14.4
電源 Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
OS Windows 8.1 Pro Update 64bit

CPU処理中心のベンチマークテスト

 まずは、CPUが処理中心のベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「Sandra 2014.SP4 20.42」(グラフ1、2、3、6、7、8、9)、「CINEBENCH R15」(グラフ4)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ5)。

 SandraのProcessorベンチマークや、CINEBENCH R15のマルチスレッドテストでは、FX-8370がFX-8350とほぼ同等のスコアを記録し、FX-8370EはTDP 125Wの両CPUより15%ほど低いスコアとなっていることが確認できる。

 FX-8370とFX-8370Eの最大動作クロックはともに4.3GHzだが、それはあくまでTurboCORE動作時の最大クロックであり、ベースクロックには4.0GHzと3.3GHzと700MHzもの開きがあり、TurboCORE動作により動作クロックが上がり切らないマルチスレッド対応アプリケーションでは、両CPUの間の性能差が拡大する。FX-8370とFX-8350の間にスコア差がほとんど存在しないのも同様の理由で、両CPUのベースクロックがともに4.0GHzなので差がつかないというわけだ。

 反対に1スレッドしか使わない処理、CINEBENCH R15の1コアテストでは、最大動作クロックがほぼ同等の3製品がきれいに横並びになっている。

【グラフ1】Sandra 2014 20.42(Processor Arithmetic)
【グラフ2】Sandra 2014 20.42(Processor Multi-Media)
【グラフ3】Sandra 2014 20.42(Cryptography)
【グラフ4】CINEBENCH R15
【グラフ5】x264 FHD Benchmark 1.01

 メモリの転送速度を測定するSandraのMemory Bandwidthでは、AMD FX各製品はほぼ横並びの結果となった。キャッシュ速度を測定しるCache Bandwidthでは、FX-8370EのみL1/L2キャッシュ領域の転送速度が他のAMD FXに劣っているが、これはキャッシュ速度がCPUの動作クロックに依存しているためで、特に不思議な結果ではない。

【グラフ6】Sandra 2014 20.42(Memory Bandwidth)
【グラフ7】Sandra 2014 20.42(Cache Bandwidth)
【グラフ8】Sandra 2014 20.42(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ9】Sandra 2014 20.42(Cache/Memory Latency - nsec)

GPU処理中心のベンチマーク

 続いて、GPU処理中心のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは、「3DMark」(グラフ10、11、12、13)、「3DMark11」(グラフ14)、「3DMark Vantage」(グラフ15)、「 MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ16)、「ファイナルファンタジーXIVベンチマーク」(グラフ17)、「PSO2ベンチマーク Ver.2.0」(グラフ18)。

 3D系のベンチマークテストでは、CPUよりもGPUコアの性能がスコアに大きな影響を与えるが、今回の検証環境ではAMDのシングルGPU最上位モデル「Radeon R9 290X」を利用しているため、CPU性能がボトルネックとなりスコアに差がついているテストが多い。AMD FX同士の比較に絞れば、FX-8370とFX-8350がほぼ同等と言えるスコアで並び、そこから10〜16%程度低いスコアをFX-8370Eが記録している。

 例外的な結果としては、マルチスレッドへの対応が進んでいるMHFベンチマークで、AMD FXのスコアがほぼ横並びの結果となり、1,920×1,080ドット時にはCore i7-4790Kのスコアを上回っている。このようにマルチスレッドへの最適化が進んでいるゲームであれば、Intel最速の4コア8スレッドCPUを逆転できる可能性はあるようだ。

【グラフ10】3DMark - Fire Strike[Default]
【グラフ11】3DMark - Sky Diver[Default]
【グラフ12】3DMark - Cloud Gate[Default]
【グラフ13】3DMark - Ice Storm Extreme[Default]
【グラフ14】3DMark11[Default]
【グラフ15】3DMark Vantage[Default]
【グラフ16】MHFベンチマーク【大討伐】[フルスクリーン]
【グラフ17】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編[フルスクリーン]
【グラフ18】PSO2ベンチマーク Ver.2.0[1,920×1,080ドット、フルスクリーン]

消費電力比較

 最後に、各CPUを搭載したシステム全体の消費電力を測定した結果を紹介する。消費電力は、各ベンチマークテスト実行中の最大消費電力をサンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」で測定した。

 アイドル時の消費電力は、TDP 125WのFX-8370とFX-8350が76Wで横並び。FX-8370Eは両CPUより6W低い70Wを記録した。もっとも低いのはCore i7-4790Kの60Wだが、CPUの製造プロセスの差や、2つのチップセットをマザーボード上に抱えていることなどを考えると、この程度の差に留めていることを褒めるべきだろう。

 ベンチマークテスト実行時の消費電力は、おおむね実行したベンチマークテストでのスコアと同じ傾向になっており、マルチスレッドに対応したCPUベンチマークであるCINEBENCH R15やx264 FHD Benchmarkでは、FX-8370EがTDP 125WのCPUより40W近く低い消費電力となっている。

 3D系のベンチマークテストはGPUの消費電力が占める割合が大きいため、AMD FXシリーズ製品はすべて400Wを超えるという結果となった。全体の消費電力から見ると大きな差は無いが、それでもFX-8370Eが比較した残り2つのAMD FXより若干低めの消費電力を記録している。

【グラフ19】システム全体の消費電力

Socket AM3+ユーザー向けのアップグレードパス

 Socket AM3+には、性能を求めるユーザー向けのハイエンドモデルとして、TDP 220WのAMD FX-9590とAMD FX-9370が存在している。ただし、これらのCPUはTDP 220Wという強烈な発熱と消費電力ゆえ、対応していないSocket AM3+マザーボードが多いのが現状だ。このため、既にSocket AM3+環境を所有しているユーザーのアップグレードパスとして、FX-8370とFX-8370Eはより現実的な選択肢となるだろう。

 ただ、今回実施したベンチマークテストの結果から、FX-8370がFX-8350に対して明確なアドバンテージを持っていないことが分かる。TDP 125Wモデルの最上位モデルとなるFX-8370だが、FX-8350を既に使っているユーザーがFX-8370に乗り換えるメリットは極めて薄い。従って、6コア以下のAMD FXシリーズを使っているユーザーにとってのアップグレードパスと言える。

 FX-8370Eに関しては、TDP 95Wという発熱と消費電力の低さが魅力となる。マルチスレッドでの性能はTDP 125Wモデルに敵わないが、AMD FXシリーズの8コアCPUをなるべく省電力で利用したいのであれば、こちらを選ぶことになりそうだ。

(三門 修太)