レビュー

まったく降ってくる気配がないAndroid 7.0をNexus 5Xに無理矢理入れてみた

Nexus 5XをファクトリイメージでAndroid 7.0 Nougatに強制アップグレード

 既に報じた通り、世代的に新しいNexusシリーズには最新OSのAndroid 7.0 Nougatの提供が始まっている(記事『Android 7.0こと「Nougat」がNexusに降臨』へのリンク)。筆者はNexus 5Xユーザーなので早く降って来ないかなと毎日3回くらいアップデートをチェックするほど楽しみにしていたわけだが、いっこうに降ってくる気配がない。

 「今安定して使えているOSをわざわざ急いで変える必要なんかないでしょ」と考える人は多いと思うが、筆者はことOSやソフトに関しては例え問題があることが分かっていても、わくわくする気持ちが勝り、インストールしてみたくなる性分だ。なのでWindows系もMac系も新しいものが提供されたら即座にアップグレードしてきた。Macなんか大抵プリンタが使えなくなるものだが、それはそれで刺激があって楽しい。

 で、Nexus 5Xだ。SDカードスロットが使えないNexus端末をわざわざ購入したのはOSのアップグレードが確実であり、なおかつほかのスマートフォンメーカーよりも最速で新OSが提供されるからなわけで、早いとこAndroid 7.0 Nougatで遊びたいのである。

 というわけで、Nexus 5XのAndroid 7.0用ファクトリイメージが開発者向けサイトにアップロードされたので、ここではファクトリイメージから強引にOSをAndroid 7.0にアップグレードしてみたい。アップグレード対象のNexus端末を持っており、OTA(Over The Air)が待ちきれないという方の参考になれば幸いだ。なお、これらの作業は保証が受けられない自己責任となるので注意して欲しい。

ファクトリイメージのダウンロード

 ファクトリイメージは上述のサイトにアップロードされている。自分の使っている端末名を探し、Versionが「7」のものファイルをダウンロードすればいい。筆者はNexus 5Xなので「bullhead-nrd90m-factory-61495c8b.zip」をダウンロードした。

 ダウンロードが終わったらzipファイルを解凍しておく。後でコマンドラインからパスを指定するので、分かりやすい場所に移動しておくといいだろう。

ファクトリイメージが上げられている開発者向けサイトのダウンロードページ
ダウンロードしたイメージファイルはzip形式なので、任意の場所に解凍しておく

Android Studioのコマンドラインツールのダウンロード

 ファクトリイメージを書き込むにはPCからAndroidにコマンドラインでアクセスできるようにする必要がある。そのため、Androidの開発者向けサイトで手に入れられる「Android Studio」を入手しなければならない(ダウンロードページへのリンク)。

 ソフトウェア開発を行なう必要がない場合は、Android Studio自体でなく、コマンドラインツールのみを入手すればいい。同ページの下の方に「コマンドラインツールのみ入手する」という見出しがあるので、そこからWindows/Mac OS X/Linux用のいずれかのファイルをダウンロードする。

Android Studioのコマンドラインツールをダウンロードする(リンク)

Android SDK Managerのインストール

 コマンドラインツールを手に入れたら、インストールしよう(ここでインストールされるのは「Android SDK Manager」であり、コマンドラインツールはその後でインストールすることになる)。圧縮ファイルを解凍し、セットアップファイルを叩いてウィザードを起動すればいいだけだが、インストール先によってはトラブルが起きる可能性がある。

 筆者もそうだったが、アプリのインストール先として定番の「Program Filesフォルダ」にインストールしてしまうと、アクセス権限の問題で、この後のコマンドラインツールのインストールに失敗してしまう。フォルダのプロパティの設定を変更して対応させることもできるようだが、インストール先を変えた方が楽だろう。筆者はCドライブの直下にインストールして事なきを得た。

ダウンロードしたAndroid SDK Managerのインストーラーを実行
インストール先が「Program Filesフォルダ」だとコマンドラインツールがインストールできない場合があるので注意

コマンドラインツールのインストール

 Android SDK Managerのインストールが終わったら早速実行する。Android SDK ManagerはAndroid SDK用ツールのインストーラであり、この中から必要なものを選択してインストールを行なえばいい。

 コマンドラインツールとして必要なのは以下ものだ。

  • Android SDK Tools
  • Android SDK Platform-tools
  • Google USB Driver

 これらにチェックを入れ、ほかの項目にチェックが入っていたらオフにしていい。

「Android SDK Tools」と「Android SDK Platform-tools」にチェック
「Google USB Driver」にもチェックを入れる。ほかはオフにしていい
コマンドラインツールのインストールを行なう
Android SDK Managerのインストール先が「Program Filesフォルダ」だった場合、このエラーが出る可能性がある

コマンドプロンプトでコマンドラインツールのコマンドを実行できるようにするパスを通す

 コマンドラインツールは、インストールしたドライブの以下のフォルダにある(ここではCドライブの直下にインストールしている)。

  • C:\Android\android-sdk\tools
  • C:\Android\android-sdk\platform-tools

 コマンドプロンプトからここに収録してあるコマンドラインツールを使用するために「環境変数」を変えてパスを通す。環境変数にアクセスするには「コントロールパネル」→「システム」→「システムの詳細設定」で立ち上げた「システムのプロパティ」ダイアログ上にあり、下の方にある「環境変数」をクリックすればいい。

 環境変数のダイアログが出たら、ユーザー環境変数の「Path」を編集する。ここでは既に以下のように書かれているので、

%USERPROFILE%\AppData\Local\Microsoft\WindowsApps;

この文字列は消さずにコマンドラインツールが置いてある2つのパスを「変数値」に書き加える。なので、ここでは以下のようにする。

%USERPROFILE%\AppData\Local\Microsoft\WindowsApps;C:\Android\android-sdk\tools;C:\Android\android-sdk\platform-tools;

 これでコマンドプロンプト上からコマンドラインツールが使える。なお、コマンドプロンプト上で「cd C:\Android\android-sdk\platform-tools」と入力してカレントフォルダを変えれば、環境変数を変えなくてもコマンドラインツールを使うことができる。

「システムのプロパティ」から「環境変数」を選択
ユーザー環境変数にある「Path」を「編集する」
「変数値」にパスを書き加える

Nexusを開発者モードにする

 次に、Nexusの開発者モードを有効にする。Nexsu 5Xの場合は、「設定」→「端末情報」を押し、画面最下部の「ビルド番号」が見えるようにする。そして「ビルド番号」を数回タップして「これでデベロッパーになりました!」といった表示が出れば成功だ。前の画面に戻ると「開発者向けオプション」という項目が追加されているはずだ。

 「開発者向けオプション」を開こう。ここでは以下の項目を有効にする必要がある。

  • USBデバッグ
  • OEMロック解除

 USBデバッグを有効にすると、USBでWindowsなどに繋いだ際にデバッグモードに入れるようになる。OEMロック解除に関しては、これをしておかないと後でブートローダを起動した時に「DEVICE STATE」のロックを解除できず、イメージの書き込みができない。

ビルド番号を何度かタップして開発者モードを表示させる
「設定」に戻ると、項目に「開発者向けオプション」が追加されている
開発者向けオプションで「USBデバッグ」と「OEMロック解除」を有効化する
許可するか聞かれるので「OK」をタップ

コマンドプロンプトからNexusにアクセスする

 「USBデバッグ」と「OEMロック解除」を有効化したら、USBでPCと接続しよう。これらをオンにしているとステータスバーにドロイドくんのアイコンが表示される。また、接続時に「USBデバッグを許可しますか?」Nexusに聞かれるので「OK」をクリックする。

 [Windows]+[R]キーを押すか、スタートボタン横の検索ボックス(Windows 10の場合)に「cmd」と入力して、コマンドプロンプトを立ち上げよう。まずはNexusがコマンドプロンプト上で扱えるか確認するために以下のコマンドを入力する。

adb devices

 この時に固有の数字およびアルファベットの端末識別IDが表示されれば問題ない。

 続けて次のコマンドを入力し、ブートローダを立ち上げる。

adb reboot bootloader

 このコマンドを打つと、Nexus側の表示が変わったことに気付くはずだ。

ブートローダの画面

 そして、以下を入力する。筆者の場合、事前にOEMロック解除をしていなかったのでエラーが出て先に進まなくなってしまった。

fastboot flashing unlock(またはfastboot oem unlock)

 コマンドが通ったら「Unlock bootloader?」と書かれた画面が表示される。ボリュームボタンでカーソルを「Yes」に移動し、電源ボタンを押して決定。これでブートローダがアンロックされ、Android 7.0のイメージを書き込めるようになった。

「fastboot flashing unlock」を入力してブートローダ(DEVICE STATE)をアンロックする必要がある
ボリュームボタンでカーソル移動。電源ボタンで決定。「Yes」を押す
これでブートローダがアンロックされた

Android 7.0 Nougatのイメージを書き込む

 コマンドプロンプトからダウンロードし展開しておいたフォルダに移動しよう。ここではCドライブのAndroidフォルダに展開しておいたので、以下のように入力する。

cd C:\Android\bullhead-nrd90m

 コマンドプロンプトからカレントフォルダの指定が変わったのを確認できたら、いよいよAndroid 7.0 Nougatイメージの書き込みだ。覚悟ができたら、次のコマンドを入力しよう。

flash-all

 ちなみに、イメージの書き込みにはNexus 5Xの場合で数分間を要した。お約束だが、書き込み中はPCやスマートフォンの電源を落としたりしてはいけない。

イメージ書き込み中の画面

 書き込みが終了するとコマンドプロンプト上に「Press any key to exit…」の文字が表示される。コマンドプロンプトは閉じてしまっていい。Nexus側は特に何もせずに再起動が始まったように記憶している。

 Nexus 5Xいつもの起動画面が出てくるので本当に書き込みできたのか一瞬疑念を抱くが、Androidが立ち上がると初期設定画面が始まるので書き込みは問題なく行なえていた。

 途中で設定を復元するか問われるので、前のアプリ環境を使いたいなら復元を選ぼう……と言いたいところだが、この後にアンロックしたブートローダを再度ロックする必要があり、端末がまた初期化されるため、復元するを選ばなくてもいい。

 Androidが立ち上がったら端末情報からAndroidのバージョンを確認。「7.0」と書かれているはずだ。

バージョンが7.0になっていた

 無事にAndroid 7.0になっているのが分かったら、再度ブートローダをロックする必要がある。上でやってきたように開発者モードなどを有効にして、コマンドプロンプトで以下のコマンドを打ち込もう。

adb reboot bootloader
fastboot flashing lock(またはfastboot oem lock)

 また初期設定が始まるので、この時に端末の復元を行なえばいい。これでインストールしていたアプリが新たにインストールされる。なお、Nexusに入っていた写真や音楽ファイルは完全に消え去っていた。

Android 7.0の新機能「マルチウィンドウ」を試す

 さて、無事にAndroid 7.0がインストールできたので、早速その新機能を使ってみたい。筆者が特に気になっていたアプリを2分割表示できる「マルチウィンドウ」だ。

 マルチウィンドウを使うには、ホームボタンの右にあるウィンドウなどを切り替えるための四角いボタンを長押しすればいい。既に何かのアプリを開いていた場合は、分割表示するもう1つのアプリを選ぶことになる。なお、筆者の端末ではホーム画面が出ている状態で長押ししても有効にならなかったので、あらかじめアプリを開いておく必要があるようだ。マルチウィンドウを解除するには同じボタンを長押しする。

 マルチウィンドウでは画面下にYouTubeの動画を表示しながら、上の画面でブラウジングするといった使い方が可能だ。縦画面だけでなく、横画面モードでもマルチウィンドウは利用でき、ウィンドウの境界線位置はある程度調整ができる。分割可能なのはアプリ単位なので、Chrome上の複数のタブを並べて表示するといったことはできない。また、Pokémon GOは分割表示に対応しておらず、ほとんどのゲームアプリはこの機能が使えないと思われる。

マルチウィンドウ状態。上にChrome、下にYouTubeアプリを表示している
分割アプリの選択モード。上の画面は固定で下を切り替えるようだ
横画面表示

 このほか気になったのは、ソフトウェアキーボードを出すとその分、画面が狭まってしまうことだ。スマートフォン程度のサイズの場合は何かを読みながらテキストエディタに書き込むという作業には向かないという印象だった。タブレットならまた印象は違ってくるだろう。

ChromeとテキストエディタのJota+を立ち上げた状態。ソフトウェアキーボードを表示するとかなり画面が圧迫される

 筆者がいくつか試した中で便利だと思ったのは「クイックスイッチ」だった。マルチウィンドウと同じホームボタン右の四角ボタンから使う機能だが、ここをダブルタップすることで現在開いているアプリと直近で開いていたアプリが即座に入れ替わる。Windowsで言えば[Alt]+[Tab]のような機能で、文字をコピペして違うアプリ上で貼り付けるといった作業に向いている。

 以前紹介した通り、Android 7.0にはほかにも新機能があるのだが、やり出すと切りがないのでとりあえずここまでにしておきたい。

 Nexus端末をお持ちで私のようにOTAで待つのが我慢ならないという方は、今回のやり方を試してみてはいかがだろうか。