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microATXでOC世界記録を狙える
「ASRock Z87M OC Formula」フォトレビュー

Z87M OC Formula
7月中旬 発売

価格:オープンプライス

Z87M OC Formula

 ASRockは、オーバークロック向けマザーボード「Z87M OC Formula」を7月中旬頃に日本国内で発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は25,980円前後だ。発売に先立って製品版を入手したので、写真を中心としたレポートをお届けする。

 ASRockのOC Formulaシリーズは、液体窒素を利用するなど、極限のオーバークロックに耐えうる設計のマザーボードだ。Intel Z77 Expressチップセットで初めてラインナップされた。製品の設計には、ASRockのプロダクトマネージャーでオーバークロッカーでもあるNick Shih氏が関わっており、マザーボード上でもサインがシルク印刷されている。

 Z77世代では、「Z77 OC Formula」の1製品のみラインナップされたが、Intel Z87 Expressの今世代では、ATXフォームファクタの「Z87 OC Formula」、無線LANを搭載した「同/ac」、そしてシリーズ初のmicroATXフォームファクタとなる本製品の3つがラインナップされた。

 既報の通り、Z87 OC Formulaでは唯一無二の防水加工や、オンボード上でさまざまなステータス表示を行なう「Status OLED」などを特徴しており、Z77 OC Formulaから順当な進化を遂げているが、Z87M OC Formulaではそれらを搭載せず、平たく言えばZ77 OC Formulaの特徴をそのまま引き継いでいる。

 ただし、メモリスロットとPCB接合部のピンは、Z87 OC Formulaと同様はみ出しが少なくなっている。これにより信号特性が上昇し、メモリがより高クロックで動作するという。実際7月3日現在、世界のオーバークロックランキングサイト「HWBOT」において、DDR3メモリのトップスコアは、まさしくNick Shih氏が本製品を駆使して取得したものであり、クロックは2,145MHz(4,290MHz相当)となっている。

随一の回路設計

 下位モデルという位置付けに加え、円安の影響もあり、同価格帯であったZ77 OC Formulaのパッケージから同梱物は簡素化されている。SATAケーブル×4、バックパネル、SLIケーブル、説明書のほか、GELIDのハイエンドグリス「CG-Extreme」、マザーボードのネジ穴に底面から差し込むことで簡易スタンドとなるプッシュピンが10本付属する。USB 3.0ブラケットやSATA電源変換コネクタ、アクセサリポーチなどは省かれた。

製品パッケージ
付属品など
簡易スタンドになるプッシュピン
マザーボード本体
マザーボード背面
拡張スロット部
最下部のPCI Express x4スロットはエッジフリーとなっている
Mini PCI Expressを備える。バックパネルには無線LANアンテナ用の穴も用意されていたので、将来的に装備済みモデルをリリースする可能性はある
mSATA対応のMini PCI Expressスロットも装備
バックパネルインターフェイス

 その一方で、OC Formulaの名に恥じない電力面、冷却面、接続面へのこだわりは踏襲している。

 電力面では、International Rectifier(IR)製の「IR3567B」デジタルPWMコントローラを中心とした12フェーズデザイン、オン抵抗が小さいため電源供給を効率化する「デュアルスタックMOSFET」、コア損失を低減した特殊配合の「プレミアム・アロイ・チョーク」、そして3種類のコンデンサで低周波から高周波まですべてのノイズをフィルタする「マルチフィルターキャップ」を搭載する。

 冷却面では、4層の2オンス銅箔層を含む8層PCB基板や、先述の高性能グリスの添付を指す。なお、Z77 OC Formulaであった水冷対応/空冷ファン付きのMOSFETヒートシンクは、パッシブヒートシンクのみとなった。

 接続面では、電力損失と温度を低減するという12V補助用「高密度電源コネクタ」、そしてCPUソケットとメモリスロットに「15μm厚金メッキコネクタ」を採用。また、先述のピンのはみ出しが少ないメモリスロットなども、この特徴の1つとして数えられている。

 このように、オーバークロック向けに信号特性や電力効率などへの配慮が見られる設計が特徴的だが、今回サウンド回路がほかの信号と完全分離となった点も新しいトピックである。これによりノイズの影響を受けにくくし、音質が向上するという。ASUSの「Maximus V GENE」で初めて謳われた設計だが、8シリーズ世代では多くのメーカーが採用し、ポピュラーな技術となっている。ただし本製品の分離帯はラインが入っているものの、LEDなどが装備されていないため光らず、地味だ。なお、オーディオコーデックはRealtekの「ALC1150」、オペアンプはTIの「NE5532」を採用する。

デジタルPWN電源コントローラは「IR3567B」を採用
12フェーズの電源回路。デュアルスタックMOSFET、プレミアム・アロイ・チョーク、マルチフィルターキャップも特徴的
CHiLブランドの「CHL8184」。メモリのPWMを司ると思われる
メモリスロットはピンのはみ出しが少ないタイプを採用し、信号の歪みを低減するという
分離したサウンド回路
光に透かして見れば分離しているのがよくわかる

そのほかの搭載機能

 オーバークロック向け機能としては、CPUの熱保護機能を無効にする「LN2モード」、CPUクロックを下限に固定する「スローモード」を搭載。また、Nick氏監修のオーバークロックプロファイルや、ソフトウェアからクロック調節/温度監視/ファンコントロールなどが可能な「Formula Drive」、メモリのタイミングを調節可能な「タイミングコンフィギュレーター」を継承する。

 ソフトウェアにおいて他社でも同様の機能を提供しているが、メモリのタイミングをWindows上で調節できるのは珍しいだろう。設定に失敗してブルースクリーンになったとしても、再起動で元の設定に戻るため、CMOSクリアの必要がなく気軽にテストできる。その一方で、Z77 OC Formulaにあったクロックレシオやベースクロックをハードウェアボタンで直接調節できる機能が省かれているのは残念だが、microATXという限られたスペースの中では実装が難しかったのかもしれない。

 UEFIの機能でユニークなのは、スロットやポートの使用状況がグラフィカルにわかる「システムブラウザ」、トラブル発生時にUEFIセットアップ画面からASRockのテクニカルサービスサポートにリクエストを送信できる「UEFIテックサービス」(ネット接続環境必須)、UEFI上でインターネットから最新BIOSをダウンロードして更新できる「Internet Flash」(同)、コールドブートから1.5秒以下でWindows 8を起動できる「Fast Boot」などを備える点だ。いずれも初心者/上級者問わず、常用でも役に立つ機能である。

VRMのヒートシンクは、水冷非対応である
チップセットのヒートシンク。ずっしり重い
USB 3.0 Hubの「ASM1074」
TMDSレベルシフトICの「ASM1442」
IntelのGigabit Ethernetコントローラ「I217-V」

オーバークロックマニア向けの「MAXIMUS VI GENE」対抗モデル

 本製品のライバルは、価格的にも位置づけ的にも真っ当からぶつかるASUSの「MAXIMUS VI GENE」だ。オーバークロックに適した電源設計、分離したサウンド回路、ほぼ同じスロットの配置、そしてMini PCI Expressカードを装備できる点など、ほぼ同じコンセプトだ。

 違いがあるとすれば、MAXIMUS VI GENEのほうがSATA 6Gbpsポートが2基多い点、そしてMAXIMUS VI GENEではM.2(NGFF)対応SSDが挿せる点程度である(本製品はmSATA SSD対応)。

 ASUSのGENEシリーズは、オーバークロックのみならず、ゲーミングも視野に入れている。しかしOC Formulaはとにかくオーバークロックを優先したモデルだ。本製品は、限られたフォームファクタで世界記録を狙うような、マニアなオーバークロッカー向けに作られた製品だ。

(劉 尭)