動画で見るScanSnapの新機能「iPhone/iPad連携機能」
~専用アプリでスキャンデータを即転送


 PFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap S1500」の新製品が12日に発表された。ハードウェアは従来と同じで、変更内容はソフトウェアの強化のみ。型番については、後ろに「-A」がついて「FI-S1500-A」となる。Mac OS用モデル、楽2ライブラリ パーソナル V5.0 セットモデルについても同じく型番が変更になっている。

 新モデルではさまざまな新機能が追加されているが、中でも注目なのはiPhone/iPad連携機能だ。従来のS1500/S1300/S1100ユーザーに対しても無償で提供されるこの機能は、専用アプリとユーティリティの組み合わせによって、iPhone/iPadへのスピーディなファイル転送を実現するというものだ。今回はこの機能について、動画を中心にレビューする。

ScanSnap S1500。新製品ではソフトウェアが強化されている。ハードウェアは従来製品と同一iPhone/iPad専用のアプリケーション「ScanSnap Connect Application」(左上)

●これまでネックだったScanSnap→iPhone/iPadへのデータ転送
iPadの読書アプリ「i文庫HD」はFTP転送やクラウド経由などさまざまな転送方式をサポートするが、いずれも手順にはクセがあり、マニア向けの方法であることは否めない

 これまでScanSnapで生成したPDFデータをiPhone/iPadに転送して表示するには、かなり複雑なプロセスを経る必要があった。具体的には、まずどのビューアアプリで表示するかを決めたのち、iPhone/iPadをケーブルでPCに接続し、iTunes上で該当のアプリにデータをドラッグ&ドロップ。その後同期を行なってようやく、PDFデータがiPhone/iPadにコピーされるというものだ。「i文庫HD」のFTP転送や「ComicGlass」の専用ソフトによる転送など、アプリによっては独自の転送方法をサポートする場合もあるが、操作性はばらばらで、わかりやすいとは言えなかった。

 またiOSの仕様上、あるアプリに転送したPDFを別のアプリで表示したい場合、改めて別のアプリ宛にデータを転送しなくてはいけないなど、2度手間になるという問題もあった。せっかくScanSnapで紙データをスキャンしてPDF化しても、こうした手間がネックになって活用できないままになるケースが多かった。小容量のPDFであれば、メールに添付して自分宛に送り、それをメールソフトから開いていた人もいるかもしれない。

 筆者にしても、当初はiPadで自炊データを読むことが多かったものの、最近ではmicroSDに大量のデータを入れて持ち歩けるAndroidタブレットに完全にシフトしてしまい、自炊データのビューアとしてiPadを使うことはほとんどなくなっていたほどだ。その理由の1つとして、データ転送の面倒さがあったことは否定できない。

●iPhone/iPadにデータを即転送。表示するビューアアプリは転送後に選択可能

 さて、今回新たに追加されたiPhone/iPadの連携機能により、こうした弱点がほぼ一掃された。具体的には、専用アプリ「ScanSnap Connect Application」をiPhone/iPadにインストールしておくことにより、スキャン時にデータを直接転送することが可能になった。また、どのビューアアプリで開くかを転送後に選択できるので転送方法も一元化される。iTunesを経由しないことから転送もスピーディ、無線LAN経由でケーブル接続の必要もないなど、いいことづくめだ。論より証拠ということで、動画による転送速度の速さをご覧いただこう。

【動画】スキャンしたチラシデータをiPadに送信している様子。転送後にビューアアプリを選択する時点で一呼吸置く形になっているが、まるで読取後のプレビュー表示をしているかのようなすばやさで、PDFが転送されていることがお分かりいただけるはずだ。ちなみに通信はアドホックではなく、画面外のホストPCを介して行なっている

 実際の操作手順は次のとおり。まずPC側のユーティリティ「ScanSnap Manager」で、読み取り後に使用するアプリケーションとして「モバイルに保存」が選択されていることを確認する。続いてiPhone/iPad側で、専用アプリ「ScanSnap Connect Application」を起動すると、PCとの間で通信できる状態になる。これで準備は完了だ。

 ScanSnapに原稿をセットしてスキャンボタンを押すと読み取りが行なわれ、データが無線LANを経由して「ScanSnap Connect Application」に転送される。画面上に表示されたデータをタップするとどのビューアアプリで開くかを尋ねられるので、ビューアアプリを選んで表示させる。読み取りから表示まできわめて直感的に操作できるので、以下の初期設定さえきちんと行なっておけば、初心者でもとくに迷うことはないだろう。

 というわけで話が前後するが、以下が設定の手順となる。本機能を利用するためには、PC側のユーティリティ「ScanSnap Manager」を最新版にアップデートする必要がある。また、iPhone/iPad側にはApp Storeから専用アプリ「ScanSnap Connect Application」をダウンロードしてインストールしておく。

アップデート済のユーティリティを起動すると、iPhone/iPadから接続するためのパスワードを設定するよう求められる。あわせて自動起動の設定や、送信ボタンを押さずに送信を実行するかも選ぶ初回のみ、ファイアウォール設定の変更が必要になる場合がある読み取り後に使用するアプリケーションとして「モバイルに保存」を選択
iPhone/iPadにデータを転送したあとPC側にもファイルを残すか否かを選択できる続いてiPhone/iPadに専用アプリ「ScanSnap Connect Application」をインストールし、起動。ネットワーク内で「モバイルに保存」が起動しているPCに自動的に接続される。見つからない場合はIPアドレスを指定する。今回は自動認識が通らなかったのでIPアドレスを直接入力した初回接続時にパスワードを要求されるので、さきほどPC側で設定したパスワードを入力する
iPhone/iPadとの接続が確立されると、PC側でもダイアログが表示される。この画面が表示されたら、あとはスキャンを行なうだけ通常のスキャンと同じ要領で、スキャナ本体のスタートボタンを押して書類のスキャンを実行する送信の進捗状況がダイアログに表示される
送信完了。iPhone/iPadで受信したスキャンデータが一覧に表示されるスキャンデータをタップすると、どのビューアアプリで開くかを尋ねられる。今回はiBooksを選択
iBooksが起動し、スキャンデータが表示された。あとはアプリの作法に従ってページめくりや拡大縮小といった操作が行なえる。別のアプリで開き直すことも可能だ読み取り時のファイル名は日付や連番になっているが、転送後にアプリ側でリネームすることも可能だ

●すでにHDD内にあるデータも転送可能。書庫として活用できる

 iPhone/iPad側にインストールするアプリ「ScanSnap Connect Application」は、これ自体はビューアの機能を持っておらず(プレビューはできる)、データを受信して各ビューアアプリに渡すのがその役割ということになる。つまり書庫の役目を果たすので、とりあえずここにデータをじゃんじゃん転送しておき、どのビューアアプリで開くかはあとから考えるという使い方ができる。

 メモ類やオフィス文書以外に、自炊データのように50~100MBほどあるPDFデータであっても、問題なく転送できる。試用前は、自炊データまるごと1冊分をスキャンして即転送するのはさすがに厳しいだろうと予想していたのだが、1冊分のデータ(約69MB)を読み取ったあとの転送が、50秒足らずであっさり完了してしまった。これはかなりの驚きだ。

 各ビューアアプリでデータを表示する際は、「ScanSnap Connect Application」内のデータをそのまま開くのではなく、いったんビューアアプリ側にコピーしてから開かれる。つまりいったんビューアアプリで開いたあとは、「ScanSnap Connect Application」側にある原本を削除してしまっても差し支えない。また、データをこのアプリに残したままにしておけば、あとから別のビューアアプリで開き直すこともできるので、これまでのようにいちいちデータを転送し直す必要もない。

 気になるのは、この「ScanSnap Connect Application」にいったいどれだけの量のデータが保存できるかということだが、ユーザーズガイドによると上限は1,000個となっている。ファイルサイズについても、今回試した限りでは自炊データのような50~100MBほどの大容量ファイルでも問題なく扱えており、フリーズしたりといった症状も見られなかったので、このアプリを書庫として使う用途が現実味を帯びてくる。ファイル数が増えるとアプリの起動までにやや待たされるようになるのが、唯一のネックだといえるだろう。

 また、スキャン後すぐに転送するのではなく、いったんHDDに保存したのち、「ScanSnap Organizer」経由で転送することもできる。つまりこれまでスキャンしてHDD内に溜まっているPDFデータについても問題なく転送できるというわけだ。また試してみた限りでは、ScanSnapで生成したのではないPDFデータについても転送が行なえた。なかなか奥が深そうな機能だ。

 ちなみに一度にまとめて転送できる容量およびファイル数には制限があり、容量は2,048MBまで、ファイル数は100個以内となっている。したがってHDDにストックしてある大量のデータを「ScanSnap Organizer」経由でまとめて転送する際は、これらの範囲内で小分けにして行なう必要がある。PDFではなくJPEG画像を転送する場合などは、ファイル数制限にひっかかることもありそうだ。

スキャン後すぐに転送するのではなく、いったんHDDに保存したのち、「ScanSnap Organizer」経由で転送することもできる。過去にスキャンして保存していたデータ、さらにScanSnapを使わずに生成したPDFも問題なく転送できる同時に転送できるファイル数は100ファイルまでという制限がある同時に転送できる容量は2,048MBまで。ファイル数の制限と合わせ、データは小分けに転送する必要がある
試しにPDFデータ300個ほどを転送してみた。そのうち半分は自炊データを中心とした30~100MBという大きなものだが、起動時を除きレスポンスが悪くなることもなかった。もっともリスト表示ということもあり、数が多くなると目的のPDFデータが探しづらくなる。ソートや絞り込み、分類機能など、書庫アプリとしての機能強化を期待したいところストックしているデータの量が多くなると、レスポンスには影響は出ないものの、起動に時間がかかるようになる。なおデータは個別削除のほか、設定画面の初期化メニューから受信データを全削除することもできる

●Android版の登場にも期待
ユーザーズガイドも「iOS編」と題されており、他OS向けアプリの登場を前提にしているかのようだ

 というわけでざっと見てきたが、まるでプレビューしているのかと思わせるほどの転送速度は、これまでのわずらわしさを考えると感動モノだ。転送と同時にPC側にデータを残すこともできるので、通常の用途はすべてこの使い方に統一してしまっても問題ないだろう。読み取り後にページのチェックを行なったり、「ChainLP」などのツールで最適化をすることの多い自炊データは「ScanSnap Organizer」経由であとから転送するなど、柔軟な使い方が可能だ。またPCにiTunesが入っていなくても転送できる点も大きなメリットだろう。

 とまあベタ褒めなわけだが、こうなると気になるのがAndroidへの対応だ。Androidであればマスストレージ接続でのコピーやmicroSDを用いた読み込みに対応しているため、現状でもそれほど手間がかかるわけではないのだが、iPhone/iPadへの転送がここまで簡単になってしまった現在、Androidでも同等のアプリが欲しいと感じるのは、ユーザーの誰しもが感じることだろう。

 今のところAndroidアプリについての提供予定は公式にはアナウンスされていないが、今回のユーティリティに記されているメニュー名が「iPhone/iPadに転送」ではなく「モバイルに転送」だったり、ユーザーズガイドにも「iOS編」という記述が見られるなど、今後の展開を見据えていると思われる表現が随所に見られる。今後のリリースを期待したいところだ。

(2011年 10月 18日)

[Reported by 山口 真弘]