特集

AMD Radeon HD 7990ベンチマークレポート

 米AMDは4月24日(現地時間)、「Radeon HD 7970 GHz Edition」に使用されているものと同等のGPUを2基搭載したデュアルGPUカード「Radeon HD 7990」を発表した。今回、リファレンスボードを借用できたので、ベンチマークテストでパフォーマンスを探ってみた。

フルスペック版「Tahiti」を2基搭載するデュアルGPUカード

 冒頭で紹介した通り、「Radeon HD 7990」(以下、HD 7990)は「Radeon HD 7970 GHz Edition」(以下、HD 7970 GHz)に使われているハイエンドGPUコア「Tahiti」を2基搭載したデュアルGPUカードだ。

 「Tahiti」コアは、28nmプロセスで製造されたGraphics Core Next(GCN)アーキテクチャ採用GPUで、Radeon HD 7000シリーズのハイエンドGPUに採用されている。HD 7990が備える2基のGPUは、HD 7970 GHz Editionで採用されているものと同じフルスペック版「Tahiti」で、それぞれが2,048基のStream Processor(SP)と128基のテクスチャユニットを持つ。

 HD 7990のGPUコアは950MHzで動作し、Boost時には1GHzまで上昇。GPUそれぞれが、6Gbpsで動作する3GBのGDDR5メモリと、384bitのメモリインターフェイスで接続されている。メモリ周りの仕様は、HD 7970 GHz Editionに似ていると言えるだろう。

【表1】Radeon HD 7990の主なスペック

Radeon HD 7990 Radeon HD 7970 GHz Edition Radeon HD 7970
アーキテクチャ Graphics Core Next
プロセスルール 28nm 28nm 28nm
GPUクロック 950MHz 1,000MHz 925MHz
Boostクロック 1,000MHz 1,050MHz
SP数 2,048基×2 2,048基 2,048基
テクスチャユニット 128基×2 128基 128基
メモリ容量 6GB GDDR5 3GB GDDR5 3GB GDDR5
メモリクロック(データレート) 1,500MHz(6,000Mbps相当) 1,500MHz(6,000Mbps相当) 1,375MHz(5,500Mbps相当)
メモリインターフェイス 384bit×2 384bit 384bit
ROPユニット 32基×2 32基 32基

 今回、AMDより借用したHD 7990のリファレンスボードは、約305mm(ブラケット部を除く)という長大な基板に、3連ファンを備える大型GPUクーラーを搭載したものだ。

 ディスプレイ出力端子には、DVI-I 1系統と、Mini DisplayPortを4系統を備える。ボード上部には、CrossFireコネクタ1基と、補助電源供給用の8ピンコネクタ2基のほか、BIOS切り替え用のスイッチを備えている。

HD 7990リファレンスボード
ディスプレイ出力端子
CrossFireコネクタとBIOS切り替えスイッチ
補助電源供給用コネクタ
GTX 690(カード長:約280mm)との比較

 AMDは、HD 7990搭載のGPUクーラーの優秀さをアピールしており、競合製品となるNVIDIAのデュアルGPUカード「GeForce GTX 690」(以下、GTX 690)などと比較して、HD 7990の方がより静粛性に優れているとしている。ただ、今回テストを行った個体では、確かにGPUクーラーの駆動音は比較的静かだったのだが、ベンチマーク実行中に電源部で発生するコイル鳴きが大きかったため、静粛性に優れているという印象は受けなかった。

AMDは、3連ファン搭載の強力なGPUクーラーの採用により、HD 7990が優れた静粛性を実現したことをアピールしている

テスト機材

 それでは、ベンチマークテスト結果の紹介に移りたい。今回のテストでは、HD 7990の比較対象として、NVIDIAのデュアルGPU搭載ビデオカード「GeForce GTX 690」を用意した。その他の検証機材は以下の通り。

【表2】テスト機材
GPU Radeon HD 7990 GeForce GTX 690
CPU Intel Core i7-3770K (3.5GHz/Turbo Boostオフ)
マザーボード ASUS P8Z77-V (BIOS:1908)
メモリ DDR3-1600 4GB×4(9-9-9-24、1.5V)
ストレージ Western Digital WD5000AAKX
電源 Antec HCP-1200
グラフィックスドライバ 12.102.3-130412a-155878E-ATI GeForce 314.22
OS Windows 8 Pro 64bit

DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まずは、DirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark 11」(グラフ3、4)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」(グラフ5、6)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ7)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ8)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ9、10)。

【グラフ1】 3DMark - Fire Strike [Default / 1920×1080]
【グラフ2】 3DMark - Fire Strike [Extreme / 2560×1440]
【グラフ3】 3DMark11 v1.0.4 [Extreme / 1920×1080]
【グラフ4】 3DMark11 v1.0.4 [Custom(Extreme) / 2560×1440]
【グラフ5】 Unigine Heaven Benchmark 4.0 (DX11 / 1920×1080)
【グラフ6】 Unigine Heaven Benchmark 4.0 (DX11 / 2560×1440)
【グラフ7】 Stone Giant DX11 Benchmark
【グラフ8】 LostPlanet2 DX11 Benchmark [4x AA / Setting:All High]
【グラフ9】 Alien vs. Predator DX11 Benchmark [1920×1080]
【グラフ10】 Alien vs. Predator DX11 Benchmark [2560×1440]

 DirectX 11対応のベンチマークテストでは、HD 7990とGTX 690のスコアに極端な差がついたベンチマークテストは無く、ベンチマークタイトルや設定によって抜きつ抜かれつという、競合製品らしい拮抗した結果となった。

 それらの結果の中から、設定によってHD 7990とGTX 690のスコアが逆転している「Unigine Heaven Benchmark 4.0」や「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」の結果を見ると、テッセレーションを多用するシーンではGTX 690が、高解像度かつアンチエイリアシング処理を行なうような設定ではHD 7990がそれぞれ相対的にスコアを伸ばしていることが分かる。

 優れたテッセレーション性能を持つKeplerアーキテクチャベースのGTX 690と、GPUコア当たり288GB/sec(GTX 690は192GB/sec)という広いメモリ帯域幅を誇るHD 7990、それぞれの特徴が素直にベンチマークスコアへ反映された結果と言えるだろう。

DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ11、12)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ13)、「3DMark06」(グラフ14、15)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ16)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(グラフ17)、「PSO2ベンチマーク」(グラフ18)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ19)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ20)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0(DX9)」(グラフ21)。

【グラフ11】 3DMark Vantage v1.1.0 [Extreme / 1920×1200]
【グラフ12】 3DMark Vantage v1.1.0 [Custom(Extreme) / 2560×1440]
【グラフ13】 3DMark - Cloud Gate [Default / 1280×720]
【グラフ14】 3DMark06 v1.2.1 [1920×1080 / 8x AA / 16x AF]
【グラフ15】 3DMark06 v1.2.1 [2560×1440 / 8x AA / 16x AF]
【グラフ16】 3DMark - Ice Storm [Default / 1280×720]
【グラフ17】 ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編 (ver1.0.0.2/フルスクリーン)
【グラフ18】 PSO2ベンチマーク ver.2.0 [DX9 / 1920×1080(フルスクリーン)]
【グラフ19】 MHFベンチマーク【大討伐】 [DX9]
【グラフ20】 LostPlanet2 DX9 Benchmark [4x AA / Setting:All High]
【グラフ21】 Unigine Heaven Benchmark 4.0 (DX9)

 DirectX 10対応ベンチマークテストについては、「3DMark Vantage」はGTX 690が優勢で、「3DMark - Cloud Gate」はHD 7990が優勢と、テストによって結果が分かれる形となった。一方、DirectX 9対応ベンチマークテストでも、HD 7990とGTX 690の優劣はテストによって分かれる形となっているのだが、大きくとも20%未満のスコア差に収まっていたここまでのテスト結果とは異なり、極端なスコア差がついたテスト結果が目立つ。

 大きな差がついているベンチマークテストとしては、「PSO2ベンチマーク」と「MHFベンチマーク」で、前者はGTX 690がHD 7990を40〜50%上回り、後者ではHD 7990はGTX 690の2倍以上のスコアを記録している。

 「MHFベンチマーク」については、GTX 690登場時に行なったテストでも、デュアルGPUカードであるGTX 690が、シングルGPUの「GeForce GTX 680」を下回るスコアを記録しており、デュアルGPUのパフォーマンスが十分に発揮できていないための結果であると言えるだろう。「PSO2ベンチマーク」に関しては、モニタリングソフト上ではHD7990もデュアルGPUとして動作していたため、この大差はドライバやゲーム側の最適化によるものと思われる。

消費電力の比較

 最後に、消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。

【グラフ22】 システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力については、HD 7990が71W、GTX 690が68Wを記録し、両GPUの電力差は3Wだった。この程度の差はビデオカードの個体差の範疇とも言える程度であり、アイドル時の消費電力は同程度に抑えられていると言って差し支えなさそうだ。

 各アプリケーション実行中の消費電力については、消費電力を測定した全てのテストでHD 7990が高い数値を記録している。GTX 690がデュアルGPUとして正常に機能しない「MHFベンチマーク」実行中の225W差は例外だが、それ以外のテストでの43〜67Wという差は決して小さいものではない。

ようやく登場したAMDの28nm世代ウルトラハイエンド

 HD 7990は、これまでライバル不在だった、NVIDIAのウルトラハイエンドGPUの対抗馬となる製品だ。今回のテスト結果を見る限り、GTX 690のライバル足り得るだけのパフォーマンスを持ったGPUであることは間違いなさそうだ。

 GTX 690とのパフォーマンス差の割に大きな消費電力差が、少々気になるところではあるが、パフォーマンスを追求するウルトラハイエンド製品において、ワットパフォーマンスという要素は必ずしも重視されない。HD 7990が示した高解像度やアンチエイリアシング適用時のパフォーマンス的な優位性は、ウルトラハイエンド製品を求めるユーザーにとって、消費電力以上に重要な要素と言えるだろう。

 記事執筆時点で、リファレンス仕様のHD 7990についての販売価格は提示されていない。ライバルとなるGTX 690の価格が10万円前後であることを考えると、少なくとも同程度の価格での登場に期待したいところだ。

(三門 修太)