特集

mSATA SSDをUSB 3.0の外付けストレージとして使えるZOTAC「RAIDbox」を試す

ZOTAC「RAIDbox」
3月4日(現地時間) 発表

 香港ZOTAC Internationalが3月4日(現地時間)に発表した「RAIDbox」。mSATA SSD×2枚をUSB 3.0で外付けできるストレージケースだ。本製品を試す機会を得たので、使い勝手やパフォーマンスを調べてみたい。

 本製品は、mSATA対応のSSDを2枚搭載可能な外付けストレージケースだ。2枚のSSDは個別に認識させることができるほか、RAID 0/1、スパニングして1台のドライブとして使うこともできる。

 本体サイズは77.2×120.3×13mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトで、折りたたみ式のフィーチャーフォンより長い程度のサイズだ。

 こうした基本的な製品特徴だけで思い浮かぶメリットはある。外付けHDDよりも耐衝撃性に優れること。そして、USBメモリよりも大容量の外付けストレージを生み出せる点。さらに、RAID 1アレイを組めることで、寿命に対する不安を多少は払拭できる点も意味がある。

 また、外付けの2.5インチ用HDDケースにSSDを搭載することでUSBメモリより大容量のフラッシュストレージを作ることは可能だが、コンパクトさでは本製品に軍配が挙がる。

 一方、最近ではフラッシュメモリを利用した外付けストレージも増えてきており、バッテリを内蔵していたり、無線LANを搭載してタブレットやスマートフォンと連携できる製品も登場している。mSATA SSDは、HDDや2.5インチSSDなどとは違い、まだまだ“余る”ような存在になっている人は少数派と思われる。mSATAを自身で用意しなければならないことにより発生する手間やコストは割り切りが必要になる。

完全にツールレスでの作業が可能

 本製品にmSATA SSDを取り付ける方法はシンプル。本体脇のイジェクトボタンを押してケースを開け、mSATA SSDを取り付けるだけだ。固定ネジはいわゆるローレットスクリューとなっており、ドライバーなどの工具は必要ない。

 取り付けた際、mSATA SSDと本体の隙間がほとんどない点は若干心配になった。本体はプラスチック製ということもあり、チップからの熱が籠もりそうだ。テスト中にはとくに誤操作は起きなかったものの、本体はプラスチックにも関わらず多少熱を持っており、もう少し空間に余裕を持った設計もよかったのではないかと思う。

側面にあるイジェクトボタンを押しながらケースを開ける
ケース内の様子
mSATA SSDを取り付けたところ。各1個のスクリューで固定する
mSATA SSDのチップとケースの隙間はほとんどない
基板表面。右半分がコントローラ関係、左半分が電源関係というレイアウト
裏面には特に部品は実装されていない

 基板上には、台湾ProlificのUSB 3.0-SATA RAIDコントローラ「PL2775」が乗っており、そのほかは電源回路と物理的なインターフェイス、スイッチで構成されている。

 このスイッチは、RAIDやスパニングなどのモード設定に使用する。具体的にはケース内にも説明が書かれたシールが貼られているが、ケーブルを外した状態でディップスイッチを希望するモードへ変更し、タクトスイッチを押したままケーブルを挿し直す(=電源を供給する)ことで、搭載されたLEDが3回点滅する。これでタクトスイッチを離せば、指定したRAID/スパニング/JBODの構成で稼働する。

 写真を見ても分かる通り、ディップスイッチもタクトスイッチも非常に小さく、面倒に思うかも知れない。何度も構成を切り替えることはないと思うので使いやすければ良いというものでもないのだが、PCに外付けする周辺機器としては電子部品臭さが過ぎるという印象も残った。もちろん、このようなデザインの方が好きという意見は否定しない。

ケース裏側に貼られたシール。基板上のディップスイッチでモード選択、タクトスイッチで設定を有効化する操作となる
コントローラの左上にディップスイッチ、右端にタクトスイッチを実装している。いずれも小さい
基板上には3つのLEDを搭載。1つはモード設定時のインジケータ。2つはアクセスランプで、2枚のSSDそれぞれに対するアクセス時に点滅する

 なお、各モードでは認識容量などが異なるのはもちろんだが、OS上で表示されるデバイス名も異なるので、希望どおりのモードで動作しているかは把握しやすい。

個別認識時
スパニング(BIG)モード時
RAID 0モード時
RAID 1モード時

 本体のインターフェイスはUSB 3.0のMicro B端子を備える。USB 3.0 Micro B-A×2のY字ケーブルが付属しており、データ転送用ポートとは別に、電源供給用にもう1ポートを使用する必要がある。片側に1ポートしかUSB端子がないノートPCなどでY字ケーブルが使えない場合でも使えるよう、電源供給専用端子と対応ケーブルが付属している。

 ちなみに、試した限りでは、電源供給用の追加USBポートを接続しなくても動作し、これによりパフォーマンスが落ち込むようなこともなかった。

 USB 3.0バスパワーはご存じのとおり5V/900mAの4.5Wである。今回テストに使用したCrucial「m4」のMicron版である「C400」のスペックに、動作時の平均消費電力は200mW以下との記載がある。mSATAは3.3V駆動、先のRAIDコントローラは1.2V駆動なので5Vからの電圧変換に損失が発生するし、m4/C400のピーク電力も記載がなく分からないため断定はできないのだが、多くのケースでは追加電源なしでも動作するのではないかと思う。

インターフェイス。USB 3.0 Micro Bと、電源供給専用端子を備える
付属のケーブル。Y字ケーブルを利用できない場合は、専用端子用のケーブルを利用する
Y字ケーブルは電源供給用端子と明確に分かれており、USB 3.0(青側)を接続しないとPCでデバイスとして認識しない

RAID 0構築による高速化はベンチマーク結果にも表れる

テストに使用したCrucial m4 mSATA SSD。上から32GB、128GB、256GB

 それでは、mSATA SSDをUSB 3.0接続で利用する本製品が、どの程度の性能を発揮するのかベンチマーク測定の結果を紹介する。先にも少し触れたとおり、今回のテストにはCrucialのm4シリーズを搭載してテストを行なった。ただ、同容量を2枚単位で揃えることができなかったため、32GB、128GB、256GBの各モデルを用意。それぞれ個別に用いた場合と、32GB+256GB、128GB+256GBの組み合わせでスパニング、RAID 0/1を構築した場合の結果を測定した。

 測定に用いたPCはレノボ・ジャパンのThinkPad X230(Core i5-3320M、メモリ8GB、HDD 500GB、Windows 7 Professional 64bit)である。ベンチマークソフトは、Alexej Schepeljanski氏の「AS SSD Benchmark 1.7.4739.38088」を使用した。

 結果は以下に示したとおりだ。ZOTACの製品ページには、RAID 0構築時に350MB/secのリード/ライト性能を示すグラフも載っているが、単体のリード性能で160MB/secを超える今回のテスト環境においても、ピークは240MB/sec程度となった。とはいえ、リード/ライトともにRAID 0による性能向上はしっかりと見て取れる。

 USB 3.0の理論転送速度は500MB/secであるが、オーバーヘッドを勘案してもその半分以下というのは多少寂しい結果で、ピーク性能としてはもう一頑張りが欲しいという印象はある。

 容量が違うことで、特にライト性能に差がある製品を組み合わせてのテストになってしまったが、RAID 1やスパニングにおいては、性能が低い方に近いものとなっている。RAID 1においては性能が低い方より、さらに若干低い数値に留まっており、コントローラ側で多少のオーバーヘッドが発生していることが分かるが、極端に特性が変わるほどではない。4KBランダムアクセスの安定感はSSDらしいところである。

AS SSD Benchmarkの結果

 国内での発売は4月中旬ごろが予定されており、店頭予想価格は6,500円前後が見込まれている。USB 3.0に対応した64GBのUSBメモリが1万円を切る価格で存在することを考えると、コスト面ではやはり不利はある。ただ、これまでmSATAをUSB 3.0で接続するためのデバイスは記憶になく、新しい性格を持った製品である。例えば、USBメモリでは選択肢が少ない128GB以上のフラッシュストレージを実現できるなどの新しい環境を作れることの存在意義は大きい。

 加えて、2枚のmSATA SSDを組み合わせて1ドライブ化できるのも面白い。これを利用してRAIDを組む場合、RAID 0による速度向上はベンチマーク結果として派手だし、体感速度の面でも体感できるものは大きいが、むしろRAID 1を組んで信頼性を高めた場合でも、SSDらしい性能を得られることが大きなポイントになると思う。耐衝撃という物理的な堅牢さに加えて、論理的なデータ保護も行なえるからだ。

 2.5インチの外付けHDD/SSDと比べてコンパクトではあるものの、“いまどき”のモバイル用ストレージとしてはケーブルと一緒に持ち運ぶ必要がある点でマイナスを感じるのでコンパクトである点は強調したくない。しかし、高速かつ大容量で、信頼性して持ち運べるストレージデバイスを求める人にとっては、それだけで魅力ある製品と言えるだろう。

(多和田 新也)