ハードウェアの世代としては4代目となる新型Play Station 3「CECH-2000A」が9月3日に発売された。
すでに新型PS3については、僚誌AV Watchのインタビューなどで内容が明らかになっている。
その特徴を一言で言えば、本体の小型軽量化と低価格化だ。それが可能となったのは、主要チップのプロセスが進化したことで、Cellが45nmプロセスに変更されたためだ(RSXは65nmプロセスのまま)。これに伴い、省電力化、静音化も進んだという。
では、編集部で購入した製品を基に、実際の構造をレポートしよう。
●薄く軽くなった本体到着した本体の外箱は一新されており、従来の横長から縦長になっている。箱の中心に赤い帯が入っており、目を引きつける配色だ。
箱を持った感じは従来モデルよりかなり軽くなっており、店頭で購入して手提げで持ち帰っても、そんなに苦にはならないだろう。
取り出した本体も、すぐわかるぐらいに薄くなっている。印象としては、初期型のPlayStation 2ぐらいの大きさと重さだ。また、電源ケーブルのプラグが二穴のメガネ型になっている点や、本体背面にあった主電源スイッチがなくなったのが変更点だ。
パッケージ。赤いラインが目を引く。店頭で目立ちそうなデザインだ。 | 同梱品は従来とあまり変わらない。HDDは120GB | PS2ソフトウェアは動作しない |
本体正面 | 本体側面 | 本体背面。電源スイッチがなくなった |
立てた状態。オプションで縦位置用スタンドも用意される | 本体の底面もすっきりした状態 | Blu-rayドライブ周囲。操作ボタンはタッチセンサーから通常のプッシュ式に変更された |
●HDDの交換方法
新型になって大きく変わったのが、内蔵HDDの交換方法だ。
HDDスロットは本体前面に移動した。まず、本体をひっくり返し、スロット周辺にある底面のパネルを爪かマイナスドライバで開ける。そして、そこに見える青いネジをはずす。これでロックがはずれるので、本体前面のパネルとHDDを引き抜く。
今回の個体で使用されていたHDDは、東芝の「MK1255GSX」という120GBの製品だった。
HDDの交換は自己責任となるが、従来同様に、PS3本体の分解防止シールは剥がさなくてすむので、万が一の際でも本体の修理は可能だ。大容量化やSSD化なども、従来通り楽しめそうだ。
本体底面。分解警告シールの横に、HDD交換用のパネルがある | マイナスドライバなどで開ける | 頭が青く塗られたネジが見える。これがパネルとHDDを固定している |
HDD前のパネルをはずした状態 | HDDを取り出した状態。 |
今回の機材には東芝製のドライブが搭載されていた | HDD固定用のパネル |
■■注意■■・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。 |
●さらにシンプルになった構造
分解を警告するシールを剥がし、分解を始める。シールは一度剥ぐと「VOID」という文字が浮き上がる。製品保証がなくなり、無償の修理を受け付けてもらえなくなるだろう。
本体の構造はシンプルで、基本的にネジをはずしていくだけで分解できてしまう。とても素直な構造だ。
もちろん、ゴム足に隠されたネジや、HDDスロット周辺のヘックスロープネジ(特殊ネジ)の使用などの配慮はあるが、極端な隠しネジや、本体を上下にひっくり返しながら分解するような手間はない。
カバーを外すと、Blu-rayドライブと冷却ファンが見える。両方小型化されているが、とくにファンが小さいのには驚く。直径がほぼ10cmしかない。直径16cmあった初代に比べれば、必要とされる冷却能力がずっと小さくなったことがわかる。
ヒートシンクも小型化されており、軽い。初代では何本も走っていたヒートパイプも短いのが1本あるだけだ。ヒートシンクの吐き出し口周囲には、薄いクッションが貼られており、低騒音化を目指していることがわかる。
いよいよ分解警告シールを剥がす | 剥がされたシールには「VOID」の文字が浮き上がる | 本体背面のネジは通常のものだが、HDD周辺のみ特殊ネジとなっている |
上面のパネルをはずした状態。手前右がBlu-rayドライブ。左が冷却ファン。奥が電源ユニット | 冷却ファンとヒートシンク。従来よりも、ずっと小さい | 冷却ファンの直径は約10cmだった |
Blu-rayドライブ手前のスイッチ部分 | 電源ユニット。型番は「APS-250」。12Vが18.0A、5.5Vが0.9A | Blu-rayドライブ。高さが低くなった |
Blu-rayドライブ、冷却ファン、電源を外した状態 | 無線LANのアンテナと配線 | この状態でケースから取り外せる |
その背面。マザーボードはシールドでサンドイッチされている | ヒートシンク。初代とは比べものにならない小ささと軽さ | シールドをはずした状態 |
●一新されたマザーボード
マザーボードはシールドのため、2枚の金属板でサンドイッチ状に挟まれている。
マザーボードは一新された。サイズは初代よりはずっと小さいが3代目(CECHL00、80GB版)と比べると、それほど変わらない。
違うのは部品点数で、3代目と比べても、ずっと少なくなった。
RSXについては、ヒートスプレッダも剥がしてみた。
CELLについては、基板の裏から見たコアが小さくなっているのが確認できた。
マザーボード全景。3代目と大きさはほぼ同じだが、形は違う | RSX。これはヒートスプレッダがついた状態 | CELL/B.E. |
SCEIのカスタムチップ。型番は「CXD9963GB」 | 斜めから見た状態。部品点数が少ない | マザーボード背面。全景 |
マザーボード背面の主要部分配線。四角く切り抜かれているのがCELL.B.E. | RSXのヒートスプレッダを外した状態 | RSXのチップのサイズ |
シールドされているチップ | シールドを外すと、MARVELの無線LANチップだった。型番は「88W8780-B1E2」。SCEIのロゴも刻まれている | CELL.B.E.の背面。80GBモデル(3代目)よりやや小さくなっている |
●新しい世代
今の時点から振り返ってみると、2006年に登場した初代PS3は、あらかじめデザインされた筐体に、定められた仕様を満足させるハードウェアを詰め込んだ製品だった。2代目、3代目と進んで、構造的にも無理がなくなり、完成度が上がっていった。
今回の4台目は、本体が小型化されたが、そのわりに構造に無理がない。初代のようにハードウェアがはち切れそうに入っているのではなく、3代目のように余裕のある構造だ。マザーボード以外も構造の簡素化と小型化が進んでおり、コスト低減が進んでいると推測できる。
つまり、今回のPS3は、たくさん作って安く売るための条件をきちんと満たしている。初代の登場以来、不振が伝えられることが多いPS3だが、少なくともハードウェアに関しては反攻の準備が整ったと見て良いだろう。
また、ハードウェアの複雑さや、消費電力の高さなどから、PS3の購入を見送ってきた人も、購入を検討する良いチャンスだと思う。
本体パネルの刻印「2009年8月1日」製造と読み取れる。製造は「CASETEK COMPUTER (SUZHOU)と刻まれている | Blu-rayドライブの主要部分 | その裏面 |
コントローラチップ。ルネサスの「R8J32820FPV1」。これもSCEIの刻印があり、専用品と思われる | ヘッド部分。Blu-rayとDVD用に2つのレンズが見える。構造は80GB版よりも、さらに小型になっている |
(2009年 9月 3日)
[Reported by 伊達 浩二]