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大阪大学ら、異なる光周波数の2光子の干渉に世界で初めて成功
~量子コンピュータの性能飛躍をもたらす研究
(2016/4/19 17:05)
大阪大学、東京大学、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、異なる光周波数の2光子の干渉に世界で初めて成功したと発表した。
大阪大学大学院基礎工学研究科の井元信之教授、東京大学大学院工学系研究科の小芦雅斗教授、NICT未来ICT研究所の三木茂人主任研究員らのグループは、広帯域光周波数多重化を利用した大規模量子情報処理の基礎技術である周波数領域のスプリッターを実現し、これを異波長の2光子に適用したHong-Ou-Mandel(HOM)干渉を世界で初めて観測した。
HOM干渉は、1987年にホン、オウ、マンデルの3氏によって提案、観測された干渉効果で、2つの入力経路に対し、2つの出力経路を持つビームスプリッタへ、各入力経路に1つずつ“同一周波数の”光子を同時に入力すると、2つの光子は、出力経路のどちらか一方に2つ揃って出力され、各出力経路に1光子ずつ出力されるイベントが量子力学的な干渉効果で消失するというもの(下図参照)。
この干渉は光量子コンピュータの基本要素であり、量子ビットが量子もつれ状態にあるかを識別するベル測定や、量子テレポーテーションなどに幅広く利用されている。
今回の研究では、非線形光学効果である和・差周波発生を用いて、PPLN導波路により“ビーム”ではなく“周波数”のスプリッタを実現し、同一経路で周波数が異なる光子を1つずつ同時に入射した時、出力がどちらかの周波数に同一化された2つの光子となる、「周波数領域でのHOM干渉計」を作成。超伝導光子検出器を用いてそれを観測し、明確に量子力学的な領域の干渉性を示すことができたという。
従来の空間光回路を利用する光量子演算では、スケールアップの手法として空間光回路の集積化が挙げられているが、本研究により、空間を光周波数に置き換えた、「光周波数の多重化」という新たなスケールアップ手法が拓かれることで、計算量や通信容量など、情報処理能力の飛躍的拡大が期待されるとしている。
なお本研究結果は、4月19日に「Nature Photonics」のオンライン版へ掲載される。
【19時: 記事修正】研究発表代表者に関してタイトルの一部と記事冒頭を変更しました