やじうまPC Watch

まるでアート作品。スパコン「京」が初めて描く、細胞内タンパク質の活動の様子

~水分子1つ1つまでシミュレート

 まずはこの動画を見て欲しい。これは、理化学研究所(理研)が取り組むHPCI戦略プログラムによる研究成果の1つとして公開されたもので、細胞内でのDNAやタンパク質の活動の様子をスーパーコンピュータ「京」を用いてシミュレーションした映像だ。

 HPCI戦略プログラムは、スーパーコンピュータ「京」を中心としたHPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)を最大限に活用することによって、戦略的に取り組むべき5つの研究分野において画期的な成果を産み出し、計算科学技術の飛躍的な発展を目指す文部科学省のプログラム。

 病気の多くはタンパク質の機能不全とも言える減少がきっかけで起こるため、細胞内でのタンパク質の振る舞いについての研究に注目が集まっているが、小規模な計算機ではそのような複雑な条件での計算はできない。そこで理研では、京を利用することで、細胞環境に近い条件でタンパク質の動く姿をシミュレーションすることに挑んだ。

 細胞の中の多くは水だが、このシミュレーションでは水分子1つ1つのレベルで動きや反応を計算。また、タンパク質の長時間の振る舞いについても、DNAの構造を構成するヌクレオソームの立体構造を仮想構築し、運動方程式などの物理法則に基づいた分子動力学シミュレーションを実行し、ダイナミックに動く様子を観察できるようになった。

 元々、生命活動には底知れぬ神秘的なものがあるが、映像の美しさやBGMの存在も伴い、この動画はまるでアート作品のような仕上がりとなっている。

(若杉 紀彦)