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京大、抗肥満薬開発に繋がる鍵因子を同定

 肥満はエネルギーを消費する以上に摂取することで引き起こされる。このバランスを逆転させられれば、肥満を抑えられることになる。京都大学の研究グループはこのほど、そんな抗肥満に繋がり得る発見を、英国科学誌「Scientific Reports」電子版にて報告した。

 京都大学伊藤信行名誉教授、木村郁夫東京農工大学テニュアトラック特任教授(元薬学研究科客員准教授)、太田紘也神戸薬科大学研究員(元薬学研究科特定研究員)らの研究グループが、中尾一和医学研究科メディカルイノベーションセンター特任教授、伏木亨龍谷大学教授(元農学研究科教授)、小西守周神戸薬科大学教授らとの共同研究により明らかにしたのは、「neudesin」と呼ばれる分泌性因子が食事性肥満の鍵因子であることを同定したこと。

 同グループでは、ヒトcNDAデータベースからシグナル配列を目印にして新規分泌性因子を見つけ、その機能を調べてきた。今回、その1つであるneudesin遺伝子を欠損させたマウスを作成し、解析を行なった。

 すると、このマウスは正常に生まれ、外見にも異常はなかったが、痩せていた。また、高脂肪食を与えても、極めて太りにくかったほか、肥満に伴って発生するインスリンが効きにくくなる状態や、脂肪肝の発症にも耐性を示すことが明らかになった。

 このマウスは、体温の上昇が認められ、消費する酸素量も増加していた。また、心拍数など交感神経の活性化の指標値も上昇。これらにより、neudesin因子の欠損により、交感神経系が活性化し、エネルギー消費が更新した可能性があることが分かった。

 この成果を通して、neudesinを抗肥満薬創出の標的として利用する上で基盤となる知見が得られることが期待される。

(若杉 紀彦)