やじうまPC Watch
「国民機起動音発生装置 PiPo Ver.6.2A」を買ってみた
(2014/3/27 06:01)
PC-9800シリーズの“ピポッ”という起動音を再現する電子工作キット「国民機起動音発生装置 PiPo Ver.6.2」が、秋葉原にある三月兎2号店で発売された。土曜日深夜に僚誌AKIBA PC Hotline!に掲載されるのを見て、同日の午前中に早速店頭に足を運んで購入した。
本誌……というよりこの記事を読んでいる読者ならば、おそらくNECのPC-9800シリーズをご存知であろうが、知らないユーザーのために、ものすごく大雑把に説明すると、PC-9800シリーズは漢字テキストVRAMを採用し、当時としては画期的な日本語の高速処理を実現したPCである。それ故にPC-9800シリーズ上で開発された国産ソフトは非常に多く、それが“国民機”と言われる由縁である。
筆者も中学(1995年)の頃、PC-9800シリーズのユーザーであった。当時はWindows 95が発売され、DOS/V互換機も徐々に国内で浸透し始め、身の回りでも自作PCが芽生え始めたのを感じていた時代だが、親から中学への進学プレゼントとして、わざわざPC-9821の「VALUESTAR V12」を自らの希望で買ってもらったのを覚えている。
ちなみにDOS/V互換機を自作しなかった理由は、コンパイルのディスクマガジン「Disc Station」のゲームをプレイしたかったからである(初代はMSX。DS98時代を経て、12号からはWindows 95対応となっているが)。とは言えDOS/V互換と遜色なくWindowsアプリも扱えるし、DOS/V互換機をわざわざ買う理由もなかった。
学校から帰りPC-9821の電源を付けては、「ピポッ」の起動音を聞いていた。当時のPC-9821はMicrosoftが目指していたいわゆる「OnNow」のようなサスペンド機構がなかったため、PCを付けると「ピポッ」と音が聞こえるのは日常茶飯事のことだった。
ましてや、学校の技術の授業で使われるPCもPC-9801だったし、友達の家や父親の大学の研究室もPC-9801と、周りがPC-9800シリーズの環境でありふれていたので、DOS/V互換機を初めて使い、起動音が「ピッ」と鳴ることを知った時は、カルチャーショックを受けた覚えすらある。
つまり、筆者にとってPC-9800シリーズの起動音は青春の思い出だ。
前置きが長くなってしまったが、国民機起動音発生装置 PiPo Ver.6.2の説明書に書かれている、“ピポッ…と鳴らないのが寂しい。そう思ったことはありませんか?”というキャッチフレーズに、スッポリ当てはまったのが筆者であった。これは買わざるを得ないと思ったのである。
今回購入したのはフルキット。価格は1,400円(本来ならば1,400円は税抜き価格だったそうだが、店長のTwitterのミスで税込みと呟いてしまったために、初回ロットは消費税を店舗負担で1,400円。今後は税抜きとなるという)。中身は、プログラムが書かれたPIC(Peripheral Interface Controller)、基板、ICソケット、コンデンサ×2、フューズ、抵抗×3、可変抵抗(ボリューム)×3、ダイオード、タクトスイッチ、ピンヘッダ、ペリフェラル4ピンメスコネクタ、マザーボードのBEEPスピーカー入力ケーブル、基板サイズの絶縁シールである。
もちろん、すべての部品は自分で半田付けする必要がある。また、スピーカーも別途用意する必要がある。筆者はいろいろ楽しんで眺めながら半田付けしていたため1時間はかかったが、部品を一気に装着して半田付けするだけなら、20分足らずで終わるだろう。
ボリュームスイッチは3つあるが、VR1が音の長さ、VR2がマザーボードビープ音のミュート時間制御(0秒~5秒)、VR3が音量である。タクトスイッチはテスト用。ペリフェラル用4ピンにATX電源から出ているコネクタを繋げ、INPUTにマザーボードからのBEEP出力を繋げれば、マザーボードから出る本来のビープ音も出るし、起動時に5Vを検出すると「ピポッ」と鳴る仕組みだ。
VR1を反時計回りに回すと発音時間が長くなり、PC-9801 VM21などの「ピーポー」を再現。逆に時計回りに回すと短くなり、オーバードライブプロセッサ搭載時などの「ピョッ」という音になる。
組み立て後、筆者は一般的なPCケースに付属している小型のスピーカーを装着してテストしてみたが、音がイマイチPC-9800シリーズっぽくなかったので、8Ω/0.5Wのちゃんとしたコーン紙付きスピーカーに変えてみたところ、なかなかオリジナルに近い音となった。もう実機が手元にないので記憶頼りだが、PC-9800シリーズの大半にはこのサイズのスピーカーが接続されていて、そこからビープ音を発していたため、ちゃんとしたスピーカーのほうが再現性が高いのは間違いない。
マニュアルにはなかったが、パターンやシルク印刷を辿っていったところ、INPUTの左にも5V入力とGNDらしきものが用意されていた。ここにもピンヘッダを半田付けし、USBモバイルバッテリなどで5Vの電源を入れてみたところ、めでたく「ピポッ」と鳴ることが確認できた。腕に覚えがある人は、USBから電源を取って「ノートPCでもピポッ」したり、「USBモバイルバッテリでどこでもピポッ」したりと、いろいろ楽しめるだろう。
さて、実際に鳴っているところを動画に撮ってここにアップしたいところだが、それでは1秒程度のネタの面白さが台無しだし、何よりも動画ではそのレトロな雰囲気と忠実な音をお伝えできないため、ぜひとも店頭のデモ機、できれば実物を購入してその音を楽しんでもらいたい。
ちなみに、作者の“爆竹銃”氏のサイトを見ると、「国民機起動音発生装置 PiPo」は以前コミックマーケットなどで出品された実績があり、今回が初製品というわけではないようだ。風のうわさでは、僚誌の窓の杜でも以前にコミケで購入した人物がいるそうだ。また、部品の装着位置など改良を重ね、Ver.6.2Aまで辿り着いているのも分かる。
三月兎ではフルキットを20セット入荷したが、即日に売り切れとなった。爆竹銃氏によると現在部品を発注しており、早ければ週末にも再度店頭に並びそうである。さらに、基板を改良した「Ver.6.2B」も用意中だそうだ。Twitterでの読者の反応を見ると「どうみてもおじさんホイホイ」という声が多いが、筆者のように「えっ、おじさんなんてMSX世代を指すんでしょ」と年齢を偽り(?)つつ、青春の思い出に浸りたい人にオススメな逸品である。