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MIT、倉庫の物品管理に適したRFIDスキャンドローンを開発
2017年8月28日 19:09
マサチューセッツ工科大学(MIT)は25日(米国時間)、倉庫管理で用いられるRFID(Radio Frequency IDentifier)タグを読み取り、その情報をシステムに送信したり、タグの所在を特定するドローンを公開した。巨大倉庫をもつ企業では、年間数十億ドルもの減収に直面しており、解決策が求められていた。
RFIDタグは近距離の無線通信を行ない、読み取りを行なうリーダーに製品番号などを送信するものだ。在庫管理などで用いられるのは主にパッシブ型のタグで、リーダーから発された電波に情報を付加した上で反射し、応答するもの。通信距離は短いものの、電池が不要でタグそのものも安価というメリットがある。
そのため、RFIDタグは直接貼付するなどして在庫の把握にも活用されている。しかし、世界最大手のWalmartをはじめとした小売業では、倉庫があまりに巨大となり、手作業で在庫をすべて検査しようとすると1店舗あたりで3カ月以上が必要になるという問題がある。
また、近年ではWebと実店舗両方で商品を販売するクロスチャンネル販売も一般的となっているため、在庫を即時に、正確に把握できなければ顧客からの要求に応えられず、売り損じや仕入れ損なってしまう。同学によれば、Walmartの在庫表のミスに起因する収益減は2013年度で30億ドルにものぼるという。
MITは、こうした問題を解決するために小型のドローンを開発した。人が出入りする倉庫であっても安全に、かつRFIDタグを読み取れるほど近距離で正確に飛行できることが要求される。重く大型化することを避けるため、RFIDリーダーそのものはドローンに搭載せず、リーダーの発する電波を単純に中継する装置を搭載している。受信した電波も同様にドローンを経由し、在庫管理システムに転送されるという仕組みだ。
しかし、この仕組みはタグと中継器、そして中継器からリーダーの間で同じ周波数を利用するため、干渉が問題となる。通常ではそれぞれ異なる角度に設置されたアンテナを持つアンテナアレイを利用し、各アンテナがわずかに異なった時間で電波を受信することで輻輳を防ぐが、ドローンは軽量でなければならないため、アンテナアレイは搭載できない。
しかし、ドローンは絶えず飛行し続けているため、異なる時間に異なる場所で情報を送信し続けることでアンテナアレイと同様の効果を得てこの問題を解決した。さらに、応答を取得したわずかな時間差からRFIDタグとドローンの位置関係を算出することも可能とし、倉庫内での位置まで特定可能となった。位置推定の誤差はおよそ19cmほどで、正確性も確保されている。
これにより、既存の在庫管理システムと連携可能で在庫の把握の大幅な省力化を可能とした。研究者らは、今後2回目となる試験をマサチューセッツ州内の小売業者と協力して実施する予定だという。