やじうまPC Watch
窮鼠の坊主
~ストリートファイターVでG-Tune担当者が再戦を申し込んできたので、わからせてきた
2017年7月4日 11:00
此處(ここ)は、何處(どこ)だらう。
私は何をしてゐるのだらう。
私は生暖かい液體に浸つてゐる。
私は目を閉ぢてゐるのだらうか。
目を開けてゐるのだらうか。
暗い。
そして靜かだ。
--京極夏彦「姑獲鳥の夏」より
「製品はこちらに用意して御座います」。
物憂げな感じでそう告げるマウスコンピューターの女性広報担当者は、何処となく伏し目がちだ。口調は丁寧だが、口元は緊張で些か強張っているように見える。
東西線・日本橋駅で電車を降り、私が東京日本橋タワーに居を構えるマウスコンピューターを訪れたのは、幾分性能が高めのデスクトップマシンが必要だったからだ。
マウスコンピューターは、最近になり本社を神田紺屋町から日本橋に移した。都心に屹然する東京日本橋タワーは証券会社、銀行、商社等も入居するランドマークタワーだ。PC市場の成長が芳しくない中、何とも豪儀な話ではないか。旧本社が手狭になった、右肩上がりの業績に合わせて煌びやかな建物を選んだ、等と尤もらしい噂は幾つか聞こえてくるが、本当の理由は定かではない。
理由が明確でないのは、移転の件だけではない。
「評価機は在庫が御座いますので、お貸し出しさせて戴きます。弊社迄受け取りに来て戴けますでしょうか」。
マウスコンピューター広報担当者から数日前に受け取った電子メールは、そう締め括られていた。従前まで、機材を借り受ける場合、宅配便で配送して貰っていたが、今回は取りに来るよう促された。その真意を訝かしむも、本当の理由は分からない。
とは言え、そう言う些細な違和感は、得てして第三者の勘ぐりが過ぎるだけの場合も多い。案内された会議室の扉が、虹色に飾られた他の会議室とは違い、此れだけ無色なのも、確固たる理由など無い筈なのだ。
そう考え乍らも、今、製品の匣と私とを隔てている此の扉の前に立つと、得体の知れない焦燥感が澱の様に胃の底にやおら沈殿して行くようだった。
此処は、何処だろう? 私は何をしているのだろう?
今握っている戸の取っ手は熱を帯びている。周囲の空気も淀んでいる。私は生暖かい液体に浸かっている。
この場から帰りたかった。
だが、私が踵を返そうとするよりも僅かに早く、広報担当者は戸を開けた。
チュウ、と風が鳴った。
伽藍堂だった。
私は目を閉じているのだろうか。目を開けているのだろうか。
会議室なのに、机も、椅子も見当たらない。
暗い。そして静かだ。
一箇所を除いて。
椅子や机が縁に押しやられ、虚ろさだけが居残る会議室の奥隅には、画面に向かって念仏にも似た何かをぶつぶつと口遊みながら、荒い息遣いで神経質に手を動かしている青坊主が居た。
「フフ……。お待ちして居ましたよ、若杉さん。否、最近妙に自分の誌面に出娑張ってるのが鼻に付く4K修行僧さんとでもお呼びした方が良いですかね?」。
青坊主は振り返る事も無く、人一倍大きな背中越しに私を挑発してきた。
チュウ、と風が鳴った。
と言うことで、前置きが少しばかり長くなった。
筆者を待ち受けていたこの大柄の男性は、G-Tune担当者の安田氏。事情を訊くと、この前のC4 LANでのストリートファイターV組み手(ストリートファイターV大会@C4 LANで想定外のプロゲーマー ネモ氏乱入。4K修行僧、秒殺の洗礼を受ける参照)で、筆者に倒されたのが不本意だったとのこと。
えっ? まだ根に持ってたの!?
まぁ、マウスコンピューターのゲーミングブランドである「G-Tune」の看板を背負っているのだから、ストリートファイターV世界22万位(22位ではない。5月3日、C4 LANで4K修行僧「かわいがり大会」開催参照)の筆者に負けて憤慨するのも無理はない。
なにやら安田氏に勝たないとマシンは貸りられないようなので、ちょうどたまたま甚平も持ち歩いていたし、正装に着替え、対戦を引き受けることにした。
以下が、その対戦の模様だ。
と言うわけで、前回に引き続き完勝。無事G-Tune「LITTLEGEAR i310PA7-VRF」をお借りできた。近日、別の記事で利用させていただく。
ちなみに今回は、より実力が表われる3本先取(前回は1本先取)において、3対0という結果。さらに言うなら、筆者は2週間ほど前に使用キャラを豪鬼に変えたばかり。動画でわかるとおりコンボも確定反撃も相当失敗している。まだ人様と渡り合えるだけの実力がないので、豪鬼で対戦したことはなく、安田氏との戦いが初の対人戦だったが、ビックリするくらい簡単に勝ててしまった。
「余計なお手間を取らせてすみません」とのことで、広報担当者から3セット分の勝利者賞としてG-Tune特製のパーカー、Tシャツ、アクリルキーホルダーを頂いた。こちらは後日、読者プレゼントとして提供させていただく。
マシンも借りられたうえに、戦利品までいただき、ほくほく顔の筆者だが、安田氏の今後の社内での立場が気がかりでならない。
せっかく新オフィスに伺ったので、その内観を写真にて紹介する。
エントランスの巨大ディスプレイでは、某人気アイドルのあの華やかなTV CMも流されており、フロアマットに描かれた虹色のラインは、それぞれ色の名前がつけられ、その色で彩られた会議室へと来訪者を誘う。
会議室と対になる真向かいの打ち合わせスペースは、よく見ると「M・C・J」(マウスコンピューターはMCJグループ)の形にくりぬかれている。以前のオフィスも、会議室の壁にG-Tuneイメージキャラクターのイラストが描かれていたりとポップだったが、それに輪をかけて華やかになった感がある。窓からの眺望も絶景で、スカイツリーが見渡せる。きっと隅田川の花火大会もよく見えるに違いない。