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デス・スターのように複数のレーザーを束ね、高出力レーザー光を得る兵器技術

 オーストラリアのマッコーリー大学は3日(現地時間)、ダイヤモンドを用いて複数のレーザー光を束ね、1つの高出力なレーザー光を得る技術の実証を発表した。ミサイル迎撃や、増加するドローンを利用した脅威に対応することが応用として考えられている。

 レーザー光中の光束は、それぞれの位相が一致したコヒーレント光であることが知られている。この性質により、レーザー光は高い直進性や、自然光に比べて高い集光率を可能としている。例えば、レーザー溶接機などはすぐれた集光率を利用し、一点にエネルギーを集中させる技術だ。

 一方で、高出力なレーザーがレンズなどの光学部品を通過するさい、レーザー光の一部はレンズに吸収され、熱を発しレンズの膨張などを引き起こす。この膨張がレンズの光学特性を変化させ、焦点距離のズレによる出力低下などを引き出すなどの問題がある。これは熱レンズ効果と呼ばれ、1基によるレーザー出力の技術的限界の1つとなっていた。

 同研究は、パルス幅の異なる複数のレーザー光をダイヤモンド中で集光することでそうした歪みによる出力低下を低減しつつ、高出力のレーザー光を得ることに成功したというもの。また、ダイヤモンドは共有結合結晶であり、非常に熱の拡散が早いという性質もこの用途に好適となる。

 また、単にレンズによってレーザーを集光するだけではないという点も特徴。同研究は、物質に光を入射したさい、出力光には入射光と異なる周波数の成分が生じるという誘導ラマン散乱という現象を利用している。その際に生じる周波数の異なる光をストークス光と呼ぶ。

 同研究で出力として得られるのはそのストークス光なのだが、ストークス光はコヒーレントなため、相互に打ち消し合わないほか、レーザーとしての性質を保つ。また、ダイヤモンドは特にラマン散乱が強く発生するため、その効率は69%にも達するという。

 この研究は、今後のより継続的で高出力なレーザー技術の実現につながると考えられている。