やじうまPC Watch
【懐パーツ】2D時代トップに君臨するS3 Vision968搭載の「Diamond Stealth 64」
2016年9月22日 06:00
ある日“なんか面白いものないかな~”とヤフオクを眺めていたら目に入ってきたのが、S3のVision968ビデオチップを搭載したDiamond Multimediaの名機「Stealth 64 VIDEO VRAM PCI」である。ほぼペットボトルのお茶2本分の280円という価格だったから落札せざるえなかった。
S3は1989年に設立された会社だが、CPUの2D描画を肩代わりするビデオチップ「86C911」で“グラフィックアクセラレータ”というジャンルを確立させ、1990年代前半に一躍有名になった。Diamond Multimediaも、この86C911を搭載したカードのリリースで有名になった会社である。
86C911シリーズは、ビデオチップからのアクセスとRAMDACからのアクセスを両方同時に行なえるデュアルポートDRAMが必要だったため、価格が高価である。そこで、より廉価なDRAMが使えるようにした「86C801」も投入する。それ以降9系はハイエンド、8系はメインストリームとしてそれぞれの進化する。
S3の最盛期は1994年頃で、64bitバスを採用した「Vision964」とその廉価版の「Vision864」、そしてVision864をベースにRAMDACを統合し低価格化を図った「Trio64(86C764)」を投入する。今回紹介するVision968は、このVision964の後継であり、ビデオCD再生時にCPU負荷を下げられるMPEG-1動画再生支援機能を統合したバージョンとなっている。Windows 95登場に伴い3Dが流行する直前の、Matrox Millenniumと双璧を成す2D時代のトップエンドとも言うべきチップである。
筆者がPC-9821/V12を購入し、雑誌などでPCの知識を身に着け始めたのもほぼこの時期だったので、Vision968/868系は思い入れのあるチップである。PC-9821/V12のビデオチップはCL-GD5440でビデオメモリ容量が1MBしかなかったので、上新電機のショーウィンドウ越しにカノープスの「Power Window 968PCI」を眺めながら“あ~いいなぁ”などと指を咥えていたものである。
筆者はPC-98派だったので、基本的にアイ・オー・データかメルコかカノープスの3択で、Diamond Multimediaという会社はStealthではなくVoodoo 2を搭載した「Monster 3D II」などで知ったりする。
余談はさておき、今回入手したStealth 64は「もしかして昨日工場から出荷したばかりの新品ですか?」と言わんばかりの美品であった。少なくとも20年は経過しているだろうから、落札前は、ブラケットがサビだらけで、基板もくすんだ状態で来るだろうなと思ったのだが、びっくりするぐらい新品に近い状態に届いた。保管した人や場所の良さもあるであろうが、相当な耐久性を持つ基板やブラケット、部品にコストを掛けていた跡も伺える。
ビデオメモリはSamsungの「KM428C256J-7」。256Kワード×8bit構成のファーストページビデオDRAMで、レイテンシは70ns。ポートはもちろん2基備えている。
ちなみにStealth 64は画質にも定評があったビデオカードである。RAMDACにMatrox Millenniumと同じTI製の「TVP3026-220PCE」を採用しているから、それもそのはずだ。また、ボード上にはバッファチップやインバータチップなども多数実装されており、この辺りも画質に影響を与えていたのかもしれない。性能と画質が両立していたことから、業界人にこのカードの話を持ち込む度に「ああこれは売れた」と口を揃えて証言する。