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2億1,500万年前にも隕石衝突で海洋生物が絶滅

~日本の大学が証拠発見

三畳紀後期における放散虫、アンモナイト、コノドントの生物多様性の時代変化。三畳紀後期には大きく3回の絶滅が起こっており、このうち2億1,500万年前の絶滅は、隕石衝突により引き起こされたと考えられる

 地球の歴史において、巨大隕石の衝突が原因で生物が絶滅した事例は、6,600万年前の「白亜紀/古第3紀境界」についてのみ証拠が見つかっている。しかしこのほど、国内の大学などで構成される研究チームが、2億1,500万年前にも隕石衝突が原因で海洋生物が絶滅した証拠を発見したと発表した。

 調査、研究を行なったのは、熊本大学、海洋研究開発機構、高知大学、東京大学、新潟大学、千葉工業大学の研究グループ。これまでの研究で、2億1,500万年前に、アンモナイト、放散虫、コノドントなどの海洋生物が大きな絶滅を経験しており、また同時代に直径3.3~7.8kmという巨大な隕石が地球に衝突した証拠も見つけていた。しかし、2つの事象の因果関係は明白でなかった。

 そこで同グループは、岐阜県坂祝町にみられる三畳紀後期のチャートから、大きさ1mm以下の放散虫とコノドント化石を酸処理抽出し、この時代を通じた化石群集の絶滅パターンについて検討。結果、隕石衝突の直後に、非常に高い割合でこれらの化石群集が絶滅していることが分かった。

 また、この時代の海洋表層における植物プランクトンの生産量(基礎生産)と、動物プランクトンである放散虫の生産量の変動パターンを詳しく調べた。その結果、食物連鎖の基底をなす基礎生産が、隕石衝突後の数万年間にわたり著しく低下し、それに伴い、放散虫の生産量も低下したことが明らかとなった。そして、基礎生産が衝突以前のレベルに回復したあとも、放散虫の生産量は約30万年にわたり元のレベルには戻ておらず、衝突以前に生息していた古い放散虫群は、ほとんどの種が絶滅したことが分かった。

 この研究成果は、7月8日付けのNature系科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

 今後同グループは、世界各地の三畳紀後期の地層から隕石衝突によって形成された地層を探索し、当時陸上に生息していたほ乳類型は虫類や恐竜も含めた全球規模での検討を目指す。

三畳紀後期における放散虫の絶滅率。隕石衝突(黄色矢印)の直後に高い絶滅率を示す。ここでは、21種中18種の放散虫化石種が絶滅した
左から(1)基礎生産の指標となる有機炭素同位体比、(2)放散虫生産量、(3)放散虫化石種の生存レンジ(期間)の垂直変化。隕石衝突直後の数万年間(図中E1の期間)は、基礎生産と放散虫の生産量が急激に低下している。放散虫の生産量は、基礎生産が衝突以前のレベルに回復した後も、約30万年間(図中E2の期間)にわたり元のレベルには戻らなかった。この30万年間に、新たな放散虫群集(図中の青で示された放散虫化石種)が出現し、古い放散虫群集(図中の赤で示された放散虫化石種)はほとんどの種が絶滅へと追いやられた