やじうまPC Watch

実在しない車のCMを撮影できる変幻自在の四輪車「BLACKBIRD」

 CGによる特殊効果などを手がけるデザインハウスThe Millが、存在しないあるいは第三者に見せられない自動車のCM撮影を目的とした特別な四輪車「BLACKBIRD」を開発。このほど、カンヌ ライオンズフェスティバルでゴールドイノベーション賞を受賞した。

 新車のCM撮影にあたっては、未発表の車を人目にさらさないため、撮影場所や時間などさまざまな制約、障壁がある。その問題を解消するため、The Millが2年の歳月をかけて開発したというBLACKBIRDは、全体が黒ずくめで、バギー車のような外観をしている。実際にドライバーが乗車して、普通に運転できる。

 The Millは、映画などで培った合成技術を使い、実際のロケーションで走行するBLACKBIRDに実写と見分けの付かない新車の外観をCGで重ね合わせる。今の技術であれば、何もないところに走行する車をCGで合成することもできるが、やはりCGだと走行が不自然になることもある。あくまでも実車ベースとすることで、走行時の挙動や、車体の陰、タイヤが巻き上げる土煙などをCGに頼ることなく撮影できるのがBLACKBIRDのメリットだ。

 また、BLACKBIRDはボタン1つで全長を最大4フィート(約1.2m)、全幅を10インチ(約25.4cm)伸び縮みさせることもできる。サスペンションやホイールも取り替え可能で、再現する車と合わせることで、走行性能をより精密に合わせることができる。

 さらに、BLACKBIRDの屋根上には4台のカメラとレーザーセンサーを搭載。走行時の周囲の映像をキャプチャしながら、形状をスキャンすることで、CGの車に高精細な映り込みを実現できる。さらに、このシステムを応用して、VRアプリでその車のドライバー視点の360度映像も制作できる。

このようにCGで外観を重ね合わせる
全長、全幅をスイッチ1つで変更可能。サスペンションやホイールも取り替えられる
屋根に搭載したカメラとセンサーで周囲の撮影とスキャニングも可能