イベントレポート
【Intel基調講演】Core MでPCが優れたデザインへと進化する
~東芝のCore M搭載クラムシェル型薄型ノートPCもチラ見せ
(2014/9/8 06:00)
Intelは、ドイツ・ベルリンで9月5日~10日の予定で開催されているIFAの期間中に、新製品となるCore Mプロセッサ(以下Core M)を発表した。それに合わせて、9月5日の夕刻に行なわれたIFAの基調講演に、同社上席副社長 兼 PCクライアント事業本部 事業本部長 カーク・スコーゲン氏が登壇し、Core Mの概要や搭載製品などに関する説明を行なった。
この中でスコーゲン氏は「これまでユーザーはタブレットとPCの両方を持っていたが、それを1つにしたいという要望が多数あった。我々が出荷したCore MはTDPが4.5Wで、OEMメーカーはファンレスでタブレットや2-in-1デバイス、ノートブックPCを製造することが可能になり、より優れたデザインの製品が市場に登場するだろう」と述べ、それらが10月から順次登場するとした。
また、スコーゲン氏は講演の中で、現時点では未発表の東芝のCore M搭載薄型ノートブックPCを公開し、注目を集めた。
4,000万台のIAタブレットの計画は予定通り、XMM-7260搭載製品も
Intelのスコーゲン氏は、PCクライアント事業本部というクライアント向け製品を扱う事業部を率いている事業本部長で、CoreプロセッサやCore M、Pentium、Celeronといった製品が同氏の担当になる。このため、今回の基調講演の多くの時間はCore Mの紹介に時間が費やされた。
しかし、その前には同氏の担当外の製品の紹介を始めるところから講演は始まった。最初に紹介したのは、組み込み向けのCore i7を搭載したコーヒーマシン。同社はこうした自動販売機などに向けた組み込み向けCoreプロセッサの販売に力を入れており、日本でもJR東日本の駅などに設置されている自動販売機が、Coreプロセッサベースであることがよく知られている。
スコーゲン氏は「この自動販売機はHDのディスプレイを持っており、Core i7ベースで、OSはLinuxになっている。自動販売機の状態を遠隔から知ったり、どの年代の顧客がどんなドリンクを買っているかなどの統計も取ることができる。まさにサプライチェーンを変えるモノだ」と述べ、今までインターネットに接続されていなかったデバイスにも、プロセッサが入ることで、世界が変わっていくだろうとした。
ウェアラブル、IoTについても触れ「Intelではニューデバイス事業本部という新しい事業部を設立し力を入れている。8月の末にはIoT用になる世界最小の3Gモデムを出荷するなど、ソリューションを拡張している」と述べ、IntelがIoTやウェアラブルに関して真剣に取り組んでいるのだと説明した。スコーゲン氏によれば、Intelは9月4日に“My Intelligent Communication Accessory”(MICA)と呼ばれる女性用のアクセサリをニューヨークの高級店Barneys New Yorkで販売を開始するなど、取り組みを強化しているとした。
さらに、話題はBay Trailを搭載したタブレットの紹介に移り、「我々は今年4,000万台のIAベースのタブレットを市場に登場させることを公約にしてきたが、それは順調に実現に向けて推移している。さらに魅力的なタブレットが登場しつつあり、東芝からはわずか119ドルのWindowsタブレットも登場している」と述べ、Toshibaの「Encore Mini」や、Acerの「Iconia 8」、Lenovoの「TAB S8」、ASUSの「MeMO Pad 7」などを紹介し、IAタブレット4,000万台の目標を着実に実現しつつあるとした。
また、同社の新LTEモデム「XMM-7260」についても紹介し、「XMM-7620はすでに出荷済みで、通信キャリアの認証も順調に進んでいる。現時点ではCAT.6で通信できるLTEモデムを発表できているのは2社しかなく、現在我々の顧客が新しい製品を開発中だ」と述べ、昨年(2013年)から今年にかけて大きく進化した同社のLTEモデムについてもアピールした。
デスクトップPCは死なず、NUC、ポータブルAIO、ゲーミングPCへと進化していく
次いでスコーゲン氏は、同氏の担当分野でもあるPC関連の製品に話を移した。「これまで何度も“デスクトップPCは死んだ”という人がいたが、実際には死んではいない。デスクトップPCは形を変えて生き残っている」と述べ、これからも市場として成立するだろうとした。
「現在我々はNUC(Next Unit of Computing)やAIO(All In One、液晶一体型PC)などに取り組んでおり、OEMメーカーが多数のポータブルなAIOを出荷している。現在そうしたポータブルAIOに対応したアプリケーションも170種類近く出てきており、今後も拡張されるように力を入れていきたい」と述べ、今後もテーブルトップPCやポータブルAIOなどと呼ばれる製品の普及をIntelとしても努力をしていくとした。
さらにPCゲーミング向けの製品についても言及し、「PCゲーミングの市場は非常に大きく、750億ドルの市場。世界の人口の10%はアクティブゲーマーと言ってもよく、すでにコンソールゲームよりもPCゲームの方が市場としては大きくなっている」と述べ、IntelとしてもPCゲーミング向けの製品を充実させていくとした。そして、最近同社が投入した2つのハイエンドPCユーザー向けの新製品Core i7-4790K(開発コードネーム:Devil's Canyon)とCore i7-5960X(開発コードネーム:Haswell-E)について触れ、Intelは自作PC向けのソリューションに再び力を入れており、今後もより魅力的な製品を投入していくと述べた。そして、Core i7-5960Xを利用して3つの4Kディスプレイを接続してゲームを行なうデモを公開し、Core i7-5960Xの強力さをアピールした。
また、スコーゲン氏は同社の内蔵GPUでも上位SKUとなるIrisとIris Proについて触れ「ヨーロッパは単体GPUの需要が強いマーケットだが、IntelのIris、Iris Proは単体GPUに負けない性能を持っており、特にモバイルでは大きな意味があると思う」と述べ、AcerやMSIのIris、Iris Pro搭載の薄型ノートPCを紹介して、薄型ノートPCでもゲームをしたいユーザーにはお薦めだとした。
Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovoの5社が10月以降に製品を発表
次にスコーゲン氏は今回の講演のメイントピックであるCore Mの紹介へ話を移した。スコーゲン氏は「タブレットを買おうと考えているユーザーを調査すると、不満点として挙げられていたのがタブレットとPCの両方を買わないといけないということだった。そこで我々は2-in-1というカテゴリを導入し、1つを買えばコンテンツ消費と生産性向上両方に使うことができる」と述べ、Core Mを正式に発表した。「新しいCore Mは4.5WのTDPを実現しながら、Coreプロセッサに近い性能を実現している。IFAでは5つのOEMメーカーから20の製品デザインが発表され、多くは10月に登場することになる」と述べ、その製品をアピールしていった。
スコーゲン氏が紹介したのは、ASUSの「Transformer T300FA」、Acerの「Aspire Switch 12」、HPの「ENVY X2」、Lenovoの「ThinkPad Helix」などで、これらはいずれもIntelの記者会見に先立ってOEMメーカーから発表されていた製品となる。さらにIntelのプレスリリースではDellの「Latitude 13 7000」シリーズもCore Mを搭載した製品であることが明らかにされたほか、基調講演ではToshibaもクラムシェル型のCore M搭載ノートPCを計画しており、そのサンプルが公開された。
現時点ではToshibaより正式に発表はされていないが、講演終了後に確認したところでは、2-in-1デバイスではクラムシェル型ノートPCとなっており、かなり薄型のノートPCであることが確認できた。本体にはvPro付きのCore Mのロゴシールが貼られており、おそらく企業向けの製品ということになるだろう。
また、スコーゲン氏はCore i7/i5/i3といったCoreプロセッサのBroadwell版となる第5世代Coreプロセッサについても言及し「第5世代Coreプロセッサは一般的なノートPCやUltrabook向けに用意される。現在準備を進めており、2015年の初頭には登場する予定だ」と述べ、Core Mが10月から発売が開始される製品に、第5世代Coreプロセッサに関しては2015年の初頭以降になるという予定を明らかにした。
その後スコーゲン氏は、同社の進めるコンフリクトフリー(紛争地帯からとれる金属を使用しないという取り組みのこと)の半導体生産、WiGigを利用したワイヤレスドッキングステーション、A4WPのワイヤレス給電、RealSenseによるデモなどに触れて、講演を締めくくった。