イベントレポート
高密度サーバー向けのAtomに代わるBroadwellベースの「Xeon D」
~そしてSkylake世代のノートPCは完全無線へ
(2014/9/12 06:00)
IDF 2日目となる9月10日(現地時間)にはサーバー事業部、PCクライアント事業部の両トップによるメガブリーフィング(拡大説明会)が行なわれた。
この中でIntel上席副社長兼データセンター事業部事業本部長のダイアン・ブライアント氏は、同社が高密度サーバー向けとして提供しているAtom SoCに加えて、「Xeon D」プロセッサのサンプル出荷を開始したことを明らかにした。Xeon DはBroadwellをベースにしたSoCで、Intelの高密度サーバー向けラインナップを広げる製品となる。
また、上席副社長兼PCクライアント事業部事業本部長のカーク・スコーゲン氏は、Core Mの性能について言及し「最新のQualcommのSnapdragonに比べてWebアプリで3倍、3Dで2倍の性能を持つ」とアピール。また、A4WPのRezenceによる無線給電、WiGigによる無線ドッキングステーション、WiDiによる無線4K出力などのデモを行ない、Skylake世代のノートブックPCや2-in-1デバイス、タブレットが完全無線の環境を実現できることを示した。
14nmで製造されるXeon Dをサンプル出荷、2015年前半に発表へ
ダイアン・ブライアント氏は、同社が月曜日に発表(別記事1、別記事2参照)した「Xeon E5-2600 v3」を含むサーバー向けのさまざまなソリューションを説明。加えて、Xeon Dという新プロセッサをOEMメーカーに向けてサンプル出荷開始したと明らかにした。
Xeon Dは、14nmプロセスのBroadwellをベースにしたサーバー向けSoCで、2012年にリリースされたAtom S1200、2013年にリリースされたAtom C2000に次ぐ高密度サーバー向けの製品となる。
従来の2製品が、Atomベースになっているのに対して、Xeon DはBroadwellと高性能アーキテクチャを採用しており、CPUとチップセットはパッケージ上でMCM(Multi Chip Module)で統合されたSoCとなる。Xeon DのTDPは15Wで、64 bit命令に対応し、正式なリリースは2015年前半なる予定。
また、ブライアント氏はサーバーラック内の効率を高める取り組みであるラックスケールアーキテクチャ(Rack Scale Architecture)に触れ、その進化の1つとして、シリコンフォトニクス光学モジュールのプロトタイプを使ったケーブルを公開した。パートナー企業7社により開発されたこのケーブルは、100Gbpsの帯域幅で、300mのケーブル長を実現。将来的には2kmまで伸ばせるという。
このほか、Clouderaの共同創始者兼最高戦略責任者のマイク・オルソン氏が壇上に呼ばれ、ビッグデータの分析に利用されるHadoop(ハドゥープ、大規模データの分散処理を行なうオープンソースソフトウェア)に関して、Clouderaが提供するHadoop 5.2のディストリビューションをIntelアーキテクチャに最適化を行なったと語った。
Snapdragonと比較して2~3倍の性能
カーク・スコーゲン氏は、先週のIFAで発表されたCore Mを含む、同社のPCクライアント向けの製品の戦略を説明した。内容としては、同氏によるIFA基調講演(別記事参照)とかぶる内容が多かったので、それとかぶらない話を中心に紹介していく。
カーク氏の講演のタイトルは「PC Reinvention and Innovation」(PCの再定義と技術革新)で、古めかしいな機器と見られがちなPCを再定義してより進化させ、新しい技術革新を盛り込むことで開発者にもエンドユーザーにも魅力的なプラットフォームにしたい、そういう意味合いが込められている。
スコーゲン氏は、2-in-1デバイスに関して話し始めた。「ノートブックPCの再定義は数年間かけて進行している。2010年に最初のCoreプロセッサを導入し、2011年にUltrabookの構想を発表。2012年にはそれにタッチを加え、2013年には第4世代Coreプロセッサの導入とChromeサポートを追加した」と振り返る。
「生産性の高いコンテンツ制作と、コンテンツ消費という2つの機能を持つのが2-in-1デバイス。つまり最高のクラムシェル型ノートPCであり、最高のタブレットだ」とした。
その2-in-1向けに新たに投入される第5世代となるCore Mについては、「Core MはPC向けとしては5年ぶりとなる新ブランド。消費電力はわずか4.5Wで、IntelのPC向けのプロセッサとしては最も低消費電力を実現した」と述べた。
スコーゲン氏はCore Mの性能データとして、QualcommのSnapdragonを搭載したタブレット(イラストにはWindowsボタンが用意されていたので、おそらくWindows RTタブレットだと思われる)とほぼ同じ重量、薄さ、バッテリ駆動時間で、Webアプリケーション利用時に3倍、3Dグラフィックス性能で2倍の性能を実現していることを示した。
その後、IFAで紹介したのと同じCore Mを搭載したOEMメーカーのマシンを紹介し、これらの製品が10月から順次登場するとした。Core M(Broadwell-Y)以外のBroadwellとなる第5世代Coreプロセッサは、2015年の初旬から順次発表される。
また、スコーゲン氏は9日に行なわれた基調講演で公開された、Broadwellの次世代となるSkylakeのデモ再び行ない、今回はゲームの「Torchlight 2」を実際に動かして見せた。Skylakeのシリコンは順調に開発が進んでおり、2015年の後半に市場に登場する予定。
2015年末には完全無線のPCを実現
次いでスコーゲン氏は、PCのユーザー体験を大きく変えていく、具体的には完全無線化と、パスワードの不要化を実現し、新しい自然なUIを導入していく計画について話した。
Intelは2003年に導入したCentrinoで、Wi-FiをPCに持ち込んだ。それにより、EthernetケーブルからノートPCが解放された。同じような考え方で、Skylake世代のPCで、ディスプレイ、ドッキングステーション、ACアダプタの3つを無線にする技術を導入していく。
Intelがここ数年のPCで導入しているWiDi(Intel Wireless Display)は、Intelの内蔵GPUが入っている製品で利用できる。最新のWiDiは、業界標準となるMiracastと互換性があり、実質的にはMiracastとして利用することができるため、対応の機器が増えつつある。
今回Intelは、LGの4K TVを利用してWiDi経由でPCから4K出力をできる様子をデモした。ステージ上では何も言及はなかったが、利用されていたのは第5世代Coreを搭載したノートPCで、4K TVはLGが2015年初頭にリリースする予定のもの。第4世代Coreでは、ディスプレイデータを圧縮するエンコーダの性能が、4Kをリアルタイムに処理するほどの性能がないが、第5世代Coreでは可能になるという。
ついでスコーゲン氏は、近距離高速無線通信技術であるWiGigに対応するIntel Wireless Gigabitというブランド名を明らかにし、無線ドッキングステーションや、無線のデータ通信などに使っていくとした。IntelはWiGigの技術を、2015年の前半からOEMメーカーなどに提供する予定。今回のIDFやIFAではWiGigを利用した無線のドッキングステーションがデモされており、ノートPCを近付けるだけで自動的にディスプレイの出力が切り替わる。
Intelおよび、Qualcomm、Samsung Electronicsなどの業界各社と結成している業界団体A4WPは、磁気共鳴方式の無線給電技術「Rezence」(レゼンス)を規定している。Intelは、2015年の第1四半期には無線給電の仕組みを入れたSkylakeのリファレンス開発システムを開発者に提供していく。スコーゲン氏は、ユーザー側となるエミレーツ航空のIT責任者であるサンジェイ・シャルマ氏を壇上に呼び、空港のラウンジや飛行機の中にRezenceの給電側を用意する可能性に関して語り合った。
このほか、スコーゲン氏はソフトウェアソリューションとハードウェアソリューションを組み合わせることで、パスワードをユーザーが入力する必要がなくすことを2016年の末までに実現すること、音声認識機能のさらなる拡大、近々PCに実装されるRealSense 3Dカメラを利用したデモなどを紹介し、今後もPCをさらなる便利でスマートなデバイスにしていくと約束した。