イベントレポート

【詳報】【Qualcomm編】
Snapdragon 800搭載のWindows RT 8.1タブレットを公開

~新興国市場をターゲットとするリファレンスモデルも新たに提供

Qualcomm社長、Steve Mollenkopf氏。Snapdragonシリーズや、今後のモバイル市場の成長について語った
会期:6月4日~8日(現地時間)

会場:

Taipei World Trade Center NANGANG Exhibition Hall

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 3

Taipei International Convention Center

 米Qualcommは、COMPUTEX TAIPEI 2013 SUMMIT FORUMの基調講演において、同社のフラッグシップSoC「Snapdragon 800」を搭載するWindows RT 8.1対応タブレットのリファレンスモデルを公開した。

 基調講演にはQualcomm社長、Steve Mollenkopf氏が登壇し、同社の主力SoC「Snapdragon」シリーズや、今後のモバイル市場の成長について語った。

 Mollenkopf氏は、「モバイル市場は、私たちが想像していないようなスピードで成長している」と語る。スマートフォンやタブレットの出荷台数は、2012年でPCデバイスに対し約2倍、市場規模もPCを上回っているが、5年後の2017年には、出荷台数が6倍に増え、市場規模もさらに拡大する勢いであり、今後10年でコンピューティングの世界が大きく変革するとした。

スマートフォンとタブレットの出荷台数は、2017年にはPC機器の6倍に増え、市場規模も大きく拡大すると予測
Snapdragonシリーズはモデム機能が内蔵され、さまざまな通信方式や周波数帯域に柔軟に対応できる点が強みと指摘

 その一方で、モバイルデバイスの設計は非常に難しいとも指摘。多種多様な消費者のニーズを満たすには、小さなボディの中に、高性能で、常にネットワークやクラウドに接続されるといった機能や、十分なバッテリ駆動時間を実現するバッテリを詰め込まなければならないからだ。そのため、製品開発には多大な苦労が必要となる。

 しかし、Qualcommにはモバイル機器が必要とするほぼ全てのデバイスと、それらを最適に利用するためのカギとなる技術があり、それらを提供することで、スムーズな製品開発が行なえるようにサポートしていると語る。例えば、今年登場したフラッグシップモデルも含めたSnapDragonを搭載する製品の多くが、Qualcommのリファレンスデザインを採用していると指摘。より良い製品が迅速に市場に供給されるように、Qualcommはパートナーとの対話や協力を惜しまないとMollenkopf氏は語った。

Qualcommには、アプリケーションプロセッサ、モデム、GPU、GPS、DSPなど、さまざまなナンバーワンの技術があり、それらを最適に利用できるようにサポートする
数多くのメーカーが発売する製品で、Qualcommのリファレンスデザインが採用されている

 そして、その例として取り上げられたのがASUSの製品だ。壇上に招かれたASUSのCEO、Jonney Shih氏は、「QualcommとASUSが協力することによるシナジー効果で生まれたすばらしい製品」として、「PadFone Infinity」や、LTE機能搭載の新タブレットを紹介した。LTE機能搭載新タブレットは、フルHD液晶を搭載し、SoCにSnapdragonを採用。2013年第3四半期に発売予定としている。

 また、これまでQualcommはOEMパートナー向けにSnapdragon搭載スマートフォンのリファレンスモデルを提供してきたが、新たにタブレットのリファレンスモデルを提供することについても紹介された。用意されるタブレットのリファレンスモデルは、10型および7型で、3G対応モデルとWi-Fi専用モデルが提供される。これにより、モバイルコンピューティングの変革をより多くの地域に届けられるとした。

ASUSTeC Commuter、CEO、Jonney Shih氏は、Qualcommとの協力で生まれた製品として、「PadFone Infinity」を紹介
フルHD液晶投資あのLTE対応タブレットの新モデルを2013年第3四半期に投入することも表明
スマートフォンのリファレンスモデルに加え、タブレットのリファレンスモデルも新たに提供
上が10型タブレット、下が7型タブレットのリファレンスモデル。双方ともSnapdragon 400が搭載されるという

 加えて、6月4日(現地時間)に発表された、Snapdragon 800によるWindows RT 8.1をサポートについても言及。Windows RT 8.1は、ARMプロセッサ向けOS「Windows RT」の次期バージョンで、基調講演では、実際に動作しているSnapdragon 800搭載Windows RT 8.1対応タブレットのリファレンスモデルを披露し、実際の操作や、Webブラウザと動画再生アプリを同時に表示し、Webアクセスと動画再生を同時に行なうマルチタスク動作のデモなどが行なわれた。

 ハードウェアの詳細は公表されておらず不明だが、10型クラスの液晶を搭載し、裏面には1,200万画素のカメラを搭載。NFCロゴも確認できたので、NFCも搭載しているものと思われる。側面にはSDカードスロットやUSB 3.0ポート、Micro HDMI出力なども確認。クレードルにもUSBポートやHDMI出力などが用意される。

Qualcommは、Snapdragon 800によるWindows RT 8.1のサポートを表明
基調講演で公開された、Snapdragon 800を搭載するWindows RT 8.1対応タブレットのリファレンスモデル
裏面には、1,200万画素のカメラやNFCロゴが見える。リファレンスモデルのため、Snapdragonロゴが印刷されていた
側面には、SDカードスロット、Mini USB 3.0ポート、Micro HDMIなどが用意されている
上部には電源ボタンとヘッドセットコネクタが見える
基調講演では、実機を使って動画再生などのデモが行なわれた
Windows RT 8.1の新機能となる。画面を2分割して2つのアプリを同時に利用するマルチタスク動作の様子

 基調講演後に行なわれたラウンドテーブルでは、Qualcommの副社長Terry Yen氏と、シニアディレクターのStephen Horton氏により、基調講演で語られた内容の補足的な説明が行なわれた。その中で、Qualcommがタブレットのリファレンスモデルを用意するのは、新興国などより多くのマーケットをターゲットにするためと説明。また、Snapdragon 800によるWindows RT 8.1サポートについては、LTEでの常時接続などモバイル機器の体験がWindowsプラットフォームにもたらされるとした。

 ところで、市場が決して大きくないWindows RTをサポートすることの意義について尋ねたところ、Windows RTは消費者に新しいユーザー体験を提供し今後の成長が期待できること、また顧客にOSの選択肢が増えることの2点が示された。この回答を含め、Windows RTに関しては、サポート発表直後ということもあり、基本的に前向きな内容で終始した。

 確かに、Qualcommのサポートや、Windows RT 8.1での機能向上などにより、シェアが伸び悩む現在のWindows RTを取り巻く状況が変わる可能性も考えられる。ただし、Windows RTの現状を考えると、非常に厳しい道のりであるとも思える。MicrosoftとQualcommのパートナーシップはもちろんのこと、Qualcommがどれだけ強い意志を持って取り組むかが問われることになりそうだ。

Qualcommの副社長Terry Yen氏は、マーケティングの観点から基調講演の内容を補足説明した
シニアディレクターのStephen Horton氏。SnapdragonやWindows RTの機能面を解説した

(平澤 寿康)