イベントレポート
Lenovo、Androidタブレット「IdeaTab」3機種を発表
~最下位モデルは100ドル切りか
(2013/2/26 15:58)
LenovoはMWC 2013で、1月に行なわれたInternational CESで発表したハイエンドスマートフォン「IdeaPhone K900」の詳細を明らかにし、東南アジアなどの新興諸国に進出するとした。
また、「IdeaTab」のブランドで販売しているコンシューマ向けAndroidタブレット3モデルを発表した。いずれも台湾MediaTekのSoCを採用し、価格競争力を重視した製品に仕上がっている。
スマートフォンは今後成熟市場も狙うLenovo
Lenovoビジネスオペレーションズ&ワールドワイドビジネス開発担当副社長のJD.ハワード氏は「我々はPCだけでなく、「PC+」のビジョンに基づいて、12モデルのスマートTV、15モデルのタブレット、48モデルのスマートフォンを投入している。すでに1,000人を超えるエンジニアが製品開発に携わっており、製品部門では300人を超える社員が働いている」とし、Lenovoが2011年から開始したMIDH(Mobile Internet Digital Home)事業部が順調に立ち上がっていることをアピールした。
Lenovoと言えば「Think」や「Idea」など、PC専業メーカーというイメージが一般的だろう。しかし、コンピューティング機能を備えたデジタル機器は、もはやPCだけでなく、タブレットやスマートフォン、スマートTVもその範疇になっている。PCメーカーの中にも、PCだけでなくそうした製品に乗り出すメーカーは多く、Lenovoも2011年にMIDH事業部を設立し、製品の拡充を図ってきた。
「MIDH事業部を設立した当初、Lenovoのタブレット/スマートフォンのシェアはゼロに近かった。しかし、製品ラインナップ順次拡充したことで、中国のタブレット市場でSamsungに次いで2位、2012年の11月~12月期のスマートフォン世界市場で5位のシェア(IDC調査)を獲得することができた」とした。
Lenovoはこれまで、タブレットに関しては中国のような成長市場と日米のような成熟市場の両方を狙ってきた。実際に日本でもIdeaTabブランドの製品が販売されており、低価格なタブレットとして受け入れられている。これに対してスマートフォンに関しては成長市場のみをターゲットにしており、成熟市場は狙ってこなかった。
理由の1つは成熟市場ではすでに多くのメーカーが存在しており、新たに参入するLenovoが互角に戦うのは難しかった点。そしてもう1つは、何よりLenovoのお膝元とも言える中国市場が成長市場であることもあり、まずそこにフォーカスし、シェアを獲得するのが妥当だからだ。
だが、今後はLenovoもスマートフォン市場でも成熟市場に参入していく意図を持っている。ハワード氏は「ただ、成熟市場では通信キャリアとの関係を含めて解決すべき問題があり、時間はかかるだろう」と述べ、課題をクリアにしてから成熟市場に乗り出していく意向を明らかにした。
成熟市場へのステップとなるIdeaPhone K900
そうした成熟市場向けにおいて1つのステップになる製品が「IdeaPhone K900」だ。IdeaPhone K900は2012年に中国市場限定で投入したAtom Z2460(Medfield)搭載IA(Intel Architecture)スマートフォン「IdeaPhone K800」の後継となる製品で、新たにAtom Z2580(2GHz、Clover Trail+)を搭載した。
IdeaPhone K900 | |
---|---|
SoC | Intel Atom Z2580(デュアルコア、2GHz) |
モデム | Intel XMM 6360 HSPA+(42Mbps) |
帯域 | GSM 850/900/1800/1,900MHz , WCDMA 850/900/1,700/1,900/2,100MHz |
OS | Android 4.2 |
スクリーン | 5.5型(1,920×1,080ドット、IPS、400cd/平方m) |
メモリ | 2GB(LPDDR2) |
ストレージ | 16GB |
外部メモリ | microSDXC |
サイズ | 6.9×78×157mm(幅×奥行き×高さ) |
背面カメラ | 1,300万画素(Exmor)F1.8 |
前面カメラ | 200万画素 |
通信 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0 |
ポート | Micro USB(OTG)、USB2.0、ヘッドフォン |
バッテリ | 2,500mAh(リチウムポリマー) |
重量 | 162g |
センサーその他 | FMラジオ/A-GPS |
最大の特徴はデザインがK800に比べて大幅に改善されている点。K800の時は、いかにも成長市場向けのデザインだったが、今回のK900は成熟市場向けへのステップということもあり、背面は電波を通すような特殊な加工がしてあるステンレスを採用し、高級感のあるデザインに洗練した。
前面は5.5型のフルHD(1,920×1,080ドット)の液晶を搭載。背面カメラもiPhoneのようなフラットな構造だ。センサーはソニーのExmorのCMOSを利用しており、1,300万画素でF値は1.8となっている。こういった仕様からも成熟市場向けの志向が伺える。
性能も大きく向上している。従来のAtom Z2460は、シングルコアでHyper-Threading(HT)対応となっていた。これに対してAtom Z2580はデュアルコアでHTにより論理的に4スレッドとなる。また、GPUもPowerVR SGX 540からPowerVR SGX 544 MP2に強化され、処理能力が向上している。UI表示周りの性能も大きく改善され、3Dを利用したUIが軽快に動作する。
デザインと性能面だけを見ればこのまま成熟市場向けに投入しても良さそうなのだが、成熟市場向けの製品として物足りない点として、ワイヤレスネットワーク周りが挙げられる。K900では無線モデムに「Intel XMM 6360」を搭載しており、最大でHSPA+(42Mbps)にまで対応可能だが、LTEには対応していない。また、成熟市場におけるキャリアのニーズ(例えば日本市場ならワンセグ、おサイフケータイといった要求もある)に応えられるようにならなければいけないなど、今後の課題もある。
K900はK800と同様成熟市場に投入されない。K800で展開した中国に加えて、東南アジア、南アジア、ロシアといった成長著しい新興国に投入し、そこで成功を収め、成熟市場へ参入に必要なステップとする。投入時期は第2四半期頃とのことだ。
メインストリーム向けの製品として10.1型IPS液晶を搭載した
同時にLenovoは3つのタブレットを発表した。それが「IdeaTab S6000」、「同A3000」、「同A1000」の3製品だ。
IdeaTab S6000 | IdeaTab A3000 | IdeaTab A1000 | |
---|---|---|---|
SoC | MediaTek MTK 8389/8125(クアッドコア、1.2GHz) | MediaTek MTK 8389/8125(1.2GHz、クアッドコア) | MediaTek MTK8317(1.2GHz、デュアルコア) |
OS | Android 4.2 | Android 4.2 | Android 4.1 |
スクリーン | 10.1型(1,280×800ドット、IPS、350cd/平方m) | 7型(1,024×600ドット、IPS) | 7型(1,024×600ドット、TNパネル) |
メモリ | 1GB(LPDDR2) | 1GB(LPDDR2) | 1GB(LPDDR2) |
ストレージ | 16/32GB | 16/32GB | 4G/16GB |
外部メモリ | microSDXC | microSDHC | microSDHC |
サイズ | 260×180×8.6mm(同) | 194×120×11mm(同) | 199×121×10.7mm(同) |
背面カメラ | 500万画素(オートフォーカス) | 500万画素(オートフォーカス) | - |
前面カメラ | 30万画素 | 30万画素 | 30万画素 |
通信 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0、WCDMA (3Gのみ、オプション) | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0、WCDMA (3Gのみ、オプション) | IEEE 802.11b/g/n、BT3.0 |
ポート | Micro USB(OTG)、Micro HDMI、ヘッドフォン | Micro USB(OTG)、ヘッドフォン | Micro USB(OTG)、ヘッドフォン |
バッテリ | 23.5Wh (6,350mAh、リチウムポリマー) | 3,500mAh(リチウムポリマー) | 3,500mAh(リチウムポリマー) |
バッテリ駆動時間 | 8時間 | 8時間 | 7時間 |
重量 | 560g | 約339g | 340g |
スピーカー/マイク | フロントスピーカー×2、マイク×1 | リアスピーカー×2、フロントVoIPスピーカー×1、マイク×1 | フロントスピーカー×2、マイク×1 |
センサー | G/加速度センサー、環境光センサー、コンパス/GPS(3Gモデルのみ) | G/加速度センサー、環境光センサー、GPS | G/加速度センサー、GPS |
IdeaTab S6000は10.1型液晶搭載メインストリームタブレット。1,280×800ドットのIPS液晶を搭載しており、SoCにはMediaTekのMTK 8389/8125を採用する。MTK 8389/8125はクアッドコアのCortex-A9を採用しており、クロック周波数は1.2GHz。最新のハイエンドタブレットのSoCと比べると性能は低いが、クアッドコアのためそこそこの性能を持つと見られる。
そのほかの仕様としては、1GBのメモリ、16GBまたは32GBの内部ストレージ(microSDXCで64GB増設が可能)、500万画素の背面カメラ、OSはAndroid 4.2などを搭載。無線はWi-Fi、Bluetooth 4.0が標準で、オプションで3G内蔵版もラインナップされる。現在試作段階だが、ThinkPad Tablet 2に用意されているようなBluetooth接続のキーボードも用意されており、本体がぴったりはまる溝にはめて使う構造になっている。
価格などは未定だが、「10型搭載のタブレットとしては競争力のある価格」(Lenovo関係者)に設定されるということだった。SoCにMediaTekを利用していることを考えると、コストパフォーマンスが高い製品になることは容易に想像できる。すでに7型タブレットでは価格破壊が起き、ユーザーの興味は安価な製品に向かっているが、このIdeaPad S6000が10型でも口火を切ることになる可能性はある。
A1000は100ドルを切る価格設定か
IdeaTab A3000と同A1000はいずれも7型液晶を搭載したタブレットとなる。IdeaTab A3000は、ちょうどIdeaTab S6000の7型版という位置付け。液晶は7型IPS液晶(1,024×600ドット)、SoCはMTK 8389/8125、1GBメモリ、16/32GBの内部ストレージ(microSDHCを利用して32GB増設可能)、500万画素の背面カメラというスペックになっている。無線もWi-Fi、Bluetooth 4.0、オプションで3Gとなっており、3,500mAhのバッテリを搭載して8時間駆動が可能。厚さは11mmで、重量は339gとなる。
A3000は低価格な7型タブレットという位置づけで、「Nexus 7」に対抗するような製品の価格帯になるという。具体的な価格は明らかにしなかったが、SoCが低価格であることを考えると、199ドルより安価な価格設定がされると考えられる。
これに対してA1000は、価格競争力に重視した製品となる。液晶はTNパネルの7型で、1,024×600ドット、SoCはデュアルコアCortex-A9のMTK8317(1.2GHz)で、1GBメモリ、4GB/16GBの内部ストレージを備える(microSDHCで32GBまで増設可能)。背面カメラはなく、30万画素の前面カメラのみとなる。無線はWi-FiとBluetooth 3.0のみで、3Gオプションは用意されていない。
A1000に関しては、結婚式の2次会のようなパーティでの景品、あるいは子供へのプレゼントとしてのニーズが考えられているとのことで、非常に競争力のある値段設定がされる模様だ。想定シチュエーションからすれば、100ドル(約1万円弱)を切る可能性が高い。
なお、Lenovoによれば今回発表されたIdeaTabの3製品は年内のどこかのタイミングで投入されるとのことで、現時点では具体的なスケジュールは発表されないということだった。日本市場への投入についてはレノボ・ジャパンの決定次第ということで、現時点では不明とのことだったが、IedaTabに関しては現在も取り扱われているので、将来的には日本で販売される可能性もあるのではないだろうか。