イベントレポート

AMD、初のx86クアッドコアSoCとなるTemashをデモ

〜第2世代GCNとなるRadeon HD 8000Mシリーズも発表

AMD 上席副社長兼グローバルビジネス本部 本部長リサ・スー氏
1月8日(現地時間) 開催

場所:Las Vegas Convention Center 特設テント

 米AMDはInternational CESの前日に記者会見を開催し、2013年中の発売を計画しているプロセッサを搭載する製品のデモを行なった。

 中でも大きな注目を集めたのは、2013年前半の出荷を計画している「Temash」(テマシュ、開発コードネーム)だった。x86互換のSoCとしては初めてクアッドコアプロセッサを搭載し、GCN(Graphics Core Next)アーキテクチャのGPUなどを内蔵しながら、5W前後のTDPを実現。高性能のCPUとGPUを搭載しながらタブレット向けにファンレスデザインも可能になるといった特徴を備えている。

 また、これまで「Solar System」のコードネームで開発してきたノートPC向けGPUを「Radeon HD 8000M」シリーズとして発表。同時に、デスクトップPC向けの「Radeon HD 8000」シリーズ(開発コードネーム:Sea Islands)も、OEMメーカー向けに出荷を開始したと発表された。いずれの製品も、当分はOEMメーカー向けに出荷されるため、自作PCなど向けに単体のビデオカードとして販売されるようになるのは、しばらく先になりそうだ。

Solar System/Sea IslandsことRadeon HD 8000M/8000シリーズを発表

 AMDの記者会見はInternational CESのメイン会場であるLVCC(Las Vegas Convention Center)の駐車場に設置された特設テントで行なわれた。記者会見の冒頭に登場したのはAMD上席副社長兼グローバルビジネス本部 本部長リサ・スー氏。同氏は2012年より、AMDの製品部門のリーダーとして、製品群の整理やロードマップの変更などを担当してきた。「2012年はAMDにとって変革の年だった。今年(2013年)はその変革の年に決めたことを、確実に実行していく年になる」と述べた。

 次いで壇上に登ったAMD副社長兼グラフィックス本部 本部長のマット・スキナー氏。スキナー氏は、「昨年(2012年)に我々はGraphics Core Next(GCN)アーキテクチャの製品をリリースし成功を収めた。今回のRadeon HD 8000M/8000シリーズはその成功を受け継ぐものだ」と述べ、これまでSolar System(モバイル向け)、Sea Islands(デスクトップ向け)の開発コードネームで開発を続けてきた次世代GPUを、それぞれRadeon HD 8000Mシリーズ、Radeon HD 8000シリーズとして発表した。

 ただし、今回発表されたのはOEM向け製品で、グラフィックスカード単体での小売店向けの販売時期についてのアナウンスはなかった。

 モバイル向けのRadeon HD 8000Mシリーズは「GCNアーキテクチャの製品としては第2世代となり、GCNをメインストリーム市場にもたらすものとなる」とし、Direct3D 11.1をメインストリームノートPCの市場にもたらす意味があるとした。実際、昨年のRadeon HD 7000Mシリーズでは、4月に上位モデルこそGCNアーキテクチャの製品だったが(別記事参照)、メインストリーム向けは40nmの旧世代に留まっており、今回リリースされた製品からようやくGCNに対応することになる。ただし、第2世代GCNが最初の世代のGCNとどう違うのかの説明はなかった。

 AMDが公開した資料によれば、Radeon HD 8000Mシリーズには、以下のような製品が用意されている。

【表】Radeon HD 8000Mシリーズ
  Radeon HD 8800M Radeon HD 8700M Radeon HD 8600M Radeon HD 8500M
SKU構成 8870M/8850M/8830M 8790M/8770M/8750M/8730M 8690M/8670M 8570M/8550M
コンピュートユニット(SP数) 6(384) 6(384) 6(384) 6(384)
最大メモリ(バス幅) 2GB GDDR5/DDR3
(128bit)
2GB GDDR5/DDR3
(128bit)
1GB GDDR5/DDR3
(64bit)
1GB GDDR5/DDR3
(64bit)
最大メモリ帯域幅 72GB/sec 72GB/sec 36GB/sec 36GB/sec
最大ピーク時スループット(単精度) 992GFLOPS 691GFLOPS 633GFLOPS 537GFLOPS
最大ピーク時スループット(倍精度) 62GFLOPS 43GFLOPS 39GFLOPS 43GFLOPS
PCI Express Gen3 x16 Gen3 x8 Gen3 x8 Gen3 x8

 現時点ではダイ構成などに関して詳細が明らかにされていないが、ストリームプロセッサの数が同じ、バス幅に違いがあるもののサポートするメモリも同じであることなどを考えると、全て同じダイで、バス幅やPCI Expressに違いをつけることで差別化を図っている製品と考えていいかも知れない。

 スキナー氏は「Radeon HD 8000Mシリーズは、旧世代(筆者注:40nmのRadeon HD 7000Mシリーズのことを指していると思われる)に比べて25%性能が向上している。間もなくSamsung Electronics、Lenovo、ASUSなどのOEMメーカーから搭載製品が登場していくことになるだろう」と見通しを明らかにした。

AMD副社長兼グラフィックス本部 本部長 マット・スキナー氏。手に持つのはRadeon HD 8000Mシリーズのチップ
Radeon HD 8000Mの説明をするスライド。アーキテクチャに関しては第2世代のGCNになるということだったが、第2世代の中身については何も明らかにされなかった

5W以下のTDPで動作するクアッドコアSoC「Temash」をタブレット向けに投入

 再びステージに戻ったスー氏は、同社のクライアントPC向けのAPU(GPU統合型プロセッサ)の戦略について語った。スー氏が公開したのはTemash(テマシュ)、Kabini(カビーニ)の開発コードネームで知られる2つの製品だ。

 これらの製品は、「Brazos 2.0」(開発コードネーム)、「Hondo」(ホンドー、開発コードネーム)の後継となる製品で、Kabiniが15W、Temashが5W前後のTDPをサポートする。CPUコアは新規開発となる低消費電力向けの「Jaguar」、GPUはGCNの「Southern Islands」ベースとなり、サウスブリッジも含めて全ての機能が1ダイにまとめられたネイティブSoCとなる。製造プロセスルールは28mnで、製造工場については公表されていない。

 スー氏は「KabiniおよびTemashは、x86アーキテクチャのSoCとしては初のクアッドコアプロセッサを搭載している」とアピールし、競合のIntelがSoC向けにはデュアルコアしかなく、今年Intelがリリースする予定のHaswell(ハスウェル、開発コードネーム)でもSoCにはデュアルコア版しかないことを念頭に置いて、AMDのアドバンテージをアピールした。

Kabiniを説明するスライド。Brazos 2.0に比べて50%の性能向上を実現しており、最初のx86ベースのSoCとしては始めてクアッドコアを実現する
Ivy BridgeベースのUltrabookとKabiniベースのノートPCの性能比較。Kabiniの方は処理が終わっているのに、Ivy Bridgeの方はまだ終わっていない
Temashを説明するスライド。Hondoに比べて倍のパフォーマンスアップを実現している。

 実際にKabiniを搭載した超薄型ノートブックPCとIvy BridgeベースのUltrabookの性能を比較するため、同じ処理を行なわせた場合は、KabiniがIvy Bridgeよりも高速に処理を行なうことができるという。

 また、スー氏はTemashを搭載したタブレットを紹介し、「Temashでは5Wという低いTDPを実現しており、OEMメーカーは厚さ10mmという薄型タブレットを製造することが可能になる。また、強力なグラフィックスを搭載しているため、フルHDのビデオを再生することが可能だ」とする。実際にIntelのAtom Z2760(Clover Trail)を搭載したシステムと比較して、3Dゲームを実行したときの圧倒的な性能差を見せるデモを行なった。

 なお、「TemashおよびKabiniはWindows 8Connected Standbyには対応していない」(スー氏)ということで、残念ながら利用していないときにはS3(メモリサスペンド)ないしはS4(ハイバネーション)への待機状態に設定しておく必要がある。ただし、AMDは非常に高速なリスタートを実現する機能(AMD Start Now)を用意しており、それを利用することで、Connected Standbyを利用しなくても使い勝手にはさほど差がないはずとした。

 スー氏は「KabiniおよびTemashはすでにAMDから出荷を開始しており、今年の前半にはOEMメーカーから搭載製品が登場することになるだろう」と述べ、KabiniおよびTemashをできるだけ早く投入することで、IntelのUltrabookやタブレットに対抗していきたいと述べた。なお、これまでAMDの低消費電力向けプロセッサのブランドはEシリーズやZシリーズなどが利用されてきたが、Kabiniにはも、TemashにもA6とA4のブランド名が与えられており、今後はAシリーズのブランド中で数字でグレードを表示する方向にブランド戦略を変更した模様だ。

左はTemashベースのタブレット、右はAtom Z2760(Clover Trail)ベースのタブレット。Atom Z2760での3D描画はやや遅かったりしていたが、Temashの方はスムーズに3D描画できていた
スー氏が公開したODMメーカーのWistronが製造したTemash搭載のタブレット。カバーキーボード付き。タブレットでDiRT3と思われるゲームが動いていた
展示されていたTemash搭載のタブレット(AMDリファレンスデザイン)。フルHDの解像度を持ちながら、10mmと薄型を実現。実際に触ってみたが熱いと感じることもなかった
スー氏が公開したAMDのクライアント向けロードマップ。KabiniとTemashは2013年前半中にOEMメーカーの製品出荷が開始される予定。Trinity/Richlandの後継となるKaveriは2013年後半を予定
スー氏が公開したKabini/Temashのパッケージ、クアッドコア(ないしはデュアルコア)、GPU、サウスブリッジがネイティブで1チップになっている

Trinityの改良版としてRichlandを追加、Trinity+ソフトウェア

 このほか、スー氏はメインストリーム向けのAMD Aシリーズの新製品として開発コードネーム「Richland」(リッチランドで知られる製品を投入したことを明らかにした。

 スー氏は「Richlandは従来世代に比べて20〜40%の性能向上があり、バッテリ駆動時間も改善され、さらにユーザーの使い勝手を改善するソフトウェアをバンドルする」と述べ、Trinityに比べて性能が向上し、顔認証、スクリーンミラーリング、ジェスチャーコントロール、ゲーム最適化などのソフトウェアをバンドルすることで使い勝手を改善した製品になると説明した。

 なお、AMDで製品マーケティングを担当するジョン・テイラー氏に確認したところTrinityとRichlandではダイそのものに変化はないという。従って、性能向上というのは、BIOSレベルの最適化やクロック周波数の向上など、アーキテクチャ以外の部分での向上が大きいとのことだった。

 最後にスー氏は、米国での新たなパートナーとして、世界最大のEMSベンダーであるHon Hai Precision Industryの米国子会社Vizio(ビジオ)と提携することを明らかにした。Vizioは米国では低価格TVのブランドとして知られており、Wal-Martなどの小売店で圧倒的な存在感を見せている家電メーカーだ。そのVizioが24型の液晶一体型PC、14/15.6型の超薄型ノートPC、11型のHondo搭載タブレットなどを米国で販売していくことを明らかにした。

 スー氏は「2013年はAMDにとっもPC業界にとっても、新しいフォームファクタへ移行するなど非常に重要な年になる。今年は昨年計画したことを着実に実行していき、コンシューマによりよい製品を届けていきたい」と述べ、記者会見を締めくくった。

RichlandはTrinityの後継となり、AMD A10/8として投入される。ダイそのものはTrinityと同じだが、ソフトウェアによる機能拡張が行なわれている
Richlandにバンドルされるソフトウェア
Richlandにバンドルされるジェスチャーソフトウェア
VizioがAMDのプロセッサを搭載したタブレットや24型液晶一体型PCなどを発売
ASUSのU38は17WのTrinityを採用した超薄型ノートPC。
HPの低価格向けタッチ搭載ノートPC HP Pavilion TouchSmart Sleekbook

(笠原 一輝)