AMDは24日(米国時間)、1月に発表したノートPC向けGPU「Radeon HD 7000M」シリーズの追加製品として、「Radeon HD 7900M」、「Radeon HD 7800M」、「Radeon HD 7700M」の3製品を発表した。
これまで開発コードネーム“London”で呼ばれてきた製品。1月に投入された製品が前世代(Radeon HD 6000M)のリネーム版であったのに対して、今回投入された3製品はデスクトップPC版のRadeon HD 7000シリーズと同様に、GCN(Graphics Core Next)という新しいアーキテクチャに基づいており、TSMCの28nmプロセスルールで製造されるなど、性能面/機能面ともに従来製品に比べて大幅に強化されている。
●GCNアーキテクチャと28nmプロセスルールを得て強化されたRadeon HD 7000MAMDは1月に開催されたInternational CESにおいて、ノートPC向けRadeon HD 7000Mシリーズをすでに発表している(別記事参照)。その時点で発表されたのはRadeon HD 7600M、7500M、7400Mの3製品で、すでにOEMメーカーのノートPCなどに搭載されて出荷されている。
このRadeon HD 7600M、7500M、7400Mは、単にManhattan(マンハッタン)の開発コードネームで知られるRadeon HD 6000シリーズのリネーム製品で、製造プロセスルールもTSMC 40nm、デスクトップPC向けのRadeon HD 7000シリーズで採用されていたGCNアーキテクチャに基づいた製品ではなかった。
ただし、CESの段階ですでにGraphics Core Nextを採用したノートPC向けRadeon HD 7000シリーズの発表を予告しており、デモを行なっていたが、今回それが正式に発表された形になる。
Radeon HD 7000Mシリーズの位置づけ。今回の3製品は、いずれもハイエンドの製品となる |
GCNベースのRadeon HD 7000Mには3つの製品が用意されている |
今回発表されたRadeon HD 7900M、7800M、7700Mは、それぞれWimbledon(ウインブルドン)、Heathrow(ヒースロー)、Chelsea(チェルシー)の開発コードネームで呼ばれてきた製品だ。仕様は以下のようになっている。
【表1】Radeon HD 7000シリーズのスペックRadeon HD 7900M | Radeon HD 7800M | Radeon HD 7700M | |
Wimbledon | Heathrow | Chelsea | |
発表時SKU | Radeon HD 7970M | Radeon HD 7870M | Radeon HD 7770M |
ストリームプロセッサ数 | 1,280 | 640 | 512 |
コンピュートユニット数 | 20 | 10 | 8 |
エンジン/メモリクロック周波数 | 850MHz/1.25GHz | 800MHz/1GHz | 675MHz/1GHz |
メモリ | 2GB GDDR5(256bit) | 1GB GDDR5(128bit) | 1GB GDDR5(128bit) |
コンピュート性能 | 2,176GFLOPS | 864/1,024GFLOPS | 589/691GFLOPS |
PCI Express | 3 | 3 | 2.1 |
テクスチャユニット | 80 | 40 | 32 |
ディスプレイコントローラ | 6 | 6 | 最大6 |
発表時のSKUは3製品のみだが、今後追加で製品が投入される可能性もある。
なお、AMDは各製品のTDPを公開していないが、OEMメーカー筋の情報によれば、7900Mが100W、7800Mが35~45W、7700Mが25~35Wのレンジに設定されているという。
●ノートPC向けに省電力機能を強化、GPU切替やアイドル時の待機電力を大幅削減新しいRadeon HD 7000Mシリーズでは、いくつかの新しい省電力機能が追加されている。AMD Enduro Technology、AMD POWERGATE Technology、AMD ZEROCORE POWER Technologyの3つだ。
AMD Enduro Technologyとは、プロセッサ内蔵GPUとディスクリートGPUを、ソフトウェア上から切り換えて利用する技術で、NVIDIAのOptimus Technologyに対抗するものだと考えればわかりやすい。基本的な考え方も一緒で、処理能力の要求に応じてディスクリートGPUのON/OFFを行なう。
これにより、ディスクリートGPUを必要としないような2Dアプリケーションや、負荷の低い3Dアプリケーションなどではプロセッサ内蔵GPUだけを利用して消費電力を節約しつつ、高性能の3Dアプリケーション実行時など、必要な時にディスクリートGPUをONにすることで、消費電力と性能のバランスを実現することができる。従来のRadeon HD 6000シリーズなどでも同様の機能を実現していたのだが、AMD Enduro TechnologyではGPUをOFFにしたときの消費電力が0Wになり、さらに低消費電力を実現している。
AMD POWERGATE Technologyは、GPUの内部のエンジン単位で電力供給をカットする機能で、GPUの負荷に応じて供給電力を調整することができる。GPUを利用して画面を描画している場合でも、GPUのすべてのエンジンを利用して描画していることはそんなに多くないので、必要ない部分の電力供給をカットすることでGPUの消費電力を抑えられる。
AMD ZEROCORE POWER Technologyは、アイドル時の電力をカットする機能で、アイドル時にGPUをブロック単位で電力をゼロにする。これにより、アイドル時に消費電力を大幅に減らし、ファンを止めてノイズ削減を行なうことが出来る。
こうした省電力機能により、アイドル時では86%、アクティブ時では35%程度の消費電力の削減が可能になるとAMDは説明している。
●2013年にはLondonの後継としてSolar Systemを計画AMDが公表した資料によれば、Radeon HD 7900Mの最上位SKUであるRadeon HD 7970Mは、従来のRadeon HD 6000Mシリーズの最上位であるRadeon HD 6990Mと比較して、1.3~1.6倍程度の3D描画性能を実現しているという。
AMDが公開したベンチマークデータ。Radeon HD 7970Mは、Radeon HD 6900Mに比べて1.3~1.6倍の性能を実現している |
OEMメーカーによれば、AMDは来年(2013年)の前半にRadeon HD 7000Mシリーズの後継となるノートPC向けGPU、開発コードネーム“Solar System”を投入する計画を持っているという。Wimbledonの後継として“Neptune”、Heathrowの後継として“Saturn”、Chelseaの後継として“Venus”を投入する計画だ。
また、AMDは来年にデスクトップPC向けの次世代GPUとして“Sea Islands”(シーアイランド)を投入する計画であることをすでに明らかにしているが、Solar Systemはそのモバイル版になると考えられており、Sea Islandsと同じく28nmプロセスルールで製造されることになるだろう。
(2012年 4月 24日)
[Reported by 笠原 一輝]