【WWDC 2012】【詳報】初公開されたiOS 6。リリースは今秋を予定
〜地図アプリを刷新。Passbook機能はNFC搭載への布石か?

会期:6月11日〜6月15日
会場:Moscone Center West



iOS 6を紹介するiOSソフトウェア担当のスコット・フォーストール上級副社長

 米Appleがサンフランシスコで開催しているWWDC 2012における基調講演で、iOS機器に向けた次期OS「iOS 6」が正式に発表された。同日付で開発者契約をAppleと結んでいるデベロッパーに対して、iOS 6のβ版とSDK(Software Development Kit)の提供が始まっている。WWDCに参加しているデベロッパーをはじめ、世界中のデベロッパーがこれを元に自分のAppをiOS 6へと対応させたり、新たに提供されるAPIを活用して新機能を追加したり、まったく新しいAppの開発を目指す。

 iOS 6が正式版としてエンドユーザーの元に届けられるのは「今秋」と発表された。特に北米エリアで消費活動が活発化するホリデーシーズンを視野に、9月後半から10月中あたりが1つのメドになると思われる。iOS 6のアップグレードを適用できるのは、iPhoneが3GS(2009年発売)以降、iPadはiPad2(2011年発売)以降、iPod touchが第4世代(2010年発売)以降とされている。対応条件はハードウェアスペックが主な基準と想像できるが、2010年に発売された初代iPadが適用対象外となる一方で、iPhone 3GSが今回も対象機種に含まれているのは興味深い。Siriをはじめとして、機種によっては利用できない機能があることも明らかにされている。そして、もちろん今後発表されるiOS機器はiOS 6をプリインストールして登場するものと推測できる。言うまでもなく、ホリデーシーズンをターゲットに開発されているであろう次期iPhoneはその筆頭とも呼ぶべき存在だ。


iOS 6には、大小あわせて200もの新機能が搭載される 開発者向けのβ版とSDKは、WWDC 2012の開幕にあわせて配布を開始 エンドユーザー向けのiOS 6正式リリースは、今秋と発表された

 基調講演の中でiOSソフトウェア担当のスコット・フォーストール上級副社長は、現行のiOS 5が、およそ80%という高い比率で利用されている点を挙げている。この数字は最新OSの利用率が非常に高いことで、デベロッパーがAppを開発する際にターゲットを明確にしやすいという利点を強調するものだ。顧客満足度のデータも75%ほどが「とても満足した」という数字を示し、iOS 6においてもユーザーの多くはiOS 6へとアップグレードを行なうか、また旺盛な買い換え需要で最新のiOS搭載デバイスを手にする可能性があることをデベロッパーに示唆している。

 対照的に皮肉られたAndroidは、最新の4.0(Ice Cream Sandwitch)ユーザーが7%にとどまる。これは対応デバイスを開発・製造するメーカーが多岐にわたるという背景もある。Android 4.0が登場したのは昨年(2011年)末だが、先日のNTTドコモの夏モデル発表で全機種がAndroid 4.0搭載と発表されたように、市場ではこれから4.0の普及が本格化する。ソフトとハードを同時に開発し、新しいiPhoneに最新OSを載せて一気に普及を図るAppleとは体制が大きく異なっていることがこのグラフの背景にある。

 iOSとAndroidの関係は、OS XとWindowsとの関係ともよく似ている。ただ同じ基調講演の中でOS Xの現行バージョンであるLionのユーザーはMacプラットフォームの約40%と説明されている。iPhoneやAndroidのようなスマートデバイスは今が盛りで次々と機能的な革新が打ち出されていることもあって、製品サイクルが短いのもこうした状況を助長している。一方広義のパソコンであるMacやWindows PCはある意味成熟したジャンルでもあり、同じ製品をある程度長く使うユーザーが多数派を占めていると見ることができる。

おおよそ80%のユーザーが最新のiOS 5にしているのに対し、Androidはデバイス間で分断化され最新の4.0を使っているユーザーは現時点で7%ほどと説明 3月30日の時点で、iOS搭載機器は3億6,500万台の出荷を数える 「とても満足した」と回答したユーザー数をモバイル向けOS間で比較したグラフを提示

 フォーストール上級副社長が示したもう1つのデータは、現行のiOS 5から追加された機能の利用率に関するものだ。これはおさらいではなく、約1年前に発表され、2011年10月にローンチされたそれぞれの機能が、1年弱でどれだけ普及しているということを示すとともに、この日発表されるiOS 6の機能にも、同等のユーザーが興味を示して拡がっていくはずであるというデベロッパーへのメッセージになっている。

 ニュースリリースやスライドでは、iOS 6には約200の機能が追加されると紹介されている。この数字は同日に発表されたOS X Mountaion Lionや、過去のiOS、OS Xのローンチでもほぼ同じような数字がアナウンスされている。新機能の中には、後述するようなまったく新しいものから、現行の機能を改良してスライドスイッチが1つ増えるといった要素も含まれる。さほど数字自体を意識する必要はなく、メジャーアップグレードではおおむねこの程度の規模になるという認識でかまわない。

iOS 5の通知センター。SNS上位100のappのうち84が採用。いまでは1日あたりのべ70億回の通知が行なわれている。通算では1.5兆回以上 iMessageの利用状況。アカウントは1億4,000万で、現在は1日あたり10億メッセージを送信。通算では1,500億件を超える利用数
統合後はiOSでの利用が3倍に増えたというTwitter。iOS 5搭載機からは100億回を超えるツイートがあり、写真投稿の47%がiOS 5からのものとされる GameCenterには1億3000万アカウント。iMessageと似た数字で、アクティブユーザー層が近いのかも知れない。ゲーム上位100のうち67ゲームに採用されている

●Passbookはチケットや会員カードの一元化と、1つ先の未来が見える新機能

 紹介されたiOS 6の新機能だが、基調講演の時系列とはやや異なる順序で紹介していく。おおまかな内容はすでに記事として紹介していることあり、スライドやコメントで得られた情報に加えて、日本国内市場も視野にいれた考察も含まれる。

 なにより「これは!」と思わされた新機能は「Passbook」だ。これは各種チケットや会員カードなどを1つにまとめておくもの。すでにiOS向けにはこうした会員カードやチケットの電子化に対応するappが数多く存在する。講演で紹介されたのは北米向けのサービスで、Starbucks Coffeeのプリペイドチャージ、United AirlineのQRコード搭乗券、映画ブッキングのFandangoによるバーコード鑑賞券といったところだが、日本でもANAやJALといった航空会社、無印良品、ヤマダ電機、Pontaなど数えればキリがないほどにこうしたサービスはすでに提供されている。専用appを用意することで単にチケットや会員機能だけでなく、プロモーションの案内やクーポンの提供などにも応用できるところがメリットである。

iOS 6で搭載される注目の新機能「Passbook」 既存のチケットapp。United Airline、StarBucks Coffee、Fandangoなど。単独でも電子化されることで使い勝手はいい これらの独立したappを「Passbook」のなかにまとめて一元的に管理する

 映画のチケットや航空機の搭乗券はバーコードやQRコードを表示してスキャンする。特に航空券は電子化が早かったこともあって、自宅からオンラインでチェックインして表示されたバーコードを印刷、あるいはスマートフォンで表示させて搭乗が可能だ。会員カードなども同様に専用app内にバーコードを表示させることで、サイフの中の各種カード類を減らすものとして筆者などは積極的に活用しているapp類である。iOSに限らなければ、むしろこの分野は日本市場が数年先をいっているジャンルでもある。

 Passbookだが、これはこうした独立した各種サービスのappを一元化するもの。神経質なA型であるところの筆者はグループごとに1つのフォルダにまとめるといった対応をしているが、iOS 6ではOSレベルで一元化できる。Passbook 1つの画面に一覧表示できるのはもちろんのこと、OSレベルで統合されていることで位置や日時、あるいは状況の更新に随時対応して「通知」が行なえることがポイントになる。

ロック画面の通知表示。プリペイドカードを持っているStarbuckの店舗が近くにあり、搭乗予定の航空機の搭乗ゲートが変更になっていることがロック画面でもわかる

 例えばStarbucksのプリペイドカードを持っている場合、近隣に店舗があればGPSデータなどを元に「通知」が行なわれる。通知センターの機能でロック画面にも表示されるので、そのまま店舗に入れば通知バナーのスライド操作だけでプリペイドカードのバーコード画面が表示されるという仕組みだ。デベロッパー側は現行のappにPassbookのAPIを適用させることで、自分たちのサービスをPassbookに含めることができるようになる。潜在的な顧客を店舗に誘導できるという点で、ユーザーの利便性ばかりでなく店舗側にも有効な機能だ。

 日時が基準になる航空機の搭乗や、映画鑑賞などは定刻が近づくことで「通知」が行なわれる。航空機の運航情報や搭乗ゲートに変更があれば、これもあわせて「通知」が届く。いずれも、通知バナーをスライドすれば目的のチケットや変更状況が一発で表示される。現在の「ロック解除」-「フォルダを開く」-「専用appを起動」-「バーコード表示」という手続きよりも明らかにシンプルでスマートだ。IT機器を利用するのは『ラクをすること、手間を省くこと』が1つの目的で、実際にチケットを買うにもチケットカウンターに出向くことなくオンラインで済ませる。印刷をせずに済む、appを探さなくても済むというのはその目的とも合致する。


fandangoで予約済みの映画チケットの例。PIXARによる新作映画「BRAVE」(邦題:メリダとおそろしの森) 北米では専用appとしてすでに利用できるStarbucksのプリペイドカードapp。支払いはもちろん、名前も登録されているのでたずねられることなくカップに名前が書かれる 現在はクレジットカードとの紐付けのみのApple Storeだが、このスライドをみるとApple IDへのプリペイドチャージ分を直営店でも利用できるようになりそうにも見える
日時や目的の場所に近づいたときにロックスクリーンへの通知を行なうように設定ができる サービス提供側が対応すれば、航空機の搭乗ゲートの変更なども画面上で確認できる。これは同じバーコードを使っても紙では実現できない要素 使い終わったチケットはリストから削除。シュッダーのアニメーションになっているあたりがAppleのOSらしさと言える

 さて「これは!」と思うのはここから先だ。バーコードやQRコードを画面に表示させてスキャンするのは現実解であり、紙やプラスチックのカードからスマートデバイスへ表示先が変わるだけである。これは現在の機器で誰もが利用できる。そこにNFCの要素を付加させるとどうなるか……というのは今回の注目点だ。

 十分に可能性のある予測として、将来のiOS機器にNFCが搭載される場合は、同じ仕組みをPassbookの中でバーコード表示とNFCによる非接触通信で管理できる可能性がある。バーコード表示があることで既存のユーザーを置いていくことなく、またサービス提供側もインフラ整備に急を要する必要性も薄くなる。日本の場合はSuicaなどによる「決済」で非接触通信のインフラは一気に整備されたが、欧米では決済系はなかなか進まないのが現実だ。バーコードからの延長上に、決済以外でのNFCサービスを位置づけ、準備の整ったところから例えば日本のマクドナルドのようなクーポンの提供、あるいはトルカの仕組みのようにスマートタグ機能を中心に導入を進めるというのは大いに可能性があるシナリオと言えるだろう。

 特に次期iPhoneのように『一気に大量の普及が見込める機器』が存在するのであれば、サービスの提供側も十分に考慮する余地がある。Appleとしても最大の店舗としてiTunes Storeを抱えるほか、直営店をワールドワイドで展開している。NFCの活用にもっとも期待しているのは、他ならぬApple自身でもあるのは想像に難くない。

●地図アプリを自社製作に変更。成果が試されるGoogle離れの施策
新しい地図appの「Maps」。ちなみにデザインされているのは現在のApple本社付近の地図で、サンフランシスコ方面に向かうナビゲーションになっている

 もう1つ、大きな取り組みと感じられたのが「Maps」だ。iOS 5まではGoogleの提供する地図サービスを「Map(マップ)」として標準採用していたわけだが、iOS 6ではAppleが自社内で開発した地図サービスが提供される。フォーストール上級副社長は「iOS 6のためにきれいでスムーズに動く地図を用意した」と紹介している。

 スライドで紹介されたいわゆる平面の地図は、一見してこれまでGoogleが提供してきたMapのデータとは異なることがわかる。国内の地図データ提供元は講演では明らかにされていないが、詳細な地図を提供できるソースは限られているのである程度の想像は可能だ。一部報道では具体的な提供元もでているようだが、Apple側から明確な発表がでているわけではなく、まだ開発者向けにクローズドで提供されているだけなので、ここで明言することは避ける。3月に販売の始まったiOS向けのiPhotoではアルバム等に引用できる地図データにオープンソースが採用されていたことから、Google離れが囁かれてきたが、今回の発表で明確な形となった。先週に行なわれたGoogleによる地図サービスの発表会は、この部分について先手を打つ意味合いも含まれていたと考えられる。

 またMapsの機能として、ローカルサーチとナビゲーション機能が含まれている。前者はワールドワイドで1億カ所の店舗や会社などスポット情報を用意しているという。スポットにはそれぞれインフォメーションが用意されるほか、近隣で撮影された写真、Yelpと連携したレストランガイドなどが含まれる。Yelpは北米ではスタンダードなレストランサーチ&レビューサービスだが、日本ではサービスの提供が事実上行なわれていない。Appleによれば各地域ごとに連携するサービスがあるらしいということだが詳細はいまのところ明らかにされていない。

サンフランシスコ、シリコンバレーエリアの地図を表示する。これは2Dの表示だが従来までの地図とは明らかに感じが異なる iPadを使ってデモンストレーションされた、ベクター表示の3Dマップ 地域検索機能として、1億カ所の店舗やロケーション情報を備えるという
スポット検索は従来のようにピンドロップ。スライドはサンフランシスコ市内の自転車店を検索表示させた様子 Yelpによる店舗情報とレビューとも連携。このあたりは地域によって提携先が変わる可能性が高い ユーザー投稿による写真も一覧にして参照することができる

 デモでは、立体化されている建物形状とヘリコプターなどを使って空撮された写真をもとにサンフランシスコ市内を俯瞰する「Flayover」が実演された。ベクターデータになっている建物の形状に対して、視点からリアルタイムで演算し最適化された写真をテクスチャとして貼り付けているものと思われるが、フォーストール氏の言葉通りに非常に滑らかに動作する。

 デモの奥の方には区画単位で表示されていないエリアもあるので、データは必要に応じてデバイスへとダウンロードされているものと想像できる。デモされたのはサンフランシスコ市内とシドニーのオペラハウス。こうした主要スポット以外に「Fryover」できるエリアがどれほどの広範囲になるかが、評価を分けるかも知れない。

 Googleの提供するMapではストリートビューなども利用できた。先日のGoogleの発表にもあったように、地図サービス自体は年月を経て進化しているが、あえてサービスを切り替えて提供するだけに機能的に大きく劣っていてはiOS自体の評価を下げてしまう可能性もある。それなりの準備は行なっていての判断だと思われるので、正式リリースでどのような成果があるのかに期待したい。

ヘリコプターなどをつかって大都市圏や各種スポットを空撮 SFMOMA(サンフランシスコ現代美術館)付近をポインティングする 3D表示をオンにして、建物の形状をベクター表示する
ページをめくりサテライト表示を適用させる。ちらりと北米エリアの地図提供元であるTomtomの名前が見える リアルな地域写真が視点を変えつつ、ぐりぐりと動く。手前と奥にブロック単位で非表示のエリアがあることから、データを順次ダウンロードしているのがわかる シドニーのオペラハウス付近。こうしたFly Over可能なエリアが正式リリースでどこまで拡がっているのかも期待される

 ナビゲーション機能は、従来のMapで利用できた経路検索よりもはるかに進化した「Turn-by turn navigation」が採用される。写真をみればわかるとおり、専用カーナビに近い画面でナビゲーションが行なわれる。Androidでは同様の機能がベータ扱いで提供されており、この点では同等レベルのナビゲーションサービスを目指すと考えていいだろう。また、ナビゲーションには重要な渋滞情報の提供も行なわれる。これはiOS機器から得られたものと言うことで匿名で発信されるGPSの位置情報を元にしていると想像できる。東日本大震災のときには、Googleが本田技研と協力して、同社のカーナビとGPSデータを元に実際に車輌が通行可能な道をマッピングしていたが、その仕組みを一般道とiOS機器に適用させたというニュアンスが近いかも知れない。

 iOS機器内には位置情報が定期的に記録されるということが明らかになったことがあり、Appleはその後のiOSのアップデートで個人情報を特定しない形に変更したうえデバイスへの保存もやめている。今回のサービスはこうした匿名の位置情報の定期発信を元に、個々の端末の移動速度等をまとめてビッグデータとして交通情報の生成に応用しているものといると推測される。

匿名のクラウドソースによるリアルタイム情報で、フリーウェイの渋滞情報、事故情報などが提供されると紹介された 「Turn-by turn navigation」のデモンストレーション。ナビゲーションルートは複数候補が示される
ベクター表示による鳥瞰図と音声を組み合わせてドライブナビゲーションが行なわれる 渋滞情報をもとに、リルートを推奨される例もスライドを使って紹介された

 “標準”機能からははずれることになったGoogleによるMap機能だが、今後は独立したAppとして提供される模様だ。例えば共有やSiriとの連携などOSと密接に関連する部分では純正となるAppleによる地図サービスが優先されることは間違いないが、ストリートビューなど機能面ではさまざまなアドバンテージがあると考えられるので、ユーザーとしてはうまく両方が使い分けられるようになるのがもっとも望ましい展開だ。

●Siri機能を大幅に拡張。各地域での連携サービスの充実がカギに

 前出の「Turn-by turn navigation」は音声による誘導も付随している。おそらく、Siriを使って「○○に行きたい」と告げることで機能の起ち上げとルート検索、ナビゲーションまで進むものと思われる。Androidでもナビを起ち上げて目的地を告げると同様のナビゲーションは進行するので、機能の優劣は実際に使ってみないと判断できないが、基本的には同等のサービスが提供されると考えていいだろう。Siriにアドバンテージがあるとすれば、話し言葉をもとに、ある程度は質問、要求の意味を汲み取って適切な回答を導きだすという部分だ。

Siriによる「Turn-by turn navigation」の例。まず近くにあるガソリンスタンドをSiriで検索して、そこに向かうナビゲーションルートを得る 場合によっては、Siriを使って軽い会話も。例えば日本の声優カーナビもベクトルこそ違え、ドライブ時のエンターテイメントとしての試みはさまざま Siriに関連して連携するサービスや機能がiOS 6ではこのくらい増加することになる

 そのSiriはiOS 6でも強化が進む。フォーストール氏によれば「知識の範囲がより広くなった」ということになる。広くなった知識の範囲はまずスポーツ。iOS 6のセクションでは、まず初めにこのデモンストレーションが行なわれている。

 フォーストール氏のたずねる「What was the score of the last giants game? (昨日のジャイアンツの試合はどうだった?」という地元の野球チームに関する問いかけに対し、「The Giants were downed by the Rangers yesterday;the final score was 5 to 0。(レンジャースに負けました。5対0です)」といった回答を返す。これはGiants(サンフランシスコジャイアンツ)が、MLBの地元チームであることを理解して、検索結果を回答しているということになる。同様のデモはいくつか続き、北米の人気スポーツであるNBA、NFLに関する質問にも回答を行なっていた。

 またエンターテイメントでは、映画上映情報にも知識は拡がっている。「What movies are playing at the Metreon(今Metreonでやってる映画は?)」、「OK, I found eight movies at the Metreon (Metreonで8つの映画をみつけました)」。というやりとりの後で、上映情報を表示している。

 同様にレストランガイドでは前出の「Yelp」にも対応。予約サービスの「OpenTable」にも対応して、近隣レストランの検索とディナーの予約をSiriを通してできるようになっている。映画は「Fandango」がパートナーだ。これらは、現在Web上で提供されているサービスと連携して実現しているわけで、もちろん地域性も重要になる。例えばOpenTableは日本でも一部サービスを提供しているとは言え、Yelpは日本では事実上利用できない。Fandangoも同様だ。もちろん日本でジャイアンツと言ったら、それは読売巨人軍のことになる。

 現状のSiriでは店舗、会社、地図、渋滞情報の検索が可能なのは北米エリアに限られるがフォーストール氏によれば今後は同時に発表された全15地域でのSiriサポートに加えて、先に述べたようなスポーツ、飲食、エンターテイメントにも適用されるようなニュアンスがあった。つまりそれは、Yelp、Fandangoと同等のパートナーと各地域で順次提携するという意味でもある。iOS 6が正式にリリースされて、実際に日本国内で今回のデモンストレーションと同等のサービスが利用できるかどうかも期待したいところだ。

デモンストレーションされたサンフランシスコジャイアンツの試合結果 秋口からシーズンのはじまるNFLの開幕戦期日をたずねると、開幕日と対戦カードが表示される。Web上にデータがなければ検索してこれないので、サービス提供側の対応も必要だ 会場近隣にある複合施設Metreonで現在上映されている映画とスケジュールを確認
近隣のレストランガイドをSiriで検索。Yelpと連携して、レビューや所在地なども知ることができる OpenTableを使ってディナーを予約する。こうした一連の手続きをSiriを中心に進めていく Siriを使ったiOS機器内のapp起動も行なえるようになる

 Siriに関連しては前述の知識面での拡大のほか、機能面での追加も発表された。Siri自体はクラウドベースのサービスなのでiOSそのものよりもバックグラウンドにあるサーバーの強化がポイント。iOSデバイスはインターフェイスにあたる。これまでiPhone 4Sのみの対応だったが新しいiPad(第3世代)が対応機種に加わることもそういった理由からだ。iOSに依存する部分としては、SiriによるTwitterへの投稿、Facebookの近況アップデート、アプリケーションの起動といった部分が該当する。

 また前出の「Turn-by turn navigation」とも関連するが、車内でのハンズフリーをさらに発展させて「Eyes Free」という方向性も打ち出している。これは、車のステアリングにSiriを起動するボタンを設置。ハンドルから手を離すことなく、Siriを起動しナビゲーションやSiriの各種動作を実行させるというものだ。特に車社会であるアメリカでは重要なポイントと見られ、すでにカーステレオとの連携で選曲や音量の上げ下げ、あるいは着信に対する受話という機能は搭載されているが、さらに統合を進める。スライドではBMW、GM、メルセデス、ランドローバー、ジャガー、アウディ、トヨタ、クライスラー、本田技研などが協業先としてあげられており、今後12カ月以内の実現を目指すとコメントされている。

ハンズフリーに続いて「Eyes Free」。Siriを使って操作することで、運転中の視点の移動を防ぐという方向性 BMW、GM、メルセデス、ランドローバー、ジャガー、アウディ、トヨタ、クライスラー、本田技研などが「Eyes Free」の協業先。12カ月内の導入を目指す 拡大するSiri対応の地域。英語、独語、仏語、日本語圏に続いて、スペイン語圏、イタリア語、韓国語、中国語圏などで対応を開始する

●Facebook連携の開始と、既存の機能もそれぞれに強化

 iOS 5でのTwitterに続いて、iOS 6ではFacebookがOSに統合される。Facebookに利用するメールアドレスとパスワードをシステム設定に登録しておくと、Facebookへの常時ログオン状態となる。Twitterと同じシングルサインインの仕組みだ。そしてiOS上の各種サービス、アプリケーションから写真、地図、カレンダーなどの共有が可能になる。App Store、iTunes、Gamecenterのアクティビティをfacebookに投稿できるほか、通知センター内にFacebookの通知が含まれるようになる。前述のSiriを使って近況のアップデートなども行なえる。Facebook連携はOS X Mountain Lionでも行なわれるようだが、そちらはMountain Lionの発売からやや期間をおいての対応となる模様。むしろ、iOS 6で統合を果たしたタイミングで、Mountain Lionにも適用されると考えたほうが良さそうである。

iOS 5のTwitterに続いて、Facebookもシングルサインインに対応。OS側でログイン設定をしておけばシステムワイドで利用できる App Store、iTunes、GameCenterから、Facebookへ簡単にシェア 通知センターに通知が届くようになるほか、Siriを使った近況の投稿も可能になる
App StoreやiTunesで、Like(いいね!)ボタンが利用できるようになる 連絡先やスケジュールも連携できるようになる Facebook連携はMountain Lionでも実現するが7月のリリース以降の見込み。むしろiOS 6のリリースにあわせての更新と推測される

 通話は、携帯電話として基本的なサービスの1つだが、iOS 6ではこちらにも手が加えられる。着信時に通常の通話をするのはもちろんのこと、何らかの事情で受けられないときにはMessage(SMS)を送って返事をする。追って、自分にリマインドの(返事をしたかどうか確認する)選択ができるようになった。また、就寝中、会議中や映画鑑賞中など明らかに電話にでられないことがわかっている時間帯では「Do Not Disturb」という機能を使って、ある程度着信を制限することができるようになる。

 同じく通話関連では、これまでWi-Fi接続時に限定されていたビデオチャットのFaceTime機能がFaceTime over cellularとして、携帯電話ネットワークの利用時でも可能になる。ただし、これはキャリアにとってはかなり難しい問題で、「通話」という基本的な課金サービスが、データトラフィックに変換されることからキャリアがその使用を許可するかどうかという問題にも直面する可能性がある。FaceTime機能に関連しては、電話番号とApple IDを統合することで、着信を同じApple IDを利用するiPadやMacでも受け取れるようになった。すでにiMessegeによってチャットとSMS、MMSの統合が進んでいるが、同じように通話もFaceTimeとの統合を目指すものと思われる。

iOS 5から若干変わった電話着信時のロック画面。スライドによる通話と、おそらく電話マークの跳ね上げによる対応の選択 電話機能では着信時の対応を選べるようになる。メッセージで返信したり、連絡のし直しを備忘録として登録も可能 受話ではなく、Messageを送ることで「あとで、かけ直す」といったことを伝えることも可能。定型文のほか送信するメッセージのカスタマイズもできる模様
就寝中など電話にでられない時間帯「Do Not Disturb」設定。その時間帯でも着信する相手を指定することができる Wi-Fi接続時に限定されていたFaceTime機能が、携帯電話網でも利用可能になる 電話番号とApple IDを統合することで、電話の着信に対してiPadやMacのFaceTimeで会話をすることができるようになる

 最も基本的なWebサービスであるSafariとMailにも改良が加えられる。Safariではクラウドのボタンが付き、iCloudとの連携がより手軽になる。これはMountain Lionに搭載される新しいSafariとの現在開いているタブ(ページ)連携にも関連する同期機能になる。またこれまではいくつかのサードパーティ製appで実現されてきたWebページをキャッシングしてオフライン時でも読むことができるRead it laterと呼ばれる機能が「Offline Reading List」として標準で搭載される。

 また専用のappを用意しているサイトでは「Smart Banner」として、そのappがインストール済みであればSafariからそのappを起動して遷移させることができるほか、未インストールの場合はappのインストールをうながすこともできるようになる。こちらの場合はApp Storeが起動するものと推測される。この記事が掲載されているPC Watchもモバイル向けのサイトが用意されているほか、専用appがApp Storeで配信されている。つまり、今iPhoneのSafariでこの記事を読んでいる場合は、今回の講演のように専用appのインストールをうながすバナーをサイト運営者が簡単に設置できるようになるというわけだ。

 MailではVIP機能が追加される。メールにせよTwitterにせよFacebookにせよ、メッセージ受信が増えれば増えるほど見逃しは増える。こうして埋もれがちになりつつあるメールを、特定のアドレスを事前に設定しておくことでそのアドレスからの受信に優先的なフラグを立てるものだ。これまではバッジで何十通の未読メールとして十把一絡げにされていたものが、指定アドレスからのメールに限っては、通知センターを使ったプッシュ通知とロック画面への表示が行なわれる。またMailのappでは画面プルダウンによる更新もサポートされる。これはTwitterなどのappではすでにお馴染みのUIで、指に馴染んでいる人も多いだろう。

 iCloudを使ったフォトストリームは少しずつ機能の改善が進んでいる部分だ。例えばサービスの開始当初は同期されている写真を個々に管理することはできなかったが、現在では、ストリームの中から特定の写真を削除するといった操作も可能になっている。iOS 6では加えて「Shered Photo Stream」として、選択した写真と特定の友達との間で共有することが可能になる。デモによれば設定は簡単で、写真を選択して共有ボタンをタップ、連絡先から友達を選べばいい。共有先にはその旨のプッシュ通知が行なわれるほか、同様に自分が写真の共有先として選ばれた場合も通知が届く。Photo StreamではiOSデバイスには1,000枚、クラウド上には30日、Mac/PCでは無制限の写真保存となるが、共有された写真が、共有先でもこの枚数/日数制限が適用されローカルデバイスにも保存されるのか、ネットワークを参照するのかまでは講演内ではわからなかった。

モバイル機器のブラウザシェアではSafariが圧倒的であると説明 通信可能時にWebサイトの内容をキャッシュしておき、非接続時でもまとめて読むことができる「Offline Reading List」 Safariからのファイルアップロードにも対応する。これは今までかなり不便だった点の改善
「Smart Banner」は、専用appが用意されているサイトで専用appの存在を伝え、ダウンロードや起動をよりスムーズに行なう iCloudを使ったタブの同期機能。同じApple IDを使う機器間で現在開いているページの同期を行なうことができる。GoogleのChromeでもβ運用されている機能だ 「Shered Photo Stream」は、Photo Stream内で選択した写真を、簡単に友達と共有する機能。共有相手は連絡先を選択するだけ
写真が共有されたら、スクリーンロック画面への通知がある 共有された写真にはコメントをつけることも可能 共有されたPhoto Streamは、iCloudを利用するWindows PCからでも参照できる
MailにはVIP機能を追加。この人からのメールは見逃せないというアドレスを登録 VIP登録されたアドレスからのメール受信はスクリーンロック画面へも通知される メール作成途中でも、写真や動画の添付が可能になる。これも使い勝手の面で大きな改善

 ほかにハンディキャップや自閉症などアクセシビリティが必要な分野でのiPad活用を支援するGuided Accessや、ホームボタンをロックして単一のアプリケーションのみを利用可能とするSingle-app modeが紹介された。後者は、博物館のインタラクティブ展示ガイド、KIOSK端末などにiPadが普及しつつあるのを背景にしたもの。これまでは専用のケースに収納してホームボタンに触れないようにするなどの対策で運用していたが、これによってOSレベルでの対応が実現する。例えばiPadを電子教科書やガイドとして教室内で共有する場合、授業そっちのけでWebアクセスやチャットなど他の目的に利用していては本末転倒とも言えるので、これはiOSデバイスの法人需要を容易にして、一歩前進させる機能強化と言えるだろう。

ハンディキャップをもった人々や自閉症児などがiOS機器をより使いやすくするためにアクセシビリティを強化する「Guided Access」 ホームボタンロックをOSレベルで実現する「Single-app mode」。カタログ表示やKIOSK端末、博物館でのガイドなどの法人需要に応える

 冒頭で述べた通り、今回の基調講演で紹介された内容はiOS 6の代表的な機能の一部であり、また開発者向けβリリースに基づく。また、スライドで示された機能でも正式リリースが近づくにしたがって機能が実装されていくケースも少なくない。「今秋」までにはまだ間がある。インターネットには秘密保持契約を逸脱して開発途上のスクリーンショットなどが掲載される例もままあるが、そうした本来は許されざる事例に踊らされることなく、製品や各機能に関しては、正式リリースをもってあらためて評価をくだすべきものであると考える。

(2012年 6月 15日)

[Reported by 矢作 晃]