AMDは、IDFが開催されている会場近くのホテルで記者説明会を開催し、同社のCPU/GPU統合型プロセッサ“AMD Aシリーズ・APU”(開発コードネームLlano)の後継となるTrinity(トリニティ、開発コードネーム)を搭載したノートブックPCの最新版を公開した。
Trinityを搭載したノートブックPCは、6月に開催されたCOMPUTEX TaipeiやAMD Fusion Developer Sumitt(AFDS)でも公開されていたが、シリコンやドライバーのアップデートなどにより、今回は実際に触れる状態での公開になった。
さらに、AMDは詳細に関してはまったく明らかにしなかったものの、同社が開発中の次世代GPUのライブデモもあわせて公開した。同製品は28nmプロセスルールで製造されており、Radeon HD 6000シリーズの後継となる製品だとみられている。
●Bulldozer+Radeon HD 6000シリーズ相当のコアを内蔵することになるTrinityAMDが公開した開発コードネームTrinityは、6月にシアトルで行なわれたAFDSで発表されたAMD Aシリーズ・APU(Llano)の後継となる製品で、ノートブックPC向けの製品となる。Trinityの特徴は、Llanoと同じように、単体GPU並のGPUが内蔵されていることで、従来は単体型GPUがなければ満足に遊ぶことができなかったようなハイエンド3Dゲームや、OpenCLなどのGPUを利用して演算するタイプのアプリケーション(いわゆるGPUコンピューティング)も、単体GPU並の性能で利用することができる。
Trinityは、現行のLlanoと同じ32nmプロセスルールで製造されるが、2点Llanoから強化された。まず、x86プロセッサコアが、LlanoではK10ベースであったのに対して、TrinityではAMDの最新コアであるBulldozerコアへと変更されていることだ。さらに、内蔵されるGPUがLlanoはRadeon HD 5000シリーズ世代+UVD3だったのに対して、TrinityではRadeon HD 6000シリーズ+UVD3になることが大きな違いだ。
今回のデモでは実際に動作しているTrinity搭載のノートブックPCと、同じ解像度を持つCore i5搭載ノートブックPCとの比較がされ、実際にTrinity搭載のノートブックPCがDirect3D 11のアドバンテージであるテッセレーション対応などの特徴を生かして、よりリアルな描画が可能である様子がデモされた。現行のCore i5(Sandy Bridge)に内蔵されているGPUは、Direct3D 10.1までの対応となるので、こうした違いが生まれたのだ。
AMD GPU製品部門 CTOのエリック・デメルス氏によれば、「6月に公開したデモに比べて、シリコンも、ドライバーもアップデートされている。すでにこの状態でも、十分に3Dゲームをプレイできる状態になっている」と述べ、Trinityの開発が順調に進んでいることに自信を見せた。
なお、AMDによればTrinityのリリース時期は、以前の情報の通り、2012年の前半が予定されているとのことだった。
AMDが公開したTrinity搭載のノートブックPC | 左がCore i5搭載ノートブックPC、左がTrinity搭載ノートブックPC |
●初めて公開された28nmプロセスルールで製造される次期GPU、年内に発表予定
AMDは同じ会場で、28nmプロセスルールで製造される次期GPUのプレビューを公開した。公開されたのはノートPC向けのメインストリーム向けSKUで、実際にノートブックPCの開発キットに搭載された形で公開された。公開されたGPUは、赤いサブ基板上に搭載されており、小型のファンが取り付けられた状態で動作していた。
AMDのデルメス氏によれば「これが年内に発表される予定の28nmプロセスルールで製造されるGPUだ」ということで、それ以上の詳しい情報に関しては現時点ではコメントできないと述べた。OEMメーカー筋の情報によれば、AMDはSouthern Islandsの開発コードネームで次世代GPUを開発しており、今回公開されたGPUはそれに該当する製品だと考えることが可能だ。
IntelもIDF会場でPCI Express 3.0に対応するとみられているSandy Bridge-Eに対応したマザーボードを展示しており、こちらもそんなに遠くない時期に発表される予定だとみられている。Southern IslandsがPCI Express 3.0に対応しているかどうかは現時点ではAMDは明確にはしていないが、OEMメーカー筋の情報ではそうしたSKUも用意されていると言われている。となると、2011年の秋には、マザーボードも、CPUも、ハイエンド向けの製品が熱いことになりそうだ。
AMDが公開した28nmプロセスルールで製造された次世代GPUを搭載しているシステム | AMDの次期8コアプロセッサが8.429GHzのギネス記録を達成した認定証も公開された(別記事参照) |
(2011年 9月 16日)
[Reported by 笠原 一輝]