イベントレポート
あのヴィレヴァンも"AI店員"を導入。大盛況だった第1回AI・人工知能 EXPO
2017年7月10日 06:00
2017年6月28日~30日、東京ビッグサイトで「第1回AI・人工知能 EXPO」が開催された。このEXPOは、日本初の人工知能に関する総合展示会であり、第7回コンテンツ東京と併催で実施された。
近年、急速に発達しているディープラーニング(深層学習)をはじめ、さまざまな人工知能に関する展示やデモが行なわれ、身動きがとれないほどの来場者で賑わっていた。ここでは、そのなかから筆者がとくに興味を持ったものを中心に紹介していきたい。
UEIやモノゴコロ、さくらインターネットなどがディープラーニング関連の展示を行なう
AIとは広い概念であり、さまざな技術がAIと呼ばれているが、なかでも注目が集まっているのが、機械学習の一分野である深層学習である。深層学習とは、従来の機械学習で用いられていたニューラルネットワークの階層を増やしたディープニューラルネットワーク(DNN)を使って学習を行なわせるものである。
深層学習には膨大な演算が必要になるため、一般的なCPUでは時間がかかり過ぎるが、CPUよりも遙かに並列演算性能が高いGPUを利用することで、実用的な時間で学習ができるようになった。画像認識や画像生成などが得意だが、最近ではさまざまなネットワークが提案されており、自然言語解析や生成などへの応用も進んでいる。
今回のEXPOでは、後述するチャットボット関連の展示が多く、深層学習関連の展示は思ったよりも少なかったのだが、UEIやモノゴコロ、さくらインターネットなどが深層学習関連の展示を行なっていた。
人工知能の研究や開発を行なっているUEIでは、深層学習によるリアルタイム画像認識のデモや深層言語解析技術「DEEPanalyzer」および3次元畳み込み物体認識ソリューション「DEEPvolume」などを説明していたほか、UEIとサードウェーブデジノスが共同開発した深層学習用ワークステーション「DEEPstation DK-1000」も展示していた。
さらに、UEIとSony CSL(ソニーコンピュータサイエンス研究所)が開発した深層学習GUI環境「CSLAIER」やUEIがGlucoseと共同開発したマストドン専用Webクライアント「Naumanni」のデモも行なっており、来場者の注目を集めていた。
人工知能関連技術を研究しているモノゴコロは、「高精度・リアルタイム映像解析」のデモを行なっていた。これは、深層学習を活用し、サッカーの試合やアイドルPVのダンスなどをリアルタイムに解析し、ハイライト映像の自動生成や実況解説の生成を目指しているもので、たとえば、サッカーの試合なら、リアルタイムでAIカビラさんやAI松木さんのコメントを挿入することが最終的な目標となる。
現時点では、ボールや味方チーム、敵チームのリアルタイム識別はできており、プレイの種別の識別に取り組んでいるところだという。また、AIと映像によるバーチャルロボットプロジェクトのデモも行なっていた。
さくらインターネットは、同社が提供している高火力コンピューティングに関する展示を中心に行なっており、他社のIaaS(Infrastructure as a Service)よりも性能が高いことや価格的にもメリットがあることなどをアピールしていた。
さくらインターネット自身も人工知能を業務に取り入れており、サポートセンターにチャットボットを導入しているとのことだ。また、IoTプラットフォーム「sakura.io」の利用例として、オムロンの表情・感情センサーを利用して、年齢や性別、感情を数値化し、LTE経由でクラウド上にそのデータを蓄積していくデモも行なっていた。
ヴィレッジヴァンガードがAI店員「渋谷めぐる」を実店舗に導入
書籍や雑貨を販売しているヴィレッジヴァンガードは、モノゴコロと開発中のAI店員「渋谷めぐる」のデモを行なっていた。渋谷めぐるは、内部が透けて見える透明液晶を採用しており、なかに本などのお勧め商品を陳列することができる。
現時点では、対話機能は備えていないが、将来的には来店した客の言葉を理解して会話を行なったり、商品が置いてある場所の案内をしてくれるようになるとのことだ。渋谷めぐるは、2017年7月14日にヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店に登場する予定なので、興味をもった人は見に行ってみてはいかがだろうか。
日立やHPCシステムズが深層学習向けプラットフォームを展示
深層学習のためのハードウェアを展示しているブースもいくつか見られた。
日立は、CPUとしてIBM POWER 8を搭載し、GPUとしてTesla P100を2基または4基搭載したスーパーテクニカルサーバー「HITACHI SR24000/DL1」や、NVIDIAの深層学習用システム「NVIDIA DGX-1」を展示していた。
また、エッジコンピューティングにおける深層学習の例として、組み込み用SoCのJetson TX1を使って、単眼カメラによる物体の距離予測のデモを行なっていた。
HPCシステムズは、GPU搭載サーバーと画像保存用ストレージサーバーをセットにした「ディープラーニングスターターボックス」や、GeForce GTX 1080Tiを2基搭載した深層学習向けワークステーション「PAW-102」、Tesla P100を4基搭載可能な深層学習用システム「HPC5000-XBWGPU4R1SーPCL」の展示を行なっていた。
NTTドコモがコンビニなどの商品棚の商品を識別するデモを行なう
NTTドコモは、コンビニやスーパーマーケットなどの商品棚をスマートフォンやタブレットなどで撮影するだけで、その棚に並んでいる商品を識別するデモを行なっていた。
これは、深層学習を活用した画像認識と商品写真データベースを組み合わせることで実現されている。現在、こうした業務は専門の担当者が店舗を回って行なっているのだが、本システムが実用化されれば、発注や在庫管理の効率改善につながる。実際の導入に向けて開発中だという。
道路などのインフラ点検や製品の目視検査の自動化を深層学習によって実現
NTTコムウェアは、同社の「Deep Learning画像認識プラットフォーム」を利用して、道路の欠陥を映像から見つけるデモや製品の目視検査の自動化のデモを行なっていた。また、チャットボットを実現する業務支援AIや深層学習用クラウドサーバーの展示も行なっていた。
チャットボット関連の展示にも注目が集まる
今回のEXPOで、もっとも多かったのがチャットボット関連の展示だ。チャットボットとは、おもに文字で人とやりとりをするAIであり、比較的古くからある技術だが、いわゆる萌え絵的なアバターと組み合わせたり、音声認識・合成技術と組み合わせることで、よりキャラクターとしての魅力を持たせたアプローチが増えているようだ。
サイバーエージェントの子会社AI Messengerは、同社が開発したチャットボット「AI Messenger」の導入事例やデモを行なっていた。
NTTドコモとインターメディアプラニングが共同開発したチャットボット作成プラットフォーム「Repl-AI」は、ドラッグ&ドロップでボックスを追加することで、グラフィカルにチャットボットを作成できることをアピールしていた。
FKAIRが開発したチャットボット「ENA」は、電柱棒さんのイラストを3D化したアバターを実装し、AIアイドル的な存在感を持たせていた。
パーソナル・アシスタント・ロボット「PLEN Cube」が対話型音声サービスと連携
ソフトバンクのブースでは、PLENGoer Roboticsが開発中のパーソナル・アシスタント・ロボット「PLEN Cube」のデモが行なわれていた。
PLEN Cubeは音声認識機能を備えた小型ロボットであり、写真の撮影や音楽の再生、IFTTTを介した家電の制御などが可能であるが、ソフトバンクが開発したAI FAQソリューション「APTWARE」と音声合成ソリューション「Rizbell」と連携することで、対話型音声サービスを実現できる。
この対話型音声サービスは主に法人向けに提供される予定で、店舗などでのコミュニケーションロボットとしての利用も可能になる。