イベントレポート

Huawei、GoogleとAmazonと協業で米市場に本格参入

 CESが50周年を迎える記念すべき年の初日基調講演に、Samsung、Appleに続く、世界3位のスマートフォンベンダー、HuaweiのRichard Yu氏が登壇した。もちろん同社がCESの基調講演に登壇するのは初めてだ。言わばアメリカで認められるための登竜門とも言えるCESの基調講演だが、GoogleやAmazonとの協業についても表明され、アメリカの市場参入への強い意気込みを感じる講演となった。

 Huaweiは世界一のテレコム機器の企業として世界の人口の3分の1がなんらかの形で同社の製品と係わっているという。スマートフォンのメーカーとしてお馴染みだが、現在は3位に甘んじていても、虎視眈々と2位の座を狙っている。だが、5年前というと知らない人も多かった。ただ、ここ数年でブランドの認識率はうなぎ登りだという。

HuaweiのRichard Yu氏

 なぜ、こうまでHuaweiはスペシャルなのか。それは、やりたいことを隠さないからだとYu氏は言う。そして、同社のスタイルの説明を始めた。

 これまでHuaweiはテレコミュニケーションにフォーカスを当てたビジネスに注力してきた。だが、今はいろいろなことに力を入れていきたいという。昨年(2016年)、MatebookでPCの市場に参入したのも記憶に新しい。もちろん、常に投資を行なっているし、モバイルへの投資をやめることはない。それはもうパッション、つまり、情熱をもって投資を続けるという。

 同社は開発に多くのカネを使っているとYu氏。収益の15~20%を投資しているということだ。モバイルは分野としてこれからも最大の投資をすることになるだろうし、それでさらに収益が上がる。

 そこで大事なのは英知である。インテリジェントでフレキシブルであることが必要だと同氏は言う。1人1人のリーダーではなく、多くの人によるチームを評価することで、さらにエネルギーを投下できるというのだ。

 同社は中国を出自とてグローバル化した企業だが、パートナーとしてさまざまなグローバル企業とパートナーシップを結んでいる。今の同社にとって他社との協業はきわめて重要な要素だ。大学はもちろん、ライカやポルシェなどとのコラボレーションを例に、Yu氏はその成果を誇る。つまり、世界のリーダーシップをとる企業とのコラボレーションをアメリカでの信用に変えていきたいという姿勢がよく分かる。

 Kirinチップセットや、4G、5Gネットワークの技術、モデム業界のリーダーシップ、そして、バッテリの技術や、その充電のアーキテクチャ、さらには、写真のテクノロジについてひとしきり語ったYu氏、例えば、指紋認証にしても、最初のシングルタッチスマートフォンとしてMate 7、最初のWindows シングルタッチタブレットPCとしてMatebookを例に、同社の技術優位性に淡々と言及する。

 そして、次は何か。農業から始まって、産業革命があって、情報革命があり、インテリジェント革命が起こりつつある今、次の10年は、テクノロジそのものの革命をするのだとYu氏。これがインテリジェントレボリューションだ。全てが繋がり、全てがインテリジェントになっていく。将来のデバイスは、AIによってナチュラルな体験をもたらし、視覚や触覚といった感覚の世界とデジタルワールドをAIで繋ぐことになるらしい。

 これは、リアル世界とデジタル世界の融合だ。その時代には、スマートフォン+AI=インテリジェントフォンという公式が成立する。つまり、AI Basedのデバイスがさまざまなことを決定するようになる。もちろんIoT Basedの接続性も求められる。

 そんな話がひとしきり続いた後で、ゲストとして登壇したのが、GoogleのVPであるAmit Singh氏だ。同氏はAndroidのVR技術であるDaydreamについて説明し、Daydream Viewヘッドセットやたくさんのコンテンツを紹介した後、Tangoについても触れる。

 すわ、Lenovo、ASUSに続く「タンゴ3兄弟」の成立かと思ったが、まだ、Daydreamのみの協業ということで肩すかしをくらった形になった。

 さらにAmazonとの協業についても紹介された。こちらは同社の音声アシスタントalexaをスマートフォンで実現するものだ。Huaweiは業界で初めてAlexaを搭載するスマートフォンベンダーとなる。声でさまざまことを指示できるalexaがスマートフォンと相性がいいのは当然だ。

 Amazonからゲストとして登壇したalexa担当VPのSteve Rabuchin氏は、昨年、セルフサービスのAPIとして、alexa voice service(avs)を公開したことを紹介し、それをスマートフォンに搭載してもらうことになったと告げた。

GoogleのAmit Singh氏
AmazonのSteve Rabuchin氏

 そしてそれを受けたHuaweiのYu氏は、Mate 9シリーズをアメリカの市場に投入することを発表、明日から599ドルで発売するとした。Alexa入りのものも、この第1四半期に登場するという。まずはスマートフォンで支持を得て、アメリカの市場を制覇しようというわけだ。

 Huaweiは、MatebookなどのPCの分野でもMicrosoft、Intelといった米国企業とのコラボレーションに熱心だ。いよいよ、次の一手が気になる目が離せない企業の1つとなるだろう。