イベントレポート
VLSI回路シンポジウム、4倍の競争率を勝ち抜いた研究成果を披露へ
2016年6月16日 06:00
半導体の研究開発コミュニティにおける夏の一大イベント「VLSIシンポジウム」。同シンポジウムを構成する2つの学会が、相次いで始まった。デバイス技術をカバーする「VLSI技術シンポジウム(Symposium on VLSI Technology)」が昨日(13日)に始まったのに続き、本日(14日)は回路技術をカバーする「VLSI回路シンポジウム(Symposium on VLSI Circuits)」が始まった。
初日は話題の技術を学ぶショートコースを用意
6月14日に始まったのは、技術講座セッション(ショートコース)である。ショートコースは特定のテーマについて最新の動向を1日がかりで学ぶセッションであり、カンファレンスとは参加料金が別になる。今回のショートコースは、2つのコースが用意された。1つは次世代の超高速有線通信技術を学ぶコース、もう1つはFinFET技術、FDSOI技術あるいは埋め込みメモリ技術を利用した回路設計を学ぶコースである。
375件の投稿論文から97件を厳選
翌日の15日から、メインイベントであるカンファレンスが始まる。カンファレンスの会期は17日までの3日間である。
カンファレンスでの発表講演を目指して投稿された要約論文(投稿論文)の数は375件。VLSI技術シンポジウムの投稿論文数が214件なので、1.75倍もの投稿がある。このため採択率は非常に低く、VLSI技術シンポジウムよりもさらに狭き門となっている。
発表講演に選ばれた論文(採択論文)の数は97件である。採択率は26%と極めて低い。単純計算では、投稿4件に対して1件しか、採択されないことになる。ちなみに2014年の採択率は23%、2012年の採択率は25%、2010年の採択率は22%なので、最近の中では高めの採択率だとも言える。
投稿論文を分野別に見ると、「センサ・バイオ・ヘルス分野」と「データコンバータ分野」の投稿が多い。次いで「パワーコンバータ分野」と「クロック・周波数生成分野」の投稿が多くを占める。
回路技術の研究では大学が強い
企業と大学の投稿論文数と採択論文数を比較すると、投稿論文数では大学が圧倒的に多い。採択論文の比率でも大学が多く、全体のおよそ3分の2を占める。デバイス技術がテーマのVLSI技術シンポジウムでは企業の採択論文が多かったが、回路技術では大学の研究成果が主流になっていることが伺える。
細かく見ていくと、今回(2016年)は採択論文に占める企業の比率が久しぶりに増加し、減少傾向に歯止めがかかる兆しが出てきた。
国別の発表件数では米国が圧倒
採択論文の数を国別に見ていくと、トップは米国で49件に達する。採択論文全体の半分(51%)を占める。2位の日本は12件、3位の韓国は9件、4位の台湾は7件、5位のオランダは4件である。米国の突出ぶりが目立つ。
2010年から2016年までの採択論文数(割合)の推移を米国と日本、韓国、台湾で比較すると、日本は2010年から2015年まで減少が続いてきた。2010年~2012年は安定の2位を保っていたものの、2013年以降は台湾と2位を争うようになった。2016年は久しぶりに、前年に比べて採択数の割合が上昇した。
採択論文数の上位10機関中、7機関を大学が占める
採択論文の数を発表機関別に見ていくと、トップは3年連続で米国のミシガン大学(University of Michigan)が占めた。今回の発表件数は8件である。2位はIntelで7件の発表を予定している。3位は4件で韓国のKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)と米国のカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)が並ぶ。5位は、6つの発表機関でいずれも3件が採択された。ここまでの上位10機関を企業と大学で分けると企業が3社、大学が7校となり、大学が多い。
分野別ではアナログ回路の発表が43件と多い
続いて、分野別の採択論文数と日本の採択論文数を見ていこう。分野別ではアナログ分野の発表が多い。発表件数は43件である。日本の採択論文もアナログ分野が多く、全体で12件の発表を予定している中で、5件を占める。分野別で日本の発表が多いのはメモリ分野で、7件中の3件を日本の機関が発表する。
一方、デジタル分野では日本の発表が1件と少ない。前年の2015年は4件、2014年は5件の発表が日本からあっただけに、やや寂しい気がする。
VLSI回路シンポジウムのカンファレンスでは、プレビューレポートでお伝えしたように、興味深い論文が相次いで発表される。順次、現地レポートでお伝えするのでご期待されたい。