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QNAP、Gmailのバックアップが可能になった最新NASシステム

~QTS4.2対応の個人/法人向けNAS製品3種類を紹介

Android OSを搭載したNAS「TAS-268」

 QNAP株式会社は20日、同社NAS用システム「QTS4.2」の新機能と、個人向けと法人向けの最新NAS 3機種に関する製品説明会を開催した。QTS4.2は10月に発表済みで、今回説明会で紹介された個人向けNASの「TAS-168」と「TAS-268」も10月に発表され、既に発売もされている。説明会では同社NASシステムのQTS4.2の新機能を主軸に解説が行なわれた。

 QTS4.2ではデータ保護機能を強化。NASのストレージ状態を巻き戻せるスナップショットが「Volume」と「LUN」(Logical Unit Number)の両方を取得できるようになり、書き込みおよびリストアなどの速度が向上。スナップショットでのクローン作成に対応し、読み書きも可能になった。システム管理者がテスト環境を設けたいといった状況に好適とする。そのほか、別のNASにスナップショットを移せるリモートレプリケーションができるようになり、スナップショットの管理UIも使いやすく設計し直されている。

Volume/LUNの両方のスナップショットを取得可能に
スナップショットのクローンを生成できる
スナップショットを別のNASに移すことができるリモートレプリケーション機能
ユーザーインターフェイスはシンプルになり、使いやすくなった

 バックアップ機能は複数のバージョン管理ができるようになったため、誤ってデータを削除してすぐに気付かなかった場合や、かなり過去のデータ探す場合などに有用とする。バックアップのタイミングはスケジュールで管理可能。また、個人および法人のGmailアカウントをバックアップする機能も搭載。NAS内に取り込んだメールは検索可能で、そのメールをWebのGmail側に戻すことも可能。Gmail自体には容量の制限があるものの、このバックアップ機能を使うことで、NASを通して容量を管理できるようになる。

バックアップを複数取ってのバージョン管理が可能に
個人と法人両方のGmailアカウントのバックアップができる

 QNAPのNASでは今時のNASらしく、ファイル同期機能を搭載。この機能は「Qsync Central Station」で利用可能。QTS4.2になり、データベースと同期化アルゴリズムが見直され、クライアント側の負荷を軽減しつつ、シングルユーザーなら2倍、24ユーザーのチームなら20倍も性能が向上されたとする。

複数デバイス間でのファイル同期化機能「Qsync Central Station」
共有フォルダをさまざまなデバイスで可能に
データベースと同期化アルゴリズムを見なすことで性能を改善した

 ストレージ関連では、SSDとHDDの混在環境でアクセスの多いデータをSSD側に配置するといったインテリジェントなデータ管理を自動で行なうようになった。最近のサーバーでは性能を重視してSSDを搭載するものも増えているが、それでもHDDと比べれば圧倒的にコストが高い。「Qtier」を利用すれば、SSD→SAS HDD→SATA HDDという速度の順番で階層化が行なわれ、最もアクティブなデータが高速ドライブに保管されるようになる。そのほか、性能向上策としてこれまでは読み取りにだけ使われていたキャッシュ機能が、書き込みにも対応したため、書き込み速度が向上した。

サーバーとして、SSDのみHDDのみといった場合のストレージの課題
アクセスが多いファイルをSSDに配置して、それ以外はHDDに配置する階層化ストレージ「Qtier」
読み込みだけでなく、書き込みもキャッシュするようになった

 管理機能として追加されたのは、NAS内の検索機能「Qsirch」で、ドキュメントファイル、音楽ファイル、画像ファイル、Excelファイル……など、6,000種類以上のファイルをサポートし、それぞれを個別に認識する。これらファイルの中身を確認可能なプレビュー機能も備えた。

NAS内を検索する「Qsirch」
6,000以上のファイルを個別に認識できる
ファイルの中身を確認するプレビュー機能搭載

 なお、これらの機能はQNAP製NASの全てのモデルに搭載されているというわけではなく、個人/法人で実装機能が異なる。対応機能については各製品紹介ページなどから確認可能だ。

TAS-168とTAS-268

「TAS-268」
背面

 個人向けのTAS-168(容量1TB)およびTAS-268(容量2TB)は、QTS4.2のサポートに加え、世界で初めてAndroid OS(4.4.0)を搭載したデュアルシステムのNASである点が大きな特徴。

 本体にHDMI出力を備え、TVなどにAndroid OSの画面を表示できる。もちろんGoogle Playストアでアプリをダウンロードでき、普通のAndrodスマートフォンなどと同じように使用できる。ただし、本製品の搭載CPUはARMの1.1GHzデュアルコアと、性能は高くないため、今時のスマートフォンやタブレットと比べると処理が重いゲームなどを遊ぶには厳しいだろう。

ファイル管理機能やクラウドサービス同期機能を搭載
モバイルデバイスからNAS内の音楽/映像ファイルを再生できる
Android OSを搭載し、HDMI出力で画面を出せる

 TAS-168はSeagateの2TB HDD(ST2000VN000)を1台、TAS-268は同HDDを2台搭載しており、後者のみRAID 1のミラーリング構成で安全性を高めている。それ以外の仕様はほとんど同じで、メモリは2GB、内蔵ストレージは4GB、CPUは前述のもので共通。

 インターフェイスも同じで、HDMI出力、USB 3.0、USB 2.0×4、Gigabit Ethernetを備える。USB 2.0の数が4基と多いのはAndroid OSを使用するためにキーボードやマウスといった入力インターフェイスを繋ぐためだ。

 本体サイズ/重量はTAS-168が60×125×187.7mm(幅×奥行き×高さ)/0.56kg、TAS-268が90×125×187.7mm(同)/0.7kg。

TVS-871T

「TVS-871T」
背面

 法人向けNASでは、中小企業向けに8基の3.5/2.5ドライブを搭載可能な「TVS-871T」を紹介。TVS-871Tは10Gbit LANだけでなく20Gbpsの転送能力を持つThunderbolt 2を搭載し、DAS(Direct Attached Storage)として使えるのが特徴。ThunderboltをブリッジさせるIP over Thunderboltプロトコルをサポートしているため、PCと直結してNASとして通信できる。価格は約50万円とのこと。

 CPUはCore i7-4790Sとかなり豪華で、メモリは16GBを搭載。インターフェイスはThunderbolt 2×2、10Gbit Ethernet×2、Gigabit Ethernet×4。オプションで5ベイまたは8ベイのユニットを拡張でき、最大6台のデイジーチェーン接続が可能。8ベイユニットと8TB HDDを組み合わせた場合の最大容量は448TBに達する。

 本体サイズ/重量は298.2×235.4×185.2mm(同)/7.83kg。

PCとNASをThunderbolt 2で直結して、DASとして利用可能
搭載容量を拡張するためのユニットがオプションで売られている
デイジーチェーンで最大6台接続し、448TBの容量を確保できる

TVS-x80U-SAS-RP

「TVS-x80U-SAS-RP」シリーズ
背面

 「TVS-x80U-SAS-RP」シリーズは、ラックマウントモデルの中でも大規模データセンター向けのハイエンド製品。冒頭で触れた階層化機能「Qtier」に対応しているのが特徴で、SSDとHDDを組み合わせて、頻繁にアクセスされるデータをSSD上に自動的に配置してくれるインテリジェントな動作に対応。性能向上だけでなく、コストの節約にも繋がるというメリットがある。

 本製品は12GbpsのSASに対応し、最大搭載容量は1.2PB。インターフェイスは40Gbit Ethernetを装備。ベイ数の違いで4モデルラインナップされており、24/16/15/12ベイの中から選ぶことができる。

SSDとHDDを組み合わせる「Qtier」対応
階層化は自動的に行なわれる
アクセス頻度の高いデータはSSDに、その次はSASにといったようにインテリジェントな管理を行なう

(中村 真司)