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レノボ、世界で初めてXeonを搭載した「ThinkPad P」を解説
~2つのクーラーを無駄なく使う機構。タッチパッドも3ボタンに
(2015/11/17 18:15)
レノボ・ジャパン株式会社は17日、モバイルワークステーション新製品「ThinkPad P」シリーズ、およびビジネス向けデスクトップ「ThinkCentre M」シリーズを発表した。これに伴い、都内で記者説明会を開催した。
モバイル版のXeonを世界で初めて搭載したThinkPad P
モバイルワークステーションの「ThinkPad P70」および「ThinkPad P50」について、コンシューマ製品事業部の高木孝之氏が解説を行なった。
ThinkPad Pシリーズは米国で8月に発表された製品。IntelはSkylakeの投入に合わせて、モバイル向けのXeonを発表したが、ThinkPad Pシリーズはこれを世界で初めて搭載した製品となる。
ThinkPadのラインナップ詳しいユーザーであれば、「ThinkPadのモバイルワークステーションはWシリーズではないのか」という質問が真っ先に挙がるだろう。高木氏によると、今回の改名の背景には2つの理由があるとする。
まず、ThinkStationシリーズのワークステーションモデルではPを冠している。これは「Power、Performance、Professional」といった意味合いが含まれている。これをモバイルにも広げ、ポートフォリオを今後拡張していくというコミットメントを含めて、ThinkPad Pとしている。
もう1つが性能のオーバーラップで、これまでのWシリーズはThinkStation Pシリーズの下位モデルにはやや及ばない性能であったが、今回のThinkPad Pは最大で64GBのメモリや、Maxwellベースの高性能GPUを搭載することもあり、P300 SFF/P300 Towerを超える性能を実現している。モバイルワークステーションとしての性能は新しい領域に入っているとし、改名を決断した。
ThinkPad Pの開発に当たって、開発チームが目指したのは「史上最強のThinkPad」である。仕様詳細は関連のニュース記事を参照してもらいたいが、モバイルとしては世界初のXeon、Maxwell世代のQuadro、最大64GBのメモリ、NVM Express SSD対応、Thunderbolt 3/USB 3.1、4Kディスプレイ、キャリブレータの搭載などを特徴として挙げた。
その上で、これらのパーツの性能がきっちり発揮されるよう、レノボならではのこだわりを5つ取り入れ設計したという。
1つ目は「FLEX Performance Cooling」技術。ThinkPad PシリーズではGPU用およびCPU用に2つのファンを搭載しており、それぞれがヒートシンクとヒートパイプで繋がっているが、ThinkPad PではGPUとCPUのヒートシンクの間もヒートパイプで繋げた。これによりCPU/GPUヒートシンク間の熱移動が可能になり、放熱効果が向上した。
現代的なアプリケーションでは、CPUかGPUかどちらかに処理が偏ることが多いが、この構造であればもう片方の冷却機構が無駄になることはない。また、これにより冗長性を持たせることも可能になり、もし片方のファンが故障しても作業を継続できる(性能は低下するが)。
このFLEX Performance Coolingにより、「Automatic Turbo Boost」と呼ばれる技術も実現した。これはCPUが高負荷の時に、Intelが定めるTurbo Boostの仕様範囲内でなるべく高いクロックを維持するようにするもの。同社の測定によれば、CPUを使い4.39GBのMP4動画を4Kから1Kにトランスコードする場合、10.3%の性能向上が確認できたという。レノボは「価格が高いCPUを買うことなく、効果的な投資ができる」としている。
3つ目はバッテリ駆動時の性能向上。レノボの調査によると、モバイルワークステーションはせっかくバッテリが付いているのにもかかわらず、結局ACアダプタに接続しっぱなしで利用するユーザーが多かったという。その理由を訊くと、モバイル性というより、性能が大幅に低下するためだという。
そこで、競合他社のミドルレンジのGPUを搭載する同等構成の17型モバイルワークステーションを用意し、3DMarkテストしたところ、ACアダプタ接続時の性能を100とした場合、“A社”は22.6%、“B社”は58.4%まで性能低下していたことが分かった(いずれも開発当時のため、前世代機)。そこでThinkPad P70ではバッテリ駆動時になるべく性能が落ちないようチューニングし、ACアダプタと比較して87%の性能を実現したという。
モバイルでも容量64GBのメモリを実現したのもこだわりの1つ。近年はワークステーションで取り扱うデータ量が大容量化しており、3Dデータの緻密化に加え、フォトリアリスティックな画像の実現、マテリアル情報の取り込み、4K解像度などがその一因であるとした。
同社のテストによると、「AutoCAD Revit」で容量1.6GBのファイルを開いたところ、その約20倍の32GBのメモリ、「SolidWorks」でも2.6GBのファイルを開いたところ、同じく約32GBのメモリが使用されることが分かった。ユーザーにストレスを感じさせないためには、64GBメモリの搭載が必至の課題であったとし、独自設計で実現したという。
最後の5つ目ポイントは、やはりThinkPadが持つ堅牢性や利便性であるとし、MILスペック準拠の筐体や、定評のキーボード、多ポートを持つドッキングステーション、および2,048レベルのペンオプションを用意していることを挙げた。
今回Pシリーズに限り、トラックポイントのボタンに加え、新たにタッチパッド側も3ボタンとなった。これはCADソフトなどでセンタークリックを使って拡大/縮小操作を行なうためだとしており、「特に日本からの要望が多く、実装に至った」としている。
ThinkCentreもラインナップ名を整理
同時発表されたThinkCentre Mシリーズについて、同社 コマーシャル製品事業部の大谷光義氏が解説を行なった。
大幅なアップデートがあったThinkPad Pと比較すると、ThinkCentre Mシリーズは細部の改良など、マイナーチェンジに留まっている。ただしラインナップ名については3ケタの数字となっており、これまでvProへの対応を示す「p」サフィックスがなくなり、スリム型の「SSF Pro」は「Small」に改名されシンプルとなった。
ThinkCentre Tinyシリーズは今回で3世代目となる。筐体サイズは変更されておらず、Alt+Pショートカットキーによる電源起動や、Powered USBポートの装備、PC用/モバイル用ヘッドセットへの対応はそのまま継続。新要素としては、ツールレスで開けられるネジオプションの追加や、ダストシールドによる37%の防塵性能の向上などを取り入れた。
ダストシールドは、網目がすごく細かいフィルタで、本体前面に嵌めることで防塵性を高める。Tinyのような小型フォームファクタでは効果が絶大で、同社の測定によれば、同等条件化では入るホコリの量こそ12.9gから8.14gと約37%減でしかないが、CPU温度は5.5℃、HDD温度は7℃も低かったという。
一方で液晶の「T」シリーズも、Tinyシリーズが容易に装着できるよう、スタンドが進化した。新たに用意されたクランプブラケットは、わずか2ステップでTシリーズの液晶に取り付けられ、本体を液晶背面に設置できる。
ThinkCentre M900 Smallも同様にダストシールドを搭載し、入るホコリを42.9%低減する。ただし内部空間は余裕があるため、温度低下はTinyほどの効果はない。それでもCPUで2.5℃、HDDで4℃の差があったという。
一体型の「ThinkCentre All-In-One」シリーズは、上位のM900zで新たにツールレス筐体を採用した。そのほか共通で、タッチしやすい角度に倒せる「UltraFlexスタンドII」や、日本のユーザーから要望が多かったキャリーハンドルの搭載、カメラロックスイッチ、物理ボタンなどを特徴とする。