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“オープンかつ安全でスケーラブル”なIntelのIoTプラットフォーム

~Intel IoT ASIA 2015基調講演、500億台の端末がネットへ繋がる時代に向けた戦略

「Intel IoT ASIA 2015」

 インテル株式会社は17日、都内にて、同社の「Internet of Things(IoT)」への取り組みや最新技術などを紹介する「Intel IoT ASIA 2015」を開催した。

 同イベントでは、まずIntel アジア・パシフィック&ジャパン IoTダイレクト・チャネル・セールスディレクターのロニー・マカリスター氏が登壇し、開会の挨拶を行なった。

Intel アジア・パシフィック&ジャパン IoTダイレクト・チャネル・セールスディレクター ロニー・マカリスター氏

 2020年のインターネットへ接続されるデバイスの数は全世界で500億台に達すると見られており、中国を除くアジア・太平洋地域だけを見ても、2015年の地域人口28億人に対するIoTの浸透率4.4%から、2020年には10.1%へ増加していくという。収益で見ると、2015年で8,881億ドル、2020年では2兆6,026億ドルの市場へ成長する見込みとなる。

 マカリスター氏は、「IoTは、5Gや量子コンピューティングといった多数ある最新技術の中で、現在最も期待が高まっている技術の1つ」と述べ、どのようにIoTを実現していくのか、つまり「どのように500億台のデバイスをインターネットへ接続しそれを制御するのか」が注目されているポイントで、それにはオープンなフレームワークを提供し、スケーラビリティを確保することが必要であるとした。

IoTへの期待は今が頂点にある
アジア太平洋地域だけでも、2020年には2兆ドルを超える市場に成長
垂直でなく水平的ビルディングブロックを組み合わせイノベーションを実現

 続いて行なわれた基調講演には、Intel IoT事業本部副社長兼IoT戦略・テクノロジーオフィス本部長のローズ・スクーラー氏が登壇。「IoTは、PC、インターネットに続く、コンピューティングの第3の波」であり、自宅や病院、工場などあらゆる場所に拡散され、金銭や天然資源の消費削減や、人命を救うものになるだろうと述べた。

Intel IoT事業本部副社長兼IoT戦略・テクノロジーオフィス本部長 ローズ・スクーラー氏

 しかし、PCが普及当初、独自の規格やシステムで実装されていたのと同様、既存のIoTソリューションは、チップからゲートウェイ、サーバーまで、用途毎に専用の製品やシステムが構築されていることを指摘し、これは生産の創出と規模の拡大という面で大きな課題となると述べた。

 そこでIntelでは、同社とエコシステムの製品/技術を導入した、“オープンかつ安全でスケーラブル”なIoTリファレンスアーキテクチャ「Intel IoTプラットフォーム」を提供するとした。

 ジーンズ量販店大手のLevi'sでは、実際にIntel IoTプラットフォームを利用して、在庫管理にIoTソリューションを導入しており、商品の移動や紛失などを通知監視し、各店舗の情報を分析可能なシステムを構築しており、小売業者の場合、在庫精度が3%向上すると1%利益が上昇すると推定されているが、Levi'sではIoTの導入により、従来より30%以上精度が向上し増益に繋がったほか、在庫の管理が正確となったことで、店頭の在庫切れが防げるなど顧客の体験も向上したという。

「Intel IoTプラットフォーム」
IoTソリューションへの“オープンかつ安全でスケーラブル”なアプローチ
Levi'sでは製品管理にIoTを活用
在庫管理の精度が向上し売上の増大だけでなく顧客体験も向上

 また、さまざまな製品がなければ500億のデバイスへ浸透できないとして、Intelでは、ウェアラブルにはQuark、車載ならAtom、膨大な分析処理が必要となるCTスキャナーにはXeonプロセッサなど、多様な製品ポートフォリオを用意するほか、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア面でも、センシングを制御可能にする「IQ SDK」を提供する。

IoTの規模を加速
製品ポートフォリオの拡張性
「Quark SE」プロセッサと、それを搭載する「Curie」SoCでは、パターンマッチング機能を備えており、センサーが取得した心拍数などのバイタル情報から一致するものを検出し、シリコンレベルから通知することが可能

 ビッグデータの分析には、人材/スキルの不足、データサイエンティストの重労働、他分野との協力など、さまざまな問題が存在するが、Intelの提供する、データサイエンティスト、アプリケーション開発者用のオープンソースな分析プラットフォーム「Trasted Analytics Platform(TAP)」により、迅速な環境の構築が可能であるとした。

ビッグデータの分析に伴う問題
「Trasted Analytics Platform(TAP)」

 消防隊員用ギアの販売なども行なっているHoneywellでは、TAPを用いて消防署などから各消防隊員の体温や心拍数、現在位置やジェスチャーの検出(自力での行動不可など)を監視可能とするモニタリングシステムが構築されているが、わずか2週間で導入されたとのことで、導入の簡便さをアピールした。

各隊員が装着するデバイス。中央の大きなパックはHubで、そのほかのデバイスBLEで接続、収集したデータをクラウドに送信する役割を果たす
腰や腕に装着
システムの全体図
TAPでリアルタイム分析し結果をWeb UIで表示
心拍数や立っているのか伏せているのかなどの運動状態、周辺温度やガス濃度を隊員別に表示
ビル何階のどの部屋に居るのかといった現在位置
腕を振って動けなくなったことを示すジェスチャーを腕時計のセンサーが検出
Web UIで行動不能となっていることを通知

 またIntel傘下のWind Riverより11月3日(現地時間)、オープンソースのYoctoをベースとしたOS「Pulser Linux」と、Quarkプロセッサ対応のマイコン向けリアルタイムOS「Rocket」の2つのクラウドコネクテッドOSの無償提供と、アプリケーション開発のためのSaaSクラウドスイート「Helix Cloud」が発表されているが、スクーラー氏は、これらによって組み込み向け機器に精通していない場合でも簡単に導入が可能だと述べた。

 標準化についても、Open Interconnect Consortium(OIC)、Industrial Internet Consortium(IIC)というIoTに関する2つの大きな標準化団体に参加し、相互互換性を実現しているという。

 スクーラー氏は、IoTにより、全く新しいデータの利用法がこれから生み出されていくだろうと述べ、その普及には広い企業がかかわるエコシステムが必要であり、そのためにはオープンであることが重要であると強調して基調講演を終えた。

Wind RiverのRTOS「Pulser Linux」と「Rocket」、SaaSクラウドスイート「Helix Cloud」
「Intel IoTデベロッパーゾーン」ではアカデミックプログラムやハンズオンイベントを実施
標準化団体へ参加しオープンな相互運用性を実現

(佐藤 岳大)