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直射日光やカビにも耐える新ThinkPad
~キーボードやクリックボタン、前モデルの反省を活かし原点回帰
(2015/2/10 19:25)
レノボ・ジャパン株式会社は10日、ThinkPadシリーズの主力モデルの国内投入を発表。これに合わせて都内で記者発表会を開催した。
冒頭では、同社 執行役員専務の瀧口昭彦氏が挨拶。全世界のPC市場におけるLenovoのシェアが20%を超えたこと、そして日本国内ではNECとのジョイントベンチャーによりシェアが30%を超えたことを挙げ、良い業績を示していることをアピールした。
また、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ株式会社の設立により、クライアントからサーバーまで、全てをワンストップのソリューションとして提供できる企業に変革していることをアピール。来たるWindows Server 2003のサポート終了に向け、企業へのソリューション提案が行なえる体制を整えたとした。
今回発表されたThinkPadの特徴については、ThinkPad製品事業部 ThinkClient Brand Managerの土居憲太郎氏が解説した。
同氏はまず、ThinkPadの原点について振り返る。「ThinkPadの基本は、一般的なニーズに対し高いレベルで応える点である。堅牢性へのニーズに対しては、MILスペックへの準拠や独自の拷問試験、性能やセキュリティについては最新技術や指紋認証、および独自のソフトウェアやチューニング、そしてユーザビリティと管理性、共通化というニーズに対しては、タイピング感にこだわったキーボードやトラックポイント、複数機種におけるパーツの共通化などによって応えている」とした。
それに加えて、ThinkPadならではの拡張性によって、幅広いニーズに応えていく必要があるとする。「今回、新ThinkPadシリーズの投入に合わせて、純正の周辺機器ラインナップを増やしており、ユーザビリティの拡大を目指した」と語った。
新製品の投入に当たって、レノボは改めて市場調査を行なった。1つ目は国内における企業向けPCの出荷台数。2009年にはリーマンショックにより一時需要が減少したが、2011年以降はWindows XPの買い替え需要で再び上向きとなり、またタブレットの導入台数も増加しつつある。2014年はタブレット需要が落ち着き、再びPCの需要が伸びているが、今後はPCではオーバースペックな分野で引き続きタブレットの需要があるだろうとし、レノボとしては両方に対応できるよう製品ラインナップを展開する必要があるとした。
一方で、企業内におけるクラウドの利用には、未だセキュリティ面やサービスの統合や一貫性に不安があり、進んでいないという問題を挙げる。また、PCを導入するに当たり、パスワードや情報漏えい対策といったセキュリティ面、Internet Explorer 8のサポート終了に紐付く社内の固有システム/アプリケーション環境の移行、バッテリ駆動時間やWWAN対応などモビリティ面、そしてタッチインターフェイスへの移行など、IT管理者が抱える不安や問題を挙げる。これらの不安や問題解決に向け、ユーザビリティや管理性に注力して開発したThinkPad、そして業務基盤となり、運用と利便性を向上させるSystem xをワンストップ・ソリューションとして提供できることで解決できることをアピールした。
旧モデルでの反省を活かしたx50シリーズ
さて、2015年のThinkPadシリーズの特徴だが、まずは物理ボタンへの回帰が挙げられる。1月に発表したThinkPad X1 Carbonは、前モデルで採用されたタッチのAdaptiveキーボードを廃し、物理のファンクションキーを備えた。一方でThinkPad X/T/W/L/Eなど全シリーズでは、前モデルではトラックポイントのクリックボタンがタッチパッドと一体化していたのだが、新モデルでは独立型となった。
土居氏によると、「前モデルではWindows 8で広く普及するタッチ操作を見込んで、タッチへの親和性が高いAdaptiveキーボードや、面積が広い一体型のタッチパッドを採用した。しかしユーザーや管理者の実際の声を聞くと、物理ボタンを求めていることが分かった。ThinkPadは常にユーザーの声を聞き、常に改善を行なっていくことを約束している。そのためこの反省を新モデルの開発に活かした」と語る。
ThinkPadは堅牢性を示すために、これまでも8項目(湿度、低音、高音、粉塵、振動、メカニカル衝撃、高度、極端な温度)の米国のMILスペックテスト(810G)をクリアしているのだが、今回新たに太陽放射(7日連続の太陽放射試験)および耐菌試験(5種類のカビが増殖する部屋の中に28日間放置)という2項目が追加され、より多くの環境で使用できるようになった。
また、ドッキングステーションやタブレット用のキーボードなどの周辺機器も拡充。バッテリやドッキングステーションも旧モデルとの共通化を図り、利便性と複数導入時の管理性を向上させた。国内では後日発表となるが、重箱型ThinkPad用アクセサリ「ThinkPad STACK」も加わるという。
発表会では、ThinkPad X1 Carbon、ThinkPad Helix、ThinkPad W550sの3機種にフォーカスを当て、1日のビジネスを想定しながら製品紹介を行なった。まずX1 CarbonはPCI Express接続のSSDや薄型筐体、4K/60Hzの外部ビデオ出力への対応で、会社でも自宅でも使えるBYODデバイスとして好適だとアピール。一方Helixはウルトラブック プロ キーボードに装着することで、会社のデスクで3画面を活かした効率の良い作業効率を実現。一方で高度なグラフィックスを必要とするCAD/CG分野にはW550sの性能が好適であるとした。
今回のデモの中では、VDI(仮想デスクトップインフラストラクチャー:デスクトップ仮想化)の活用に焦点が当てられた。いつでもどこでも共通のデスクトップが利用できるという意味ではVDIは非常に有効だし、VDIを利用するだけならばより低価格なシンクライアントでも良いのだが、シンクライアントはBYODには向いておらず、さらにモバイルネットワークでの利用においては、レイテンシやバス幅の課題がある。スタンドアローンとしてもVDIクライアントとしても利用できるThinkPadであればこの問題は解決できるわけだ。
しかしレノボThinkPadという製品だけを企業に売るのではなく、VDIを構築する環境やサーバーも含めて、ワンストップソリューションで提供できる。そのことをアピールする発表会にもなった。