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ソニーストア大阪で「VAIO Prototype Tablet PC」が展示

~フォトグラファーも満足のディスプレイ

初めて一般公開されたVAIO Prototype Tablet PC

 大阪・梅田のソニーストア大阪において、11月2日、VAIO株式会社の「VAIO Prototype Tablet PC」に関するトークショーが開催された。

 VAIO Prototype Tablet PCは、米ロサンゼルスで開催されたAdobe MAXにおいて世界初公開したVAIOブランドのタブレットPCの試作品で、来年(2015年)にも商品化が見込まれている。日本において、一般ユーザーに対して公開されるのはこれが初めてとなった。

 トークショーは、「未来のVAIOによって描かれる、新しいPCライフ『VAIO Prototype Tablet PC』トークショー」と題して、VAIO株式会社の商品プロデュサー/商品企画担当ダイレクターの伊藤好文氏と、フォトグラファー/レタッチャー/3DCGクリエイターの御園生大地氏が登壇。VAIO Prototype Tablet PCを使用したフォトレタッチのデモンストレーションなどを行ないながら、同製品の特徴や魅力について紹介した。

 VAIOの伊藤氏は、トークショー終了後の本誌インタビューに対して、「今日、ここに集まっていただいた方々は、熱烈なVAIOファン。試作品とは言え、製品を前にしてユーザーの方々と話をするのは初めての機会だった。そこで多くの期待を寄せていただいていることを感じ、さまざまな要望もいただいた。そして、VAIOが打ち出した本質+αという考え方に対しても、理解を得ていることを感じた。これをしっかりと製品化し、期待を裏切らないものを世の中に送り出したい」と述べた。

クリエイターのためのプロトタイプ

 2日午後1時および午後3時30分から行なわれたトークショーは、各回20人の事前予約制となっており、募集開始から2日間で定員に達し、募集が締め切られた。ソニーストア大阪のオープンスペースで行なわれたことから、当日は、立ち見で参加する人の姿も数多くみられた。午後1時からスタートしたトークショーでは、約60人が参加した。

「VAIO Prototype Tablet PC」トークショーの様子
午後1時からのトークショーでは、20席の定員のほか立ち見を含めて約60人が参加した

 VAIOの伊藤好文氏は、「私は、ソニー時代から、小さいもの、あるいは社内では変体(変態)ものを担当し続けてきた。今回のVAIO Prototype Tablet PCもその流れの中にある」として会場を沸かせた後、VAIO Prototype Tablet PCの開発ストーリーについて説明。Adobe MAX 2014での展示の様子に触れながら、「このイベントは1,500ドル(約15万円)を支払って参加するクリエイターのためのイベント。初めてVAIOが開発した製品を提案する場であるとともに、クリエイターに使ってもらうことで、我々が研究開発してきたものが正しかったのかどうか、どう改善すればいいのかを確認する場でもあった」とした。

 一方で、VAIOのホームページに掲載されている「本質+α」を説明した「PHILOSOPHY」のページのバックに使われている写真が、VAIO Prototype Tablet PCの写真であることを初めて明かした。その点でも、VAIO Prototype Tablet PCが、VAIOが目指す「本質+α」を具現化した最初の製品であることを意味しているとも言えそうだ。

 伊藤氏も、「VAIO Prototype Tablet PCは、VAIOがしっかりとモノで語っていくコンセプトPC。自動車のコンセプトカーと同じ意味を持つ製品である。コンセプトカーはレーシングドライバーに乗ってもらい、細かいフィーリングを突き詰めていくが、VAIO Prototype Tablet PCもクリエイターに利用してもらい、次のPC、これからのPCはどうあるべきかを突き詰めていく役割を担っている。クリエイター向けのPCを作るということで、これからVAIOが出すPCが、全てお客様にとって、使いやすいものを作ることにつながると考えている。クリエイターはモノを創造するという仕事でPCを使うのと同時に、限られた時間のなかで創作物を生み出すことが求められており、生産性をサポートするツールが必要とされている。創造性と生産性の確保を両立させることは、PCの役割であり、これがVAIOが実現する方向性になる」と位置付けた。

 続けて、VAIOがクリエイター向けに製品作りを開発した経緯について説明した。発端は、ソニー時代の2012年秋に発売した「VAIO Duo 11」だったという。

 「VAIO Duo 11は、クリエイターを想定したPCではなく、ビジネスパーソンが、ノートの代わりにPCを使うことを目指して開発した商品だった。だが、イラストレーターの方々が、デスクに縛られずに外に持ち出しても作業ができるPCとして注目しはじめた。VAIO Duo 11を使うことで創作する場が広がるという声もあがってきた。こうした動きをきっかけに写真家やイラストレーターなどのクリエイターとの連携をはじめ、さらにAdobeとの連携を通じて、デザインや機能を研ぎ澄ましていった。それが、今回のVAIO Prototype Tablet PCに繋がっている。創作活動に十分耐えうるタブレットであり、ほかのタブレットとは次元の違うものを考えている。VAIO Prototype Tablet PCが目指すゴールは、クリエイターにデスク外の第2の場所で、プロレベルの創作を支援することにある」。

 伊藤氏は、VAIO Prototype Tablet PCの基本コンセプトを、「THE MONSTER TABLET」とし、「圧倒的なパフォーマンス」、「高密度実装によって実現するモビリティ」、「プロの創作活動に耐えうるクリエイティブUX」の3点とし、それぞれの特徴について説明した。

VAIO株式会社の商品プロデュサー/商品企画担当ダイレクターの伊藤好文氏
フォトグラファー/レタッチャー/3DCGクリエイターの御園生大地氏
Adobe MAX 2014の様子を紹介。5,000人以上が来場したという
VAIOのホームページに掲載されている写真はVAIO Prototype Tablet PCだという
本質+αを目指すためのコンセプトPCがVAIO Prototype Tablet PCと位置付ける
クリエイターに着目した背景をマンガで表現。マンガはVAIOの設計メンバーによるものだという
Adobeの開発チームとも連携して開発を進めた
VAIO Prototype Tablet PCが目指すゴール
他社のタブレットとは異なる「THE MONSTER TABLET」になるという

 性能面では、Hプロセッサラインのクアッドコアプロセッサを採用するとともに、GPUにはIris Proを搭載していることを説明。「世界最高性能のモバイル向けプラットフォームを採用している」と述べた。

 これにより、Adobe Photoshop Lightroom 5を使用し、100枚のRAWデータをプリントした場合には、Ultrabookなどに採用されている15WのDual Core CPU搭載モデルに比べて、2.1倍の高速化、Photoshop CS6のSmart sharpen filter機能の利用時には3.5倍の高速化を達成。さらに、PCIeの高速SSD採用によって、SATA SSDに比べて約2倍の高速化を達成するという。

 「CPUやGPUによる高速化は、何かを創作する際の生産性に大きく影響する。また、Photoshopの起動速度でも差が生まれる。さらに、Photoshopの自動バックアップを行なう際にも、100MBのデータなど、重いデータが自動バックアップされることで、仕事を止めてしまうということも発生している。その時間も作業を止めることなく作業が可能になる」。

VAIO Prototype Tablet PCの特徴を3つの観点から語る
Hプロセッサラインの搭載とIris Proを搭載
各種データからパフォーマンスの高さを強調してみせた

 さらにクリエイター向けにカスタマイズしたディスプレイを採用。12.3型のアスペクト比3:2のディスプレイとしたほか、Adobe RGBカバー率が95%以上、2,560×1,704ドット、250dpiの高解像度を実現していることを説明。「創作活動の際にディスプレイを縦にして使いたいという声や、一眼レフカメラでの撮影が3:2であることに対応した」と語った。

 また、御園生大地氏は、「VAIO Tap 11と比較すると、VAIO Prototype Tablet PCは、赤の再現性に優れている。食べ物や花などが生き生きして表現できる。これはプロの目から見ると大きな差である」とした。

 2つ目のモビリティという点については、「今日は残念ながら重量などのスペックは発表できない」(伊藤氏)としたものの、それでも当初は予定されていなかったVAIO Prototype Tablet PCを直接触れる機会を設けたことを明らかにし、「このあと、みなさんに実際に触っていただき、軽さを体感してもらいたい。今回、参加した人にだけ体験してもらえるものだ」とした。

 3つ目のクリエイティブUXについては、デタッチャブル形態を採用したこと、ワイヤレスキーボードを採用したことに言及。「ホームページでは、キーボードをディスプレイの後ろ側に配置する形の写真を掲示している。一般的なノートPCでは使わない見せ方だが、レタッチなどの作業を行なっている人には、このレイアウトの意味が分かってもらえると思い、この写真を使っている」と解説。PhotoshopやIllustratorなどのアプリの作業では、ショートカットだけにキーボードを利用する場合が多く、手前に作業を行なうディスプレイを配置したレイアウトで使いたいというクリエイターが多いことを反映したものだとした。

 また、フリーストップスタンドについても説明。一般的なスタンドでは、ディスプレイを立てる角度に変える際に、手で補助することが必要だが、フリーストップスタンドではスプリング、ダンパー、カムを使った独自機構により、手で押さえずに自由に角度を変えることができ、止めた場所ではしっかりと固定し、ペン入力ができるようになっている。「光の反射を避けたい場合や、自分が描きやすい角度に自由に調整して作業することができる」というわけだ。

 さらに、クリエイターが求めるインターフェイスを搭載。USB 3.0を2基搭載していることや、UHS-IIに対応したフルサイズのSDカードスロット、Mini DisplayPort、有線LANなどを搭載していることを説明し、「ただ薄く作ることを目指したのではない。用途を考えてしっかりと作り込んだのがVAIO Prototype Tablet PCである。SDカードスロットを通じてデジタルカメラのデータをすぐに取り込んだり、USBポートを利用してHDDにバックアップするといった使い方が可能になる」と説明した。

VAIO Tap 11(左)に比べて、VAIO Prototype Tablet PCは、赤の再現性に優れているという
フリーストップスタンドはVAIO Prototype Tablet PC独自の機構
さまざまな端子を搭載しているのが特徴。クリエイターが必要とするインターフェイスを搭載した

 クリエイティブUXに関しては、そのほかにもディスプレイ部にダイレクトボンディング方式を採用したことにより、ペン入力時において、視差を小さくでき、細かい部分まで描画できる特徴について触れ、Adobe MAXのVAIOブースにおけるレイス・バード氏による描画デモストレーションの様子をビデオで紹介。細かい部分の描画に適していることを紹介した。

細かい描画を実現するためにダイレクトボンディング方式を採用
レイス・バード氏による描画デモストレーションの様子
最後にマンガでVAIO Prototype Tablet PCの特徴をおさらい
みなさんの声が製品を進化させることを改めて訴求した

 最後に伊藤氏は、「VAIO Prototype Tablet PCは、小さなボディにデスクトップ並の高性能を実現し、いつでもどこでもストレスなく本格的な描画でできる製品を目指している。Adobe RGBのカバー範囲が広く、色の再現性が高いという特徴に加えて、自分の求める角度での作業が行なえるようにしている。みなさんの声がこの製品をさらに進化させることになる。ぜひ、多くの意見を聞きたい」と語った。

フォトグラファーも満足のディスプレイ

 続けて、フォトグラファーの御園生大地氏が、VAIO Prototype Tablet PCを使ったデモストレーションを行なった。御園生氏は、建築物の撮影を中心に仕事をおこなっており、VAIO Prototype Tablet PCは、1カ月ほど試用したという。

 御園生氏は、事前に撮影してきた映像データと、その場で撮影した映像データをPhotoshopを使って加工。これらの作業が屋外の撮影現場でもできること、クライアントがその場にいない場合には、ネットを使って配信できるといった様子をデモストレーションしてみせた。

 「私は、さまざまな機器の検証を行なっているが、プロの目から見ると、色の確認を行なうのにモニターの表示性能が不十分であることが多い。VAIO Prototype Tablet PCは、Adobe RGBで95%以上、250dpiという余裕のある表示性能を持ち、IPS液晶による視野角の広さがある。クライアントとその場で話をしても同じ色合いを共有することができる。細かい色調整をした場合にも、業界標準であるEIZOのColorEdgeシリーズとかなり似た色傾向に持っている。表示性能の高さは、プロにとって何事にも変えられない利点である」とした。

 「ここまでのディスプレイを持ったタブレットは、ワコムのCintiq CompanionとVAIO Prototype Tablet PCしかない。スペックは静止画を扱う人であれば、これ以上のものはいらないだろう。それぐらいの満足度がある。Cintiq Companionは撮影現場に持って行くにはちょっと大きい。撮影現場での画像閲覧と、ホテルやカフェといった出先におけるレタッチによる最終画像の作成を1台でこなすことができるのはこれしかない。プライベートな旅行中でも仕事が気になる人は、この1台が最適」などと語り、「VAIO Prototype Tablet PCは、クリエイターを場所の制約から解放する唯一のタブレットになる可能性を秘めている。それに期待している」と述べた。

 今回のトークショーは、ソニーストア大阪が、2014年11月9日にオープン10周年を迎えるのに合わせて、11月1日~9日まで、ソニーストア大阪10周年記念祭「楽しい生活with SONY」を開催。その目玉イベントの1つとして企画されたものだ。

 なお、当初は予定されていなかった「VAIO Prototype Tablet PC」の参考展示が、ソニーストア大阪で行なわれることになった。11月3日の1日だけの限定だが、ショーケースに入れられた形で展示された。

御園生氏はその場で撮影した写真を使いながら、Photoshopでデータを加工してみせる
トークショー終了後、伊藤氏は実機を前にユーザーとの対話に時間を割いた
トークショー終了後に実機に触る参加者たち

ソニーストア名古屋でもトークショーを開催

 また、ソニーマーケティングでは、11月22日には、ソニーストア名古屋で、伊藤氏、御園生氏によるトークショーを開催する予定。事前予約制となっており、午後1時と午後3時からの2回を開催。それぞれ定員は20人で、先着順に予約を受け付ける。予約方法は店頭、あるいは電話(052-249-3888)にて。

(大河原 克行)