ニュース

Synaptics、日本のRSP買収後の製品戦略とロードマップを発表

~液晶で生体認証できる技術を1~2年後に投入

Synapticsスマート ディスプレイ部(SDD) シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ ケヴィン・バーバー氏

 ヒューマンインターフェイス・ソリューションを提供する米Synaptics(シナプティクス)は、中小型表示ドライバICを提供する株式会社ルネサスエスピードライバ(RSP)買収によって製品戦略、ロードマップにどんな変化があったのかを記者会見で説明した。

 Synaptics スマート ディスプレイ部(SDD) シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ ケヴィン・バーバー氏は、「RSP買収によって、よりインテリジェンスなガラス技術を提供できるようになった。当社はプラットフォームを志向しており、スマートディスプレイ実現に必要な技術を提供する環境を整え、ITデバイスのアーキテクチャを変えるような、ワクワクするものを提供する」とプラットフォーム拡大を目指し、今回の買収を実施したことを説明した。

 SynapticsによるRSP買収は、10月1日に完了した。RSPの97%の社員が引き続き雇用される。

 SynapticsではRSPについて、「RSPディスプレイドライバIC分野において、さまざまな解像度に対応し、消費電力を低く抑える技術を持っている。Synapticsはスマートディスプレイのプラットフォームとなるべく、タッチコントローラ、ディスプレイドライバ、ノイズマネジメント技術の「TDsync」、マイクロプロセッサ、メモリなどを揃えている。ITデバイスのアーキテクチャを変えるような、革新的なスマートディスプレイプラットドームを提供する。RSP買収もこの一環として実現したもので、よりインテリジェンスなディスプレイテクノロジーを提供していく」とバーバー氏は説明している。

売上推移
RSP買収完了後、組織はすぐに統合
分野別売上推移見通し
プロダクトポートフォリオ
製品別の推移見通し
RSPのディスプレイドライバICの特徴
アダプティブ・イメージ・コンプレッションの概要
CABCの概要
ローカルエリアACOの概要

 Synapticsではスマートフォン、タブレット、ノートPC、自動車の4市場にフォーカスし、クリアパッド、タッチパッド、ディスプレイ、ドライバなどを提供している。

 同社のタッチスクリーンは、タッチセンサーとドライバを別々に実装したディスクリート、タッチセンサーとドライバを一体化したSLOC、タッチセンサーとドライバをシングルレイヤーに実装したIn-Cell、1つのシリコンにタッチセンサーとドライバを実装したTDDIと進化している。

 「各アプローチは共存すると見ている。ローエンドのスマートフォンでは2本指対応のディスクリートが、ハイエンドスマートフォンでは5本指対応のディスクリートが、ミッドレンジではTDDIが中心になるだろう。2015年にはより統合されたものが50%を超える割合になると業界では考えられている」(バーバー氏)。

 統合型製品のメリットとしては、ディスプレイとタッチの階層が薄くなるため、輝度が高く、ディスプレイ自体がより薄型になる。「製品ベンダーにとっては、調達の際に複数の企業に発注しなくて済むようになるため、サプライチェーンを簡素化できる」とタッチデバイスを開発するベンダーのメリットを語る。また、RSP買収によって、シングルチップにタッチとディスプレイドライバを1チップ化することがさらに容易になった。

 1チップ化はコスト面でもメリットが生まれる。2つの材料を用意することに比べれば、コストを抑えることに繋がるためだ。

 さらにSynapticsではタッチディスプレイ操作時に生まれるノイズを抑える独自技術「TDsync」を持っているため、「薄く、輝度型なく、ノイズレス、よりコストを抑えたタッチディスプレイ開発が可能となる」と強い自信を見せている。

 新しい方向性としては、ディスプレイにバイオメトリクス技術を取り入れるための技術開発を進めている。現在はディスプレイと分離した存在である指紋認証をディスプレイ側で行なうための技術開発を進めており、「これが実現すれば、モバイル決済における手間を大幅に軽減することに繋がる。現在はスワイプでログインしているが、指紋によってディスプレイにログインし、パスワードではなく、バイオメトリクスでセキュリティを高める。ただし、技術的には難しい部分もあり、実現まではあと1年から2年かかり見通し」だと言う。

 また、新分野として車載機器向けにも製品提供がスタートした。「1台の車の中で、我々のテクノロジーが利用される可能性があるデバイスが多数あり、さらにその範囲が拡大する見通し」だと説明する。

 一方で同じく新分野であるウェアラブル端末については、「全く新しい分野であり、現在はマーケットが小さい。我々の標準製品を一部提供し、さらに専用製品を開発するための研究は行なっているが、現段階では専用製品の開発と提供は行なっていない」と言う。

 こうした新分野へ挑戦しながら「スマートディスプレイプラットフォームを提供し、ヒューマンインターフェイスの革命をさらに進めていく。そのために新しい買収も含め、積極的に事業を拡大していく」とアピールした。

ディスクリートタッチとディスプレイ
タッチセンサーの統合
RSP買収で期待される技術進化
ノイズ軽減技術TDsync
RSP買収でコスト的にもメリットを提供可能に
買収で製品はより幅広く、深く進化
新たに取り組んでいるバイオメトリクス技術で、モバイルデバイスのセキュリティ向上と他社との協業によるエコシステム実現を目指す
スマートディスプレイプラットフォームを提供
新分野として車載向け機器への対応を強化
TDsyncのデモ

(三浦 優子)