ニュース
AQUOSやソーラーパネルの礎を築いたシャープの電卓事業が50周年
~ユーザーによる記念モデルデザイン投票イベントを実施
(2014/3/18 12:56)
シャープの電卓事業が、2014年3月18日で50周年を迎える。これに併せ、同社はこれまでの電卓事業の軌跡を振り返る記者説明会を開催した。
同社が世界初となるオールトランジスタ型電子式卓上型計算機「CS-10A」を開発したのが今から50年前の1964年。当時の電動計算機と同程度の価格・重量を維持しながらも、計算スピードが桁違いに速く、騒音も静かで反響を呼んだという。とはいえ、重量は25kg、価格は535,000円と、それこそ現在の電卓より桁違いに大きく、高価な代物だった。また、消費電力は90Wに達する。
同社によると、1960年に若手技術者達が、会社の将来を考え、コンピュータや半導体の技術を手がけたいと提案し、研究室が設置。最初は大型コンピュータを目指していたが、最終的には「いつでも・どこでも・だれにでも」使える計算機の開発に方向を変え、1964年に開発に成功した。
1967年には、世界初となるMOS-IC化電卓「CS-16A」を発売。MOS-ICの採用により、それまでのトランジスタ、ダイオードなど約3,500個の部品を、59個のICに置き換え、小型軽量化、信頼性向上、低価格化を実現させた。だが、この製品も重量は4kg、価格は230,000円で、今のノートPCより、大きくて、高価である。消費電力は10W。
1969年に発売されたのが、世界初のLSI化電卓「QT-8D」である。同社は、小型化の鍵を握るデバイスを自社生産すべく、当時のNorth American Rockwellと技術提携し、同製品は民生品で初めてMOS-LSIを使う製品となった。そして、その翌年、同社は半導体工場を天理に完成させ、LSIの量産を開始する。これが、特徴ある製品の開発にとって鍵となるデバイス内製化の始まりである。
例えば、1973年の世界初液晶表示電子式卓上型計算機「EL-805」は、AQUOS TVやスマートフォン、電子辞書などの、AV/情報関連機器の液晶事業を、1976年の世界初太陽電池付き電卓「EL-8026」は、その後の住宅用太陽光発電システムなどのソーラーシステム事業へとそれぞれ発展していった。ちなみに、EL-805は重量200g、価格26,800円、EL-8026は重量65g、価格24,800円。まだ高価ではあるが、サイズ感は現代のものと同等レベルになってきている。EL-805の消費電力は0.02W。
このように同社の電卓事業の50年の歴史、特にその前半部分は、一言で表わすと「小型・薄型化と低消費電力化」の歴史である。と同時に、そこで生み出された技術が、その後のさまざまな中核事業へと成長していっていることを顧みると、今では当たり前でなじみ深い存在である電卓が、同社の礎としての役割を担っていたことが分かる。
実際、2005年にはシャープの電卓が、電気・電子技術および関連分野における歴史的偉業を称えるIEEEマイルストーンに認定された。
同社は技術面以外でも、ユニークな電卓を商品化しており、一例を挙げると、キーを押すとドレミ……の音が鳴る「ドレミカル」、普通のそろばんと一体化した「ソロカル」、筆箱付き電卓、ラジオ付き電卓、温度表示パネル付き電卓、定規+分度器付き電卓、文字入力用の収納型キーボードを搭載した「ニューオフィス電卓」などがある。
誕生から50年が経過した現在はというと、世界における電卓の需要台数は1990年頃から1億3千万~4千万台で安定している。60年代~70年代のような大幅な技術革新は留まり、機能性の面での進化は落ち着いたが、国内ではビジネス向けや生活必需品として根強い需要があるほか、新興国は堅調に推移し、欧米では授業で利用されることから、関数電卓だけで年間4千万台規模の市場があるという。シャープの年間出荷台数は約700万台で、内100万台が国内向け。
同社では、電卓事業について、現時点では急進的なロードマップはないが、ウェアラブル式で数字を見るだけで計算できるなど、新しい方向性も見据えつつ、100周年を目指していきたいとしている。
また、50周年を記念した新製品のデザイン投票を実施する。Web上で一般ユーザーによるデザイン投票を行ない、1位に選ばれたものを製品化する。結果発表は6月下旬、夏以降に発売予定で、1位を選んだユーザーから抽選で100名に記念モデルをプレゼントする。