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【やじうまPC Watch】
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IEEE Region10 Director(アジア太平洋州代表)の竹内精一氏(東京電機大学教授)から記念の楯を授与されるシャープの町田勝彦社長(右) |
12月1日 発表
IEEEから贈呈された楯 |
IEEEマイルストーン贈呈式が1日に行なわれ、シャープの電子式卓上計算機(電卓)が、新たに認定された。
同賞は、電気・電子技術およびその関連分野における歴史的偉業に対して認定するもの。認定条件には、25年以上に渡って世の中の評価に十分に耐えてきたものという項目も含まれる。
'83年の制定以来、世界初のコンピュータであるENIACをはじめ、ボルタ電池やフレミングの二極管など65件が認定されている。日本からは、'95年に八木アンテナ(東北大学)、2000年に富士山頂レーダー(気象庁、三菱電機)および東海道新幹線(JR東海)、2004年にセイコークォーツ(セイコー)がそれぞれ認定されている。今回のシャープの電子式卓上計算機(電卓)の認定は、国内では5件目で、情報機器分野では初めての受賞となる。
同社が'64年に開発したオールトランジスタ方式の電卓、'67年のMOS IC化電卓、'69年のMOS-LSI電卓、'73年のCMOS-LSI/液晶ディスプレイ搭載電卓などが、その後のハンドヘルド計算機の世界的なパーソナルユースでの普及に貢献したことが、認定理由となっている。
'64年に発売された「CS-10A」は、オールトランジスタ方式の電卓で、530個のトランジスタ、2,300個のダイオードを搭載。消費電力は90W、重量は25Kg。また、'73年に発売した「EL-805」は、反射型液晶、CMOS-LSIを採用。さらに、厚膜配線を1枚のガラス基板上に搭載した製品となり、消費電力は0.02W、重量は0.2kgとなり、単三電池1本で100時間の駆動、手のひらで操作でき、持ち運びができるというレベルにまで進化。電卓戦争でのシャープの生き残りを決定的とした。
シャープは、これまでの41年間で、累計6億台の電卓を出荷しているという。
シャープの町田勝彦社長は、「電卓は、その事業の成功だけでなく、その後の波及効果が大きく、さまざまな形でエレクトロニクス事業の発展に大きく寄与したといえる。電卓に活用した半導体は、初めて民生用に利用された半導体といえ、IC産業を大きく発展させた。また、電卓の消費電力を下げるために液晶を採用し、その事業は現在の液晶TVという、最もホットな事業へとつながっている。さらに、その後の電卓で採用したソーラーパワーは、現在の太陽電池事業へとつながっており、環境の世紀といわれる21世紀において、大きな事業になろうとしている。また、こうした有形の資産だけでなく、電卓は、シャープ社内に無形の資産も育んだ。電卓という新たなものを作るという創意の遺伝子を作り上げるとともに、キーデバイスを生み、そこから製品を作り上げ、それがまた新たな製品を作り上げるというスパイラル構造を社内に定着させた。そして、電卓戦争で多くのメーカーが参入し、激しい競争を繰り広げる経験のなかで、勝ち抜くという勇気と知恵を得た。これから、薄型TVは、まさに電卓戦争のような時代に入ってくるが、電卓戦争で得た勇気と知恵によって乗り切りたい」と語った。
認定対象となった4製品。大きさの違いがよくわかる | 各機種の仕様。わずか9年間の技術の進歩の早さに驚く | '64年発売の「CS-10A」。オールトランジスタ式電卓。重量が25kgもあり、レジスターのように桁ごとにキーが配置されている |
'67年発売の「CS-16A」。MOS IC搭載。10キー式となり、重量も4kgと軽くなった | '69年発売の「QT-8D」。MOS LSI搭載。4素子に集積され、重量は1.4kg | '73年発売の「EL-805」。反射型液晶とCMOS LSIを搭載。厚膜配線を1枚のガラス基板上に搭載。電池駆動となり、重量もわずか200g |
電卓がきっかけとなって、各種の技術がスパイラル型に展開された | 半導体分野における電卓の貢献。LSI化をきっかけにキーデバイスの内製化が始まった | 液晶分野の発展にも電卓は貢献している |
認定された業績の詳細。ハンドヘルド計算機の世界的なパーソナルユースの普及に貢献したとされている | 日本のIEEEマイルストーンは、これまでに4件 | IEEEマイルストーンは全部で65件(8月現在)。フランクリン、ボルタ、マルコーニ、フレミングなどの名前とともに、携帯心臓ペースメーカーなども入っている |
□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/051201-a.html
(2005年12月1日)
[Reported by 大河原克行]