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エルピーダ、Micronによる買収完了会見を開催

~「名前は変わるが、エルピーダの火は消えない」

Micronのマーク・ダーカンCEO
7月31日 開催

 米Micron Technologyは7月31日、エルピーダメモリ全株式の取得完了を発表。本件に関する記者会見を都内で開催した。買収したエルピーダの資産には、300mmウェハに対応した広島新工場、台湾の300mmウェハに対応した工場を所有するRexchipの株式約65%、後工程の事業を中心とした秋田エルピーダメモリの株式100%が含まれる。

 また、Micronは、Powerchip Technologyが保有するRexchipの株式の24を%取得したと発表。これにより、Rexchipの約89%の株式を所有し、Rexchipの生産量の100%をコントロールすることができるという。

 今回の統合により、エルピーダとRexchipの工場を合わせると、月産185,000枚以上の300mmウェハ処理能力を持つことになり、現在のMicronが持つ生産能力をさらに45%高めることができるという。

エルピーダメモリの木下嘉隆新社長

 一方、エルピーダメモリは、管財人である坂本幸雄社長が退任し、管財人代理兼取締役COOである木下嘉隆取締役が社長に昇格する人事を発表した。坂本氏は、会長や顧問としても残らず、Micronに入社する予定もなく、業務の引き継ぎ後に退社する。退任後については、「これから考える」としている。今回の統合により、エルピーダメモリ側では、会社更正手続きおよび事業再建に確かな道筋をつけることができたと判断したと述べている。

 具体的には、エルピーダの業績が回復したこと、更正計画認可確定や米国裁判所の承認などを経て、Micronによるスポンサー契約に基づいて600億円の出資が実行され、第1回目の弁済の目処が立ったこと、更正計画の核となるコストプラスモデルの骨格が固まったことを指すとした。

小林信明弁護士

 7年間の弁済計画に基づき、残り6回の分割弁済が行なわれることになる。法律家管財人の小林信明弁護士は、「更正計画に基づいた分割弁済が遂行されるように、引き続き職務を果たしていく」とした。

 31日午後6時から都内で行なわれた記者会見で、Micronのマーク・ダーカンCEOは、「大変ワクワクした思いで統合を発表できうれしく思う。統合により世界一のメモリ会社になる。社員や顧客、株主、地域社会にとっても最高の会社になる」と語った。

 また、「Samsungは、これまで世界でもっとも成功した半導体会社であるが、メモリ分野では、当社がSamsungを上回り、特許数や人材においても、Samsungを上回ることになり、真っ向から競争できる会社が誕生することになった。Micronは、最新の生産設備と優秀な人材を世界各地で抱えることができ、メモリでは、業界最大規模のポートフォリオを持ち、顧客に幅広いニーズに応えることができる。1+1の結果として2以上のものを実現し、世界最高のメモリ会社を目指す」などと自信をみせた。

 一方で、エルピーダブランドについては、「しばらくの間は、エルピーダ製品として、エルピーダのロゴをつけて販売していくが、時の経過とともになくなっていくことなる。これは会社の最適化のためであり、日本における法人も、マイクロン・メモリ・ジャパンという形で統合する。新たな会社にはすぐに立ち上げる」とダーカンCEOが回答。坂本前社長も、「ロゴが2つあるのは、顧客が混乱するだけ。早期に1つのロゴに統合するのがいい」としたものの、「名前は変わるが、エルビーダの火は消えない。エルピーダの開発体制や、オペレーション体制は残る。また、1人ではできなかったことが、2人ならばできるようになる。日本のエンジニアと米国のエンジニアが一緒になって、良い化学反応が起きることを期待している」と語った。

 広島工場は、最先端の設備を活用し、最先端DRAMを生産。Rexchipではさまざまな形での製品を生産することになり、異なる市場に対して、異なる製品を投入していくことになるなどとした。

 新社長に就任する木下氏は会見の第一声で、「会社更正法に関して債権者、株主に多大なる迷惑をかけて申し訳ありません」と陳謝。続けて、「エルピーダがMicronグループ入りすることで、Samsungに対抗できる最強のメモリカンパニーが誕生した。管財人の立場としては、会社更正法をきちっと実行するように最大に尽力していく。また、事業ではMicronとの統合プロセスを円滑に進め、エルピーダの強み、良い点を漏れなく、Micronグループに持って行き、融合し、顧客に対して、真に価値がある最高のメモリソリューションを提供したい。これからは規模の追求できはなく、どんなバリューを追求していくかが鍵になる。ここに両社の強みを発揮したい」と挨拶した。

 また、「1970年にIntelがこの世にDRAMを生み出して40年を経過したが、いよいよムーアの法則が終わりを迎えつつある中で、メモリビジネスも変化が求められている。これまでは、規模の経済やオペレーションの効率化、多くの投資をした人が勝つ時代だった。しかし、これからの時代は、DRAMの価値をどう上げていくか、価値をどう創造するのか、といったところに競争が変わっていく。標準DRAMだけでは成り立たない時代がくる。Micronが持つ優れた人材や、設計資産、ノウハウを含めた豊富なエンジニアリングリソースを駆使して、新たなソリューションを創出し、次の5年に向けて軸足を移していくための取り組みに力を注いでいきたい」と抱負を述べた。

Micronのマーク・アダムス プレジデント

 一方、Micronのマーク・アダムス プレジデントは、「木下氏と協力することでエルピーダチームとの統合を図りたい。合併することですばらしい世界が広がる」とコメントした。

 また、ダーカンCEOは、「坂本氏の果敢な指導力なしには今日を迎えられなかった。心より感謝したい」とコメント。

 これを受けて、坂本前社長が挨拶。その冒頭に、「昨日から、報道関係者からの問い合わせがあったが、世界的な契約では、秘密保持が必要であり、情報が伝えられなかったことをお詫びをしたい」としたほか、「今日に至るまでに間には、債権者や従業員には大変迷惑をかけた。いまでも申し訳なく思っている」と陳謝。その一方で、「今日、信越化学工業の金川千尋会長と会い退任を報告したが、金川会長から、私は86歳まで会長をやっている。その歳までガンバレと言われたが、退任したいと伝えた」とした上で、「Micronとエルピーダの共通の理解は、雇用の維持とオペレーションの健全化、顧客関係の維持など。また、再生会社は、往々にして不正なものが出てくるが、エルピーダにはそれがないという自信をもって申し上げられる。エルピーダは、Micronに嫁に行く立場である。そのために持参金を持たせなくてはならないが、この1年半の間に、健全な利益体質はできた。DIPファイナンスの借入金を返済し、問題だった広島工場での高いコスト体質も、Rexchipよりも低いコストで生産できるようなになった。すべての主要なモバイル企業との契約を確立したことも大きな要素となった。人を1人も切らずに再生ができ、やっとMicronと結婚できるようになった」とした。

エルピーダメモリの坂本幸雄前社長

 また、「今後は、Micronと一緒になってDRAMソリューションカンパニーになることを期待したい。私は、この1年半は人生の中で一番きつかった。債権者や株主にも迷惑をかけ、家族からも冷たい目でみられた。だが、言い方を変えると、楽しかった時期。更正法を選択せず、銀行が入ってきて生かさず、殺さずという会社にするのは正しくない。しかも、大幅なリストラをすることになる。これは正しくないと思っていた。更正法を選択するのが遅かったかもしれないが、自分ではよく決断したと思う。この間、従業員が必死になって頑張ってくれた。そして、優秀な人たちが残ってくれた。こうした人たちが、Micronの中で貢献できるという自信ができた」と述べた。

 さらに、「Micronと仕事をやるようになって、財務のやり方が違うことを感じた。専門家である1人のCFOに権限を集中しているのがMicronのやり方であり、今後、自分が何かやる立場であればこれを踏襲したい。また、メインバンクをちゃんと作っておかなくてはならない。これができなかったのは私の責任である。これまでの社長就任期間を振り返っても、更正法の対象となった会社の社長であり、誇れるところはない」などとした。

(大河原 克行)