インテルとパナソニックが福岡市で教育支援
~21世紀型スキル習得を目指した小学生向け教育プログラム

公開授業が行なわれた福岡市立赤坂小学校

7月18日 公開



 インテル株式会社およびパナソニックは、福岡市が試験的に取り組んでいる21世紀型スキル習得を目的とした学校教育プログラム「福岡キッズ グローバルメッセージプロジェクト Supported by Intel & Panasonic」に協力。2012年7月18日、同プロジェクトによる授業の様子を、福岡市立赤坂小学校で公開した。

 18日午後2時15分から行なわれた公開授業では、同プロジェクトに参加した韓国の児童6人と、赤坂小学校5年生の児童約50人が参加し、国際交流を行なった。

 赤坂小の児童は、グループに分かれて福岡のおいしい食べ物や伝統文化、歴史的建造物、祭りなどを、独自に製作した映像や資料を使って英語で紹介。韓国の小学生は、それぞれのグループを巡回して、福岡の特徴などについて学習しながら、赤坂小の児童たちとコミュニケーションを行なった。

 今後の授業で、映像機器やICT機器を活用して、児童自らが映像制作などの実習を行なうことになる。

 今回の公開授業には、福岡市の教育関係者のほか、インテルの宗像義恵取締役副社長や、パナソニック コーポレートコミュニケーション部門コーポレートコミュニケーション本部社会文化グループ・小川理子グループマネージャーも視察。児童たちの積極的な発言の様子が印象深かった。

インテル 宗像義恵取締役副社長パナソニック コーポレートコミュニケーション部門コーポレートコミュニケーション本部社会文化グループ・小川理子グループマネージャー
福岡市教育委員会の酒井龍彦教育長(左から)パナソニック・小川理子グループマネージャー、福岡市教育委員会の酒井龍彦教育長、インテル 宗像義恵取締役副社長

 福岡市では、今年度から、学校教育における官民連携プロジェクトとして、福岡市のAPCC(ASIA Pacific Children Conference=アジア太平洋こども会議イン福岡)と、インテルおよびパナソニックの協力を得て、21世紀型スキル習得を目指した「学校教育プログラム」を試験的に開始している。

 福岡市内の赤坂小学校、平尾小学校の小学校5年生の児童が、ビデオカメラを活用した動画制作の活動を通じて、自己表現、情報発信、コラボレーション、ICT利活用などの21世紀型スキルの向上に取り組むという。

 具体的には、福岡市の高島宗一郎市長から児童へのミッションという形で、「福岡の魅力を伝える情報番組を作ってほしい」という課題に取り組む。韓国の小学生に対して、相手の国の良いところと、福岡の良いところを伝えるとともに、今後、2分間の情報番組を制作。APCCの招聘で来日した海外のこども大使との交流体験を映像制作活動に反映させる。また、平尾小学校では環境サミットを開催し、植物や気候に関する課題解決についてハワイから来日した小学生に対して説明。海外から訪問した子供たちとの国際交流を行なう。

公開授業の様子。コミュニケーションはすべて英語で行なわれたミッションは「情報番組」を作ってほしいミッションを子供たちに伝える場面

 福岡市では、「今回の取り組みは、児童が主体的に活動し、課題を解決するプロジェクト型学習であり、また、企業人や専門家からノウハウを伝授してもらう本物志向のプログラムになっている」としている。

 同プロジェクトにおいては、映像制作活動を充実させるために、インテルが教員向け研修プログラム「Intel Teach」を、パナソニックでは映像制作による教育プログラム「Kids Witness News」をそれぞれ提供する。また、制作に活用するPCや撮影機材の提供、映像技術指導なども行なう。

 Intel Teachは、1999年から行なっている21世紀型スキル教育を推進するための教員向けプログラムで、世界70カ国で展開。1,000万人を超える教員が受講している。日本では、これまでに4万人以上の教員が参加したという。

 また、Kids Witness News(KWN)は、パナソニックが1989年に米国でスタートしたグローバルに展開する教育支援プログラムで、小中学校の子供たちを対象に、環境などをテーマに、自由な発想でビデオ制作を行ない、これらの活動を通じて、創造性やコミュニケーション能力を高め、チームワークを養うことを目的としている。同時に、環境問題など社会が抱える課題に対しての関心を高めることも狙っている。日本では2008年から開始。現在、31の国と地域において、718校、年間約1万人の子どもが参加している。

公開授業では「世界に向けて伝えよう」がテーマ韓国の小学生(左側)に赤坂小の児童が英語で挨拶公開授業を視察するインテル 宗像義恵取締役副社長(右)と、パナソニック コーポレートコミュニケーション部門コーポレートコミュニケーション本部社会文化グループ・小川理子グループマネージャー(左)
自分たちで製作した資料などを使い福岡市の文化や食べ物などを伝えた赤坂小の子供たちが調べた韓国と日本

 宗像義恵氏は、「インテルでは、10年以上前から21世紀型スキルの重要性に注目。日本の教育分野においても、その人材育成支援に貢献してきた経緯がある。今回の連携プロジェクトを通してグローバル社会で活躍できる能力とスキルを備え、リーダーシップを発揮できる福岡市人材育成の取り組みを支援していく」と語り、「今回の公開授業では、ワークショップ形式とすることで、多くの子供が参加し、自らの言葉でコミュニケーションしたいという気持ちを感じることができ、感銘を受けた。今回の経験をもとに、福岡モデルとして全国に展開していくことも考えたい」と述べた。

 また、小川理子氏は、「社会の複雑化、グローバル化に伴って、21世紀の新しい人材育成への要求が高まっている。その実現に向けて、教育行政に留まらず、地域コミュニティや企業などがノウハウを出し合い、新しい教育に取り組むことが求められている。今回の取り組みは、2011年秋から話し合いを開始し、短期間に開始したものだが、福岡市のAPCC、インテル、パナソニックの教育支援プログラムを有機的に活用する新しい学校教育プログラムとして、21世紀の新しい人材育成を目標にコラボレーションを行なうことで実現したものであり、教育分野にイノベーションを起こせるのではないかと考えている。日本の子供たちは、1つの正解を求め、同じ方向を向いているという傾向が強い。グローバル人材を育てるという点でも重要な取り組みになる」と語り、「公開授業では子供たちが、リズムをつけて英語をしゃべるという工夫をしたり、伝えたいという気持ちが出ていたのが印象的だった」などとした。

 福岡市教育委員会の酒井龍彦教育長は、「福岡市は、アジアの拠点都市として、グローバルな情報化社会に適応していく人材の育成が必要と考えている。2009年度に策定した『新しいふくおかの教育計画』において、将来の福岡市を担う人材育成といった観点から、コミュニケーション力、自己決断力の育成といった点を盛り込み、それ以降、『21世紀型スキル教育』に注目している。官民連携の体制により、日本の教育イノベーションを代表する都市としての発展を目指す」などとした。

 だがその一方で、「21世紀型スキル教育を他校に展開していく上で、教員の語学力向上や、教員自らの発信力強化、ICT機器の利活用の促進といった点で課題がある。このあたりの解決にも取り組んでいく必要がある。効果の測定は数値の観点からは難しいが、授業を通じて完成したビデオを、市のホームページで公開するといったことも考えていきたい」などとした。

 なお、21世紀型スキルとは、ICT活用力や問題解決力、協働力、思考・判断力、コミュニケーション力などを指し、これまでの受身的な教育指導による知識習得とは異なり、社会人に成長した際、グローバル社会への対応で求められる能力やスキルを育成することを狙っている。

(2012年 7月 19日)

[Reported by 大河原 克行]